2021年9月18日にプロデューサーレターLIVEと同時に公開された、『暁月のフィナーレ』のジョブアクショントレーラー。新ジョブであるリーパーと賢者を含む全19ジョブのさまざまなアクションが詰め込まれたこのトレーラーを見て、多くの光の戦士たちが期待に胸を膨らませたことだろう。

 その後2021年9月19日、21日、22日の3日間にかけて日本メディア向けに開催された“『ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ』メディアツアー”では、ひと足早くレベル90の各ジョブを触ることができた。本記事では、そこでの体験を踏まえての本作のプロデューサー兼ディレクター・吉田直樹氏へのインタビューをお届けする。

『FF14』拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』吉田P/Dインタビュー ジョブ調整、召喚士・モンクの改修、タンク・ヒーラーのバランスについても訊く

 なお、このインタビューは『暁月のフィナーレ』のリリースに合わせたジョブ調整を前提に行われているため、あわせて【FF14】『暁月のフィナーレ』ジョブ詳細解説を参照することをオススメする。またインタビューの内容についても、リリース時には大きく変更される可能性があることを留意していただきたい。

※『暁月のフィナーレ』メディアリポート記事はこちら(下記を含め5本の記事を掲載中!)

※本記事に掲載しているゲーム画面は最終調整前のものであり、リリース時には大きく変更される可能性があります。
※なお本記事では、『新生エオルゼア』を2.0あるいは2.xシリーズ、『蒼天のイシュガルド』を3.0あるいは3.xシリーズ、『紅蓮のリベレーター』を4.0あるいは4.xシリーズ、『漆黒のヴィランズ』を5.0あるいは5.xシリーズ、そして『暁月のフィナーレ』を6.0と表記する場合があります。

吉田直樹(よしだなおき)

スクウェア・エニックス 取締役執行役員 第三開発事業本部長。『ドラゴンクエスト』シリーズ初のアーケードタイトルである『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』シリーズのゲームデザインとディレクションを担当。2010年12月に『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクターに就任。現在、『ファイナルファンタジーXVI』のプロデューサーも兼任している。

柔軟性を重視して小ワザを効かせやすいジョブ調整に!

――まずはジョブに関する質問のなかでもロール全般についてお伺いします。最初にタンクについてですが、今回からヒーラーは“ピュアヒーラー”と“バリアヒーラー”で明確に役割が分けられました。それに対して、タンクは“メインタンク”、“サブタンク”の差別化がされていません。ここを明確化しなかったのはなぜでしょうか?

吉田やはり各ロールの人口差が大きく影響しています。『紅蓮のリベレーター』『漆黒のヴィランズ』から続く調整によって、タンクの人口は大きく増えました。ですが、それでもDPSやヒーラーよりも、割合としては数が少ないのが現状です。そのため、これでさらに役割を分けてしまうと、マッチングへの影響などが生じます。

 たとえばレイドのマッチングを考えた場合、最先端を行く人たちはメンバーを固定する、募集を立てるなどして自分たちで積極的に調整していきます。ですが、ゆるくレイドで遊びたい人たちやピークを過ぎてレイドに挑む人たちにとっては、タンクの役割を細分化してしまうと、それによって人を集めにくくなるという弊害が大きくのしかかってくるのです。そういった問題が出てくるであろうことを踏まえ、今はタンクの役割を明確化するべきではないと思っています。

――なるほど。コンテンツによって、メインタンクやサブタンクの動きが大きく変わるものもあります。それにより、ジョブによって向き不向きが生まれる可能性がありますが、それについてはどうお考えでしょうか?

吉田“インビンシブル”や“ホルムギャング”など、いわゆる無敵系のアクションに個性があるため、コンテンツによっては多少の向き不向きは出てくるとは思いますが、どのジョブも違った強みやおもしろさがあります。そのため『漆黒のヴィランズ』では、「このジョブはメインタンク(サブタンク)向き」といったジョブイメージがある程度存在します。『紅蓮のリベレーター』の時に比べれば、随分減ったとは思っていますが。そこで『暁月のフィナーレ』ではそれをさらに均すべく、さまざまなアクションの追加や調整をして、どのタンクもよりメイン・サブの役割をどちらもこなせるように調整しています。どちらのポジションでもこなせる、ということも、タンクの楽しみかたのひとつだと思いますので、ぜひどちらの役割もこなせるよう、遊んでいただけるとうれしいです。

――タンクとしてのプレイヤースキルの見せ所ですね。

吉田そうですね。僕はDPSである黒魔道士がメインジョブで、零式にもよく通いますが、ひと通りクリアしたあとはマクロに指定される立ち位置のD1~D4まで、どこでもこなせるように練習します。メインタンクでクリアした後は、サブタンクでも練習してみるか、となってくれると、よりうれしいです。

 あとは、今回のジョブ調整で各バースト(※1)の1回あたりの時間は短くなりましたが、そのぶんバーストのサイクルは早く回るようになりました。“○○しながら××をする”という動作がこれまでよりも増えることになるので、プレイヤーごとの腕の差はこれまでよりも少し出てくると思います。そのほかにも防御バフに短時間の上乗せ効果が付いたことで、“防御バフの使用をギリギリまで待って、強い攻撃の後にくるオートアタックまで上乗せ効果を維持する”といった小ワザが効くようになっており、以前と比べて使いこなしの差が出せるように調整しています。

※1:バースト:味方の攻撃能力を高める各種アクションを、パーティーメンバー全員でタイミングを合わせて使うこと。これによってパーティー全体でシナジーを生まれ、個別にアクションを使うよりも敵に大きなダメージを与えることができる。

――腕に自信がある人は、よりパーティーに貢献できそうですね。つぎにヒーラーですが、白魔道士の“ホーリー”に合わせてほかのヒーラーにも特徴を入れるというお話がありました。メディアツアーでヒーラーを触ってみたところ、範囲攻撃自体は威力が高まっていましたが大きな変化が見つけられませんでした。この“特徴を入れる”とは何を指していたのでしょうか?

吉田範囲攻撃に何かを追加するというわけはなく、そのジョブの能力全体でバランスを取るというイメージです。学者の移動速度アップ効果を持つ“疾風怒濤の計”もその一環で、インスタンスダンジョンに挑んだ際にヒーラーが寄与するパーティー貢献度を揃えたと言うほうが正しいかもしれません。たとえば、白魔道士以外のヒーラーの範囲攻撃のダメージを上げているのも、「“ホーリー”のようにスタンがないぶん、それよりも殲滅速度は高い」というバランスの取りかたをしています。

 まず、この話のスタート地点は、インスタンスダンジョンに白魔道士以外で挑んだときに「白魔道士じゃなくてごめんなさい」という気持ちになる、というお声を拝見したので、それをなくしたい……というところです。そこに向けて、インスタンスダンジョンにおいて、“トータルの殲滅時間”ができるだけ4ヒーラー横並びになるよう調整したというのがポイントです。正直に言えば、“ホーリー”からスタンを取るのがいちばんラクだったのですが、それではみなさん納得されないと考えました。「いっそ全ヒーラージョブにスタンを入れようか!」なんて話もありましたが、さすがにどうなのかなと(笑)。結果、全員範囲スタン持ち!ほどはわかりやすくはないですが、さまざまな部分において、“範囲攻撃+スタン”という“ホーリー”との“ダンジョン攻略時間の差”はなくそう、そういった意図で作っています。

――ジョブに特性がある方が、遊んでいる側も楽しめる気がしますね。つぎに、近接攻撃ジョブが持つ遠距離攻撃アクションにつきまして、全般的に射程距離が伸びていましたが、これはどういった意図があるのでしょうか?

吉田これまで数多くのコンテンツが追加されていったことで、大きなフィールド型のコンテンツや遠くまで離れる必要があるギミックなど、以前よりもいろいろなシチュエーションが生まれるようになりました。そういう場合に、射程距離が短いことでギリギリを狙いすぎた結果、事故が発生してしまう、という事態もあったと思います。5.Xシリーズのコンテンツでそういった場面が少なからずあり、ストレスを減らすために改善を行った、というイメージです。

――たしかに、射程距離の長さもコンテンツの作りやすさに影響しますよね。ジョブ調整の繊細さには毎度舌を巻きます。ちなみに、調整がとくに難しかったジョブはどれでしょうか?

吉田新ジョブや大きくテコ入れしたものを除くと、吟遊詩人が難しいと常に感じます。機工士は『漆黒のヴィランズ』で完成されてきたと感じたので下手に調整はせず、チャージ化した“整備”を溢れさせないように立ち回るという正当進化の調整にしました。遠隔物理DPSのなかでは攻撃能力に特化しています。踊り子はバッファー寄りのレンジという、そもそものジョブイメージがブレることがないので、そこに対して追加を行いました。

 しかし、それらと違って吟遊詩人はプレイヤーの皆さんの間で、イメージや望まれるものが大きく分かれているジョブです。“ダメージを出したい派”と“支援をしたい派”の大きく言えば2派があるのです。ここに関しては、すべてのプレイヤーの要望を100%満たす答えが成立させられないのです。支援力が強く、自身の攻撃力も高ければ、スーパージョブになってしまうためです。そのため、吟遊詩人の方向性の調整には毎回悩みが大きいのです。今回はより“吟遊詩人”らしく、支援寄りの調整がベース方針になっています。

――“光神のフィナーレ”のリキャストが90秒なのは、どういった意図があるのでしょう

吉田“光神のフィナーレ”は、使うタイミングによって、パーティー支援効果量が変化します。開幕はできるだけ早く使用して開幕バーストに合わせる。次回からは我慢して最大効果を出すなど、開幕やコンテンツのタイムラインに合わせ、工夫ができるようにリキャスト自体は90秒にしてあるためです。また、このアクションは吟遊詩人自身にも効果が発揮できるように作られています。

 吟遊詩人自身に支援効果が乗らない、というのは、ある程度本人の火力を維持するためでもありますが、吟遊詩人の調整はまだ続いていて、他の支援効果を自身にも発揮されるようにし、そのぶんだけアクションの威力を少し下げる、というテストもしています。この辺りは各ジョブの一斉バーストにどの程度影響していくか、細かい数値チェックが必要なため、ギリギリまで調整が続いていくことになります。

『FF14』拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』吉田P/Dインタビュー ジョブ調整、召喚士・モンクの改修、タンク・ヒーラーのバランスについても訊く
『FF14』拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』吉田P/Dインタビュー ジョブ調整、召喚士・モンクの改修、タンク・ヒーラーのバランスについても訊く

――実際に今回の吟遊詩人を触ってみたところ、支援能力が高そうと感じました。

吉田本体火力重視の機工士、バッファーとして支援が強力な踊り子、そしてその中間に位置する吟遊詩人、ということでバランスを着地させようとしています。

――ちなみに“光神のフィナーレ”の効果量に影響するコーダシンボルですが、2つと3つで、効果量が1%しか変わりません。ということは、コーダシンボルが2つの状態でも使うことがあるのかなという印象です。

吉田先ほどお話したように、開幕での調整や、たとえば、ボスがいなくなるタイミングと重なるのであれば2つの状態で使ったほうがいいなど、コンテンツやタイムラインによって工夫できるように2つと3つの差は小さくしています。ですが、ギリギリまで調整していくため、リリース時までに効果量が変わる可能性も十分ありますので、その点はご理解ください。

――なるほどです。いまお話いただいた以外にも、さまざまなジョブに調整や追加が行われましたが、吉田さん的にとくに手触りがよかったジョブを教えてください。

吉田特定のジョブについて、これがいい、といったお答えは難しいです(苦笑)。どのジョブも手触りがよくなるよう調整しています。あえて、あげるとすれば……、ヒーラーは“ピュアヒーラー”と“バリアヒーラー”として差別化したことで、より特徴を出しやすくなりました。そのうえで賢者はややテクニカルなバリアヒーラーとして、“いろいろできるヒーラーをやりたい!”というユーザー層向けの調整におさまったと思います。ほとんどインスタントアクションで、バリアを張り、その張ったバリアが綺麗に消化されると、新たな攻撃リソースを得るなど、「新たな感覚を!」という人にはぜひ触ってみてほしいですね。

 もちろんリーパーもよく仕上がったと思います。見た目がカッコよく、たくさんの人に遊んでもらいたかったので、本来はもう少しだけ操作難度を下げたかったのですが……。とはいえ、そこはカッコよさと、練習すればするだけ使いこなせていけるという意味では、良いバランスになったかなと思っています。純粋にこちらも新しい感覚なので楽しいですね。

――新ジョブのお話が出たので、賢者についてお伺いします。賢者は“エウクラシア”というスキルを使うことでさまざまなアクションに変化をもたらしますが、このように“ひとつスキルを挟む”という仕組みを用意したのはなぜでしょうか?

吉田ややテクニカルなバリアヒーラーというコンセプトに合わせて、賢者のやれることを増やすのが目的です。無闇矢鱈にアクションを増やしてもホットバーが破綻してしまうので、同じアクションでも効果が切り替わる、それによってアクション数の純増を防ぐ、そのためにこのような仕様にしています。

『FF14』拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』吉田P/Dインタビュー ジョブ調整、召喚士・モンクの改修、タンク・ヒーラーのバランスについても訊く
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――賢者と学者は同じバリアヒーラーですが、企画段階ではどういう差別化を計画していましたか?

吉田これは学者に限定はせず、ほかのヒーラーも含めたうえでの相違点なのですが、そもそも賢者の開発コンセプトは、悩んだ末にではありますが、“攻防一体”というところからスタートしています。レイドなどの攻略中に、ヒールをしつつより攻撃をしたい、というお声もありますし、そういった方はぜひ賢者に挑戦してもらえればと考えています。ただし、”攻撃することがメインの回復手段”という意図ではありませんので、その点はご注意くださいね。

――実際に賢者でインスタンスダンジョンに挑んだのですが、バトル中はほとんど攻撃に集中できて「ずっと攻撃できるなぁ」と感じました(笑)。

吉田ヒーラーをやり込んでいて、ある程度攻撃もしたいという方には、うれしいジョブなのではないかと思います。

――ちなみに、“アダーガル”が非戦闘状態でも増えていくのは仕様でしょうか?

吉田はい、仕様です。

――たとえば白魔道士の“ヒーリングリリー”など、ほかのジョブのゲージは戦闘中じゃないと増えませんよね……?

吉田ご指摘を受けるとは思っていましたが、それを含め、賢者の特徴になります。開幕からアダーガルをガンガン使っていってもらえればと。

――ここからは、より細かくジョブの話をお伺いします。ナイトの“レクイエスカット”や戦士の“原初の解放”、暗黒騎士の“ブラッドデリリアム”で得られるバフがスタック制に変更されましたが、これはどういった意図があるのでしょうか?

吉田これはタンクだけではなく、ジョブ調整全般にいえることなのですが、これまでは「効果時間中に可能な限りアクションを詰め込まないと損」という意識になっていましたが、スタックするバフにすることで、「効果が有効になる回数」が決められるほうが、使い勝手が良くなるからです。使用タイミングを自分でコントロールできる、という自由度の幅を作ったほうがいいだろうと。大枠の効果時間はありますが、そのなかでスタックを使い切ればロスが発生しないという考えかたですね。

――なるほど。侍の“明鏡止水”や“燕返し”がチャージアクションになったのも、同じ理由でしょうか?

吉田そうです。今回の調整で少なくない数のアクションをチャージ制に切り換えたのは、チャージがあふれない限りは1チャージ確保していてもアクションのリキャストは進んでいるため損をすることはない……つまり、コンテンツのタイムラインに合わせて小ワザを効かせるポテンシャルを生み出すためです。

――特定の攻撃を使うために必要なバフの効果時間が軒並み伸びているのも、それらと同じで使うタイミングを楽に見計らえるようにという考えからでしょうか?

吉田そうです、その通りです。

――チャージアクションといえば移動系アクションも多くがチャージアクションですが、タンクでは戦士の“オンスロート”だけチャージ数が3つになっていますね。意図があるのでしょうか?

吉田機動性を活かして戦士ならではの動きができるようにしています。戦士はもともと暴れん坊的なイメージもあるので、マップを縦横無尽に飛び回ってもいいのではないかなと(笑)。新アクションである“プライマルレンド”も遠距離で使えます。そうなるとトータル4回も移動できるのと同義なので、上手くコンテンツに合わせて豪快に動けるジョブになっていると思います。

『FF14』拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』吉田P/Dインタビュー ジョブ調整、召喚士・モンクの改修、タンク・ヒーラーのバランスについても訊く
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――暴れん坊のイメージにぴったりです(笑)。ヒーラーの新アクションのなかでは、学者の“疾風怒濤の計”がとくに異彩を放っています。被ダメージ軽減とパーティーメンバーにスプリントの効果を付与するという強力な効果を持っていますが、学者に移動速度アップを追加しようと決めた意図を教えてください。

吉田これは先ほどお話ししたインスタンスダンジョンでの「白魔道士との貢献差を埋める」という意図も大きいです。バトル中の移動速度上昇はずっと前から爆弾として温めていたネタでして。賢者という新たなバリアヒーラーが登場することもあり、学者側にもインパクトを、という意味も込めて、ここで投入しようかということになりました。被ダメージ軽減もあり、蛮神戦やレイドなどでダメージを受けながらも、大きく移動をしなければならないといったギミックでの有効性が一番ですね。他にも範囲狩りや、意志疎通した上でのまとめ狩り、みたいなものにも使いやすいと思います。

――ちなみに、レイドなどでは意図しないスプリント効果によってパーティーメンバーが事故を起こす可能性もある気がしています。そのあたりはどうお考えですか?

吉田その懸念は認識していますので、コンテンツとの兼ね合いで使いづらさがあれば、フィードバックをいただけると助かります。この新アクションの使いどころとしては、たとえば8人に確定AoE(範囲攻撃)が出て、散開からの回避を行う場面などを想定しています。これによって、移動速度が速いぶん、散開事故が減る可能性が高くなる。戦闘中に移動速度を上げられるというのはかなりのメリットで、“学者がいるから散開はギリギリまで待っても大丈夫”というケースは出てくると思います。もちろんそれが必須の攻略法にならないようにコンテンツを作っていきますが、ぜひいろいろとお試しいただけると嬉しいです。逆に、細かい操作が必要な場面には、全体攻撃以外の確定ダメージが発生する機会はあまり多くなく、そのあたりを考えて使用するタイミングを調整してください。
 
 拡張パッケージリリース前のプロデューサーレターLIVEでは、お話しする内容はできるだけコンセプトに留め、各ジョブに追加されたアクションの詳細は、メディアの皆さんにレポートしていただく、という方針にしてきました。メディアの皆さんのお仕事を奪っても……というのと、僕が言うことで、どうしても調整中というよりも、確定内容に聞こえてしまうこともあるからです。ただ、今回の学者や遠隔物理DPSは、5.0からの純粋正当進化が多く、コンセプトとしてお知らせすることが少なくなってしまいました。先日のPLLにて、「学者についての吉田の話が短すぎる」と、がっかりされていた方が多く、大変申し訳ありませんでした。学者は元々、フェアリーの挙動に対する不満以外、ベーシックなバリアヒーラーとして安定した性能を持っています。結果的にコンセプトについてお話しすることがなく、この辺り、次の機会ではお話を均等化するために、もう少しアクションに踏み込んで説明する必要があると痛感しました。学者のフェアリーも、更に挙動調整をかけていますし、これまでのコンセプトを踏まえた新たなアクションが実装されています。賢者が派手なぶんだけ控えめには見えますが、純粋パワーアップしていますので、ご安心ください。

『FF14』拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』吉田P/Dインタビュー ジョブ調整、召喚士・モンクの改修、タンク・ヒーラーのバランスについても訊く
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――DPSでいうと、やはり召喚士のメカニズムが大きく変化したことが印象深いです。改めて、今回大きく改修を行った理由を改めて教えてください。

吉田これはパッチ5.0をリリースしたタイミングのプロデューサーレターLIVEでもお話していたことなのですが、『新生エオルゼア』の頃に開発されたもともとの召喚士のメカニズムが、すでに限界を迎えていたのです。新生のときは開発時間があまりにも短く、そのうえで目玉として旧版よりもジョブ数を増やさなくてはいけませんでした。また、クラスシステムがあったので、巴術士から召喚士と学者に分かれるという試みを入れたことで、内部の仕組みがかなり複雑になっておりまして……。

 ペットコントロールに関しても、サーバークライアントのなかでの既存の『FFXIV』のベースシステムだと、スキルローテーションに組み込むには細かい制御が難しいのです。アクションの食い込みやタイミングしだいでペットアクションの使用回数が増減するなどの不安定さが潜在的に存在しており、すでに新アクションを追加する余地がないレベルでギリギリだったのです。そのため、召喚士に関しては『漆黒のヴィランズ』をリリースした段階で「パッチ6.0では大改修を行う」と決めていました。

――そうだったんですね。

吉田あとは、さまざまなところで“DoT(継続ダメージ)士”と呼ばれていたので、これもなんとか挽回させていただきたい、と。ですので、改修の最初のコンセプトは“DoT”をすべて消す、でした(笑)。パッチ6.0の作業に入り始めた段階から召喚士の新しいコンセプトを話し合い、ストレートにみなさんが望んでいるであろう召喚士の姿にすることを目標にして開発を進め、コンテンツのタイムラインに合わせて「3種の蛮神の呼ぶ順番を切り換えて」いく、というおもしろさを突き詰めました。

 じつは開発中に一度、実際に動かせるレベルにまで形が仕上がったのですが、あまり感触が良くありませんでした。「ここはいまからでも作り直さないと」と決断して、エマージェンシーでVFXやプログラムやサウンドなどあらゆるチームの力を借り、バトルシステムのエースたちを総動員していまの形に組み上げました。新ジョブの追加と同じくらい、コストをかけて開発しています。

――かなり力が入っていることがわかります。エギの仕組みが変わったことで、ジョブクエストへの影響はないのでしょうか?

吉田変化があまりにも大きいので、クエストの内容を現在の仕様に合わせて変更しました。すでにクエストを終わらせている方は、“つよくてニューゲーム”で遊んでもらえると変更点も見えるのではないかと……。

――召喚士の“フィジク”を残した理由は、ズバリなぜでしょうか?

吉田特に意識していなかったのですが、リムサ開始クラスに回復手段を持たせたい、という巴術士の流れで今回も残っています。どちらかというと“リザレク”の話ばかりしていました(苦笑)。

――やはり“リザレク”はなくす可能性があったのでしょうか?

吉田当初は「なんとしても消そう」という方針ではあったのですが、開発チーム内でも「今回はまだ残しても良いのでは」という見解と5分5分となり、「最後は吉田判断で!」ということになりました。拡張パッケージをリリースした直後は、どうしてもコンテンツによる相性などにより、2~3%の火力誤差が出てしまうことが多いです。もちろん、出来る限り無くすように、必死に調整してはいます。しかし、もしそれでダメージが我々の想定よりもやや下振れした場合に、「大きく変更されたのに!」「“リザレク”も取られたのに!」と言われるのが怖くて……(笑)。

――さきほどの吟遊詩人の問題と同じで、いる派といらない派の両方がいますからね。

吉田「“リザレク”を使うと、MPがなくなるし、火力も下がるから嫌。蘇生を期待されるくらいなら、最初からないほうがいい」という人もいると思いますが、そういう人は固定パーティーなどの人脈に恵まれている人でもあるのかな、と思うのです。逆に、召喚士といえば、「パーティーにいてくれれば“リザレク”の保証がある」と感じている人も多いと思います。つまり召喚士をパーティーに入れるメリットが、意識の中に存在している、ということです。大きくジョブのメカニクスを変えたぶんだけ、保険も必要だと考えました。ただ、この改修が上手く回るようなら、今後なくす可能性は大いにあると思っていてください。

 あと「黒魔道士に蘇生手段を入れては?」という話題も拝見したことがありますが、開発チームに「一応聞きますけど……」と尋ねられた際に、「黒魔道士には、蘇生に使う“迅速魔”はない」と返しました。すみません。「“三連魔”と“迅速魔”で4人起こせますよ!」と冗談も飛んだのですが、「蘇生手段を持っていても、黒魔道士は蘇生しないだろうなあ」と。破壊の力である黒魔法の使い手ですし……(苦笑)。

――ジョブコンセプト的にも、そういうイメージです(笑)。そんな黒魔道士には、“パラドックス”というおもしろそうなアクションが追加されましたね。

吉田黒魔道士の課題として、アストラルファイアを維持するために、必ず初期魔法の“ファイア”を使わざるを得ないというものがありました。今回はその代わりに新しく追加された“パラドックス”を使うことになります。以前は“ルーシッドドリーム”の回復を織り込むなど、かなり無茶なアクションのローテーションが最適解のひとつとされていました。しかし、その複雑さからアクションローテーションを追うことに夢中になり、もっと小ワザを効かせることで火力が出るであろうシチュエーションに目が向かないという、本末転倒な状況が多々見られるようになったので、そこを解決したかったという意図もあります。今回の“パラドックス”の追加によって、やることは増えましたが、スムーズに回るようになったので、かなりギミックに集中しやすくなったと思います。

――アストラルファイアだけでなく、アンブラルブリザードでも使用することができますが、どちらの場合でも更新のために使っていくのでしょうか?

吉田属性の折り返しの際に強力な魔法が撃てないという仕様が、このシステムを単なる儀式にしてしまっているところがあったので、そのタイミングに“パラドックス”を挟んでいくイメージです。逆に、もうすぐボスがいなくなるタイミングであるなら、“ブリザジャ”を抜く、という方法もあり得ます。また、折り返しのタイミングでやることが増えたぶんだけ、各種Proc(※2)の効果時間を伸ばしたので、ギミック対応のために温存してもいいですし、“トランス”してファイガProcで折り返す使いかたもアリです。今回はそういった小ワザが効くようにしているので、そういうところでプレイヤースキルを競ってほしいです。

※2:Proc:条件を満たすことで、特定のアクションが使用可能になるバフを得ている状態。

『FF14』拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』吉田P/Dインタビュー ジョブ調整、召喚士・モンクの改修、タンク・ヒーラーのバランスについても訊く
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――範囲攻撃魔法の使いかたもわかりやすくなりましたね。

吉田そこもかなり揉めました……。『漆黒のヴィランズ』の時点でほかのジョブは、単体は単体、範囲は範囲、と攻撃アクションのローテーションがまとまっていましたが、今回どのジョブもそれをより「双方向」に切り替えやすくするようにしてあります。攻撃力上昇のバフや、相手への被ダメージ増加を単体/範囲いずれのローテーションでも行き来しやすいように、という意図です。

 ただ、黒魔道士はシステム上複雑になっており、そのネックになっていたのが“フレア”の存在なのですが、じゃあフレアの爽快感をここにきて捨ててしまうのかという問題もありまして。

 改めて範囲攻撃のルーティンを見直したのですが、最初は“ハイファイラ”ではなく“ファイラ”の時点から調整を加えようとしていたのです。ただ、それはそれでわかりにくくなっていたので、「レベル80までのローテーションはいまのままでいいから、そこから先に変化を加えよう」と話をして、いまの形に落ち着きました。改めて見てみると、いままでプレイされている方のほうが、ローテーションに違和感を覚えるかもしれません。逆にいまから黒魔道士を始めようという人は、スムーズに回せる気がします。こうやって振り返ってみると、黒魔道士もなかなかの難産でしたね……。

――召喚士と同じく大きな変化があったモンクについてですが、こちらはいつごろからいまのような形を想定していたのでしょうか?

吉田まず召喚士と違って、『漆黒のヴィランズ』リリース当初は“疾風迅雷”を特性化するという予定がありませんでした。ですが、みなさんからのフィードバックを拝見していたところ、「“疾風迅雷”が切れたときに火力をトップギアまで上げ直すのが大変」というご意見を多くいただきました。火力/速度というギアを上げていくという遊びが現状のゲーム性と噛み合っていないのであれば、それを遊びとして残すのではなく、特性としてレベルが上がれば勝手に速くなるという形にしてしまおうと。ですが、そうなるとほかのジョブと比べて遊びのシステムがひとつ少なくなってしまうため、それに代わる何かを追加しないとジョブとしてのおもしろさが成立しません。そういう経緯もあり、モンクはパッチ6.0の作業に向けて企画を立て始めました。

 当然モンクを改修するにあたり、ほかのジョブと並べてみたときに、“どういう遊びにするのがモンクらしく、かつ独自性のあるおもしろさになるのか”を第一に考えました。手数で押しつつ、その忙しいなかで方向指定を的確に決めていくというのが、いまでもモンクを続けている人たちが楽しんでいるポイントだと思うので、そこは残していくことになりました。それを踏まえたうえで、あえてコンボ2段目の方向指定をなくしたのは、楽にしたいというわけではなく、必殺技という要素を入れたことで、考えることが増えたためです。とくに“踏鳴”を使用するひん度が激増したので、コンボを回していると思考がオーバーヒートしてしまい……(笑)。PLLで「方向指定をなくすなら全部なくしたら?」という旨のコメントもいただきましたが、方向指定を消したくて調整したわけではなく、“あまりに考えることが多すぎてストレスになってしまっていたための落とし所だった”と思ってくださると助かります。

――モンクのチャクラ1~2種で出せる“天宙脚”ですが、チャクラ3種の“爆裂脚”や“鳳凰の舞”、チャクラ1種の“蒼気砲”と比べると使用するメリットが薄いように思えます。これは、チャクラ付与をミスしても必殺技を繰り出せるという救済処置なのでしょうか?

吉田“天宙脚”は救済用のアクションなので、あえて使うものではないです。“チャクラ付与の順番に失敗しても必殺技を繰り出せて、「陰の闘気」か「陽の闘気」のどちらかを付けられるけれどダメージがやや低い”と思っていただければと。必殺技が撃てなくなるのでは火力の低下が著しいので、攻撃技を用意して最低限のカバーはできるように、と。役割という意味では、忍術で言う“ミシディアうさぎ”に近いかもしれません。“天宙脚”の場合、うさぎと違ってダメージは出ます(笑)

『FF14』拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』吉田P/Dインタビュー ジョブ調整、召喚士・モンクの改修、タンク・ヒーラーのバランスについても訊く
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――ジョブというよりバトル関連の質問になってしまいますが、今回のレイドはいつごろ実装されるのでしょうか?

吉田拡張と同時スタートではなく期間を空けてからノーマルを追加して、更に少ししてから零式を開放する流れになります。また、拡張最初の零式なこともあり “零式入門編”なバランスになっているので、シナリオが落ち着いた後で、ゆっくり遊んでいただけたらと思います。

――最後に『暁月のフィナーレ』を心待ちにしている全世界の光の戦士たちへ向けてメッセージをお願いします。

吉田“プレイヤーのみなさんがより快適にジョブを動かし、より楽しくコンテンツに立ち向かってもらう”、このスタンスが我々のすべてです。ジョブ調整のベースは『漆黒のヴィランズ』を引き継いでいるといっても、今回インタビューでお話したように細かい意図があり、多くの調整を加えています。

 当然、『暁月のフィナーレ』リリースに向けて極限まで調整を続けて、各ジョブの特徴を踏まえた上で、火力バランスは横並びになるように作っていく所存です。それでも『暁月のフィナーレ』を実際に触ってみたときに、「あれ、思っていたのと違うな」、「あっちのジョブは盛り上がってるのに、自分たちのジョブはそうでもないな」と感じることはあると思います。もちろん最終的には、みなさんのデータやフィードバックを拝見したうえで、キレイなバランスを目指して調整していきますが、拡張パッケージというのはせっかくのお祭りなので、初動では強い弱いよりも、楽しむことに目を向けていただけると幸いです。

 また、今回は“ハイデリン・ゾディアーク編の完結”が大きなポイントとしてあります。旧『FFXIV』から『FFXIV』を支えてくれたプレイヤーのみなさんには、「こんなネタも拾うのか!」と驚いてもらえるぐらい細部までシナリオを作り込んでいます。完結という言葉から“終わりに向かう”というイメージを抱くかもしれませんが、むしろ“終焉の訪れに向かって歩みを進め、その先まで歩み続けていく”というこの先への期待を高めるようなニュアンスも散りばめてあるので、前向きな気持ちで拡張を迎えていただけると幸いです!

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