2020年11月12日に、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)より発売されたプレイステーション5(PS5)。その高い性能と人気が相まって、発売直後から現在まで品薄状態が続いている。

 そんなPS5の目玉機能のひとつが、従来ハードよりも臨場感のある音響でゲームを楽しめる“Tempest 3Dオーディオ”だ。本記事ではTempest 3Dオーディオに関わる、SIEのエンジニア・今井憲一氏にインタビュー。Tempest 3Dオーディオがどのようなものなのか、そしてどんな魅力を持っているのかなどを改めてお聞きした。

PS5/3D Audio

 また、記事の後半には、2021年4月30日発売のPS5専用タイトル『Returnal(リターナル)』および、2021年5月8日に発売を迎えた『バイオハザード ヴィレッジ』開発陣からのPS5の3Dオーディオに関するコメントも掲載。クリエイター目線の声も合わせてチェックしてみてほしい。

PS5のエンジニアが語るTempest 3Dオーディオの魅力

PS5のエンジニアに聞くTempest 3Dオーディオの魅力。『リターナル』『バイオハザード ヴィレッジ』のオーディオに関する開発者のコメントも

今井憲一(いまい けんいち)

ソニー・インタラクティブエンタテインメント ソフトウェア開発本部 副本部長。

1993年ソニー入社、エンジニアとしてオーディオ信号処理の研究に従事。1999年、プレイステーション2エンジンを使ったリアルタイム映像システム“GScube”のプロジェクトに参加したことをきっかけに2000年にソニー・コンピュータエンタテインメント(現SIE)に異動。プレイステーション・ポータブル、プレイステーション3、プレイステーション Vita、プレイステーション4、PS5のプラットフォーム立ち上げに関わる。プレイステーションプラットフォームの技術戦略立案なども担当している。

――本日は、PS5に搭載されたTempest 3Dオーディオについて、どういった特徴があり、どんなサウンドが楽しめるのかをお聞きしたいと思います。改めて、基本的なところから解説をお願いできればと。

今井Tempest 3Dオーディオとは、簡潔に言えば無数のスピーカーが配置された球体の中に入るようなイメージで、360度どこからでも音が聞こえてくる、という技術です。こういった3Dオーディオはほかにもあるのですが、PS5はサウンド専用のプロセッサを積んでいるのが特徴です。この専用プロセッサのおかげで、ほかの3Dオーディオよりも繊細で、没入感の高いサウンドが楽しめるようになりました。

――ゲームに使用するCPUとは別に、サウンド専用プロセッサを積んだことにより、サウンドの出力だけに注力しやすい、というような認識で合っていますか?

今井はい。一般的に、ゲーム開発者というのはCPUをグラフィックやエンジン、AIなどに使いたくて、そのパワーをあまりオーディオには割きたくないものなのです。それも当然のことなのですが、サウンド部分が割を食うことも少なくありませんでした。PS5では、CPUをゲームの演算をするものとサウンドの演算をするものに分けることで、それぞれの住み分けが明確になっています。開発者としても取り扱いやすく、さらにサウンドにも注力してマシンパワーを割けるような形を目指しました。

――PS5においては、それだけサウンドに力を入れているということですね。ちなみに、従来機種と比べると、どれほどの進化を遂げているイメージなのでしょうか。

今井じつはPS4のサウンドも素晴らしくて、対応ヘッドセットやスピーカーを使用すれば3Dオーディオや7.1サラウンドサウンドにも対応していました。それらも基本的には仮想のスピーカーが自身の周囲にたくさんあるようなイメージなのですが、PS5ではその仮想スピーカーが数倍まで増えたという感じです。イメージしにくいかもしれませんが、PS4では隙間のあいたスピーカー群だったのが、今回はギッシリとぎゅうぎゅうにスピーカーが敷き詰められた、という感じです。そのおかげで、音が鳴っている場所をより正確に感じられる、いわゆる“定位感”が格段に向上しています。

PS5のエンジニアに聞くTempest 3Dオーディオの魅力。『リターナル』『バイオハザード ヴィレッジ』のオーディオに関する開発者のコメントも
球体の頂点がスピーカー……というようなイメージ映像。あくまでイメージ映像で、実数とは異なるという。

――PS5の発売からしばらく経ちますが、実際に体験された方々からの反応はいかがでしょうか。

今井直接ユーザーから話を聞ける機会は限られているのですが、各デベロッパーの皆さんなど、さまざまな関係各所から情報を集めたところでは、PS5の3Dオーディオを試したほとんどの方々に、その機能について驚いてもらっている印象です。

――確かに、実際に体験してみると3Dオーディオの臨場感は素晴らしいものでした。左右だけでなく、とくに上や下からの音がよりリアルと言いますか。

今井3Dオーディオでは上下からの音も聞き取れるようになっており、本当に細かく設置されたスピーカーたちに上下左右から包まれたような感覚を味わえます。

――臨場感のあるサウンドはゲームの盛り上がりや没入感にもつながりますが、当然ならゲームプレイ自体にも影響しますよね。

今井サウンド体験もゲームタイトルによってそれぞれ異なりますが、とくにFPS(一人称視点のシューティング)ではゲームプレイに影響するような効果を発揮するでしょう。「音がどこから鳴っているのか?」という点に関しては定位感の向上でかなり感覚が異なります。銃声や足音が聞こえる位置によって、どこに敵がいるのかというが把握しやすくなっています。そしてそのリアルな音の体験が、戦いの臨場感をより高めてくれることでしょう。

――周囲の状況を把握するうえでは、定位感の違いは大きそうですね。ちなみに、いまのところ3Dオーディオはヘッドセットのみに対応していますが、将来的にはテレビモニターなどにも対応予定なんですよね。

今井その予定です。

――そちらの対応も楽しみにしています。現状では何らかのヘッドセットを通じて体験できる3Dオーディオですが、専用のチューニングが施された公式ヘッドセット“PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット”が人気ですね。“PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット”と、ほかのメーカーのヘッドセットではやはり聞こえかたが違うのでしょうか。

PS5のエンジニアに聞くTempest 3Dオーディオの魅力。『リターナル』『バイオハザード ヴィレッジ』のオーディオに関する開発者のコメントも
PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット

今井PS5の3Dオーディオは、基本的にはすべてのヘッドセットで楽しんでもらいたいと考えて設計してあります。“PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット”はその感じかたをよりスマートに味わってもらえるように調整されたものではありますが、「これを手に入れないと十分に3Dオーディオを体験できない」というものではありません。

――なるほど。まずは手持ちのもので試してみるとよさそうですね。ヘッドセットを使用するにあたり、サウンド設定でとくにやっておくべきことはありますか。

今井ホームメニューから“設定”を選択し、“サウンド”→“音声出力”と進むと、“3Dオーディオの調整”という項目があります。この設定は非常に重要で、現時点では5段階が用意されています。音を聴き比べながら、自分の耳に合った調整にすることで、より3Dオーディオを正確に楽しめるようになります。

――この5段階の項目というのは、いわゆる“頭部伝達関数(HRTF:Head Related Transfer Function)”による音の聞こえかたの調整ということですよね。

今井そうですね。人間の耳というのは人によって形が異なりますし、頭蓋骨の大きさや、ヘッドセットと耳の距離、さらには身体の作りによっても音の伝わりかたは変わるんです。そこの調整をする項目となっています。現状、PS5で用意している5段階は、多くの方々のデータから統計を取った結果をもとにしたものになります。

――読者の方々にもぜひ体験してみてほしいのですが、この項目の設定によってサンプル音の聞こえかたがかなり変わって驚きました(編注:音の聞こえかたには個人差があります)。個人的には鳴っているサンプル音の音源自体が違う? と思うほどだったのですが、そういうわけではないんですよね?

今井もちろん音源はいっしょです。頭部伝達関数を変更することで、音の伝わりかたに違いが出るんです。

――3Dオーディオの“オン/オフ”は確認する方がわりと多いと思うのですが(ちなみに初期状態ではオンになっている)、これを読んでいる皆さんも、ぜひ“3Dオーディオの調整”を試すことをオススメします。ところで、先ほども少しお話がありましたが、各デベロッパーが手掛けるゲームの3Dオーディオへの対応というのは、どのような状況なのでしょうか。

今井PS5が3Dオーディオ機能に対応しているからといって、現状のすべてのゲームが3Dオーディオに対応しているわけではありません。「どうすれば3Dオーディオに対応できるのか?」と試行錯誤を試みているデベロッパーさんも少なくないですね。そうした場合、我々は「こうしたらいいですよ」と技術的なアドバイスをする場合もあります。

――そうした取り組みの中で、これから3Dオーディオ対応タイトルが増えていきそうですね。

今井ええ、きっとこれから増えていくことでしょう。

PS5のエンジニアに聞くTempest 3Dオーディオの魅力。『リターナル』『バイオハザード ヴィレッジ』のオーディオに関する開発者のコメントも
3Dオーディオの仕組みを開発者に体験してもらっている様子

――また、PS5の専用コントローラー“DualSense”は、ハプティックフィードバックによる繊細な振動が味わえます。3Dオーディオとの相性はどのように感じていますか?

今井従来の振動と異なり、DualSenseのハプティックフィードバックはオーディオ信号を送って振動させています。実際に聞こえるゲームの音と、ハプティックの聞こえない音。同じようにオーディオデータを送っているという意味でも親和性は高いと思っています。ただしこれは機能として用意しているものであって、デベロッパーさんの側でその機能を活用いただく必要があります。今後、多くのタイトルへの採用が広まれば、皆さんにもより実感いただける要素になるでしょう。

――こうした技術の蓄積ができてくると、当初は思いもつかないような演出方法が生まれたりしそうですね。

今井技術を使い込んでいけば、あるかもしれません。個人的にも、デベロッパーさんが我々の想像を越える遊びを実現してくれることを楽しみにしています。

――ちなみに、現時点(2021年5月)においてPS5の3Dオーディオを楽しむのにオススメのゲームはどういったものになるのでしょう?

今井Demon's Souls(デモンズソウル)』、『Marvel's Spider-Man:Miles Morales(スパイダーマン:マイルズ・モラレス)』は、サウンド面において開発チームと我々がかなり緊密にやり取りしながら作っていたということもありオススメです。先日発売された『Returnal(リターナル)』もかなり力を入れてくださっていて、3Dオーディオの実力を十分に味わえます。また、カプコンさんの『バイオハザード ヴィレッジ』にも期待しています。

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 それと、PS5にプリインストールされている『ASTRO's PLAYROOM』は、PS5の機能をすべて体験してもらうために作られたタイトルですので、3Dオーディオもバッチリ感じてもらえるはずです。ただ、ハプティックフィードバックを体験するタイトルという印象が強いほか、コントローラーから音が聞こえてくる要素も多いため、ヘッドセットを付けずに遊んでしまいがちですけれども(苦笑)。

――確かにそうですね(笑)。最後に、今度PS5の3Dオーディオがどのような進化を遂げていくのか、その方向性や課題を教えてください。

今井先ほども触れましたが、まずはテレビモニター・スピーカーへの対応をいち早く実現することですね。また、これは実現するかは未定ですが、3Dオーディオの調整設定を増やしたいという思いもあります。たとえば現時点では5段階ですが、その設定項目をもっと増やしたりですとか。ほかにも検討していることはありますが、まずはPS5を手に取る機会があれば、現状の3Dオーディオを実際に体感していただきたいと思います。

ゲームクリエイターたちが語る Tempest 3Dオーディオ

 以下では、PS5のTempest 3Dについてゲームクリエイターたちに行ったメールインタビューの内容をご紹介。『バイオハザード ヴィレッジ』のサウンドディレクターを務めた鉢迫 渉氏、『Returnal』のオーディオリードであるロイク・クーティエ氏が語るその魅力と可能性とは?

『バイオハザード ヴィレッジ』サウンドディレクター/鉢迫 渉氏

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――『バイオハザード ヴィレッジ』の制作において、サウンド面でとくに注力したのはどんな点でしょうか。また、それらを実装するにあたり、PS5だからこそ実現したことはありますか?

鉢迫 フォーリーという手法で生の音を積極的に収録し、素材として活用しました。収録もコンタクトマイクやバイノーラルマイクなど特殊なマイクや手法で行っています。とくにプレイヤーが触れるものや操作するもの、取得するオブジェクトなどには気を遣っています。これらオブジェクトの質感を高めることは、ゲームの没入感を高めるのに効果的でした。これらオブジェクトの一部と、本作のユニークなキャラクターたちのセリフ、唸り声、足音や動作音は3Dオーディオの機能を使い、より明確な定位感と存在感を表現できるようにミキシングしています。

――ゲームにおける“音”といっても、いまは多岐にわたりますね。『バイオハザード ヴィレッジ』においては、ざっとどんな種類があるものなのでしょうか。

鉢迫 ゲームサウンドを構成する要素としては、まずセリフがあります。セリフといっても、イベントやムービーシーンなどの物語を展開してユーザーを誘うセリフもあれば、キャラクターのループアニメーションに紐付くアクション(戦闘の気合声や息使いなど)を起すことで再生されるボイスなどがあります。

 つぎにBGMですね。戦闘時やイベント時に再生するBGMのほか、ステージの設置物BGM(テレビやラジオなど)、タイトル画面やインベントリなどゲームシステムに伴なうものもありますし、ほかにも雰囲気や気配を表現するBGMなどもあります。これはBGMと効果音(環境音)との中間的な位置ずけで人の感覚や感情に訴える効果を狙うものになります。

 最後に効果音ですが、たとえばキャラクターの動作に伴なう効果音(足音や衣摺れ、打撃音、特殊な画面効果の音)の場合、足音はキャラクターの体格などの要素や、さまざまな床の素材に合わせて制作していますし、打撃音も銃、ナイフ、鈍器など武器の種類で分けて実装します。

 武器の効果音(発砲音、武器の操作音、跳弾、排莢)は、銃の種類ごとに発砲音、リロードなどの操作音、弾丸の壁に当る音を壁の素材別に実装しています。

 そのほかに環境音(室内、屋外、ステージの自然物、人工物)、ギミック効果音(仕掛けや装置、壊物)、演出効果音(恐怖演出)、システム音(決定音やカーソル音)の要素もありますね。効果音は距離や強さ、スケールによっては同じ用途の効果音だが複数用意してリアルタイムでミックスしたり、切り換えたりしてリアリティーを出しています。

――『バイオハザード ヴィレッジ』におけるステージの臨場感を構成するうえでは、膨大なサウンドが重層的に機能しているというわけですね。サウンドに気を配りながら改めてゲームをプレイしてみたくなりました。PS5のTempest 3Dオーディオについて、ゲームクリエイター視点からの印象を教えてください。

鉢迫 3Dオーディオでの開発で空間の音場表現、解像度が格段に飛躍したと感じています。広がりや奥行き、定位が鮮明になり、移動する音も包みこむ音も存在感が上がった印象があります。360度に数百もの仮想スピーカーを設置できることで、より没入感、臨場感に対する説得力が増し、高品位なグラフィックとの相乗効果が表現できるようになったと思います。

 また、専用のCPUがゲームの処理を犠牲にせず、音の残響や回り込み、遮音処理を行えるのでより臨場感、没入感のあるサウンドの造り込みが可能になりました。このテクノロジーを利用してリアルタイムに音の広がりや距離感のコントロールとミキシングを発展させたいと思います。

――最後に『バイオハザード ヴィレッジ』をプレイしていないゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

鉢迫 『バイオハザード7』に引き続き、イーサンの物語が語られます。今作はホラーのテイストもバラエティーにあふれた作品になっています。戦闘では敵の存在を全方向で感じてもらえればと思います。リアルタイムにエスカレーションするBGMも必聴です。シリーズを今までプレイしたことの無い方でもプレイしやすい手触りの良いゲームです。PS5でプレイする際は、ぜひヘッドフォンで3Dオーディオを体験して頂きたいと思います。

『Returnal』オーディオリード/Loic Couthier(ロイク・クーティエ)氏

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――『Returnal』の制作において、サウンド面でとくに注力したのはどんな点でしょうか。また、それらを実装するにあたり、PS5だからこそ実現したことはありますか?

クーティエ 『Returnal』の開発に携わったときから、本作はPS5の3Dオーディオとハプティックフィードバックを最大限に活かすようなタイトルにしたいと考えていたため、オーディオ面においては「最高の3Dオーディオ体験を実現する」という目標を常に念頭におきながら開発を進めました。

 PS5のTempest 3Dオーディオは、あらゆるサウンドを3Dで実行するために必要な処理能力を備えていました。Tempestがなければ、こんなにも多くのサウンド数を再生することはできず、もっと限られた体験になってしまっていたと思います。

 また、Tempestは空間解像度にも優れており、非常に詳細な3Dサウンドスケープ(=音景色・音の風景)を作り出すことができます。それはまるで自分の周りに何百ものスピーカーがあるかのような体験になります。

――PS5のTempest 3Dオーディオについて、ゲームクリエイター視点からの印象や可能性を教えてください。

クーティエ  3Dオーディオは、プレイヤーの皆さんがゲームの世界に没入していただくための自然な進化だと考えています。ステレオスピーカーがサラウンドに進化したように、そこからもう一段階技術的な進化を経たものが3Dオーディオであり、プレイヤーの皆さんは3次元の音に囲まれていることを感じることができます。

 サラウンドシステムは非常に高価で、一部の人しか利用できないのに対し、3Dオーディオは多くの人が(音楽の再生などのために)すでに所有しているような、通常のステレオヘッドフォンを使って体験することが可能です。

 大多数のプレイヤーが3Dオーディオを利用できるようになったことで、ようやくゲームの仕組みとして利用できるようになりました。『Returnal』では、アトロポスの世界への没入感を高めるだけでなく、3Dオーディオを使うことで、周囲の敵を正確に発見できるようになり、それがない場合と比較しても確実に良いプレイができるようになっています。

――まだ『Returnal』をプレイしていないゲームファンに向けて、メッセージをお願いします。

クーティエ  主観的な回答になりますが、私にとって『Returnal』の大きな魅力は深みのあるダークで感情的なストーリーと、激しくカラフルで中毒性のあるゲームプレイが絶妙に組み合わさっている点です。アトロポスの世界には独特なムードと没入感があり、セレーネとしてこの惑星に迷い込んでいることがリアルに感じられ、夢中になってしまいます。

 オーディオとハプティックフィードバックは没入感をさらに高めることに寄与しており、セレーネの視点に立って、彼女やプレイヤー自身を包み込む世界に耳を傾け、感じていただくことができます。さらに、本作の音楽は心に残る、感情に訴えかけるものとなっており、豊かなサウンドスケープによってその場にいるかのような気分を体感していただけるでしょう。

 戦闘パートにおいてはテイストを変えることで、全体的なゲーム体験がリッチで、バランスがとれているように感じられます。セレーネと強力な武器を操作することは爽快感がありますし、3Dオーディオは戦場を顕在化させ、激しいSFアクションの中でヒーローになったような感覚を音楽からも感じていただけます。

[2021年5月19日19時47分修正]
※インタビュー内容の一部に誤解を招く表現があったため、該当箇所を修正いたしました。