『バイオハザード』シリーズや『モンスターハンター』シリーズなど、日本から世界に通用するゲームを届けているカプコン。同社では、いまどんな人材を募集しているのか。カプコン CS第一開発統括のテクニカルアーティスト福井誠氏と、シネマティックアーティスト宮崎政人氏に、カプコンのゲーム作りの真髄をうかがいつつ、求められる人材について、クリーク・アンド・リバー社 デジタルコンテンツ・グループ古川夕夏氏が聞いた。

 なお、CS第一開発統括は『バイオハザード』シリーズなどを手がける部署となる。

カプコン開発現場の裏側を最前線のクリエイターが明かす。「能力とやる気さえあればナチュラルに受け入れてもらえる会社」【ファミキャリ!エージェントが聞く】

福井誠氏

カプコン
CS第一開発統括
テクニカルアーティスト

宮崎政人氏

カプコン
CS第一開発統括
シネマティックアーティスト

古川夕夏氏

クリーク・アンド・リバー社
デジタルコンテンツ・グループ

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世界に通用するコンテンツを提供できるのはやりがいがある

――まずはおふたりのご経歴を教えてください。

福井僕は1995年に入社して、当時はドット絵の時代だったのでまずはキャラクターのドットを打つドッターからスタートし、3Dになってからは アニメーターを数年経験して、キャラクターモデラーに転向しました。

 モデラー時代からテクニカルなことが好きだったので、スクリプトなどに手を出していくようになった結果、いまはTA(テクニカルアーティスト)としてフロー・パイプライン設計などの開発環境や効率を改善していく業務と、グラフィック品質を向上させていく業務をおもに担当しています。

――福井さんはどういったきっかけでゲーム業界を目指されたのですか?

福井幼いころからゲームと絵を描くのが大好きで、いずれはゲーム会社かマンガ家のどちらかかなと思っていたのですが、気づいたらカプコンに入社していた……みたいな感じです(笑)。

――ありがとうございます。宮崎さんはどのような経緯でカプコンさんに入社されたのでしょうか?

宮崎私はちょっと複雑でして、大学時代は理工学部で、アートとはまったく関係のないことを勉強していました。大学卒業後は広告関連の営業職を経験し、その後、関東のゲームメーカーに入社しました。ゲーム業界でキャリアをスタートしたのはこの会社からですね。関東のゲームメーカーで10年務めたのち、カプコンに転職しました。

 そもそも理工学部に行ったのが、「何かモノづくりをしたいな」というぼんやりした動機でした。営業職をしていたときに、ゲーム開発者の方と関わる機会があって、もともとゲームが好きだったこともあり、「自分もゲームを作りたいな」と思って、足を踏み出しました。だいぶ遠回りをしていますね。

――宮崎さんは現在どのようなお仕事をされているのでしょうか?

宮崎たぶん同じ名前の職種がほかの会社さんにはないと思うのですが、社内ではプレゼンテーションディレクターと呼ばれており、ゲーム全体の演出をディレクションする役割を担当しております。

 比較的近い職種にシネマティックディレクターがありますが、こちらはカットシーンだけを見るのに対して、プレゼンテーションディレクターはゲーム全体の構成や演出プランも考えています。『バイオハザード7 レジデント イービル』からは、クレジットでもプレゼンテーションディレクターという表記になっています。あとは、兼務でアニメーションのディレクターもしています。

――いまさらながらですが、カプコンさん全体の大まかな事業内容を教えていただいてもよろしいでしょうか?

宮崎カプコンはゲームがメインの会社で、売上の75%がゲーム、残り25%がゲームセンターやライセンス事業、あとはeスポーツや映像系の事業になっています。大阪本社と東京支店があって、違いとしては作っているタイトルの違いと、ゲームエンジンは大阪だけで作っているところですね。

福井カプコンはグローバル展開をしていて、200ヵ国以上でゲームコンテンツを販売しています。販売本数ベースで言えば8割は海外なので、世界中にファンがついているコンテンツを作ることができます。つまり、自分の作ったものを世界に展開できます。ここはすごくやりがいを感じていただけるのではないかと思います。

――部署についてもお伺いしたいのですが、第一開発統括の特色はどんな部分にありますか?

宮崎第一開発統括は、『バイオハザード』シリーズを基軸にブランド展開を行っているのが特徴で、文化的には“一見の価値があるものを作る”というスローガンを掲げています。どこかで見たことがあるようなものや何かの焼き直しではなく、誰もが人に薦めたくなるような、これをやってよかったと思えるような価値を作ろうというコンセプトです。

 このコンセプトは管理職や役職者たちが掲げているだけでなく、現場レベルでしっかりと根付いているので、スタッフもつねにそういった視点で考えようとする風土があるのが特色かなと思います。

福井そういった、一見の価値があるものをどう作ろうかとなったときに現場からアイデアが出てくるのですが、よほど方向性が食い違ったりしていない限り、提案したものを積極的にチャレンジさせてくれる風土ですね。

 自分が提案したことを自分で形にして、それがちゃんとユーザーに届くことも多くて、そこは非常にやりがいがあります。全部が全部うまくいくとは限りませんが、そういう風にチャレンジをさせてもらえる部署だと思います。

――ちなみに、他部署間でお互いにライバル心を持っていたりはするのでしょうか?

宮崎(笑)。あまり張り合っている感覚はないですね。そもそも作っているもののジャンルがけっこう違うので、ホラーの『バイオハザード』とファンタジーの『モンスターハンター』とでお互いに情報交換をしながら切磋琢磨している雰囲気です。

 僕は中途で入ったのでより強く感じたのですが、カプコンはものすごくフラットな組織なんですよ。一般的な会社だと主任、係長、課長、みたいな縦型構造が多いと思うのですが、当社の開発部隊に関して言えば、もちろん部長はいますが、それ以外はフラットです。

 言い換えれば、いいアイデアやスキルがあれば、入社1年目でも中途でも活躍できるような文化がカプコンにはあります。これは部署問わず変わりません。

一見の価値のあるゲームを目指して

――おふたりがゲームを開発するにあたって、こだわっているポイントを教えてください。

福井TAは、最初のお客さんがゲームをプレイしてくれるユーザーの前に、周囲の開発スタッフだったりするので、まずは開発しやすいワークフローなどを作る、というのが根底にあります。ワークフローを考える際にも、どうすれば作業しやすいか、どうすれば要件を満たしつつ作業をシンプルにできるか、といったことを、スタッフたちと話し合いながら考えています。

 ゲームって制約が多くて、どうしてもクリエイティブとは直接関係のないデータ的な作業に時間を割かないといけない部分があります。それを可能な限り減らして、アーティストが本当にクリエイティブなところに専念できるようにするのが、TAの大きな役割かなと思っています。

 ほかの部分で言えば、リグやシェーダーなどアートに関わる部分も見ているので、ユーザーが見た瞬間につい声を出してしまうような、そういうインパクトのある表現をしたいといつも思っています。提出されたものに対して「これではぜんぜん驚かないから、もっとこういう風にしてみよう」みたいに提案することもあります。

――宮崎さんはいかがですか?

宮崎関わるタイトルによってポイントは変わってくるのですが、共通するのは独りよがりにならないことです。コンセプトが押し付けになってしまったり、そもそも伝わっていないとなったりしたときに、作っている側の都合で終わりにしないよう、できるだけ努力しています。

 たとえば『バイオハザード ヴィレッジ』であれば、“ホラーのテーマパーク”、“イーサンという人間の物語を完結させる”、といったコンセプトで進めていったのですが、途中でどうしてもうまくいかない部分が出てきます。品質管理部やテストユーザーから辛辣な意見が上がってくることもあるのですが、そこで自分の都合のいいように解釈するようなことはしません。

――ユーザーや管理部の意見もしっかりと反映しようということですね。

宮崎ただ、そのまま受け取ってはいけない場合も出てきます。たとえばプレイ時間が短かったという意見があったとして、単にプレイ時間を引き伸ばしただけでそのお客さんが満足するかと言えば、必ずしもそうではないと考えています。

 意見の真意をしっかりと汲み取って、プレイ時間が短かったと感じるのは、プレイを楽しんでくれたうえでその密度をもっと楽しみたかったとか、違う角度からもう一度楽しんでみたかったとか、額面通りではなくその奥にあるのは何か、というのを考えています。これは大事だと思っています。

 この考えかたは、昔だとスタッフたちに自分から伝達するようなことをしていましたが、いまは中堅や若手の子たちに言っても「もちろんそうですよね!」といった反応が返ってくるので、チーム全体に浸透してきていると思います。

――チーム全体で真摯に意見と向き合って解決策を考えるわけですね。

宮崎そうです。あとは、開発期間が残り1ヵ月しかないときに重大な問題が発覚したとして、そのまま止めてしまおうとなるのではなく、時間がある限りはがんばって改善しよう、みたいにスタッフが落ち込まないようディレクションをするとか、そういうことにも気をつけています。

――先ほどお話に出た一見の価値のあるゲームというのは、人によって解釈が分かれるような気もしますが、おふたりの中で具体的に何かイメージはありますか?

福井タイトルとして作っていく過程で集約されていくのですが、最初は、当然人それぞれの解釈があったと思います。たとえば『バイオハザード7 レジデント イービル』は、広く作るのではなく一軒の家の中で出来事を掘り下げて、本当に怖い体験をさせていこうという方向に決まりました。

 「もっとマップが広くなくて大丈夫か?」といった議論もありました。ただ、それよりも一軒に絞って深度を深めるほうが絶対に勝負できるから、という話でまとまり、改めて皆で共有しました。自分が入ったらどうか、ユーザーだったらどうか、という想像をしながら、館一軒をいかに楽しませられるかといった、絞りにしぼった考えかたが『バイオハザード7 レジデント イービル』における一見の価値だったと思います。

宮崎僕もだいたい同じなのですが、ひとつのテーマをとことんやり切れるか、みたいなところがあります。尺度としては、製品としてそのゲームが世に出たときに、プレイした人が「めっちゃくちゃ怖いからやってみて」、「すごく泣けるから見てみて」みたいに紹介したくなるのが理想です。

 家族や知り合いに紹介して、どんなゲームか聞かれたときに漠然と「怖かった」ではなくて、「あの奥さんが本当にヤバい」みたいに具体的に語ってくれたり、そういう感想や意見をいただけたりしたときには、「一見の価値のあるゲームを作れたかな」という実感が湧きます。

カプコン開発現場の裏側を最前線のクリエイターが明かす。「能力とやる気さえあればナチュラルに受け入れてもらえる会社」【ファミキャリ!エージェントが聞く】
カプコンCS第一開発統括が手がける『バイオハザード ヴィレッジ』。全世界累計450万本を販売している。
『バイオハザード ヴィレッジ』公式サイト

既存のルールを気にしないような勢いを持っていてほしい

――現在カプコンさんは人材を積極採用中とのことですが、募集中の職種について教えてください。

福井第一開発部では最近テクニカルアーティストグループというものができて、ある程度人数が増えてきたのですが、それでもタイトル数に対してのスタッフ数は不足していて、ぜひとも人員を増やしたいと思っています。とくに不足しているのは、アニメーションやフェイシャル、シェーダーですね。

 すごく優秀なスタッフはいるのですが、手が回らなくなることも多く……。複数タイトルが立て込んでくるときびしいので、そのあたりの職種は強く募集しています。

 あとは全体的な話にはなりますが、ゲームを作っていくうえでデータが作られ、それがツールに読まれて、それをエクスポートしてエンジンに載せる、というデータの流れがあるので、そういったパイプラインやワークフローを設計できる人も増えてほしいです。これはキャラクター、背景を問わずニーズがあります。

――スキル面ではどのようなことが求められますか?

福井職種が多いので細かく挙げるのは難しいのですが、リグやフェイシャルの場合はやはり解剖学を理解していることですね。「筋肉がこう動くから、こういう身体の動きや表情ができる」みたいなことを、アーティスト目線を持ちつつリグに落とし込んでいくので、解剖学の知識は大事だと思います。

 あと、そういった知識をロジックに落とし込む左脳的な面も同時に必要になってくると思います。新たなリギングシステムなどを開発する場合にはそこを両立させる必要があるので、どちらも持ち合わせている方はありがたいです。

 最近だとリグを手作業で作ることも少なくなってきています。モジュールリギングと言って、“腕や脚は部品として見れば同じものを使う”、という考えのもと、モジュール単位で開発をすることが増えてきています。基本的にはスクリプト、Pythonを使うので、TAを希望される方は上記言語を使用したプログラミングスキルが標準スキルになってくると思います。

――解剖学というお話が出ましたが、福井さんはどのように勉強されたのでしょうか?

福井自分はそもそもキャラクターモデラーだったのと、アニメーターをやっていた時期もあったので、先輩に「これで勉強しろ」、とすごくメジャーな解剖学の本を貸してもらったりしました。

 いまなら動画もありますし、自分の身体でも筋肉のつきかたや動きかたは学べるので、どういった手段で学んでもいいのですが、そこに興味を持って楽しめるのが、やはりひとつの素養かなと思います。

――シネマティックアーティストに関しては、どのようなスキルが求められるのでしょうか?

宮崎アニメーション制作スキルと、カメラや構図に関する知識やセンスは重視しています。また、エピソードやシーンを過不足なく効果的に配置し組み立てる演出構成力は重宝されますね。

 すべてを完璧に備える人は稀ですが、演出に興味があることは大事だと思います。経験が浅いうちは仕方がないのですが、ただ形にするのではなく、最終的には「つねにこうしたほうがいいのではないか」とか、「こうしたらもっとおもしろいのではないか」、という風に演出プランを考えられるような能力を身に着けていてほしいと思います。これは自分も含めて簡単ではないのですが、もっていてほしい能力ですね。

――演出を考えたうえでご自身も手を動かせる方が理想だとは思いますが、演出に特化した方でも絵コンテに書き起こして伝えることができれば、対象にはなってくるのでしょうか?

宮崎そうですね。バランスタイプの方もありがたいですし、何かひとつに特化した人にも興味はあります。絵コンテに限らずカメラ、アニメーション作りに映像編集、さらにはエフェクトなどいろいろな分野があって、それらを平均的に経験しているというよりも、どれかひとつがすごく得意です、と言ってくれる方がうれしいです。

――技能面のほかに、人柄の面で求めるのはどのような点でしょうか?

福井TAは仕事の半分が現状を改善することと言っても過言ではないので、既存のルールに捉われない考えかたを持っている人が好ましいです。既存のルールがどうかではなく、根本の問題はなんだ、それを解決するにはどうしたらいいか、といった感じで、本質に向かってストレートに考えられる方がいいですね。根本から立ち返って、もっとよくしたいと思えることを大前提として、物事の成り立ちをしっかりと考えられる能力や、面倒くさいことを受け入れず、無駄を嫌っている方が望ましいです。

 まわりを見てもそうなのですが、すごく手間なことでも言われた通りに黙々と作業している人って多いです。でも、「いやいや、これは人の手でやることじゃないでしょ、こんな何度もやりたくない!」という気持ちから、何とか仕組みを考えようとするのもひとつの才能だと思います。

――面倒くさいところをなくす、というのは効率化につながりますからね。

福井あとは、技術が日進月歩の世界なので、いま知っている情報だけで対応しようとすると、根本的な改善に至らない場合があります。つねにアンテナを張り、最新の技術や情報を学ぶ姿勢はTAにはとくに重要です。

 先ほど宮崎さんも言っていましたが、思考的な面で言えば表面的なことにとらわれないようにというのは、どの職種でも大事だと思います。テストユーザーからの意見の話がありましたが、社内でアーティストとTAが話す際にも同じようなことがあります。

 「こういうツールがほしい」、と言われた際に前後関係や理由を確認すると、「フローを少し変更すれば、その機能はそもそも必要ない」といったことがよくあります。単に言われたことをこなそうとするのは危険で、その奥にある目的を正しくとらえ、最適な道を選ぶ判断力は必要ですね。経験が必要な部分ではありますが、分析して正しい判断をする力というのはTAとして求められるところです。

――宮崎さんは性格面などではどのようなことを重視されますか?

宮崎人柄として求めることはTAとほぼいっしょなのですが、部署問わず開発現場でよく右脳、左脳という話がでます。バランスタイプももちろんいいのですが、すごい右脳派で論理的には話さないけど斬新なアイデアをバンバン出してくる方もうれしいですし、左脳がすごく発達していて、マネジメントをさせたら隙がないような方も助かります。いずれにせよ、得意なことがはっきりしている方がうれしいですね。

――お話を伺っていると、TAでもシネマティックでも興味を持てるかどうか、というのも大きなポイントになっている印象を受けます。

宮崎どんな仕事でもそうかもしれませんが、モチベ―ションの入れどころが売上などの結果だけに置くと続かないですよね。作ること自体が楽しい、となっていないと長くは続けられないと思うので、好きだったり興味を持っていたりするのは大事ですね。当社に限らず、業界に残っている方はそういった部分がベースにあるのではないでしょうか。

福井興味は持てと言われて持てるものでもないので難しいところですが、自分が新人だったころは、仕事に来ないといけないという感覚は全然なくて、むしろこんな好きなことばかりやっていてお金貰っていいんだろうか、みたいな感覚でした(笑)。

――実際にカプコンさんで活躍されている方の共通点などはありますか?

福井宮崎さんもそうですが、第一開発統括でおもだった人はみんな元気でパワーがありますね。それは先ほどの作ることが好きとか、モチベーションになる部分を理屈ではない部分で持ち合わせているからなのかな、と思います。ある種の子ども心が残っているというか、本当にパワーがすごい人が多いです。

宮崎いま元気と表現してくれましたけど、平たく言うとうるさい人が多いんですよね(笑)。会議中も「うるさい!」って言われたりするので。

福井もう自分のアイデアを聞いてほしくてしょうがないんですよね。「どうですか、これ!」みたいな(笑)。

宮崎でも、経歴はみんなバラバラですね。美大や専門学校を出た人もいますが、お互いの学歴を知らないことも多いぐらい、仕事と学歴は関係ないですから。もともとゲーム業界出身の人もいますし、私みたいに他業種から入ってきた人もいて、元芸人や元自衛官もいたりします。

福井モノを作りたいという根っこのパワーが強い人が集まっている印象ですね。

――カプコンさんで働いたときのメリットや、魅力について教えてください。

福井変な縦のヒエラルキーもなく、1年目の人でも若い人でも、いいアイデアを出せば取り入れてもらえる文化があるので、活躍する機会が多いのは魅力だと思います。男女差みたいなものもなく、本当に能力とやる気さえあればナチュラルに受け入れてもらえる会社です。

宮崎私が転職してきたときに感じたのは、「カプコンは世界でゲームを売っていくぞ!」という心意気で戦っているという空気です。環境や技術の構築もしっかりとしていて、会社が率先してそういった部分の力をつけようとしてくれているのは、世界で戦いたいと思っている人にはとくにメリットですね。

 たとえばカットシーンをハリウッドに行って作ったり、世界の最先端技術をつねにリサーチするような部隊がいたりと、「世界で戦っていく」という意思が全社を挙げて感じられるので、ワールドワイドで戦っていきたい人にはすごくいい会社だと思います。あとは、大阪だから笑いが絶えないのも魅力ですかね(笑)。

――あら(笑)。ミーティングなども賑やかなのでしょうか?

宮崎そうですね。笑いが起きないミーティングはあまりないかな。必ずひとりは、リズムを作る意味でも笑いを狙いにくる人がいます。楽しい雰囲気はありますね。

 僕も最初に東京から来たときは、逆に笑いが取れないとマズいのかな、みたいに思っていたのですが、そういうこともありません。大多数は東京の会社と同じような感じで働いていて、10人にひとりくらい賑やかな人がいるので、それで楽しくなる感じです。

カプコン開発現場の裏側を最前線のクリエイターが明かす。「能力とやる気さえあればナチュラルに受け入れてもらえる会社」【ファミキャリ!エージェントが聞く】

自分のやりたいことにニーズがあればやれる

――カプコンさんでのキャリアアップについて伺いたいのですが、どういった仕組みになっているのでしょうか?

宮崎これは大事なことで、つねに研鑽すべきテーマだと思うのですが、いまはグレード制が採用されています。現時点での能力に合わせたグレードが定められていて、簡単に言えばグレードが上がるごとにお給料も上がるような仕組みになっています。

 そのため、主任や課長のようなキャリアステップではなくて、単純に能力がどれくらいかによって分かれています。ただ、あくまでグレードは基準で、そこにまわりのスタッフによる評価などが加わっていきます。

――なるほど。プロジェクトごとのリーダー職のようなものはあるのですか?

宮崎そうですね。タイトルごとにシネマティックリーダー、背景リーダーなどが設けられるので、入社してまず目指すのはこのリーダー職になります。そこに任命されるぐらいになればグレードも上がっていく、というイメージです。リーダー職のつぎはディレクター職、というように目指すステージが上がっていきます。

福井ステップアップという意味では、最初はいちアーティストとして参加して、自分の影響範囲や責任範囲がアセットひとつだったところから、リーダーになっていくとプレイヤーキャラ全体、エネミー全体のように範囲が広がっていきますね。

 それがさらに進展すればタイトル全体、ジャンル全体を見るようになって、もっと広がっていくと今度は第一開発部全体でキャラクターを見る、みたいに影響力を高めていくようなイメージです。それも当然グレードに反映されていくのですが、逆に言えばそういう風なステップアップをどんどんしていってほしいです。

――アーティストの方ですと、管理系のお仕事もしつつご自身でもモノづくりを続けたい、という方が多い印象ですが、そういった働きかたも可能なのでしょうか?

福井そうですね。役職のようなものはないので、だいたいの人がそういった働きかたをしていると思います。そもそもの評価軸として、マネジメント要素とクリエイティブ要素の2軸はつねにあるので、あとは本人がその割合をどう選択していくかですね。

宮崎ずっと描いたり作ったりと制作に励む人、司令官として管理に専念する人、どちらのタイプもいます。どちらかでないとダメということはないです。

――福井さんはドッターからアニメーターとなり、そこからモデラー、そしてTAと職種を変えながらキャリアを積まれていますが、そういった社内でのジョブチェンジはどのように進むのでしょうか?

福井自分の例で言うなら、おもしろそうだと思って勝手にやっていたら、自然とそういうポジションになっていた……という感じです。会社にやれと言われて動いたことはほとんどないです。

 入社当初のドッターはもちろんやってと言われたのですが、アニメーターになったところから自分発信だったんですよ。当時はリグなどを外部の会社に発注していたのですが、内部に理解者がいないとクオリティーのジャッジもしづらいですし、交渉も難しいですよね。

 そういう事情もあったのと、単純におもしろそうだなと思って勝手に調べていろいろとやっていたら、そのうちリグを僕が担当するようになって、「もう全部こっちでやります」ってなったりしました(笑)。

――それもすごい話ですね。

福井モデラーについても、2004年くらいにZBrushが登場してきたころに、カプコン内のフローにまだ組み込まれていない段階で僕が勝手に触っていたんです。「こんなにローポリなのにディテールを詰め込める、すごい!」みたいに触っていたら、「『バイオハザード』のチームにそのフローを入れてくれ」ということになって。

 モデラーとしてそんなに経験を積んでいたわけではなかったので、必死になって夜中まで勉強していました。そんなときに、息抜きとしてスクリプトに手を出したら、これがめちゃくちゃ楽しかったんですよ。「心のオアシスだ」、なんて思いながら毎晩触って、自分用のツールを作るようになっていました。

――すると今度はそれがTAとなるきっかけになったのですか?

福井そうですね。自分用に作ったものがすごく便利で、ほかの人に使ってもらったら好評で、「じゃあチームに配信しようか」、「じゃあほかのチームにも……」と、どんどん広がっていって、気づけば保守メンテナンスも含めて僕がキャラのモデリング用のツールの管理を全社的にするようになっていました。

 その結果TAとなったので、会社に何かしろと言われてやったことは本当にないんです。自分で勝手にやっていたらそうなっていた、みたいな感じです。

宮崎確かに、ジョブチェンジを指示されるようなことは、あまりないですね。最近もVFXを作っていた2年目の若手が、「じつは演出をやりたかった」という話をしてくれて、少し前にシネマティックに転向したりしました。

 もちろん、自分から手を挙げれば誰でも何にでも、というわけではなくて、あくまでもニーズがあれば、です。福井さんがTAになったのもそこにニーズがあったからで、2年目の若手もシネマティックにも演出がほしかったので転向してもらいました。自分にやりたいことがあって、かつそこにニーズがあれば、ジョブチェンジは自分から進められます。

時間をかけていいモノを作るという文化が根づいている

――ちなみに福井さんから見て、この人はTAにほしいな、という人は社内でいらっしゃいますか?

福井アーティストは「作りかたとかよりも、まずかっこいい絵を作りたい!」というタイプの人が多いので、なかなか難しいですね。

 そうではなくて、理路整然と作っていて、イテレーション(反復。システム開発では一連の工程を短期間でくり返すことで完成度を高める際のサイクルを指す)にも強い、しっかりと順序立てて制作を進めている、みたいな人はアーティスト側の窓口としてTAと接することが多いです。そういう人は、「将来的にはこっちに来るかもしれないな」と思うことはありますね。

 でも、おもしろいことに僕もモデラー時代は「作りかたなんてどうでもいい」というタイプでした。「そんなもので画が作れるか!」くらいの考えでいました(笑)。いまは真逆の考えかたをしていますが、どちらもわかるような気がします。

――開発の規模が大きくなったぶん、スムーズに開発を進められるようにしないと納期などがきびしい、といった背景もあるのでしょうか?

福井それは間違いなくあります。個人的に、日本の作りかたは力技みたいなものが昔から多いと思っていて、大規模になればなるほどそれが露呈しやすく、弱点になる部分かなと思っています。

 最近になってようやく設計や作りかたが重要だという意識が高まってきましたが、何年か前まではそういう考えかた自体がなかったですね。

宮崎本当に力技でしたよね。10年以上前ですが、カプコンに入る前、『ロストプラネット』や『バイオハザード5』が発売されたころに東京で技術セミナーが開かれて、凄い技術でスマートに作っている会社だと思ったんです。それで大阪に来たら、当時は全部力業で作っていてびっくりしました。いまは違いますよ。でも、そういう風に時間をかけてもいいものを作るという文化は、いい意味でいまでも残っています。

 いまのカプコンがうまくいっているのは、その文化にロジックがしっかりと乗っているからかなと思います。「粗悪品でいいからたくさん作ろう」、とはならないのがいいところかなと。

――業務内外を問わず、カプコンさんならではの仕組みや制度などがあれば教えてください。

宮崎経営と制作との距離が近い会社だと、ビジネスとクリエイティブとを混同して論じられることが多くなると思いますが、カプコンは絶妙なバランスだと思います。経営陣がビジネス面を取り仕切ってくれるのは同じなのですが、開発を信用してくれています。開発陣は、価値のあるゲームを作ることに注力し、そこに責任を持ちます。発売後の評価も明確なので、そこはすごくいいですね。

――評価、というと表彰式のようなものがあるのでしょうか?

宮崎売上や評判がよかった場合には、表彰してもらえます。いざ賞を取るとじつはものすごくうれしくて、会長と写真を撮ってしまったりするぐらいなんです(笑)。開発を大事にしてくれている会社の風土を体感できます。

福井あとは社内の取り組みで言えば、カプコン版CEDECみたいなものを自社だけでやったりもしています。そういういろいろと新しい取り組みを行っていくのが好きな会社なのかな、という印象はありますね。

――いわゆるクラブ活動などの社内交流も行われているのですか?

宮崎クラブ活動だと、サバゲーが人気ですね。うちの部長を筆頭にサバゲー好きがけっこういて、私は行っていないのですが、上司を公然と銃で撃てるという話はよく聞きます(笑)。そういう部分でも、フラットな会社というのを感じられますね。

福井クラブ活動は、人事が把握していないほど本当に多いです。勝手に作っては増えている感じなので、ここは本当にうちの文化だなと思います。いまはこういう状況なので、積極的には活動していないのですが……。最近だとゲームジャム部というものができて、何人かで集まってゲームを作ったりしています。この前はカードゲームか何かを作っていました。

宮崎ほかにもボードゲーム同好会もありますし、サッカーやバスケ、ツーリングにボルダリングなどいろいろあります。ゴルフ部がまだないので、そのうち作ろうか、みたいな話もしています。みんな仲よくやっていますよ。

――最後に、カプコンさんへの転職を検討されている方にメッセージをお願いします。

福井世の中には能力や情熱を持った方がたくさんいらっしゃると思います。カプコンは世界で戦っているというお話が何度かありましたが、ただ戦うだけでなく世界一を目指している会社です。それを実現すべくお力を貸していただければと思いますので、我こそはという方はぜひご検討ください!

宮崎ホームページにも書いてある通り、“大阪から世界へ”という気概を感じられる会社です。私も関東から転居して大阪に勤務することになりましたが、大阪は素敵で住み心地のよい街と実感しています。関西圏外に住まれている方も事情はあろうかと思いますが、興味のある方は、ぜひ、当社の門を叩いてください!

カプコン開発現場の裏側を最前線のクリエイターが明かす。「能力とやる気さえあればナチュラルに受け入れてもらえる会社」【ファミキャリ!エージェントが聞く】

株式会社カプコン

  • 代表取締役社長:辻本春弘
  • 設立年月日:1979年5月30日
  • 従業員数:3152名(2021年9月30日時点)
  • 事業内容:家庭用テレビゲームソフト、モバイルコンテンツおよびアミューズメント機器等の企画、開発、製造、販売、配信ならびにアミューズメント施設の運営
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クリーク・アンド・リバー社担当が語る

技術力の高さはもちろん、挑戦を歓迎される文化や、コミュニケーションが盛んな企業風土も魅力の会社です!

 『モンスターハンター』シリーズや『バイオハザード』シリーズといった、全世界で愛されるゲームを数多く開発してきたカプコン。技術力の高さはもちろん、自分次第でキャリアを広げていくことができる、チャレンジが歓迎される風土や、社員どうしのコミュニケーションが活発で、和気あいあいと、意見を交わしながら開発ができる点でも、魅力あふれる会社です。

 ゲーム開発をする上での蓄積されたノウハウ・アイデアと、それを実現するための高い技術力を持つ企業ですので、「自分の技術を生かして、世界中の人々に笑顔や感動を提供したい」といった、熱い想いをお持ちの方にぜひオススメしたい企業です!

(デジタルコンテンツ・グループ 古川夕夏氏)