連載最終回で引用された過去コラムをご紹介!(その2)

 『大乱闘スマッシュブラザーズ』や『星のカービィ』など、数多くのヒット作を生み出してきた稀代のゲームデザイナー桜井政博氏が、週刊ファミ通にて連載を続けてきた人気コラム「桜井政博のゲームについて思うこと」。2003年以来、なんと18年7ヵ月にわたって綴られてきたこのコラムが、いよいよ今週、最終回を迎え、長い歴史に幕を下ろします。

 最終回が掲載される週刊ファミ通2021年11月18日号(2021年11月4日発売)は、特集も桜井さん、表紙も桜井さんの、桜井さん特大号としてお届け!

【よりぬき桜井さんコラム (2)】愛猫“ふくらさん”との出会い&ゲーム起動時のロゴについて
週刊ファミ通2021年11月18日号(11月4日発売)購入はこちらから

 というわけで、本稿は最終回に向けたカウントダウン企画の第2回。週刊ファミ通で過去に掲載されたコラムの中から、最終回のコラム内で引用されている回を2本公開します。2021年11月4日発売の週刊ファミ通に掲載されるコラム最終回と合わせてご覧ください!

 なお今回紹介しているコラムは、単行本第5巻『桜井政博のゲームを遊んで思うこと』、単行本第6巻『桜井政博のゲームを作って思うこと』に収録されています。単行本はKindleでいつでも購入できるので、もっと読みたいと思った方は、ぜひ購入をご検討ください。

【よりぬき桜井さんコラム (2)】愛猫“ふくらさん”との出会い&ゲーム起動時のロゴについて
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※以下、単行本より引用して紹介します。

VOL.287 ゲームと関係ないハナシ

週刊ファミ通2009年7月3日号掲載
※単行本『桜井政博のゲームを遊んで思うこと』収録。
※掲載当時の内容に、一部ファミ通編集部が編集を加えたうえで掲載しています。

 このコラムは題名どおり“ゲームについて思うこと”を書くものです。いままでは必ず、どんなときにもゲームの話につなげていました。だって、そういうコラムですもの。
 しかし! 6年ぐらい続けた今回、初めて“ゲームについてまったく関係のない”内容でいきたいと思います。このコラムにゲーム話を期待している方、あしからず。いや、ちょっとだけ関係あるかも!?
 ついに、ついに! 念願叶って“ネコを飼う”ことにしました!

【よりぬき桜井さんコラム (2)】愛猫“ふくらさん”との出会い&ゲーム起動時のロゴについて
初めて出会ったとき。生まれてから、まだ1ヵ月半ぐらいでした。かわいい! 

 スコティッシュフォールドの女の子。写真を見ていただければと。ヤバイ。かわいいー。どうしよう!! ネコバカになれと言わんばかりの愛嬌です。いや、すでにネコバカなのか!? イヌ派? ネコ派? と聞かれたら、わたしは断然ネコ派ですよ。うん。やはり。
 2005年2月、“荒れゆくわが家”という題名で、ペットを飼えない理由を書きました(※編註:単行本『桜井政博のゲームについて思うこと2』、P.124掲載)。書かれているとおり、ネコ好きだけど、ネコを飼うことはいままで遠慮していたのです。
 わたしが実家にいたときはネコを飼っていました。1匹目は白い短毛の雑種、オッドアイ。2匹目は灰色のペルシャ。どちらもかわいかった。そういう意味では、ネコとは子供のころからのつき合いです。
 だから必然的に、ひとり暮らしを始めたときもネコは飼いたくなるわけですが、それ以降ネコは飼わなくなりました。これはひとえに忙しく、世話をしてやるゆとりがなかったからなのですけれども。1日中会社につきっきりだったり、ムラがある生活をしているゲーム開発じゃ、ネコがかわいそうだなぁとも思ったものです。……あ、ペットを持つことがそもそも人間のエゴではないのか、なんて意見もありますが、そんな小難しいことは考えていません。根っこはもっとシンプルに、“世話できるのか、できないのか”ということです。
 忙しくてもペットを飼っているゲーム開発者は山ほどいます。何とかなることはアタマの中ではわかっていましたが、エサやおトイレのめんどうはどうするのか。留守中に吐いちゃうとか電気コードを噛むとか事故があったら? 心配が先に立ち、なかなか飼うとまでは至りませんでした。おいそれと無責任なことはできないなぁと。
 しかし、今回は会社と家がかなり近いし! ペットがオーケーなマンションだったり、間取りを含めたその他の問題がかなりクリアーされたと見たので、飼育に踏み切ることにしました。
 ネコを購入したり里親になったりすることを焦らず、出会いを重視しました。結果としてこの仔を見つけ、クルマで1時間ぐらいの某所に行き、直接対面してみようということになったのです。
 「どうですか?」と聞かれたとき、わたしの手の中に抱かれ、胸にしがみついてまっすぐ上を向いたネコが、何かを訴えかけるようにニャーニャー鳴き出したのですよ。顔から1センチ未満のところで! あぁ、もうダメ。負けた。どうしようもない。お手上げです。
 というわけで、新しい家族が増えました。名前は“ふくら”です。
 ちなみにこのコラムを書いている時点では、飼い始めてまだ2日しか経っていません。環境になれるまでそっとしておいたり、心配なところに入りこまないように気を遣いながら、ウンチの始末をしていたりするわけですね。
 小さいときは、あっという間に過ぎるのですよね。これから、長いつき合いになるけどよろしく! 

【よりぬき桜井さんコラム (2)】愛猫“ふくらさん”との出会い&ゲーム起動時のロゴについて
食後は毛づくろいしながらウトウト。あぁ、これでこそネコよ! ネコなのよ!! 

VOL.299 受け手ゼロの広告

週刊ファミ通2009年10月1日号掲載
※単行本『桜井政博のゲームを作って思うこと』収録。
※掲載当時の内容に、一部ファミ通編集部が編集を加えたうえで掲載しています。

 定食を食べに行ったとき、その食材を作ったということでトラクターのチラシを横から突っ込まれたら、さすがにいい気分はしないでしょう。今回はそんなお話。
 『ドラゴンクエストIX』、いまもすれちがい通信が盛んで、勢いがありますね。非常に多くの人が楽しんでいることを実感できます。が、その『ドラクエIX』を起動するときのこと。まず最初、上画面にスクウェア・エニックスのロゴが出ます。これは納得。しかし、同時に下画面に“mobiclip”というロゴが出ているんですね。そのあと画面が切り替わると、上画面にレベルファイブのロゴ。下画面は真っ黒で何もナシです。
 いやいやいや。待ってほしい。『ドラクエIX』は知ってのとおり、スクウェア・エニックスとレベルファイブが力を込めた創作物です。ほかにも堀井さんやすぎやま先生などの名前が立つのは理解できるけど、mobiclipってなんだよと。
 これはいわゆるビデオコーデック。オープニングなどの動画を再生するための技術です。これを使うソフトには、立ち上げ時に必ずロゴを表示しなければならないなどの規約があるのでしょう。
 しかし、『ドラクエIX』を遊ぶ人にとって、ビデオコーデックがどれぐらいのウェイトを占めているというのか。遊ぶ量としても、オープニングや途中のデモなど、ほんとにちょっとだけでしょう? だけど多くの人に恩恵もないのに、毎回必ず目に入れられるという。
 ゲームを動かすミドルウェアの類は、mobiclipに限らず非常に多いです。アニメーション自体にだって、ほかの制作会社があるハズ。任天堂もさまざまな技術協力を行ったと思います。が、それらのロゴはとくに主張していません。
 そんな中、ボタンを押して飛ばせない位置に、ビデオコーデックのロゴがデカデカとあるわけです。ちなみに、そのあとのレベルファイブのロゴはボタンで飛ばせます。
 お客さんが必ず待たされるところに、お客さんにまったく関係ない技術が宣伝されるわけです。おもしろいゲームを作った会社の次回作を買うのは自然だけど、一般の人がビデオコーデックをお店で選んだりしないでしょう? お客さんにとって、利点なさすぎです。
 ゲームの立ち上げもなるべく早いほうがいいですしね。読み込みなどで解決できない場合はありますが、それでもなるべく早く。
 わたしも思いあたる経験があります。『カービィのエアライド』の制作時のことですが、本作に“ドルビーサラウンド”を採用すべく実験したことがありました。エアライドマシンの追い抜きや仕掛けのすれ違いなどが立体音響でよりよく感じられ、なかなかいい手応え、可能性を感じましたよ。
 しかし、適用するには、起動時に必ずロゴを表示しなければならない規約があることがわかりました。結果として、わたしはドルビーサラウンドの採用をやめました。
 対応したスピーカーを持っていない多くのお客さんが、そのために待たされることが我慢できなかったのです。ほんの数秒かもしれないけど、お客さんが待つ時間は人数、起動回数で倍加しますから。似たような技術がほかにあるなら、ロゴを出さなくてもいいほうを選びます。可能であれば非表示交渉もするかもしれませんが……。
 個人的に、『ドラクエIX』の作品性を考えたら、スクウェア・エニックスとレベルファイブが上下に並ぶのが美しいと思います。だけど、それを許さぬいびつな現象を起こす主張には、もっと反対してもいいんじゃないかと考えるわけです。

【よりぬき桜井さんコラム (2)】愛猫“ふくらさん”との出会い&ゲーム起動時のロゴについて
『カービィのエアライド』はレースゲーム。わたしの作品は3Dものが少ないです。

※引用ここまで

 カウントダウン第3回は明日(2021年11月3日(水))公開。お楽しみに!

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