『バイオハザード』シリーズの新たな物語の幕が、ついに上がる!

 『バイオハザード:インフィニット ダークネス』は、カプコンの人気サバイバルホラーゲーム『バイオハザード』を題材としたフルCGアニメーション作品。

 初の連続CGドラマとして展開し、動画配信サービスのNetflixにて独占配信される。

 物語は、シリーズの人気キャラクター、レオンとクレアが主役として登場。本作オリジナルのキャラクターも複数登場し、これまでにない『バイオハザード』の物語を楽しむことができる。

Netflix

『バイオハザード: インフィニット ダークネス』冒頭映像

『バイオハザード: インフィニット ダークネス』予告編 日本語吹替版

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 本記事では、『インフィニット ダークネス』の監督を務める羽住英一郎氏と、本作の仕掛人でもあり、『バイオハザード』シリーズを支えるカプコンの小林裕幸氏による対談を掲載。

 初の連続CGドラマとして制作された本作の見どころを始め、映像作りでこだわった部分、注目ポイントなどを語っていただいた。

小林氏と羽住氏
小林氏(左)と羽住氏(右)。

小林裕幸氏(こばやしひろゆき)

 カプコンのプロデューサー。『バイオハザード』シリーズのほか、『ドラゴンズドグマ』や『戦国BASARA』シリーズなど多数の作品を手掛けている。

羽住英一郎氏(はすみえいいちろう)

 『海猿』シリーズなどで知られる映画監督。最新作は、2021年3月に公開された、藤原竜也と竹内涼真が主演の『太陽は動かない』。

これまでにない挑戦をした『インフィニット ダークネス』

――連続CGドラマというこれまでにないチャレンジをしている『バイオハザード』ですが、『インフィニット ダークネス』を制作することになったきっかけから教えていただけますでしょうか。

小林2017年に公開された『バイオハザード:ヴェンデッタ』の制作が終了したのち、篠原宏康さん(『バイオハザード:ヴェンデッタ』のプロデューサー。トムス・エンタテインメント執行役員)と、「次もやりましょう!」というお話はしていたんです。

――今後も『バイオハザード』の映像作品を作ることは合意の上だったんですね。

小林その後、改めてどういった作品を作るのかというお話をしていたときに、篠原さんから「監督は、ぜひ羽住さんを」というオーダーを受け取りました。

――プロデューサーの方からのリクエストだったと。

小林篠原さんが羽住監督の作品の熱烈なファンだったようで、次回作をやるなら羽住さんを監督に据えたいということでした。

――そのオファーを受けて、羽住さんはどういった感想を持たれましたでしょうか。

羽住私にとって、実は初めて尽くしの作品でした。フルCGのアニメーションも初めてだし、『バイオハザード』というゲームは知っていましたが、プレイはしたことがなかったので、シリーズに触れるのも初めてでした。ただ、どんな作品を目指すのかを小林さんと篠原さんの両プロデューサーから明確にご提案いただいたので、ふたつ返事で「やりたいです」とお返事させていただきました。

――作りたい作品とは、いったいどんな作品だったのでしょうか。

羽住サスペンスとドラマを前面に出したいというオファーでした。私自身フルCG作品は初めてでしたが、挑戦し甲斐のあるものだったので、ぜひやってみたいと。

――羽住監督はフルCGアニメーション作品は初挑戦とのことですが、作る上で注力した点などを教えてください。

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羽住アプローチとしては、実写作品と同じようなカメラワークを念頭に心掛けました。CGの場合、カメラはどこにでも入り込んでいけますが、実際に人間やカメラが入れなさそうなアングルからの映像は使わないようにしています。そういった絵作りが、注意した点ですね。

 『バイオハザード』の重要な要素であるゾンビは、今回はどんなものがいいのかというのをスタッフと話し合いながら作り込んでいきました。また、実写映画では、演者さんと演じるキャラクターやそのシーンについてディスカッションしながら作り込んでいくのですが、それと同じ作業を、モーションキャプチャーの撮影時に演者さんにできたのは大変助かりました。

――実写映画の技法を取り入れた制作をしているんですね。本作の主人公としてレオンとクレアが全面に立っていますが、彼らの起用はどういった形で決まったのでしょうか。

小林レオンは私も大好きなキャラクターというのもありつつ、CG作品にもほぼすべて出演しているということで、すぐに決まりました。クレアについては女性も主役として出したいという想いがあり、ほかのプロデューサーから「クレアにしよう」という意見があったのが理由です。『バイオハザード RE:2』でもレオンと共演しているし、CG作品だと『バイオハザード ディジェネレーション』にも出演していたので、「じゃあもう一度出しましょう」ということになりました。羽住監督には、そのふたりが主役であることがすでに決まった段階からお話をさせていただきました。

――本作は、レオンとクレアありきの作品だったんですね。

小林そうですね。レオンとクレアがどういった活躍をするのかというのは、羽住監督が入ってから練っていった感じです。

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――羽住監督はそれを受けて、どのように物語を考えていったのでしょうか。

羽住レオンとクレアは『バイオハザード』シリーズのメインキャラクターのなかでは表現の自由度が高い印象だったので、物語はすごく作りやすかったです。いずれも人気の高いキャラクターですし、魅力を十二分に表現できたと考えています。

――キャスティングされた声優陣も、かなりの実力派が起用されていますね。

小林レオン役の森川智之さんとクレア役の甲斐田裕子さんはゲームシリーズでもおなじみの方なので、安定した演技をしていただけました。本作のオリジナルキャラクターには、キャラクターのイメージにあった声優さんをキャスティングさせていただいています。グラハム大統領は井上和彦さんにお願いしていて、正義感溢れる大統領が演出できていると思います。吹き換え版もかなりいいできなので、字幕版とともに両方観ていただきたいです。

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――『インフィニッ トダークネス』は2006年が舞台となっていますが、『ディジェネレーション』に続くお話になっているのでしょうか。

小林直接的なつながりはありませんが、『バイオハザード4』、『ディジェネレーション』、『インフィニット ダークネス』、『バイオハザード5』という順番の時系列になっています。

――この年代の物語にされたのには、どんな理由が?

羽住ラクーンシティで新人警官だった正義感の強いレオンと、悪との戦いに疲弊している、『ヴェンデッタ』で描かれたレオンとの中間というバランスがいい時代だったというのがひとつの理由です。正義感で突っ走るだけではない、少し大人になったレオンというか。本作ではレオンは大統領側、つまり体制側の人間という立ち位置なのですが、正義のためには事実を公表すべきではないという立場になっています。そこにフラットなクレアが登場することで、ドラマが膨らんでいくと考えたんです。

――なるほど。羽住監督が考える物語が膨らませやすい年代だったんですね。

羽住レオンとクレアのすれ違いも描かれていますし、本作ではスーツを着ているレオンも登場します。ゲームのファンの方にとっても、これまでに見たことのないレオンが観られると思いますよ。

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小林レオンとクレアはラクーンシティの惨劇(※)を生き抜いた戦友でもあります。それをちょっと連想させるような会話などもあるので、注目して観ていただきたいです。クレアからは、「スーツが似合っていない」と言われていますし(笑)。

※『バイオハザード RE:2』などで描かれるラクーンシティ事件のこと。

――本作単体でももちろん楽しめる作品になっていると思いますが、ゲームファンなら、さらに楽しめそうですね。

小林そうですね。シリーズファンにとってニヤリとする要素もふんだんに入っていますので、細かいところまで観ていただきたいです。

――物語は、ペナムスタンの戦地にヘリが墜落するシーンから始まりますね。あのシーンを観て『ブラックホーク・ダウン』のオマージュと思う方も多そうですが、その一方でヘリが墜落するシチュエーションは『バイオハザード』のお約束とも言えますね。

羽住あのシーンは“モガディシュの戦闘(※)”がモチーフになっています。本作はNetflixのオリジナルシリーズですから、一般的にはご家庭のテレビなどで視聴することになるわけですが、映画館で鑑賞する映画とは違って、退屈に感じるといつでも観るのを止められますよね。そのため、ペナムスタンでのハデな戦闘シーンとその後に起こった出来事の謎を冒頭に見せて、視聴者に興味を持ってもらえたらなと。

※1993年にソマリアの都市モガディシュで起こった、アメリカ軍とソマリア兵との戦闘。

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――配信媒体の特性を考えた映像の構成にしているんですね。確かに冒頭からグイグイ惹き込まれました。

羽住物語中は回想シーンも入れて、少しずつ過去になにが起こったのかわかるような組み立て方にしているのも、そういった理由です。もともと、オファーをいただいたときに物語はドラマとサスペンスを前面にというお話だったので、とくに意識していた部分でもあります。

――ペナムスタンは架空の国なのでしょうか。

羽住そうですね。物語中には地図も出てくるのでなんとなくの場所はわかりますが、中国に近い架空の国になっています。架空の国なので都市の中に文字が書いてある看板などを出すことができなかったので、映像を表現する際に少し苦労しました。

小林言語を出してしまうと、具体的にどこらへんの国というのが決まってしまいますよね。あくまで架空の国ということなので、文字は出さないように注意しました。

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――お話には、ホワイトハウスや潜水艦など、さまざまな場所が登場しますが、CGでの制作は大変だったのではと予想するのですが……。

小林通常のアニメーションのように1話から順番に作るのではなく、まずはホワイトハウスのシーン、つぎは潜水艦のシーンといったふうに、シーンごとにまとめて映像を作るような制作方法を取りました。ゲームのように自由に動き回れるわけではないのでそれよりは楽だと思いますが、それでも大変でした。

――なるほど。そういった作り方をするのも、CG作品ならではですね。1~2話の舞台のひとつである潜水艦のシーンからは、かつてない怖さを感じました。

羽住物語に潜水艦を出そうというのも最初から決まっていました。『バイオハザード』といえばゾンビですが、潜水艦でゾンビだと予想どおりになってしまうので、ちょっと違う怖さのある演出を盛り込んでいます。

――そのほかに注目すべき点をお聞かせください。

羽住最初は、なかなかレオンが出てこないですよね(笑)。

小林だいぶ焦らされます(笑)。

羽住『バイオハザード』は非常にファンの多いシリーズなので、メインキャラクターが出てこなくても興味を持って観てもらえるだろうと。そのおかげで、レオンがちょっと出てくるだけでも“来たぞ感”が演出できています。初めてシリーズに触れる方には、レオンが出てくる前にレオンの説明をする猶予が生まれますし、ファンの方にとっては、いつレオンが出てくるのかという楽しみもある。その両方を成立させられたと思います。

――ちょっと遅れて登場するあたりもレオンらしいですね。

小林確かにそうですね(笑)。

――ゲームも最新作の『バイオハザード ヴィレッジ』が5月に発売されたばかりで、盛り上がっていますね。

小林もちろん、『ヴィレッジ』もプレイしてほしいですが、本作の主人公はレオンとクレアなので、まだ遊んだことがない方は、ふたりが出てくる『RE:2』もぜひ遊んでほしいと思っています。もっと言うとレオンが出てくる『バイオハザード4』、クレアだと『バイオハザード リベレーションズ2』など、きりがありませんが……まずは『インフィニット ダークネス』を観てください! 興味があれば、ぜひゲームも遊んでみてほしいです。

――ゲームとしての『バイオ』も、映像作品としての『バイオ』も、ますますの盛り上がりが楽しみです。最後に、『インフィニット ダークネス』のアピールをお願いできますでしょうか。

羽住長い間ずっと『バイオハザード』のファンだという方が観ても楽しめる作品になっていますので、ぜひご覧ください。本作は設定もしっかりと作っていて、ほかの作品につながる部分もあるので、本作が初の『バイオハザード』だと言う人は、ほかの映像作品やゲームに触れるきっかけになってくれるとうれしいです。

小林『ヴィレッジ』にはレオンとクレアは出てこないので、彼らの活躍を観たいという人も、ぜひ『インフィニット ダークネス』をご覧ください。本作は、一度だけでなく何回も観ていただきたい内容になっています。1回目でわからないことが2回目で理解できるということもあると思いますし、字幕版と吹き換え版も両方観ていただきたいです。全部で4回くらいは観てください!

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作品データ

  • タイトル:Netflixオリジナルアニメシリーズ『バイオハザード:インフィニット ダークネス』
  • 配信日:Netflixにて2021年7月8日(木)より全世界独占配信