バンダイナムコエンターテインメントより、2021年10月14日発売予定のプレイステーション4、PC(Steam)用ソフト『アイドルマスター スターリットシーズン』(以下、『スタマス』)。本作は、『アイドルマスター』(以下、『アイマス』)シリーズのアイドルたちが、ブランドの垣根を超えてユニット“プロジェクトルミナス”を結成し、大型アイドルイベント“スターリットシーズン”に挑む、家庭用ゲーム機シリーズの最新作。

 ファミ通.comでは、9月30日から10月3日まで開催された“東京ゲームショウ2021”の会場にて、『アイドルマスター』総合プロデューサーの坂上陽三氏、本作のプロデューサーを務める久多良木勇人氏にインタビューを実施。発売を間近に控えた心境や作品への想いを聞いた。

※本インタビューは9月30日に実施しました。
※本記事の取材に際しては、写真撮影時以外はマスク着用、座席の間隔の確保など、感染症対策を徹底したうえで実施しています。

『アイドルマスター スターリットシーズン』(PS4)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『アイドルマスター スターリットシーズン スターリットBOX』(PS4)の購入はこちら (Amazon.co.jp)
『スタマス』発売直前インタビュー。坂上陽三氏&久多良木勇人氏が本作や新アイドルに込めた想いを語る。「新たな『アイマス』のスタートとなる作品のひとつ」。【TGS2021】

坂上 陽三 (さかがみ ようぞう)

『アイドルマスター』総合プロデューサー

久多良木 勇人(くたらぎ はやと)

『アイドルマスター スターリットシーズン』プロデューサー

※記事内では、『アイドルマスター シンデレラガールズ』を『シンデレラガールズ』、『アイドルマスター ミリオンライブ!』を『ミリオンライブ!』、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』を『シャイニーカラーズ』と省略して掲載しています。

1本のアニメ作品のような濃密な物語でアイドルの新たな魅力を描く

――発売が2週間後に迫っていますが、現在の心境はいかがですか?

久多良木まずは、本作の開発や宣伝、各種展開に携わっていただいた多くの関係者の方々、そしてなにより、発売を楽しみにお待ちいただいたお客様に、改めて感謝申し上げます。心境としましては、無事マスターアップしましたので、安堵している状態です。

坂上プロデューサーの皆様にはたいへんお待たせしました。『アイマス』が16周年を迎えたタイミングですが、無事に本作をお届けできることを本当にうれしく思っています。

――改めて、本作の魅力や注目してほしいポイントを教えてください。

久多良木いくつもの魅力がありますが、まずはアイドルのビジュアル表現です。すでにプロモーションビデオなどで本作のゲーム映像をご覧いただいた方も多いかとは思いますが、作品を通じて、アイドルたちの情感や躍動感、臨場感を感じていただけるような表現を目指しましたので、ぜひ注目していただければと思います。

坂上あと、本作は『アイマス』の家庭用ゲーム機向けの作品としては、過去最大人数のアイドルたちをプロデュースできるタイトルとなっています。『スタマス』は、1年を通して描かれる物語があり、そこで大人数のアイドルたちをプロデュースしていくゲームとなっていますが、彼女たちひとりひとりが輝けるストーリーもしっかりとご用意しておりますので、個別のアイドルとの交流も楽しんでいただければ幸いです。

――公開されているプレイ映像などを見ていると、『スタマス』では、“スターリットシーズン”と呼ばれる大きな舞台に出場するという大きなテーマがありつつ、ゲーム内の1ヵ月ごとにも単独で完結するエピソードも用意されているようで、まるでアニメのように進行していくイメージを受けました。

久多良木まさにその通りで、本作では、1本のアニメのような、大きな物語が展開されていきます。とくに今回は、“765プロオールスターズ”以外に、『シンデレラガールズ』や『ミリオンライブ!』、『シャイニーカラーズ』のアイドルも出演していますので、彼女たちが輝けるように、アニメのような構成や、各月シーズンごとに各ブランドのアイドルにスポットを当てるようなお話を意識しました。たとえば、5月は新曲があがってこない!といったトラブルに対して『シンデレラガールズ』のメンバーにスポットが当たったり、6月は『シャイニーカラーズ』のメンバーを中心にアイドル番組のドキュメンタリーを自分たちで撮影したりなど、それぞれにスポットが当たるようになっています。

『スタマス』発売直前インタビュー。坂上陽三氏&久多良木勇人氏が本作や新アイドルに込めた想いを語る。「新たな『アイマス』のスタートとなる作品のひとつ」。【TGS2021】

――なるほど。プレイ動画を拝見したところ、コミュのボリュームもすごいなという印象を受けました。

久多良木コミュのボリュームに関しては、『プラチナスターズ』や『ステラステージ』でいただいていた「コミュが少ない」というプロデューサーの皆様からのご意見を何とか反映したいと思った形になります。作中のアイドルは全編フルボイスとなっていますので、台本も膨大な量で、声優さんや音響会社の皆様にご協力いただきながら、1年以上かけて収録を行いました。

――本作では、各事務所のアイドルたちが垣根を超えての交流が描かれるのもポイントだと思いますが、これまでにないアイドルどうしの会話を考えるのは、苦労されたのではないですか?

久多良木とても苦労しました(笑)。というのも、『アイマス』にはさまざまなブランドがありますが、本作の企画が立ち上がった段階では、異なるブランドのアイドルたちが交流するようなコンテンツはほとんどなく、アイドルたちがほかのブランドの子たちとどのような関係性を築いているか、という資料も非常に少なかったので、参考例がほぼありませんでした。

 ですので、まずは各アイドルの呼称表を開発資料として作成することにしたのですが、アイドルたちのイメージや関係性を崩すことのないよう資料を作るのには現場の開発メンバーの皆さんといっしょにとても苦戦しましたし、時間もかかりました。関係各所様にご確認とご意見をいただけたおかげで、なんとか無事資料が完成し、物語やコミュの台本の制作作業へと移ることができましたが、プロジェクトの始まりから、「これはたいへんなことになるぞ」という思いをしたことを覚えてします。

――たとえば、天海春香のことを“春香”と呼ぶアイドルもいれば、“春香さん”、“春香ちゃん”と呼ぶ子もいますし、アイドルのイメージを損なわないように整合性のある呼称表を作成するのは、本当にたいへんそうです。

久多良木アイドルの中には、誰に対しても呼び捨てにする“響“みたいな子や、亜美真美のように独特な呼称を使う子もいます。収録時やデバッグ時にも何度も修正を重ねながらようやく形になったという苦労はありましたが、彼女たちが新しく交流するアイドルのことをどのように呼ぶのか、ということについては注目していただきたい点でもありますね。

――確かに亜美真美がどういう呼び名を付けているのかは楽しみです。コミュやメインストーリーのボリュームはもちろんですが、ゲームシステム的にも4月から12月までを1日ずつ進行していくということで、ゲームとしての密度もとても高そうだと感じているのですが、エンディングまでのプレイ時間はどの程度を想定されていますか?

久多良木本編クリアーまではボイスをすべて聞きながらだと約70時間で、やり込み要素を含めると100時間以上というところですね。もちろんアイドルたちはフルボイスなので、どの程度ボイスを聞くのか、本編以外のコミュなどをどこまで見るかにもよっても変わると思いますので、あくまで平均という感じです。正直、いまの時代にそぐっているのかと聞かれると何とも言えないですが、それだけ想いは詰め込みました。

坂上そこは久多良木たち開発メンバーがこだわった部分で、29人のアイドルたちそれぞれの魅力を、しっかりとプロデューサーの皆様にお伝えしようとすると、結果的にはものすごいボリュームになりました。

――それだけスタッフやキャストの皆さんの想いが詰まっているということですね。ちなみにゲームの細かい仕様の部分になりますが、月末に目標ファン人数に届いていない場合や、月末ステージに失敗した場合は、ゲームオーバーになり、少し手前の週からプロデュース活動を再スタートするとご説明されていましたよね。ただ、再スタートしたとしても、少し手前の週ではまた目標のファン人数に届かなかったり、月末ステージをクリアーできなかったりするのではないかという疑問があるのですが、こちらについてはいかがでしょうか?

久多良木月末ライブをクリアーできない、ということがあった方にも救済策を用意していますのでご安心ください。まずゲームオーバー時には少し前に戻ることになるのですが、期間を1週間前から最大月頭まで選択できます。その際には歌唱メンバーの育成しなおしが重要となりますが、その助けとなるよう少しゲームが進んでからはフリータイムでの行動回数が増やせるパワードリンクを1つ入手できます。

 また月末ステージの傾向に合わせた消費アイテムをゲーム内のお店で購入することでアイドルたちをサポートすることができます。絆レベルを上げて、歌唱アイドルのスキル開放を行うことで月末ステージに備えることがポイントなので、少し攻略チックなお話になりましたが、うまくいかないときは意識してプレイしてみていただきたいです。

『スタマス』発売直前インタビュー。坂上陽三氏&久多良木勇人氏が本作や新アイドルに込めた想いを語る。「新たな『アイマス』のスタートとなる作品のひとつ」。【TGS2021】

――安心しました。『スタマス』では、これまでのブランドのアイドルのほか、奥空心白と亜夜のふたりの新アイドルが登場しますが、彼女たちを本作に登場させた意図を教えてください。

久多良木彼女たちについては、まっさらな状態で成長していく子をふたり登場させたい、という意図がありました。そして、せっかく同じ作品に新アイドルをふたり登場させるなら、お互いの対比はしっかり描こうということをすごく意識しています。

 その結果、奥空心白は、大女優であるお母さんから英才教育を受けた“天才”で、“プロジェクトルミナス”の一員として、亜夜は努力型の“秀才”な女の子という設定で、ライバルユニット“ディアマント”のメンバーとして加わる運びとなりました。

 ふたりのパーソナルな部分についてですが、亜夜には玲音と詩花がいますので、彼女たちの個性に被らないよう、少し尖っているような、ツンツンした女の子として個性付けを行いました。心白については、“プロジェクトルミナス”には彼女のほかに28人のアイドルがいますので、彼女たちの魅力に埋もれない個性として、透明感を感じてもらえるような女の子を目指しました。

――なるほど。亜夜については、見た目と概ねイメージが一致したのですが、心白は、先日、公開されたストーリーPVを見て、発表された当初感じていた印象から少し変わりました。

久多良木じつは心白は、少し影を抱えている一面もあります。一見大人しく冷静で、天才肌なところがありますが、どこか完璧ではない……。そういったところが彼女の課題としてありますので、物語の中で彼女がどのように成長していくか、プロデューサーの皆様にぜひ見届けてほしいポイントとなっています。

『スタマス』発売直前インタビュー。坂上陽三氏&久多良木勇人氏が本作や新アイドルに込めた想いを語る。「新たな『アイマス』のスタートとなる作品のひとつ」。【TGS2021】
『スタマス』発売直前インタビュー。坂上陽三氏&久多良木勇人氏が本作や新アイドルに込めた想いを語る。「新たな『アイマス』のスタートとなる作品のひとつ」。【TGS2021】

――本作では、これまでのシリーズ作品では個別に設定できていたアクセサリーがなくなったり、衣装も一新されていますが、過去作から大きく変えた意図を聞かせてください。

久多良木本作で衣装を一新したのには、『プラチナスターズ』や『ステラステージ』とは違うゲーム体験を味わっていただきたいという想いと、これまでの作品と開発体制が大きく変わった点が理由としてあります。ですので、プロデューサーの皆様には、少しでも新鮮な気持ちでプレイしていただけたらうれしいです。

――ちなみに、おふたりの中でお気に入りの衣装はありますか?

久多良木そうですね……。ギリシャをイメージした、白いワンピースのような“原初の乙女”は印象的に感じています。本作では、Unreal Engine を採用しているのですが、このゲームエンジンを用いた新しいビジュアル表現として何ができるのかと考えたときに、「衣装の透け感を表現してみよう!」ということになり、そこで生まれたのがこの衣装です。また、ゲーム内に実装されている衣装の中で、いちばん最初に作られたものということもあり、思い入れの深い衣装でもありますね。

――坂上さんはいかがですか?

坂上僕は、限定版のパッケージや販促用のポスターでみんなが着ている衣装ですね。各ブランドからアイドルが集まった“プロジェクトルミナス”が、どのようなグループなのかを象徴するような衣装だと感じていて、とても気に入っています。

『スタマス』発売直前インタビュー。坂上陽三氏&久多良木勇人氏が本作や新アイドルに込めた想いを語る。「新たな『アイマス』のスタートとなる作品のひとつ」。【TGS2021】
写真の左(2と書かれている近く)にあるのが、坂上氏のお気に入りの衣装を着たアイドルたち。

――本作では、『スタマス』用の新曲として4曲発表されていますが、それぞれのコンセプトなど改めて教えていただけますか?

久多良木春のシーズンに登場する『SESSION!』は、これから“プロジェクトルミナス”が走り出していくこともあり、アニメのオープニングのような王道感や、スタートを切っていくような開放感のある、アップテンポな楽曲として制作していただきました。

 『夏のBang!!』は、夏のシーズンに登場する楽曲ですので、“弾けるアイドルの個性”をテーマに、とにかく明るく、元気いっぱいな印象の楽曲に仕上がっています。
 
 秋のシーズンに登場する『アイシテの呪縛~Je vous aime~』は、ハロウィンの時期ということもあり、怪しげでクールで、かつミステリアスな印象の曲となっています。

 そして、最後の『GR@TITUDE』は、アイドルたちの1年の活動を通しての出会いや別れをテーマに制作していただきました。こちらは本作のテーマソングとして想定しているのですが、曲調も感動する素晴らしい楽曲になっているなと感じています。あとは全員が歌う曲ですので、ゲームの最後に少し泣けてしまうような素晴しい曲がご制作いただいたなと思います。

『スタマス』発売直前インタビュー。坂上陽三氏&久多良木勇人氏が本作や新アイドルに込めた想いを語る。「新たな『アイマス』のスタートとなる作品のひとつ」。【TGS2021】

――ちなみにディアマントについては、『オーバーマスター』のPVが公開されていますが、こちらの新曲は期待してもいいでしょうか?

久多良木それはですね……どうでしょうね(笑)。

――(笑)。本作のDLCについてはいかがでしょうか?

久多良木DLCについては、これまでの作品にもあった、アイドルたちからメールが届くDLCを発売日に配信予定です。ほかにも、本作ではゲーム内のライブを自由に演出できる“STAGE FOR YOU!”でフォトモードという新機能を実装しているのですが、そこでよりアイドルたちを魅力的に見せられるような舞台装置セットの配信を準備しています。あと、社内コラボとして、『テイルズ オブ アライズ』や『エースコンバット』シリーズの衣装も予定しています。これら以外にも、プロデューサーの皆様に喜んでいただけるようなDLCを準備していますので、ご期待ください!

――では、最後にプロデューサーの皆さんにメッセージをお願いします。

久多良木本作は、これまで『アイマス』シリーズを楽しんで応援してくださっていた方々はもちろん、初めて『アイマス』に触れる方にも楽しんでいただけるように制作しました。『スタマス』を通じてたくさんのアイドルたちに触れて、彼女たちの新たな魅力を感じていただけたらうれしいです。

坂上『スタマス』は、これまでの『アイマス』の活動の節目となるタイトルであると考えています。また、つぎの10年、20年と『アイマス』を展開していく上でのスタートを切る作品のひとつだとも感じていますし、手にとって遊んでいただけるとそのこと感じていただけると思いますので、ぜひ本作を遊んでいただけるとうれしいです。『スタマス』を、よろしくお願いします!

『スタマス』発売直前インタビュー。坂上陽三氏&久多良木勇人氏が本作や新アイドルに込めた想いを語る。「新たな『アイマス』のスタートとなる作品のひとつ」。【TGS2021】

[10月10日15時30分修正]
本文中の一部表記を修正しました。