2021年7月29日にスクウェア・エニックスから発売された“ファイナルファンタジー ピクセルリマスター”シリーズ(配信プラットフォームは、スマートフォン(iOS/Android)とPC(Steam))の中から『ファイナルファンタジーIII』のプレイレビューをお届けする。なお、今回プレイしたのはSteam版。

 “ピクセルリマスター”シリーズは、キャッチコピーに“究極の2Dリマスター版”とあるように、オリジナル版と同様にドットのグラフィックで現代の解像度(1920×1080のフルHD)にリマスターしつつ、ゲームバランスやユーザーインターフェース(UI)などを遊びやすく調整したもの。

“FF ピクセルリマスター”版『FF3』レビュー。原作のイメージを活かした新生ドット絵と各種調整で、遊びやすく新鮮な気持ちで楽しめる!

 第1作目となる『FF』(FF1)から『FFVI』(FF6)までの発売が発表されているが、まず第1弾として、2021年7月29日に『FF』、『FFII』(FF2)、『FFIII』(FF3)が発売となる。

 今回レビューをお届けする『FFIII』は1990年にファミコンで発売。その後、2006年に3Dによるフルリメイク版が発売され、以降はミニファミコンなどでファミコン版が遊べたほか、PSPやスマホで3D版が発売されている状況だった。

“FF ピクセルリマスター”版『FF3』レビュー。原作のイメージを活かした新生ドット絵と各種調整で、遊びやすく新鮮な気持ちで楽しめる!

 なお、ほかの初代『FF』から『FFVI』までは、ゲームボーイアドバンスなどでドット絵のリメイク版が発売されていたのだが、『FFIII』だけドット絵のリメイク版はなし。じつは、ワンダースワンカラーでドット絵のリメイク版の発売が予定されていたものの、開発中止となり、幻となっていた経緯がある。

 そんな状況だけに、『FFIII』のドット絵リメイク版は、一部のファンからは待望の作品となっていたわけだ。もちろん筆者も、その一部のファンのひとりだったりする。

『FFIII』の特徴

 前置きが長くなったが、『FFIII』の特徴から紹介していこう。シリーズ初の召喚獣の登場、パーティとは別のNPCを引き連れての行動など、いろいろと特徴はあるのだが、『FFIII』最大の特徴は、シリーズで初めて採用された“ジョブチェンジ”だ。初期ジョブの“たまねぎ剣士”からおなじみのものまで全部で22種類があり、ストーリーの進行に応じてジョブの種類が増えていく。

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 また『FFIII』では、ジョブチェンジのシステムを活かすためか、ときに尖った編成が推奨される場面があるのも特徴のひとつ。通常ならば、戦士やモンクなどの近距離攻撃がふたり、白魔道師や黒魔道師などの魔法系がふたりという編成になるが、小人にならないと進めない洞窟では直接攻撃がまったく効かなくなるために全員を魔道師にしたり、特定の敵では全員が竜騎士になってジャンプのアビリティをくり出し画面内に誰もいなくなったりする。自由にジョブを選びつつも、場面に応じた最適なパーティを考えるのも本作の醍醐味と言えるだろう。

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ミニマムで全員小さく。トードでカエルになる場面もあります。
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竜騎士4人でおなじみのガルーダ戦。竜騎士の見た目については後述。

 ちなみに、オリジナル版ではジョブチェンジの際に“CP(キャパシティポイント)”というポイントが必要だったのだが、今回のピクセルリマスター版ではCPを撤廃。いつでも自由にジョブチェンジができるようになっている。筆者は、ダンジョンでカギのかかった扉の前に立ってはシーフにジョブチェンジをし、シーフの特性でカギを開けてすぐに元のジョブに戻すということをしていた。いま考えると、そのダンジョン内ではシーフのままでいればよかったのに。

ピクセルリマスター版で変わった要素

 ここからは、ピクセルリマスター版で変わった要素をピックアップして紹介していこう。

グラフィック

 言わずもがなというものだが、グラフィックが高精細なドット絵になった。高精細になったとはいえ、ドット絵の雰囲気はオリジナル版を踏襲しており、変わった点と言えば、色数が多彩になったところだろう。

“FF ピクセルリマスター”版『FF3』レビュー。原作のイメージを活かした新生ドット絵と各種調整で、遊びやすく新鮮な気持ちで楽しめる!
“FF ピクセルリマスター”版『FF3』レビュー。原作のイメージを活かした新生ドット絵と各種調整で、遊びやすく新鮮な気持ちで楽しめる!
ファミコン版にはなかった、オープニングの演出が加わった。

 とくにジョブのグラフィックや、NPC、モンスターなどの見た目は非常にカッコよく、かつ、きれいに生まれ変わっている。なかには、オリジナル版のドットの配色がよかったという人もいるかもしれないが、個人的にはまったく違和感なく、新たなジョブやNPCを見るたびにワクワクしたものだ。

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 違和感がない要因のひとつに、NPCで新たに配色されたドットは、イメージイラストやキャラクターデザインを担当した天野喜孝氏のイラストに準拠したものになっているということがあるだろう。たとえば、NPCのデッシュはオリジナル版では全身が赤一色だったのだが、ピクセルリマスター版では下記のようにイラストに近い配色になっている。筆者は、ファミコン版当時に『FFIII』の攻略本(基礎知識編など複数があった)を熟読していたこともあり、天野喜孝氏のイラストの印象が強く、それを再現したドットはとてもうれしいポイントだった。

“FF ピクセルリマスター”版『FF3』レビュー。原作のイメージを活かした新生ドット絵と各種調整で、遊びやすく新鮮な気持ちで楽しめる!
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ギャラリーモードで天野喜孝氏のイラストも見られる。採用されなかった秘蔵イラストも収録されています。

 ちなみに、唯一イメージと違って驚いたのは竜騎士。オリジナル版は全身金色だったのだが、以降のシリーズとイメージを統一したのか、全身が暗いグレーのような姿で、中二心をくすぐるデザインになっている。

サウンド

 グラフィックのリファインに合わせ、サウンドもアレンジされたものになっている。アレンジ版は、原曲の作曲家である植松伸夫氏の監修。これまでにも『ディシディア FF』や『チョコボの不思議なダンジョン』シリーズなどで、たびたびアレンジ版が世の中に出ているため、グラフィックほど「変わった!」という印象は強くないのだが、原曲のイメージを活かしたアレンジで、高精細になったドットにふさわしいもの。個人的には、何度聴いても「クリスタルタワー」がカッコよすぎて震える。

“FF ピクセルリマスター”版『FF3』レビュー。原作のイメージを活かした新生ドット絵と各種調整で、遊びやすく新鮮な気持ちで楽しめる!
サウンドプレイヤーモードで、曲が聴き放題。

ゲームバランス

 31年ぶりの復活に合わせゲームバランスも調整された。わかりやすい調整で言うと、一部ジョブの中に新たなアビリティが加わったりしている。たとえば空手家には、新たに“けり”が追加(『FFIV』(FF4)のヤンが使ったような全体攻撃)され、モンクの上位版として、さらなる活躍をするようになった。

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 また強化だけでなく、バランス調整のために下方修正されたものもある。たとえば賢者だ。『FFIII』と言えば、ラストのパーティは忍者、忍者、賢者、賢者というのが鉄板だったが、一方で、魔人(黒魔道師の上位版)や導師(白魔道師の上位版)の出番が限られたものになっていた。

 今回の賢者は、オリジナル版と同じく黒魔法、白魔法、召喚魔法が使えるものの、上位レベルのMP(『FFIII』のMPは、魔法のレベルごとに使用回数が決まっている“回数制”)は、魔人や導師に劣るものになっている。DS版『FFIII』でも同じような調整が行われていたのだが、それに近い調整だろう。そのため、筆者は終盤のパーティは忍者、忍者、賢者、導師で戦った。

“FF ピクセルリマスター”版『FF3』レビュー。原作のイメージを活かした新生ドット絵と各種調整で、遊びやすく新鮮な気持ちで楽しめる!
それでもやっぱり強い忍者と賢者。

 あとは、モンスターの行動パターンなども変わったように思うのだが、オリジナル版と敵の行動を比較したわけではないので、あくまで感覚値。当時より理不尽な攻撃が減ったと感じる部分があるが、それでも敵は強いし、油断するとすぐに戦闘不能になり、下手すると全滅するあたりは、最近のゲームよりシビアなところだろう。ただし、本作では直前のマップチェンジの場面でオートセーブがされているため、突発的な全滅で「ああああ、セーブし忘れた! 数時間のプレイがムダに……」ということはないのでご安心を。

その他の変更点

 ギャラリー機能やサウンドプレイヤーといった“ピクセルリマスター”シリーズで新たに追加された要素のほか、プレイしてわかった追加点としては、フィールドでのダッシュ機能の追加とマップ機能、バトルのオート機能の追加だ。

 ダッシュ機能は、街やダンジョンなどでボタンを押しながら移動すると早く移動できるというおなじみのもの。これがあるだけで移動が大きく変わるので快適。

 マップ機能はワールドマップに加え、街、ダンジョンなどでミニマップが表示されるようになったもの(ミニマップは拡大可能)。ワールドマップでは、どの街に何のお店があるか、ダンジョンで宝箱をどれだけ取り逃しているのかがわかるのが便利。また、街やダンジョンにある隠し通路に入ると、通路の道筋が見えるようになったため、暗い通路で壁にゴンゴン当たりながら道を手探りで進む必要がなくなった。これはプレイ時間の短縮に非常に役立つ。

“FF ピクセルリマスター”版『FF3』レビュー。原作のイメージを活かした新生ドット絵と各種調整で、遊びやすく新鮮な気持ちで楽しめる!
マップはダンジョン内でとくに重宝する。
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隠し通路に入ると道が見える。

 そして、バトルのオート機能は、直前の行動をくり返しつつ、バトルの処理速度を若干早くするというもの。レベル上げなどに便利。ただ、バトルを早く進めようとオート機能を使うと、誤って直前の行動をくり返してしまうことも多くあり、欲を言えば、オートとは別に、バトルの処理速度を上げる倍速モードなどがあると、さらにうれしかったところだ。もし、今後『FFIV』などの発売に合わせてアップデートがあれば、倍速モードの追加をお願いしたい。

 あと、とくに便利なのがどこでも中断セーブができる点。本作ではフィールド上のセーブに加え、前述のオートセーブと、いつでも中断したところから再開できる中断セーブができるので、長いダンジョンでもひと安心。『FFIII』ではラストダンジョンの長さが語り草だが、本作ならいつでも中断が可能だ。

まとめ

 というわけで、ピクセルリマスター版『FFIII』のレビューというか、プレイしてわかった部分をまとめてお届けしてきた。

 じつは今回レビュー用というわけではなく、配信番組で紹介するために軽くプレイをする予定だったのだが、あまりにテンポよく遊べるためにやめどきを見失って、ついついクリアーまでプレイしてしまった。

 セリフや演出などに30年前のゲームらしい部分は感じるものの、グラフィックやゲームプレイ部分についてはまったく古臭さを感じず、飛空艇のノーチラス号の速さを満喫したり、暗黒剣しか効かない敵に苦しんでレベル上げをしたりと、楽しく最後までプレイできた。当時『FFIII』をプレイした人にオススメしたいのはもちろん、最近の『FF』シリーズをプレイして、以前の『FF』シリーズも遊びたいと思っていた人には、ぜひこの“ピクセルリマスター”発売の機会に遊んでみてほしい。

 あと、個人的には“ピクセルリマスター”シリーズを『FF』だけに留めず、リマスターが出ていない『フロントミッション』や『バハムートラグーン』、『天地創造』や『ガイア幻想紀』といった、スクウェア&エニックスのタイトルにも派生してほしいです!!!

“FF ピクセルリマスター”版『FF3』レビュー。原作のイメージを活かした新生ドット絵と各種調整で、遊びやすく新鮮な気持ちで楽しめる!
“FF ピクセルリマスター”版『FF3』レビュー。原作のイメージを活かした新生ドット絵と各種調整で、遊びやすく新鮮な気持ちで楽しめる!
最後に同じ場面のピクセルリマスター版とファミコン版の写真を。31年後にも、またクリスタルタワーを上るとは思っていなかった(笑)。

[2021年7月29日14時58分追記]
一部文言を修正しました。