コーエーテクモゲームスのTeam NINJAの代表作である『NINJA GAIDEN』シリーズ。そのシリーズ作品の最終バージョンである『NINJA GAIDEN Σ』(『Σ』、『NINJA GAIDEN Σ2』(『Σ2』)、『NINJA GAIDEN 3: Razor's Edge』(『3RE』)を一本にまとめたのが、『NINJA GAIDEN: マスターコレクション』だ。

 2021年6月10日発売で、対応ハードはNintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One、PC(Nintendo Switch版のみ、残虐表現をマイルドにした“Version D”も発売)。

 本記事では、Team NINJAブランド長を務める安田文彦氏にインタビュー。『NINJA GAIDEN: マスターコレクション』の仕様について詳しくお聞きしたほか、続編などの今後の展望をお聞きした。

『NINJA GAIDEN: マスターコレクション』インタビュー。『Σ』版の収録理由や、追加要素の有無などの仕様、今後の展望をTeam NINJAブランド長・安田文彦氏に訊く
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安田文彦(やすだ ふみひこ)

コーエーテクモゲームス
Team NINJAブランド長(文中は 安田)

マスターコレクションの仕様について

――『3RE』から数えますと、約9年ぶりとなる『NINJA GAIDEN』シリーズが発売されます。発表できた、いまのお気持ちを教えてください。

安田移植タイトルではありますが、純粋にうれしく思っています。 ファンの皆さんには本当にお待たせしてしまい、申し訳ない気持ちです。ただ、反響は想像以上に大きくて驚きました。

――今回、3作品を移植することになった経緯や、その狙いを教えてください。

安田『NINJA GAIDEN』シリーズは、『デッド オア アライブ』シリーズと並ぶ、Team NINJAの看板タイトルです。ただ、Nintendo Switchや、 プレイステーション4、Xbox Oneといった世代のハードで、『NINJA GAIDEN』シリーズ作品をリリースできていませんでした。それが気になっていたこともあり、『仁王2』などの開発がひと区切りついたタイミングで、本作の開発をスタートさせました。 今回は初めてPC版も発売するので、より多くの方に遊んでもらいたいです。また、『NINJA GAIDEN』を当時遊んでいた世代のスタッフが、Team NINJAに徐々に増えてきていて、 彼らが開発者の立場として『NINJA GAIDEN』シリーズに触れるきっかけにしたい、という開発側の狙いもあります。

――では、今回の収録タイトルについてお聞きします。『NINJA GAIDEN 3』は、『3RE』バージョンというのは、正直ファンとして納得です。

安田『3』は初めてディレクターを担当したタイトルなので思い入れはありますが、 まあ、絶対『3RE』ですよね……(苦笑)。

――すみません(笑)。そして、初代と2作目は『Σ』バージョンの収録となっていますよね。その理由を教えてください。

安田まず単純な理由として、 どちらも最終的なバージョンなので採用しています。リュウ・ハヤブサ以外のキャラクターが使用できますし、追加された要素も多いですから。プレイステーション Vitaで発売した『Σ PLUS』の要素も含まれており、当時は最適化できなかった部分もあるため、そこは今回、しっかりと調整していきます。

――ファンのあいだでは初代『NINJA GAIDEN』は『NINJA GAIDEN BLACK』、『NINJA GAIDEN 2』は無印版が好き、という人もいますよね。

安田はい、 賛否両論があることはわかっています。僕自身も『2』の無印版が開発者としてデビューしたタイトルなので、 思い入れも深いです。もうひとつの選定理由として、じつは当時のデータがバラバラにしか残っていなくて、サルベージしようにもできない状態なんです。ただ、『NINJA GAIDEN Σ PLUS』、『NINJA GAIDEN Σ2 PLUS』を制作したときに一度、そういったデータをできる限りかき集めて、整理したことがありまして。それを活用できるのも、『Σ』を選んだ理由です。

――なるほど。つまり、『Σ2 PLUS』に入っていた、追加モードも遊べるということですね。

安田はい。NINJA RACEモード、TAG MISSIONモードも収録しています 特典コスチュームなども、すべて使用できるようになっています。

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『NINJA GAIDEN Σ』
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――また、 今回は移植版ということで、 リマスタータイトルではないのでしょうか?

安田基本的な素材はそのままですが、 フルHDや4Kに対応(※)していますし、フレームレートも安定かつ向上しています。劇的にビジュアルが綺麗になるわけではないですが、各ハードに最適化された、 リマスタータイトルです。ちなみにPC版ですが、キーボード操作には対応しておらず、ゲームパッド専用となっています。さすがにキーボード&マウスではかなり遊びにくいですから。

※4K対応は、プレイステーション5、プレイステーション4 Pro、Xbox Series X|S、Xbox One X版のみ。Steam版はPC本体のスペックによって4K対応。

――ゲームバランスの調整などはありますか?

安田今回、 よほどの不具合や理不尽な部分は直していますが、基本的にはノータッチです。ただ、『Σ』と『Σ2』の追加要素として、『3』で登場した“ヒーローモード”が使えます。当時から難度が高すぎて、 遊びにくいという人も多かったですから、今回はアクションが苦手な人でも、全作品クリアーできると思います。また、TAG MISSIONだけはひとりでもクリアーしやすいように、難度を調整しています。

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『NINJA GAIDEN Σ2』
『NINJA GAIDEN: マスターコレクション』インタビュー。『Σ』版の収録理由や、追加要素の有無などの仕様、今後の展望をTeam NINJAブランド長・安田文彦氏に訊く

――それはうれしい要素ですね。 残虐表現についてですが、それも『Σ』基準ですか?

安田はい、そのままの残虐表現になっています。Nintendo Switch限定の“Version D”についてですが、こちらは『3RE』だけを調整したものです。Nintendo Switchユーザーの方々は、あまりグロテスクなものは好まないのではないかなと考えまして。今回はより幅広い層に遊んでもらいたいこともあってご用意しました。

――断骨はとくにグロいですからね(苦笑)。オリジナル版はオンラインプレイに対応していましたが、今回は対応していないんですよね?

安田残念ながら対応していません。 協力プレイもやり込んでくださったプレイヤーがいるのは把握していますが、やはり3タイトルあることや、開発スケジュールやビジネス面を鑑みると、非対応にせざるを得ないというのが正直なところです。 もし協力プレイ等に対応するとなったら、新作を作るレベルの労力がかかります。ただ、タイムアタックランキングなど、非同期型のオンライン機能には対応しています。

――シングルプレイで競い合えると。『Σ』などはコントローラを振ると、いろいろなことができましたよね。たとえば忍法が強化されたり、女の子のおっぱいを揺らしたり(笑)。

安田プレイステーション3の特徴として、コントローラーにジャイロセンサーがあったので取り入れられた要素です。プレイステーション3ありきのシステムですから、今回は対応していません。忍法については、最初から強化されたものが使えます。おっぱいを揺らす機能ですが、それを楽しみたい人は、ぜひ某バカンスゲームでどうぞ(笑)。

――あちらにレイチェルは居ませんが(笑)。レイチェルと言えば、『Σ』などでは正直かなり弱かった印象がありますが、今回使いやすくパワーアップされたりしていますか?

安田いえ、『Σ』のままです。パワー系のキャラクターなので、立ち回りが大変なのはわかってはいますが、その難しさも魅力なのかなと。『Σ2』のあやねや紅葉もそのままです。

――今回シリーズ作品を初めて遊ぶ人に向けて、何かアドバイスはありますか?

安田まずはガードを覚えてください。じゃないと、すぐ殺されます(笑)。ただ、シリーズを通して操作のレスポンスが本当にすばらしいゲームですから、操作をマスターしていけば、リュウ・ハヤブサはプレイヤーの思うがまま、縦横無尽に戦ってくれます。ぜひ、ひとつひとつアクションを覚えながら楽しんでください。また、3作品ともに、豊富な武器を用意していて、自分に合う武器を探しながら、 戦うのもいいでしょう。アクションが苦手な人は、今回追加されたヒーローモードもオススメです。

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『NINJA GAIDEN 3: Razor's Edge』
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いつかリベンジしたい続編構想

――安田さんから見て、3作品それぞれ、どのような作品に見えていますか?

安田1作目に僕は関わっていませんが、聞くところによると、じつは『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(※)にインスパイアされて開発がスタートしたらしいんです。「嘘でしょ」と思うかもしれませんが、最初は釣りシステムなども予定していたらしくて(笑)。最終的にはアクションに特化していきましたが、謎解きやジャンプアクションなど、探索要素も含まれているのは、そういった名残なんですよね。

※『ゼルダの伝説 時のオカリナ』……1998年に任天堂より、ニンテンドウ64にて発売されたアクションアドベンチャーゲーム。

――釣りをするリュウ・ハヤブサも見たいですね(笑)。

安田いつか実現するかもしれません(笑)。『2』は、欠損や滅却の法が追加され、よりアクションに特化したタイトルになりましたね。『3』は紆余曲折ありましたが、『3RE』でシステム面を見直し、 総合力やバランスは取れたタイトルになったと思います。3作品、どれも共通して言えるのは、敵が本気でプレイヤーを殺しにかかる、骨太な難易度です。

――たしかに、 いまで言う“死にゲー”の走りとも言えるほどに、難度は高いですよね。

安田何度も挑戦して乗り越えていくという達成感などは、やはり『仁王』にも活かされた要素です。いま見ると自分で引くぐらいにゲームスピードが早くて驚きました(笑)。ただ、そこはシリーズの魅力でもあります。

――『仁王』と言えば、 シリーズにハヤブサ一族が登場したり、ムラマサまで登場しますよね。

安田レン・ハヤブサ、ジン・ハヤブサという先祖を登場させました。じつは続編の構想を練っているときに、先祖の名前だけは決めていて。そこから名前を付けました。また、千子村正を出すとなったら、やはりムラマサのことしか思い浮かばなくて(笑)。いつの時代でも、あの見た目のおじいちゃんだろうということで、そのままの見た目です。おそらく、先祖でしょう。

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『仁王2』に登場した、レン・ハヤブサ

――では、それぞれのタイトルで、開発当時を振り返ると、どんな印象をお持ちでしょうか?

安田『Σ』は横目で見ていただけですが、 みんな夜中まで開発を続けていたのを覚えています。そして『2』から開発に関わるのですが、最初のステージである“東京摩天楼”を制作したんです。作りかたもわからない中で、スタッフたちとあれこれ議論しながら作ったなあと。今回改めて遊んでみると「もっとこうしたほうがいい」と思うところもあったりはしましたが、どこから敵が現れるのかなども全部覚えていたほどに、当時から考えて作っていたんだなあと、しみじみ思いました。

 そして、『3』は大きく方向性を変えたこともあり、きびしい意見も多かったです。 そこから『3RE』でなんとか持ち直したとは思いますが、シリーズの新作としての期待に応えられなかったことは、いまだに心残りです。そのリベンジをいつか、続編で果たしたいという気持ちがありますね。

――今回の『マスターコレクション』の発売により、続編の可能性も出てくるのでしょうか?

安田『マスターコレクション』の反応や、結果を見て、前向きに検討したいですね。ヒットしてくれれば、つぎにつながる可能性も大きくなるでしょうし。正直、まだ企画としてあがってもいませんが、よくスタッフたちと「続編を作るとしたら?」などという話もします。『3RE』の開発を経て、やはりシリーズに必要なものはコレだろうと見つめ直した経験もありますから、『NINJA GAIDEN』がどういうゲームなのかは把握しているつもりです。

 その中で、時代とともにアクションゲームの在りかたというのも変わってきていますから、しっかりと時代に合わせて進化させる必要があります。 昨今は純粋なアクションゲームもヒットを飛ばしていて、アクションゲームファンもどんどん増えていると思いますし、ぜひ“NINJA GAIDEN 4”をお届けしたいですよね。また、Team NINJAにとって、リュウ・ハヤブサという存在は、本当に大事なものです。リュウ・ハヤブサが世界最高の忍者であることを、もう一度世界の皆さんに知ってもらう機会が、本作だと思っています。

――ちなみに、某大乱闘ゲームにリュウ・ハヤブサを出してほしいと、よくファンが言ってますが……。

安田招待状お待ちしています(笑)。