2021年6月23日(アメリカでの『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』発売日)に生誕から30周年を迎えたソニック。その30周年を祝うプロジェクトの中のひとつとして、9月9日に発売予定なのが『ソニックカラーズ アルティメット』だ。

 2010年に発売され400万本ものセールスを記録した人気作をリファインした本作は、どういった理由から30周年記念として選ばれたのか。日米でソニックコンテンツの舵取りを行うキーパーソンたちに訊いた。

30周年イヤーに『ソニックカラーズ アルティメット』を届ける理由(わけ)をキーパーソンに聞く。ゼロから楽しんでもらう『ソニック』を!

飯塚 隆氏(写真左)

セガ ソニックピラー
クリエイティブオフィサー
(文中は飯塚)

星野一幸氏(写真右)

セガ ソニックピラー・ジャパン
クリエイティブディレクター
(文中は星野)

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映画からソニックを知った人たちに遊んでほしい

――企画が立ち上がった経緯をお聞かせください。

飯塚本題に入る前に、まずは『ソニック』のブランドを取り巻くここ数年の環境を説明させてください。『ソニックマニア』でドット絵時代からのファン、『ソニックフォース』でシリーズの熱心なファン、そして『チームソニックレーシング』でアクションゲーム外のファンと、少しずつ『ソニック』のファン層を増やす施策を取ってきました。そしてさらに、昨年(2020年)2月に『ソニック・ザ・ムービー』が公開されまして、セガ、配給元のパラマウントとしても予想を上回る大ヒットとなりました。

 その結果これまでのファン層に加えて、映画でソニックというキャラクターを知ったという方たちが全世界的に増えたんです。それまでの『ソニック』ファン層って、過去のゲームタイトルや『ソニックX』のようなアニメ作品を知っている20~30代の方が多かったのですが、映画のヒットでローティーン、そしてその父母世代にまで『ソニック』の認知度を広げられた効果が大きかったです。

――たしかに映画の内容はファミリー向けのアットホームな内容でした。

飯塚海外のリサーチ結果を見ても家族の視聴が多くて、「あの青くて足の速いキャラクターが好き」となってくれた方々が一気に増えました。そうしてせっかくソニックを知ってくださった方々に向けて、“初めてプレイする『ソニック』”としてオススメしたい作品であるというのが、『ソニックカラーズ』の選定理由です。

30周年イヤーに『ソニックカラーズ アルティメット』を届ける理由(わけ)をキーパーソンに聞く。ゼロから楽しんでもらう『ソニック』を!

――『ソニック』をよく知らない人に遊んでほしいということですね。

飯塚また、『ソニックカラーズ』はWiiとニンテンドーDS向けとして、当時400万本のセールスを記録したタイトルなのですが、逆に言うと、現行のゲーム機で遊ぼうと思ってもその手段がないんです。ゲームシステム的にも“大きなステップ”を踏んだ意欲作ですし、そこも含めてもう一度遊んでほしいと思っています。

――では『アルティメット』というタイトルの理由は?

飯塚オリジナルが2010年発売ということもあって、いろいろな付加価値を加えたのと、先程もお話したように“初めて『ソニック』を触るお客様”にも楽しんでいただきたいからです。オリジナルの『ソニックカラーズ』は、それまでの『ソニック ワールドアドベンチャー』などのシリーズ作の延長線にありますが、今回は“ゼロから楽しんでもらう『ソニック』”がコンセプトですので、初心者でも遊びやすいさまざまな機能を追加しています。それだけモディファイ(修正)しているので、究極の意味を持つ“アルティメット”をつけました。

――具体的にどのような変更点があるのですか?

飯塚当時と比べてゲーム機やテレビの性能がアップしていますので、それにあわせてHD解像度化を行っています。またゲームシステム的な最大の変更点は、残機制の廃止です。残機がなくなるとゲームオーバーというのは、いまのゲームシーンには合わないため、何度ミスしても無制限でリトライができます。

――初心者でも安心できそうですね。

飯塚また、プラットフォームアクションであるためジャンプに失敗すると穴から落ちてミスになることがありますが、それを救済するための“テイルスセーブ”機能を追加しました。名前の通り、穴から落ちてもテイルスが引っ張り上げて助けてくれます。そういった、初心者でも挫折しないでアクションゲームを楽しんでもらう機能を足しています。

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ゲームを特徴づけるウィスプによるカラーパワー

――アクションゲーム入り口となるように、ということですね。本作の特徴である“カラーパワー”について改めてご説明をお願いします。

飯塚“大きなステップ”というのがまさにそれで、それ以前のソニックは速く走ってジャンプで敵をやっつけることを基本としていました。しかし『ソニックカラーズ』で初めて、ソニックに新しい能力が加わったわけです。カラフルなウィスプたちの力を取り入れて、自分がドリルやロケットなどに姿を変えて、カラーの特徴によってソニックがプラスアルファの能力を身につけるというのが醍醐味です。

30周年イヤーに『ソニックカラーズ アルティメット』を届ける理由(わけ)をキーパーソンに聞く。ゼロから楽しんでもらう『ソニック』を!

――本作で追加される新ウィスプもいますね。

飯塚これまでのウィスプに加えて、『チームソニックレーシング』で登場したジェイド・ウィスプを追加しました。ゴーストになる能力を持っていて、半透明になって敵や壁をすり抜けられるようになるんです。一見すると、どこからも侵入できなさそうな場所にあるアイテムを取ることができます。

――ウィスプを使うことで、新しいルートを開拓する遊びということですね。

飯塚そうですね。ステージのあちこちに気になるアイテムや仕掛けがあるので、「もしかしてこのカラーパワーなら行けるのでは?」という探索をしてもらう遊びです。ジェイドも同様で、既存のステージの中にジェイドだから行ける場所を付加しています。これまでのカラーパワーはどうやって先に進むかを前提として設計していましたが、ジェイドの場合はややパズル的な楽しさを付加した感じですね。

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――そのほかにはどんな追加要素が?

飯塚“ライバルラッシュ”という機能を付加しました。当時ですとクリアータイムでランキングを競うのが精一杯だったのですが、今回はある特定のステージにライバルとして“メタルソニック”が登場します。これは初心者向けではなく上級者向けの要素で、高速で走るメタルソニックと競走する遊びになります。かなり強い相手なので腕に自信をつけてから挑戦してみてください。あと追加要素ではありませんが、オリジナルにあったふたりプレイモード“ソニックシミュレーター”も存在します。

――ストーリーに変更はあるのでしょうか。

飯塚オリジナルと同じです。『ソニック』シリーズの中で初めてアメリカ人のシナリオライターを起用したタイトルであることもあって、ノリは愉快なカートゥーン調です。もとからの舞台設定も“楽しいテーマパークを占拠したエッグマンの悪巧みをソニックが暴く”という勧善懲悪モノなので、海外の方のセンスを起用したというわけです。

――エッグマンの手下ロボであるオーボット、キューボットが初登場したのも『ソニックカラーズ』からですね。

飯塚ソニックの仲間がどんどん増えていくのに、エッグマンだけは孤高の悪役としてずっとひとりだったのがかわいそうかなということで登場してもらいました(笑)。アニメ『ソニックX』にはエッグマンの手下としてデコーとボコーという司令官ロボットがいて、いい感じの掛け合いをしていたんですね。そのノリを参考にさせてもらいました。

30周年イヤーに『ソニックカラーズ アルティメット』を届ける理由(わけ)をキーパーソンに聞く。ゼロから楽しんでもらう『ソニック』を!

――改めて、11年ぶりに『ソニックカラーズ』を提供するにあたってどう楽しんでほしいですか?

飯塚映画や『マリオ&ソニック』で青いハリネズミに興味を持ってもらった方に、シリーズならではのハイスピードアクションを楽しんでもらいたいというのがいちばんです。『ソニック』初心者でも遊びやすいさまざまな機能を追加していて、途中で挫折することなく最後まで楽しめる内容になっていますので。すでに遊んだことがあるという方は、ジェイド・ゴーストやライバルラッシュとった再度挑戦したくなる機能を加えていますので、ぜひもう一度楽しんでいただけたらと思います。

走り出したソニック生誕30周年!

――先日30周年の施策がいろいろと発表されましたが、今年は『ソニック』で盛り上がりそうですね。

星野 はい。YouTubeで配信した“Sonic Central”や“ソニックステーションLIVE!”でお伝えしたように、30周年に向けてさまざまな企画を展開中です。コロナ禍によってみんなで集まってのお祝いはできないかもしれませんが、それに変わるモノを用意していますので、ファミ通さんや『ソニック』シリーズ公式サイト“ソニックチャンネル”をチェックしてください。

30周年イヤーに『ソニックカラーズ アルティメット』を届ける理由(わけ)をキーパーソンに聞く。ゼロから楽しんでもらう『ソニック』を!
“Sonic Central”で公開された完全新作のティザー映像から。発売予定の2022年が待ちきれない!

――最後に、30周年イヤーにかける意気込みをお願いします!

飯塚この30年間を振り返ると、メガドライブで始まった『ソニック』が3Dになったのが最初の10年(10周年記念作品は『ソニックアドベンチャー2』)。つぎの20周年までは、モダンソニックだけではなく、クラッシックソニック作品も平行して手掛けていきますよ、という時代(記念作品は『ソニック・ジェネレーションズ』)。ここ最近の10年は、ドット絵まで回帰した『ソニックマニア』やレースゲームである『チームソニックレーシング』といった広がり、そして昨年の映画と、多種多彩な方たちに向けて発信してきた時代だと思っています。

 10、20周年はゲームファンに向けてイベントを行ってきましたが、30周年ではより広がった『ソニック』ファンの方たちを巻き込んで、何かができればいいなと考えています。

星野こと日本国内においては、アメリカのソニックピラー本部と協力しつつ、海外のファンたちに負けないように日本のお客さんをいかに増やしていくかをいちばんの目的としていきたいと思います。幅広く、『ソニック』の魅力を訴求できたらと思っています。今後の展開にご期待ください!

『ソニックカラーズ アルティメット』ファミ通.comの記事はこちら