2020年春に放送されたテレビアニメ『かくしごと』が、アマゾンプライムビデオにて見放題配信中となっています(2021年7月現在)。

 素晴らしいテレビアニメはたくさんありますが、“1クールという放送枠を活かし切った見事な物語構成”という点では、本作は近年でもトップクラスの作品だったように思います。

 2021年7月9日から物語を再構成した『劇場編集版かくしごと ―ひめごとはなんですか―』も全国の映画館で上映されているということで、まずはテレビシリーズの魅力がどういった点にあったのか、この機会にご紹介いたします。

アニメ『かくしごと』(Amazonプライムビデオ)

“下ネタマンガ家”であることを隠したい父と娘の物語

TVアニメ『かくしごと』本PV

 物語の主人公は、“下ネタ”多めのちょっと下品なギャグマンガを描いているマンガ家・後藤可久士(声:神谷浩史)。可久士には小学4年生の娘・姫(声:高橋李依)がいますが、彼女には自分の職業を打ち明けていません。

 なぜなら「自分が下品なマンガを描いていることを知られたら、大好きな娘に嫌われてしまうかもしれない」と思っているから。

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後藤可久士(画像は公式サイトより)

 可久士は今日も、娘の前ではふつうのサラリーマンを演じ、スーツで会社に向かうふりをしてマンガを描くための仕事場へと向かいます。

 『かくしごと』というタイトルには、漫画家という“描く仕事”が、娘への“隠しごと”でもあるという、ふたつの意味が込められているというわけです。

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後藤 姫(画像は公式サイトより)

ギリギリなパロディなど、久米田康治作品の持ち味は健在

 原作を手掛けるのは『かってに改蔵』や『さよなら絶望先生』で知られる久米田康治氏。氏の作風の特徴である、実体験をもとにしたあるあるネタや風刺ネタは、マンガ家が題材の本作でも過去作に負けず劣らずキレキレ。

 一度ヒット作を世に出してから続くヒット作を描けないマンガ家の悲哀や、マンガ業界の風変わりな体質への皮肉などを、可久士と個性的な4人のアシスタントとのやり取りを軸にユーモアたっぷりに描きます。

 誰が見ても明らかな実在する作品やその作者のパロディも多数盛り込み、まったく仕事ができないのにムダに自己肯定感の高い担当編集者なども登場し、「そこまでネタにしていいの!?」とハラハラしながらも、思わず笑ってしまうこと受け合いです。

18歳に成長した姫の視点を描くことで、ミステリー的な要素も

 可久士と姫の親子の交流も本作の見どころ。ほっこりするやりとりもあれば、可久士が姫を溺愛するあまり、心配しすぎて突飛な行動を取る展開はコメディシーンとして描かれます。

 姫もやさしい父親のことが大好きで、可久士の“隠しごと”を除けばとても理想的な親子関係と言えるでしょう。

TVアニメ『かくしごと』ノンテロップOP映像

 そんな中、ほかのシーンとは雰囲気が異なっていて印象に残るのが、毎回のエピソードの中で時折描かれる、18歳に成長した姫が、鎌倉にある可久士の仕事にまつわる資料を保管している家を尋ねるシーン(第1話の冒頭も、このシーンから幕を開けます)。

 これらのシーンでは可久士は登場せず、彼が以前のように漫画家生活を続けられなくなっていて、姫との親子関係も大きく変化してしまっているであろうことが察せられます。

 基本的にはコメディアニメである本作ですが、これらのシーンが何を意味しているのか? というミステリー的な要素もまた全編を通して貫かれています。これが物語の続きを非常に気になるものにしてくれているのも、本作の大きな魅力のひとつです。

すべての謎が明らかになる最終回は感動必至!

 最終回の第12話『ひめごと』で、それまでのエピソードで散りばめられた伏線のすべてが見事に回収される様は圧巻。そして感動必至です。本作の視聴をはじめたならば、必ずすべての謎が明かされるところまで見届けてほしいところ。

 もちろん『劇場編集版かくしごと ―ひめごとはなんですか―』を先に鑑賞して、そのあとにテレビシリーズを視聴してみてもよいかもしれません。

映画 『劇場編集版 かくしごと ―ひめごとはなんですか―』本予告

 とにかく自信を持っておすすめできる作品なので、笑えるコメディが観たい方も、感動の涙を流したい方も、ぜひ本作を視聴してみてください!

アニメ『かくしごと』(Amazonプライムビデオ)

※Amazon Prime Videoの配信情報は記事制作時のものです。