ときを経て開発者本人から真実が明かされた

 1990年に発売されたファミリーコンピュータ用ソフト『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』。言わずとしれた国民的RPG『ドラゴンクエスト』シリーズの4作目にあたる作品で、AIを用いた戦闘やオムニバス形式のストーリーなど、先進的なシステムがさまざま搭載されていた。

 その中で根強くファンの記憶に残っているのがとある裏ワザ。それは、絶対に逃げることができないボス戦で8回“にげる”を選択すると、その後の攻撃が必ず“かいしんのいちげき”になるというもの。誰がどのようにして発見したのか定かではないが、なぜか多くのプレイヤーが知っている裏ワザだった。

 果たして、なぜこのような裏ワザが誕生してしまったのだろうか?

 2021年5月1日に公開されたYoutubeの動画でそのヒミツが明かされることとなった。

『DQ4』で8回逃げると必ず“会心の一撃”になる理由が明らかに。当時のプログラマーがYoutubeで明かす

DQ4にげ8バグについて、あの人を直撃!

 “DQ4にげ8バグについて、あの人を直撃!”と題された動画をアップロードしているのは、本作と『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』でチーフプログラマーを務めていた内藤寛氏。

 動画では、同じく『ドラゴンクエスト』シリーズのプログラムを手掛けた山名学氏に電話を掛け、「あれってなんでああなったの?」と直接的に問いかけている。

『DQ4』で8回逃げると必ず“会心の一撃”になる理由が明らかに。当時のプログラマーがYoutubeで明かす
『DQ4』で8回逃げると必ず“会心の一撃”になる理由が明らかに。当時のプログラマーがYoutubeで明かす

 お互いを「寛ちゃん」、「ぶーちゃん」と呼び合い、いまでも仲がよさそうなご様子。

 さっそく山名氏にその理由を聞いていくと、ゲームの仕様上、通常の戦闘では4回目の“にげる”で必ず逃げられるようになっていたため、「それ以上逃げられることを想定していなかった」という。

『DQ4』で8回逃げると必ず“会心の一撃”になる理由が明らかに。当時のプログラマーがYoutubeで明かす
『DQ4』で8回逃げると必ず“会心の一撃”になる理由が明らかに。当時のプログラマーがYoutubeで明かす

 プログラムでは、当時のメモリー容量の問題もあり専用のカウンターを持たず、2進数で0~100までの3桁で逃げるの選択回数をカウントしていた。2進数で3桁であれば最大“111”、つまり10進数の7までカウントでき、4回で必ず逃げられるという仕様では十分な数だったわけだ。

 しかし、絶対に逃げられないボス戦で“にげる”を8回選ぶと、2進数でのカウンターが“1000”になりカウントが4桁目に突入。想定外の状態になる。その4桁目に“1”が入るというのがミソで、本来逃げるのカウント場所ではないその位置は、パルプンテで発生することがある“必ず会心の一撃になる”フラグの場所になっていた。

 こうして“8回逃げると(パルプンテの効果が発生し)必ず会心の一撃になる”というプログラムになってしまっていたというわけだ。

『DQ4』で8回逃げると必ず“会心の一撃”になる理由が明らかに。当時のプログラマーがYoutubeで明かす

 というわけで、30年以上の時を経て裏ワザの真相(?)が明らかとなったわけだが、プログラマーらしく理路整然とした説明はじつに明解で、当時のことを詳しく覚えている両名の記憶力には驚かされる。

 動画ではこの後、さらに詳しいプログラムの説明や、「本当はこうすればよかった」とプログラム談義に花が咲いたり、「これは連鎖制想像力欠如屈辱的バグ」と評した内藤氏に対し山名氏が「お前もバグ出してたじゃん!」と反論したりとほほえましいやり取りが見られるのでぜひ視聴してみよう。

『DQ4』で8回逃げると必ず“会心の一撃”になる理由が明らかに。当時のプログラマーがYoutubeで明かす

 ちなみに、内藤氏のYoutubeチャンネル“内藤かんチャン”では、『ドラゴンクエストIV』タイトルロゴのギリシャ数字“IV”が、手前から奥へバーンと縮小して出てくる同作のオープニングデモを、拡大・縮小機能がないファミリーコンピュータ上でどのように実現したかなど興味深い内容が多く語られている。こちらもぜひチェックしてみよう。

チーフプログラマーが語る、ドラゴンクエスト3/4のタイトルロゴの秘密