ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)より2021年8月20日に発売される、『Ghost of Tsushima Director's Cut』(『ゴースト・オブ・ツシマ ディレクターズカット』、以下ディレクターズカット版と呼称)。

 本作は『ゴースト・オブ・ツシマ』に多彩な追加要素を加えた、いわゆる完全版とも言えるタイトル。すでに『ゴースト・オブ・ツシマ』を遊んでいる人も、多彩なアップグレードが用意されており、さながら追加ダウンロードコンテンツを遊ぶ感覚で、本作を楽しめる。

 本記事ではディレクターズカット版を遊んでみてのプレイレビューをお届け。プレイはプレイステーション5版(PS5)でおこなった。前半にPS5版ならではの体験を解説しつつ、後半に新シナリオ“壹岐之譚”のプレイフィールを紹介していこう。

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PS5版で遊んでみた感想

 PS5版は、PS5の多彩な機能に対応しているのが特徴だ。これらは、プレイステーション4版では残念ながら体験できない要素ではあるが、あくまで演出面がメインのもの。「PS5ならより豪華な仕様でプレイできる」という趣旨なので、PS4版でもディレクターズカット版の主たる魅力は十分に楽しめるだろう。

セーブデータについて

 PS5版の感想に入る前に、まず気になるセーブデータの引き継ぎについて説明しておこう。といっても難しいことはなく、PS5本体に、PS4版のセーブデータをあらかじめ移行しておけば、タイトル画面から即座に引き継ぎ可能だ。マルチプレイモード“冥人奇譚”のセーブデータも同時に引き継ぎできる。引き継いで“続ける”を選んだ際に、無印版ですでに解除済みのトロフィーも解除された(進行・収集系などを除き一部は解除されなかったが)。

 オプション設定についてはセーブが引き継がれないので、そこはご注意を。矢の表示や字幕表示などがオフになっているので、オンにしたい人は改めて設定し直そう。

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起動の早さに驚き

 本作は初回起動時のみSIEと開発を手掛けたサッカーパンチ・プロダクションズのロゴが表示されたが、その後アプリを終了してから起動してみたところ、ロゴ画面ナシでいきなりタイトルメニューが表示された。

 この間、わずか2~3秒ほどの速さ。PS5タイトルは概ね起動が早いのが特徴だが、ロゴ表示なども取っ払ってくれているのが、かなりユーザーフレンドリーだと感じた。ほとんどのプレイヤーはレストモードを使うと思われるのでほぼほぼゲームを再起動することはないと思うが、ほかのゲームを途中で遊びたくなっても、つぎの起動が早いのはとてもうれしいところ。

ロードが早すぎてロード画面なし!?

 『ゴースト・オブ・ツシマ』といえば、ロード時間の短さも話題を集めたタイトル。近くの場所へのファストトラベルならば、短い数秒のロード画面を挟んで、瞬時にワープしてくれた。

 PS5はどうなるんだろう? と思っていたら、これがまさかのロード画面なしの超高速ロード! しかも、これまでと違い、どこからどこへファストトラベルしても、約1秒くらいのロードで済むので、探索や移動がよりサクサクできるようになった。

 ロード画面ではTIPS集が見れたので便利は便利な要素だったのが、やはりロードが早いというだけでプレイはかなり快適。なお、オプション設定では、デフォルトが、“ロード画面オフ”の設定になっている。これをオンにすれば従来通りのTIPS集を見ることが可能だ(TIPS画面は×ボタンで閉じる仕様)。

リップシンクは……どうだろう?

 これまでのカットシーンでは、リップシンク(セリフを放つ唇の動き)が英語版に合わせたものだったが、PS5版では日本語音声には日本語用リップシンクが採用されている。これにより、吹き替え映画のような感覚ではなく、より日本の世界観に浸れるようになったというわけ。

 実際に見てみたところ……。うーん、たしかに日本語のリップシンクっぽいけれども、すごく丁寧にセリフに対してリップシンクしているようには見えないので、正直英語版リップシンクと大差ないかな、というのが正直な印象だった。

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DualSenseの機能について

 PS5専用コントローラー“DualSense(デュアルセンス)”といえば、細かな振動やコントローラーから発する音で、新たな感触を楽しめる“ハプティックフィードバック”と、L2R2ボタンに重みが付く“アダプティブトリガー”が特徴だ。

 ハプティックフィードバックは、本作の多方面で活用されている。たとえばバトル、移動、マップ画面などでも小さな振動がたくさん。とくにバトルでは刀と刀がぶつかり合う鍔迫り合いがより激しく感じられたり、敵に攻撃を弾かれた場合などインパクトの強いシーンでは、とくに機能しているように感じた。

 また、馬の移動などでも足に合わせて、細かくコントローラーが振動してくれる。手の中で“パカラッパカラッ”と小気味良く震える感覚が、なんとも気持ちよかった。導きの風を起こすと、コントローラーからも風の音が聞こえてきたりする。

 アダプティブトリガーは弓矢や鉤縄に使用されている。弓矢を構えるL2は重くならず、撃つときにR2ボタンにほんの少しだけ跳ね返りがあるような感じ。そのため、薄味のアダプティブトリガー採用となっている。おそらく、アクション重視の本作では、弓矢の引き絞るような重みは必要ないという判断なのではないだろうか。

 そのぶん鉤縄はしっかりとゲームプレイの印象とともに、その重みが反映されている。これまで鉤縄は、おもに高所に登るか、ぶら下がって飛ぶために使っていた。壹岐之譚で体験できる新たなアクションに、“鉤縄で板などを引っ張って、道を切り拓く”というものがある。このときにはL2ボタンがググッと重くなり、こじ開けている感がバリバリに強くなる。

 とはいえそれでも邪魔だと感じる人は、オプションでアダプティブトリガーに関してはオフにしてしまうこともできる。好みに合わせて利用するといいだろう。

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何かに鉤縄をひっかけて……
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バコンッと引っ張る。これが重々しくてキモチイイ
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ちなみに新ロックオン機能もあるのでお試しあれ。

3Dオーディオがオススメ!

 今回のプレイは、PS5の3Dオーディオ用にチューニングされた公式ヘッドフォン“PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット”を使用して体験した。結論から言うと、3Dオーディオで体験するのがいちばんオススメ。

 3Dオーディオは自身の360度を、多方面のスピーカーが囲っているようなイメージ。そのため、真上や真下などもそこから音が聞こえるほか、あらゆる音情報が正確な場所から聞こえてくるのだ。

 馬で走れば足音は下から聞こえ、木々の揺れる音は真上から聞こえてくるなど、臨場感バツグン。屋内で敵を探していると蒙古兵の声が上から聞こえてきたり、敵弓兵の「ドーショー!」と矢を放つ掛け声の位置で、矢が避けられたりもした。つまり、3Dオーディオが攻略にも役立つわけ。

 ただ、ヘッドセットを着用していると、コントローラから発せられる音が聞こえなくなるのが、一応難点といえば難点だ(そもそもオプションでヘッドフォン設定にすると強制オフになる)。

グラフィックはちょっと綺麗に

 もとが美麗なグラフィックだったこともあり、PS4版との差はほとんど感じられない。ただやはり、ジャギーなどが目立つ場所はほとんどないし、PS5版であるという思い込みかもしれないが「お、綺麗かも」と思える程度には、綺麗になっている印象。個人的な印象としては、オリジナル版よりコントラストが少し強めな感じがした。設定でコントラスト・明るさ含めて調節可能なので、そこは自分のモニターに合った設定で遊ぼう。

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悪夢が襲う“壹岐之譚”

 さて、ディレクターズカット版の大きな目玉となっているのが、追加シナリオ“壹岐之譚”だ。対馬島の隣にある壹岐島が舞台となっており、本編とは異なる新たな戦いが描かれる。

 壹岐之譚は厳島をクリアー、つまり本編での“序之段”クリアー後に、豊玉で壱岐に渡るミッションが発生。その流れで、壱岐島に行けるようになる。なお、1度行くと、しばらく対馬島に戻れないので、行くときは覚悟を決めていこう。とくにこれから本編を始める人、現在進行中の人は要注意。

 なお、ここからは“壹岐之譚”に関するネタバレが含まれる内容。序盤のあらすじと、どんな体験が待っているのか書いてあるので、新鮮な気持ちで遊びたい、あらすじすら知りたくない人はご注意を。

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オオタカ、そして罪人と海賊

 謎の毒によって苦しんでいる民を見た仁。そこを調査していると、コトゥン・ハーンの軍勢ではない、別の蒙古兵が仁を襲う。尋問すると、壱岐の“オオタカ”が仁を待っているのだという。壱岐は、かつて幼少期の仁が、父の討ち死にする場を見た場所でもある。

 謎のオオタカ軍を討つべく壱岐へ渡った仁。しかし船が大嵐に巻き込まれ、愛馬とともに転覆。なんとか壱岐に辿り着いた仁だが、愛馬とはぐれてしまう。そんな最中、重要拠点である境井砦に向かった仁だったが、仁は蒙古兵に捕らえられてしまう。

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 捕らえられた仁は、ボスであるオオタカと出会う。そして、オオタカは“霊薬”と呼称する謎の液体を仁に飲ませたのだった。それこそが、民を苦しめているオオタカの謎の毒だった。なんとか開放されるも、仁は毒を飲んでから謎の幻覚が見えるようになってしまう。

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 壱岐は罪人を島流しする場所であったり、海賊もいたりと、治安は悪い。幻覚に苦しむ仁だったが、壱岐の浪人“・蔵(てんぞう)”、女海賊“ふか”など、素行の悪い連中とも手を組み、打倒オオタカに挑むのだった。

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本編の進行具合でセリフなどが変わる

 壹岐之譚は“序之段”クリアー後から遊べるので、一部セリフなどが大きく変わる。たとえば分かりやすいところだと、本編でコトゥン・ハーンを撃破しているか否かで、展開もやや違うというわけ。また、キャラクターの生死や事件についてなどもセリフに関わるので、遊び方によっては何周もできそうなコンテンツとなっている(ちなみに、今回はいろいろ全部撃破後のデータから始めている)。

新たな敵兵種が満載

 壱岐では基本的にはこれまで通りの蒙古兵が登場するが、大きな要素として“呪師”が登場。呪師は蒙古兵のサポート役で、謎の呪文を唱えて蒙古兵を強化する。強化された蒙古兵は大半の攻撃を一撃で弾いてきたりと、かなり厄介だ。本作ではまず弓兵を倒すことがセオリーだったが、それよりも先に呪師を倒すというのがセオリーになった。呪師自体はさほど強くはない(一応槍兵なので厄介っちゃ厄介)。

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 呪師のほかにも新たな敵兵は存在し、とくに印象的なのが、複数の武具を持つ敵兵。たとえばこれまでなら、盾兵には水の型、槍兵には風の型、と型を使い分ければ敵兵種を見るだけで十分に戦えた。しかし複数の武器を持つ敵は、仁の型に合わせて武器を変更してきたりするのだ。

 呪師も倒さなくちゃいけない、弓兵も倒さなくてはならない、かつ武器を複数使い分けてくるのでそれに対応しなくてはならない、と壱岐での戦いはかなり大変だ。そのため、難度は本編よりもかなり高いと感じた(本編クリアー後なので、そういう難度なのかもしれないが)。

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ちょっと分かりにくいが、真ん中の兵士が双剣兵なのに、背中に盾を持っていて、切り替えてくることがあったりする。

弓の修練

 新たな要素として、弓の修練が加わった。これは的当てミニゲームで、達成すれば何かしらのアイテムが貰えるというもの。タイムアタックゆえにかなりの高難度を誇り、装備も重要になってくるやり込み要素のひとつ。
 なお、弓矢を的に当てれば周囲の海賊たちが「おお~!」と言うのだが、外せば「は~ぁ…」とため息(笑)。この演出にはつい笑ってしまった。

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馬の技が登場!

 壱岐での冒頭にはぐれてしまった愛馬は、生き残るために開眼したのだろうか、再会したときには、蒙古を体当たりで吹き飛ばせるようになっている。走っている最中にL1を押すと、気力を消費してタックルができるようになったのだ。

 タックルすると敵を崩した状態にできるので、そのまま追撃などで攻撃することも可能だ。とはいえ、どちらかというと敵をやりすごす際に使う要素かも。なお、突進を覚えると、冥人の技に馬の技が追加される。

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敵に突進すれば追われる心配がないので逃げに使いやすい

モフモフ祭りな霊地!

 さらなる遊びのひとつとして、“霊地”が登場。ここでは笛を吹くミニゲームが始まり、サル、シカ、ネコといった動物たちと仲良くできる。また、特別なアイテムも手に入る。

 笛を吹くミニゲームは、コントローラーを傾けてラインからはみ出さないようにするコースター的なゲーム。終われば動物たちがなついてくれて、さらに撫でることも可能だ。動物モフモフ祭り開催待ったナシ!

 貰える護符は“弓矢が3本同時に放てる”など、トリッキーかつ強力な能力を持っていて、さらにほかの霊地を訪ねることで強化もできる。

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演奏では、仁の母に関する思い出も語られる
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幻覚演出は少しウザい

 壹岐之譚の進行中には、毒の影響下にある仁に、“幻覚のオオタカがささやいてくる”という要素があるのだが、これが探索中だろうと戦闘中だろうとあらゆる場面でささやいてきて、仁がちょっと行動不能になったりならなかったりする。

 この演出がちょこちょこ多く、ホラー的な要素としてひと役買ってはいるのだが、ちょっと多すぎてやりたいことが中断されたりと、やや邪魔に感じるのが正直なところ。ウザすぎてさっさとオオタカを倒したくなる……という意味では燃えるのだが(笑)。

 ちなみに探索要素のひとつにもなっており、死体などを発見することで、それに付随したトラウマのようなものを思い出すような幻覚を見ることもある。“志村などの幻覚を見る”などの演出もあり、そういった部分は仁を深堀りしてくれるので概ね楽しめた。

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志村の幻覚などを見ることも。いきなり探索中に現れることが多い

壱岐での戦いに挑むべし!

 このほかにも新装備などが多数散らばっているほか、サブクエストも豊富。壱岐専用の伝承もアリ。また、収集品も“境井家の旗”や、新たな“文と書状”もある。和歌を詠む場所も新たに用意されていたりと、追加要素は満載だ。

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新要素の探索用のスキルなどもある
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和歌もまた楽しめる!
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伝承のイラストはいつも以上にカッコイイ

 プレイフィールとしては、本当に本編の1章ぶんをまるっと遊んでいるような感覚。対馬のエリアひとつと比べると決して広大とは言えないが、そのぶん高低差などでボリュームがあるというような印象だ。また、“壱岐に来たのがいつの仁なのか”によって、細かくセリフ回しが変わるというのも本当に芸が細かい。

 ストーリーはネタバレになるため深くは説明しないが、壱岐の人たちは侍に対するリスペクトがまるでないので、仁とはくだけた感じで会話してくれる。そのため、これまでにない仁の一面も見られたりと、会話も見ていて楽しかった。すでに遊んでいる人も、これから遊ぶ人も、ぜひディレクターズカット版を楽しもう。