タクティカルシューターの本命がやってきたかもしれない。

 2021年7月15日、“ガンダム”を題材とした対戦シューター『ガンダムエボリューション』(GUNDAM EVOLUTION)が発表されたのだ。6対6でぶつかる本格的な競技タイトルである。

 基本プレイ無料で2022年サービス開始予定。発表と同時にPCでのクローズドβテストのテスター募集がスタートし、7月17日にはいきなり公式番組も配信される。

『ガンダムエボリューション』∀ガンダムは月光蝶を使い、ドムトルーパーは高速で突撃! ガンダムを6対6の国産対戦シューターにした意欲作をインタビューで深堀り
キービジュアルにはガンダム、サザビー、ドムトルーパー、ガンダム・バルバトス、アッシマー、ジム・スナイパーIIが描かれている。

GUNDAM EVOLUTION | ティザートレイラー

 「ガンダムでタクティカルシューター?」と疑問に思った人には、こちらの記事も読んでいただきたい。本作を手掛けるバンダイナムコオンラインにはガチの競技タイトルを作る土壌があるのだ。

 ガンダムシリーズと言えば、バンダイナムコグループが誇る大型IP。そして、バンダイナムコオンラインにはFPS系の元プロゲーマーや競技シーンに造詣の深いスタッフが在籍。この2点のマリアージュにより、本格的な対戦シューターであることは疑いようがない。いわゆる“eスポーツ的な展開”も見据えているかもしれない。

 ただし、対戦シューターは国内で馴染み深いジャンルとは言い難く、むしろハードルの高さを感じる人も多いと思われる。なぜいま6対6の対戦シューターなのか。そして、ガンダムゲームの魅力とタクティカルシューターの競技性を両立させることは可能なのか。

 『ガンダムエボリューション』はいったいどんなゲームなんだ! 話を聞かせてください!

『ガンダムエボリューション』∀ガンダムは月光蝶を使い、ドムトルーパーは高速で突撃! ガンダムを6対6の国産対戦シューターにした意欲作をインタビューで深堀り

丸山和也(まるやまかずや)

バンダイナムコオンライン所属。ガンダムを題材にしたオンラインゲームなどに多く携わっており、『ガンダムエボリューション』ではプロデューサーを務めている。文中では丸山。

穂垣亮多(ほがきりょうた)

バンダイナムコオンライン所属。対戦シューターに対する造詣が深く、本作ではバトルディレクターを務めている。文中では穂垣。

対戦シューターを日本で広めたい

――ガンダムを題材にした6対6の対戦シューター。非常にわくわくする組み合わせです。いまのタイミングでこういったジャンルを選んだ理由を教えてください。

丸山順を追ってお話ししますと、ガンダムのオンラインゲームをサービスできているのは日本と近隣アジアの一部の地域だけなんですね。ガンダムは2019年に40周年を迎えて、アニメやガンプラは北米やヨーロッパでもファンが増えてきている状況。ゲームももっと広い地域でやっていきたい気持ちがあるので、準備を進めてきたんです。競技性やeスポーツ的な要素を加えたガンダムゲームを作れば、ガンダムを知らない人にも遊んでもらえるガンダムゲームを開発できる、と。

 2018年に開発ラインを増員してUnreal Engine 4に詳しい人に参加してもらって、もっと前から競技シーンに近い人を積極的に採用して。松島や堀越(※)たちですね。まあ、いまさら言う必要もないとは思いますけど(笑)。ここにいる穂垣はバトルディレクター。よりプレイヤーのみなさんに近い(感覚を持っている)ので抜擢しました。

※松島や堀越:本作に関わるバンダイナムコオンライン社員。それぞれVader、ObliviousというプレイヤーネームでオンラインFPS『サドンアタック』トッププレイヤーとして活躍。松島氏は『オーバーウォッチ』と『PUBG』でプロゲーマーの経験有。

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――シューターは世界的に人気がありますもんね。海外のゲーマーにガンダムゲームをアピールするのに適したジャンルということでしょうか。

丸山そうですね。急な発表に感じた方もいらっしゃるかと思いますが、対戦シューターの開発は以前より考えておりました。

――ちなみに、穂垣さんはどの対戦シューター出身ですか?

穂垣クロスファイア』です。

――お、『クロスファイア』! いろいろな人材を排出してますよね。『クロスファイア』出身者はやり手が多い印象。

穂垣世界大会に7回くらい出てます。

――ということはクラン(チーム)は……?

穂垣Vault(※)です。

――やっぱり! 完全にガチですね。

※Vault(ボルト):オンラインFPS『クロスファイア』で活躍した伝説のチーム。メンバーとして、『VALORANT』公式大会で実況・解説を担当しているyukishiro氏やDeToNatorのストリーマー・YamatoN氏などが所属していた。

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――もしかして、ラストイベント(※)に参加してました?

穂垣はい。いちユーザーとして。

※ラストイベント:『クロスファイア』は2018年3月31日をもってサービス終了。直前の3月21日に、ユーザー主催のお別れイベントが開催された。

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――そこまでゲーム好きな人が関わっているなら安心。さて、シューターならバトルロイヤルゲームにする選択肢もあったと思います。なぜ、チーム対戦型のタクティカルシューターにされたのでしょうか?

丸山バトルロイヤルゲームはいろいろなところがサービスされていますよね。(企画当初から)こうなることは想定できていたため、バトルロイヤルにはしませんでした。

 それと、内部の事情ではありますが、弊社には多人数用タイトルとして『機動戦士ガンダムオンライン』があります。近いジャンルをやる選択肢はなかったですね。コロナの影響もあって、想定よりかなり発表が遅くはなってしまいましたが。

――なるほど。『機動戦士ガンダムオンライン』は最大52対52のチーム戦ですが、同じ系統のゲームに見えてしまうことはありそうですね。

丸山そうなんです。根本には「対戦シューターを日本でもっと流行らせたい」という気持ちがあります。国産タイトルを広めたいですし、競技性の高いジャンルをもっと入りやすくしたい。国産の新作として広げていくとなると、やっぱりガンダムの力は大きいですからね。

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丸山ただ、日本では競技性のあるゲームはハードルが高いと感じる人が多いようなんです。自分で遊ぶよりは、プロゲーマーなどのトップ層の配信を見るものとして楽しんでいらっしゃる方がほとんど。我々としてはこのジャンルを見るだけのものにはしたくないと思っています。日本の方にはガンダムゲームをきっかけに対戦シューターを遊んでいただいて、海外の方には対戦シューターをきっかけにガンダムを知っていただきたいんです。

――開発するうえでベンチマークとしているゲームはありますか?

丸山『オーバーウォッチ』なんかもそうですけど、バトルロイヤルも含めていろいろタイトルを参考にさせていただいています。対戦シューターの日本の人口を増やしたいという思いがあるので、無理に独自性を出して、かえってわかりにくいゲームにはしたくなかったんですよ。ガンダムゲームと対戦シューター、ふたつのおもしろさの両立を狙って、いろいろ研究しています。

ガンダムゲームと対戦シューター、双方の魅力が伝わるゲームを目指す

――『VALORANT』や『オーバーウォッチ』、『ストリートファイターV』などは対戦ゲームとはいえ世界設定や基本となるストーリーがありますよね。『ガンダムエボリューション』はどうでしょう?

丸山オリジナルストーリーはあえて作らない予定です。なぜかというと、新しくガンダムを知っていただいた方たちには、アニメ原作を見てほしいんです。今回はモビルスーツの特徴・多様性にスポットライトを当てました。

――それもそうですね。すでにたくさんのアニメ原作があるわけですから。

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――ところで、ガンダムに登場する機体(モビルスーツ、モビルアーマーなど)はサイズ設定がバラバラじゃないですか。ゲーム内ではサイズは統一されているんですか?

穂垣大きさに関しては忠実に作っています。たとえば、ガンダムは18mですし、サザビーなら23m。ほぼほぼ原作通りのサイズ感になっているはずです。

――機体ごとにサイズが違うんですか? 対戦ゲームとしては珍しいですね。見た目や当たり判定に関係……。

丸山調整がたいへんなんですよねー。

――食い気味。

穂垣やっぱりゲーム性に大きく関係しますね。サザビーだったら肩が大きく出ていたり、腰周りが大きい機体があったりとか。それも含めてバランス調整をしています。大きいモビルスーツは(出っ張った)肩から先に撃たれる問題がありますので、肩への攻撃は部位ダメージとして判定させることでダメージを減衰するようにしています。

――開発が異常にたいへんそうですね。対戦シューターのヒットボックス(当たり判定)はほぼ同じというのが当たり前の世界ですから。

穂垣いや、もう、ほんとに、たいへんですね……。サイズを統一すれば少しはやりやすいんでしょうけど、小柄なサザビーを見ても原作ファンは喜ばないと思うんです。それに、原作を知らない方が(一般的なサイズの)ジムと同じ大きさで並んでいるサザビーを見ても、サザビー特有の迫力に気づきにくい。原作と同じサイズで再現することで、モビルスーツの圧力みたいなものを感じられるようにしています。

――ガンダムというIPを使った、ものすごくビュアな対戦ゲームになっているんですね。重要なのはとにかく対戦。そこにモビルスーツの特性をちゃんと活かしているという。

丸山初期の開発コンセプトは“スピーディーで没入感あるチームバトル”。キーボードとマウスで直感的な操作ができます(WASDキーを使った、いわゆるFPS操作)。だんだん習熟していくと、キルを連続して取ってエースパイロットみたいな感覚に陥るのを狙っています。

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丸山インゲームに関しては僕らからあーだこーだ言わずに(競技シーンで活動していた)若いチームを信頼しています。ガンダム的な要素とのバランス面はこちらで。純粋なFPSゲームにしてしまうと、どうしてもガンダムゲームらしさが弱くなってしまいますからね。

 たとえば、アッシマーが変形する時には(自キャラを後ろから見る)TPSになったり、∀ガンダムが月光蝶(※)を発動したときは全身を見えるようになったりします。ただ、それらが競技性に影響することもあると思うので、そこはせめぎ合いです。

※月光蝶:蝶の羽状にナノマシンを放出して攻撃する兵器。

――ガンダム好きからしたら、そういうシーンは自分でも見たいですもんね。さっきのバランス調整もそうですけど、何を聞いても開発がたいへんそうなのですが。

丸山インタビューを受けるたびに「調整難しくないですか?」と心配されています(笑)。

――ヒットボックスも操作性も機体によって違うんですよね。どんな対戦シューターになるのか想像できない。アッシマーが変形するということは、空を飛ぶんですか?

穂垣はい。建物を越えるような戦いも基本コンセプトに盛り込んであるので、上下の移動もあります。従来のFPSゲームと比べるとキャラクターごとに操作性が大きく異なる仕上がりになっていると思います。

丸山変形していられる時間には制限があって、その間にほかの機体が行けないポジションに入ってもらうわけですね。

――実装されるモビルスーツやモビルアーマーはどうやって選出しているんですか?

丸山どのガンダム作品からも出てくる可能性はあります。PCのクローズドβテストの段階では12体。ラインアップを見ていただけたらわかると思いますが、単に人気のある機体を入れているわけではなくて、持っている武器や特性、設定を基準にしています。まあ、メインビジュアルにアッシマーを入れている時点で「何かあるな」と、お気づきかと思いますが。

――“変形”というコンセプトがあったからアッシマーなんですね。

【PCでのクローズドβテスト時点の実装機体】

  • ガンダム
  • ザクII[射撃装備]
  • サザビー
  • ジム・スナイパーII
  • ドムトルーパー
  • ガンタンク
  • ペイルライダー
  • ガンダム・バルバトス
  • メタス
  • アッシマー
  • ∀ガンダム
  • ジム
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穂垣“ガンダム顔”と呼ばれる機体メインで採用するタイトルは多いんですけど、『ガンダムエボリューション』では、まず“どの武器でどのような戦いかたをさせるのか”といった戦闘のコンセプトを決めています。で、それができそうな機体をリストアップして、実現可能かデザイナーやエンジニアと相談するという流れ。だから、エース機ばかりにはならないんですよ。

――人気機体を優先するのではなく、対戦ゲームとしての多様性が重要である、と。

丸山特性がかぶったら人気の機体を優先するかもしれませんが(笑)。

――僕、これまでの対戦シューターで、いちばん新キャラ(機体)追加が楽しみかもしれません。

穂垣何が入るか読めないという意味で。

丸山モビルスーツって1000種類以上あるわけですよ。そこから選び放題なので作る側も楽しいんですけど、これを入れるとこんな問題が、みたいな。いつも(穂垣と)やりあってます。

穂垣たとえば、本作はFPSなので、一般的な3Dアクションよりもカメラの位置が高めなんですよ。ですので、「フットミサイルはどうするの?」とか。

――そうか。足元から発射されると見えないのか。

穂垣攻撃がどこから出てどの方向に飛んでいるのか、一瞬でユーザーに伝わらないといけない。この辺は初期のコンセプト段階からしっかり練っています。

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性能に紐づくアイテムを販売すると競技性が損なわれるので、おもな課金要素は外見の変更に関するアイテムとなる予定らしい。

誰でもエース機になれる、ロールにとらわれない自由な対戦シューター

――ほかの対戦シューターでは、特性によってロールが決まっていることが多いと思います。『ガンダムエボリューション』ではどのようなロールがあるのでしょうか?

穂垣ロールというと、“ヒーラー”や“タンク”などと呼ばれる役職のことですよね。プレイヤーの方には好きな機体を使ってほしいという思いもあって、「この機体がいないと勝てないから仕方なく選ぶ」ことをできる限りなくすために、基本的にはどの機体でもダメージを出せるようになっています。そのうえで、機体の特徴を活かしてほしいな、と。

 たとえばサザビーはシールドを持っているので、守りながら撃ち合えば1対1のタイマンに強い。ほかのゲームだとシールド=タンクになったりしますが、『ガンダムエボリューション』ではあくまで(シールドは)ダメージを出すために利用する特性。メタスは味方をリペアできるんですけど、それはダメージを出せるついでにリペアもできるイメージ。完全にサポートオンリーの機体は作っていないんですよ。

――思い切ったことをしていますね。

穂垣好きな機体を選ぶ機会が少ないと悲しいじゃないですか。ユーザーのみなさんには好きなプレイ感の機体を見つけて自由に使ってほしいです。

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――チーム戦ゲームでは周りのピックを見て空気を読む必要がありますが、全機体がダメージを出せるなら自分の好きな機体を選びやすそう。ヒーラーがいなくても戦いやすいバランスなんですか?

穂垣攻撃行動を取らなければ自動で回復するオートリペア機能が全機体についています。1対1には勝ったけど手負いになった場合、戦闘の継続が難しいことを防ぎたかったんです。誰でも前線から一歩下がれば回復してから復帰できます。

丸山ロールがあると編成が固定化する傾向があると思うんですよ。そうならないゲーム設計を目指しています。とはいえ、やっていくうちにバランスの偏りは見えてくるでしょうから、機体のバランス調整は競技性や公平性を担保できるようにやっていきます。

――バランスにも関連した質問なんですけど、ばかでかい機体が実装されることはありますか?

穂垣それはモビルアーマー的なやつですか?

――はい。あと、α・アジールとかクイン・マンサとか。好きなんですよ。

丸山すぐには難しいですが、入れる余地が出てきたら考えるかもしれませんね(笑)。

戦況を変えうるシステム“Gマニューバ”

――キャラ性能が異なる対戦シューターと言えば、スキルが重要ですよね。本作の場合はどうなのでしょうか?

丸山ほかのゲームのスキルに当たるのが“Gマニューバ”です。各機体は必ずひとつGマニューバを持っていて、ゲージが溜まると発動できます。先ほどお話した∀ガンダムの月光蝶もGマニューバです。

――戦局を変えるレベルのものですか?

穂垣ガラッと変わりますね。基本的にGマニューバを使うと、使っていない相手には有利に戦えるようになっているので。敵に対して広範囲のダメージを与える能力や単体にスタンを付与できる1対1に特化した能力、味方の移動速度を上げる能力など、多様な効果を用意しています。

――月光蝶を使ったら全滅(※)すると思うのですが。

※全滅:月光蝶には物質を分解する効果があるため、やりすぎると文明が崩壊する。

丸山原作通りの性能だと全滅しちゃいますね。ですので、本当の意味での完全再現はやりません。ガンダム・バルバトスがいて、サザビーがいて、ジムがいて、だけどどの機体も強さは同じと言えなければいけないですから。ただ、「それぞれの特徴は尖っているので、活かせるかどうかはあなた次第です」と自信を持って言えるようにはしたいですね。

穂垣モビルスーツによっては、Gマニューバとなるような必殺技や武器が原作で登場しない機体もいます。そういうときは、戦いのコンセプトに基づいて独自のGマニューバを付けたりしていますね。

丸山原作の設定になかったとしても、チームシューターとしておもしろくするための独自要素は入れさせてもらっています。音もそうですね。単に没入感を高めるためのサウンド演出だけではなく、シューターは音で状況を判断するので、聞き分けられるようにしています。

穂垣ビームライフルの効果音が全部同じだと、どこに誰がいるかわからないですからね。原作の音を参考に、危険度が高い攻撃は音程を高めにしようみたいに細かく調整しています。

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――極端にモビルスーツのイメージと異なるものがないようなら、原作ファンも安心して遊べそうですね。チーム内で同じ機体は選べますか?

穂垣味方チームで同じ機体は使えないように制限をかけていいます。ただでさえバランス調整がたいへんなのに、同機体をピックできてしまうとさらに組み合わせパターンが増えちゃうんですよ。そうなると競技性を担保するのが難しい。1機体1機体を尖らせるためにも制限をかけていて、その尖った性能を味方と合わせて戦うゲーム性にしています。

――ドム(トルーパー)がいたから気になったんですよ。ジェットストリームアタック(※)できないのかなって。

※ジェットストリームアタック:3機のドムで縦1列に並んで突撃し、先頭から一撃を与えるたびに離脱して短時間に大ダメージを与えるフォーメーション。

丸山残念ながら(笑)。

穂垣それっぽいことはできますよ。ジェットストリームアタック“風”。ドムトルーパーのGマニューバは“スクリーミングニンバス”といって、一定範囲内の味方の移動速度を上げられます。先頭のドムトルーパーがビームシールドを展開して、後ろの近接武器を扱うガンダム・バルバトスを守りながら突っ込んで危険地帯を抜けたりですとか。

――めっちゃおもしろそう。格闘系の機体がスピードを上げて突っ込んできたら嫌ですもんね。

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穂垣ちなみに、ガンダム・バルバトスは遠距離攻撃を持たない純粋な格闘機なので、調整はかなり……厳しいです。

丸山いちばんたいへんかもしれません。

――多少は撃たれてもいいように固くすると、うまい人が使ったらどうしようもなくなっちゃう。

穂垣そうなんですよ。足回り(ブーストステップ)を強化したうえで、どうやってインファイトに持っていくか考える機体として落とし込んでいます。ロングレンジでスナイパーに勝てないのは仕方ないにしても、小競り合いが起きやすいルールなら敵を連続で撃破できると思います。

丸山バランス調整は修羅の道です。「これでバッチリだ!」なんてときはないですから。

機体の持ち味を活かせるゲームルール

――試合のルールはどういうものを用意しているのでしょうか。

穂垣CBTではポイントキャプチャー、ドミネーション、デストラクションの3種類を用意しています。

  • ポイントキャプチャー:攻撃側と防衛側に分かれ、攻撃側はエリア制圧、防衛側は制限時間まで守り切ることを目指す。タイムアップ後は攻守交替。攻撃陣営で制圧率が高いほうの勝利となる。正面でのぶつかり合いを想定。
  • ドミネーション:A、B、Cの3エリアの中で、アクティブ状態となったひとつを制圧するモード。アクティブエリアは一定時間ごとに変化。つぎにアクティブとなるエリアはアナウンスされるため、その時点のアクティブエリアを取るのか、つぎを優先するのかといった駆け引きが発生する。各所での少人数戦が起こりやすい戦いを想定。
  • デストラクション:目標物に破壊兵器を設置する攻撃側とそれを阻止する防衛側に分かれ戦う。ほかのルールとは異なり、エリアの中に居続ける必要がないため、広い視野をもって戦うことを想定。
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――対戦シューターらしい戦略性の高いルールですね。シンプルにキルを取り合うチームデスマッチのようなモードはないんですか?

穂垣いまのところ、正式なルールとして採用する予定はありません。キルの取り合いだけだと、持ち味を活かせない機体もあります。チームデスマッチではダメージを与えることに特化した機体が優遇される可能性もありますので、ほかの機体も活躍してほしいと考えています。

――デスマッチ系のルールがないと、カジュアルプレイヤーにとっては参加のハードルが上がりませんか?

穂垣カジュアルマッチとランクマッチみたいに、気軽に参加できるモードと勝利を貪欲に目指していくモードを別々に分けて展開していきます。初心者の方も、まずはカジュアルマッチに参加してほしいですね。

FPSでの成功体験を得やすいゲーム設計にするために

丸山ガンダムをきっかけに初めてFPSに触れる方もいらっしゃると思います。そういう方は極力フォローしていきたいですね。ボイスチャットも入ってるんですけど、声優さんのパイロットボイスで最低限のコミュニケーションが取れるようにしていたりとか。

穂垣初心者でもパフォーマンスを出しやすかったり、使いかたがわかりやすい機体も用意しています。例を挙げさせていただくとガンタンク。攻撃範囲が広いので精密なエイムがなくてもダメージを与えられます。複数体にも当たるので、だいたいの場所を撃てばFPSデビューの人でもチームに貢献できるかと。

――ちなみに、ガンタンクのGマニューバは何ですか?

穂垣“コア・ファイター射出”です

丸山視点がコア・ファイターに移って、自分で操縦して敵に突っ込んで爆散します。

――完全再現じゃないですか(※)。

※完全再現:コア・ファイターは胴体に収納されている戦闘機。『機動戦士ガンダム』にそういうシーンがある。

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穂垣ですので、ガンタンクはほぼ範囲攻撃専門です。

――コア・ファイターは撃ち落とせたりしますか? それとも自分で操作できる砲弾みたいなイメージでしょうか?

穂垣ダメージによって撃ち落とすことは可能です。

――なるほど。玄人向けだとどんな機体がありますか?

穂垣ジム・スナイパーIIですかね。遠距離戦が得意ないわゆるスナイパーなので、攻撃力が高いけど当てるのが難しい機体です。特徴によってどれくらいのレベルの人に、どのように使ってほしいのか、モビルスーツごとに想定して制作をしています。

 それと、キルのフィードバックも得やすいようにしています。一般的な対戦ゲームだと、キルはとどめを刺したプレイヤーだけカウントされますよね。本作ではダメージを与えてから一定時間内にほかの人がキルした場合もカウントされるようになってます。プレイヤーを褒めてくれるボイスが流れますし、試合後は「何十キル!」みたいに盛大に表彰してもらえます。どういう意味があるかと言いますと……、

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穂垣めちゃくちゃうれしいんです

――シンプル。それって大切ですよね。初心者だってチームに貢献したと実感したいし褒められたい。

穂垣成功体験は大切だと考えています。とくに初心者には。「ありがとう」って言ってもらいたいでしょうし、モビルスーツごとに「ありがとう」の言われかたは違います。玄人向けのジム・スナイパーIIだったら、やっぱり敵を倒すこと。FPSゲームらしさを期待して遊んでくれる方向けに、FPSの“お作法”に則って操作技術を磨き上げる部分も大事にしています。

競技シーンの展望について

――おそらく大会の開催も想定されていますよね。現時点で競技シーンはどのような形になると思いますか?

穂垣まだ見えきっていないというのが正直なところですね。定期的にプロゲーマーの方にテストプレイをしていただいて、どういう戦術が想定できるか話し合っています。

 6人のこの構成が強い、みたいなのはあまり想定していなくて。それよりも、機体と機体のいい組み合わせを散りばめるようにしています。それが本気でやった競技シーンにどう影響するか、楽しみですし、不安もあります。

――試合前から6対6の構成の読み合いをする、みたいなことは起こりうるのでしょうか?

穂垣そういうのはあまり想定していないですね。試合中に機体の変更ができますので。敵にやられると中破状態になります。味方に起こしてもらえるんですけど、一定時間後に大破。リスポーン地点に戻ります。ここで機体を変えられるんですよ。

 ただ、1対1、2対2、3対3という状況だったら、それぞれどういう組み合わせなら勝てるのかビジョンを描くといいかもしれないですね。スナイパーは動きが速い敵が苦手みたいなFPSの基本があります。たとえば『ガンダムエボリューション』だとジム・スナイパーIIとアッシマーの関係がそれにあたります。アッシマーは飛んで建物を越えて、ジム・スナイパーIIの真上から襲う。FPSはY軸(縦方向)のエイムが難しいので、狙われたほうはその強いポジションから移動を強いられます。

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穂垣サザビーみたいなシールド持ちには格闘機体が有効です。射撃は盾に防がれるんですけど、格闘攻撃だとそれを無視して直接ダメージを与えられるんです。自分のストロングポイントを誰に押し付けるのか、マップや機体の相性を見て臨機応変に対応するのが重要な攻略ポイントになると思います。

 本作の場合は少人数戦でどうやって人数有利を取るのかであったり、Gマニューバの管理も大切です。味方のGマニューバゲージがどれくらい溜まってるか画面の上のほうに出ているので、タイミングを合わせて使ったりする戦術も有効です。

――マップの各所で少人数戦が発生する感じですかね。そう考えると、6人は絶妙な人数。5対5だと分かれても2ヵ所でしょうし、7人や8人となると今度は多すぎる。

丸山ただ、これもいまの段階だと単なる“想定”なんですよね。実際にはどうなるか、全然わからない。時間をかけていろいろな人数パターンを試しました。9対9なんかも。チームの組みやすさでいうと5対5もいいんですけど、ひとりあたりの責任が重くなりすぎるので、6対6がちょうどいいという結論になりました。

――戦闘が発生しやすいということは、膠着状態が発生しにくいように感じました。動きがない時間を退屈ととらえる人は多いので、それが少ないのも間口を広げる一因のような。

穂垣チームデスマッチのモードはないですけど、1回やられたら終わりじゃなくてリスポーンするので、ストレスなく遊んでいただけるとは思います。

――対戦シューターは楽しいですけど、すぐに倒されてしまったり、覚えることが多かったりと、どうしてもハードルが高い部分はあると思うんですよ。でも、シンプルな撃ち合いのゲームとしても楽しめそうですね。

丸山初心者の方にはまずは単に撃ち合いが楽しいというところから入っていただきたいですね。難しいことを考えずに、直感的にもプレイできるようにしています。自分の好きな機体で敵を倒すと、ほんとに気持ちいいですから。

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――野良で無名のニュータイプが出てきたら最高だと思います。

丸山プレイヤー間で二つ名がついたらそれもまたガンダムっぽいですよね。

――いまは自分たちで自由に配信をする時代です。ガンダムは配信が権利的に難しいような気がしているんですけど、そのあたりはどうなりそうですか?

丸山版権元の方とも話し合って、ガイドラインの整備を進めています。配信はそれを守ったうえでお願いします、と。これは進捗がありしだい発信いたします。当然、我々としては配信は重要だと考えていますので。

――安心しました。最後にすごく気になっていることをお聞きしていいですか?

丸山なんでしょう?

――武者ガンダムとナイトガンダムは出ますか?

丸山その質問はまだ早いですよ(笑)。

 本格的な対戦シューターが出るのはいちFPSプレイヤーとしてうれしく思う。しかも、それが国産で、さらに言うと“ガンダム”なのである。1000種類を越えるモビルスーツがどのような形でシューターの操作キャラになるのか、非常に楽しみだ。

 インタビューではとにかくこの対戦シューターを日本で広めていきたいという熱量を感じた。いままでFPSゲームを敬遠してきたひとにも遊んでいただきたいタイトルだ。

 まずはクローズドβテストに参加して、「○○、行きます!」と自分の名前で叫ぼう。