2021年7月1日にレイニーフロッグより配信がスタートしたRPG格闘アクション『ビートダウンシティ コマンドファイターズ』のレビューをお届けします。
一見、ファミコン時代のベルトスクロールアクションをリスペクトしたタイトルのように見える本作。しかし、RPG要素が濃かったり、おふざけパロディのネタが妙に現代的だったりと、総合的にはかなり“風変わりな”ゲームに仕上がっていました。
なお通常価格は1800円[税込]ですが、7月3日の23時59分までは10%割引の1620円[税込]で購入できます。
『ビートダウンシティ コマンドファイターズ』ニンテンドーeショップオラマ大統領誘拐! 世界の危機に3人のファイターが立ち上がる
物語の舞台は、忍者によるテロ活動が世界中で拡大の一途をたどる世界。米国大統領“ブレイク・オラマ”は演説にて、忍者への対抗の意思を力強く表明。しかし、この演説の場で、彼は忍者によって誘拐されてしまいます。
“忍者ドラゴン”を名乗るテロ組織は、大統領の身柄と引き換えに、1兆円を要求。世界に危機が訪れる中、米国の秩序も崩壊を迎えます。
誘拐の舞台となった街・イーストフルトンでは、警察機関による自治が機能しなくなり、汚職警官や差別主義者、悪徳ビジネスマンによる横暴が支配する危険な地域となってしまいます。
この危機に立ち上がったのは3人のファイター。喧嘩屋のリサ・サンティアゴ、元プロレスラーで現在は公民館を運営している“ブラッド・スティール”、株取引で生計を立てている神童“ブルース・マックスウェル”。
果たしてファイターたちは、イーストフルトンの秩序を取り戻し、大統領を救出できるのでしょうか?
格闘アクションの爽快感と、コマンドRPGの戦略性をいいとこどりした戦闘システム
ゲームはステージクリアー制で進行。マップを1マスずつ移動していき、敵がいるマスに止まったら、専用のフィールドに移動して戦闘が始まります。
敵に近づいてAボタンを押せば通常攻撃。通常攻撃には、画面左上に表示された青い“アクションゲージ”をひとつ消費します。この移動や通常攻撃は、リアルタイムで進行していく本作のバトル。ステージ上にあるオブジェクトを破壊すると食べ物が出現して、近づいて食べればHPが回復することもあります。
そしてここからがキモなのですが、Xボタンを押せば“アクションメニュー”と呼ばれるウィンドウが出現。これを表示しているあいだは時間が止まります。通常攻撃以外の攻撃手段は、ここに表示されたコマンドの中から選んで使用することになるのです。
“アクションメニュー”から使用する攻撃でも通常攻撃同様“アクションゲージ”をひとつ消費。加えてコマンドごとに定められた“FP(ファイトポイント)”も消費するのですが、最大で3つのコマンドを組み合わせて、状況に合わせた“コンボ”を放つことが可能です。
組み立てるコンボの例としては、「消費FPの低い“ジャブ”でダメージを稼いでから、ノックダウンを狙える“アッパーカット”でフィニッシュをキメる」とか、「追加ダメージを与えるため、敵に状態異常“流血”を付与する攻撃を組み込む」とか。
アクションゲージもFPも時間経過で回復しますが、FPのほうは連続コンボをうまく決めるほどに瞬時に大きく回復し、より強力なコンボが放てるようになります。これを駆使して、つぎつぎと強力なコンボで攻めていけたときの達成感はなかなかのもの。
戦闘を続けていて操作キャラクターの頭上に“C”のマークが点灯したら、“コンボモード”発動の合図。発動中は、成功率の低い大技の精度が上がるので、ふだん以上に大胆なコンボを狙えます。
また、敵が攻撃を仕掛けてきたら今度は“ディフェンスメニュー”が出現。ここでは、ふつうに攻撃を受ける“ブレイス”に、FPを消費する代わりに受けるダメージを半減できるかもしれない“ブロック”のどちらかを選択できます。ゲームが進めばアクションゲージ1本と引き換えに強力な反撃を加えられる“カウンター”なども選べるように。戦略の幅が広がります。
よりよい戦いかたをしようと思ったら覚えることはなかなか多いものの、コマンド選択中は時間が止まっているので、落ち着いて最善策を考えられるのがふつうのアクションゲームとは大きく違うところ。
このようにアクションゲームの爽快感と、じっくり考えて戦略を練ることができるコマンドRPGのいいとこどりをしているのが、本作の最大の特徴と言えるでしょう。
ゲームの目的を忘れてしまうほど個性的な敵キャラクターたち
序盤でリサ、ブラッド、ブルースの3人が集結してからは、ステージによってこの3人を切り替えてゲームを進めていくことに。バランスのいい性能を持つリサ、掴み技が強力なブラッド、打撃攻撃の手数が多いブルースはそれぞれプレイフィールが異なります。
敵の種類によって相性の良し悪しもあります。打撃技への反撃のカウンターが得意な敵には掴み技のブラッドを、逆に掴み技に強い相手にはリサやブルースのほうが苦戦はせずに済むといった具合。
ちなみに掴み技は相手のHPが減って弱っているほど成功しやすくなるので、戦況によって有効な戦いかたも変わっていきます。
戦闘中のキャラクターの交代はできず、いずれかのキャラクターのHPがゼロになるとゲームオーバーなので、キャラクターごとのHPの残量にも気を配りつつ、進めていくのがよいでしょう。
登場する敵キャラクターは、ひと癖もふた癖もあるヤツらばかり。戦闘前に時折挟まれる会話パートでは、リサたちの言い分もろくに聞かずに襲いかかってくる、常識の通用しない者がほとんど。まったく噛み合っていない会話劇の数々に、脱力させられます。
大統領誘拐の事件とほとんど関係のない者も多く、しかも同じ人物が何度も登場するので、危うくリサたちが何のために戦っているのか忘れそうになります。けれど何度もやり合っていると、今度はどんなむちゃくちゃなことを言ってくるのかと楽しみになってしまうのが不思議なところ。物語の導入からインパクトとツッコミどころ満載だった本作ですが、この奇妙な味わいはゲーム全体から色濃く漂います。
最初は1対1だった戦闘は、だんだんと敵が複数人まとめて登場するようになり、中には危険な武器を持って登場する連中も。
一方でリサたちも、新たなコマンドをつぎつぎに覚え、戦いかたはどんどん幅広いものになっていきます。攻撃を受けることで貯まるゲージが満タンになることで放てる“リベンジアタック”が使えるようになれば、一発逆転の可能性も。プレイヤーが求められる戦略も、ゲームが進むほどに高度なものになっていくのです。会話劇と戦闘をひたすらくり返していくゲームではあるものの、つねに環境が変化し、マンネリ化を防いでいるあたりには好感が持てます。
レトロな風味が持ち味かと思いきや、格闘アクションとコマンドRPGの融合が新鮮かつ、爽快感と高い戦略性を両立。それから妙に現代的で、ネタ的にハラハラさせられる会話劇。
これらによって『ビートダウンシティ コマンドファイターズ』は、ほかのゲームとは違う強烈な風味を放っています。一風変わったゲームを探している方は、つぎにプレイするゲームの候補に加えてみてはいかがでしょう?