歌劇学校を舞台に、個性豊かなキャラクターが織り成す青春群像劇が楽しめるシミュレーションゲーム『ジャックジャンヌ』が、ブロッコリーよりNintendo Switch用ソフトとして2021年3月18日に発売される。 キャラクターデザインは、『東京喰種トーキョーグール』の作者として知られる石田スイ氏。キャラクターの立ち絵はもちろん、 総数160枚を超えるイベントイラストも石田氏が描き下ろしているうえ、原作、シナリオ、世界観設定も担当している。

 本稿では、本作のシナリオを担当している十和田シン氏へのメールインタビューを掲載。こだわりのポイントや開発エピソードなどを訊いた。

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十和田シン(とわだしん)

ノベライズ作家、シナリオライター。別名義である十和田眞の名前で『恋愛台風』を執筆、小説デビュー。本作では、シナリオを担当。2021年3月19日には、恋愛アンソロジー『STORY MARKET 恋愛小説編』(集英社文庫編集部)が発売される。

自分がシナリオを書くのは想定外!? 相談に乗ったことから開発に参加

――本作の依頼が来たときの率直な感想を教えてください。

十和田じつは、石田さんご本人から「男子だけで歌劇の舞台を作る男子校に、女性である主人公が性別を隠して入学する設定のゲーム制作話がきている」と、それこそまだ『ジャックジャンヌ』というタイトル名が生まれていない時代に聞きました。コンセプトもいまとはかなり違っていたのですが、さまざまな人間模様を描かれる石田さんが、それこそ多種多様なエンディングにたどり着けるゲームを制作するというところに興味を惹かれた記憶があります。

 ただ、当時は私がアドベンチャーゲームやシミュレーションゲームが好きなのもあって意見を聞かれたくらいで、私自身がシナリオを書くことになるとはまったく思っていませんでした。

――シナリオを制作するにあたり、原作の石田さんとはどのような役割分担、工程で制作されたのですか?

十和田石田さんが思い描く世界を忠実に再現するため、打ち合わせに膨大な時間を費やしました。そこですりあわせた内容をプロットに落とし込み、石田さんに確認してもらった後、シナリオ執筆に入ります。書き上がったシナリオは石田さんに細かく添削してもらい、さらにその文章を私のほうで整え、最後に私とプロの校正さんで丁寧にならしていきました。

 ただ、脚本やルートによっては私と石田さんの役目が変わることも多く、いいものを作るためどうすればいいのかつねに模索し、臨機応変に対応しながら制作していました。やりとりで印象に残っていることですが、石田さんはシナリオを始め、BUにスチル、三面図、作詞に仮歌、ゲーム監修と作業が多岐にわたっていたため、その作業ごとに適した人格を作っていたらしく、あるときは陽気な音楽プロデューサー、あるときは三面図に向き合い悟りを開いた修行僧と、打ち合わせのたびに性格や考えかたが変わっていました。

『ジャックジャンヌ』十和田シン氏インタビュー。「立花希佐のルートは本作の核になる物語で、本作そのものと言えます」

クオリティーを保つためにスペシャルチームを結成!

――本作ではシナリオのボリュームが非常に多いとうかがっています。やはりたいへんでしたか?

十和田そうですね。小説20冊分を超えるボリュームでひとつの作品を描くのは経験にないことでした。しかも時間は限られている。シナリオのクオリティーを保つため、マンガのノベライズ作品を多く手掛けているJUMP j BOOKSさんにサポートをお願いし、プロの校正さんにも入っていただきました。サブシナリオは『約束のネバーランド』のノベライズなどを担当されている七緒先生にお願いし、以前からの仕事仲間にシナリオの管理や資料集めを頼むなど、独自のチームを編成しています。そのおかげでたいへんではありましたが、納得できる仕上がりになりました。

――本作ではゲームシナリオのほかに、舞台公演の脚本も制作されているそうですね。公演脚本は、ゲームシナリオとは違う工程で制作されたのですか?

十和田石田さんと話し合いながら作るという点は変わりませんが、『ジャックジャンヌ』という作品の中にありながら、ひとつの独立した作品として、違う世界、テーマ、登場人物、ストーリーを作らなければいけないぶん、かなりのエネルギーを要しました。それでいてこの脚本は、それを演じる主人公たちクォーツ生にとってさまざまな変化をもたらすものでなければいけない。独立していながら深くつながり合っている、その調整が難しかったです。

『ジャックジャンヌ』十和田シン氏インタビュー。「立花希佐のルートは本作の核になる物語で、本作そのものと言えます」

――ストーリーでキャラクターたちがどう動くかを考えるときは、どのようにイメージを膨らませていくのか教えてください。

十和田キャラクターが抱えている悩みや苦しみについてよく考えます。そう感じる理由はなんなのか、どうすれば解決できるのか、解決する必要はあるのか。そうやってひとりひとりと対話しているうちにキャラクターが向かう方向性のようなものが見えてきます。ただ、実際に書き出すとキャラクターたちがぜんぜん違うことをしていることが多かったです。

ひとつひとつの選択肢にも十和田氏の強いこだわりが

――テキストアドベンチャーゲームのシナリオということで、とくに苦労した点を教えてください。

十和田ゲームの醍醐味のひとつである“選択肢”が『ジャックジャンヌ』にも多く出てくるのですが、石田さんから「プレイヤーの選択に正解・不正解を作らないようにしたい。それでいて何を選んでもおもしろい選択肢にしてほしい」と言われ、これがなかなか難しかったです。世界観を作っている初期のころは少年歌劇らしさを意識していましたが、ある程度形ができてからは、青春ものとして視点を大きく広く変えていきました。

『ジャックジャンヌ』十和田シン氏インタビュー。「立花希佐のルートは本作の核になる物語で、本作そのものと言えます」

――本作でとくにお気に入りのルートを挙げるとすると、どのルートになりますか?

十和田お気に入りは全部になってしまうのですが、注目してほしいルートは主人公である立花希佐ルートです。こちらは本作の核になる物語で、本作そのものと言っても過言ではありません。執筆は石田さんメイン。1年最後の公演に向かって駆けていく主人公たちの姿は、少年マンガのような熱さ、強さがあります。ぜひ体験してみてください。

――体験版は、どんなところに注目してプレイしてほしいですか?

十和田シナリオもですが、イラストに音楽、ダンス、キャストさんたちのお芝居、それらすべてが重なり合って生み出される『ジャックジャンヌ』という世界をぜひ体感していただきたいです。加えて、新人公演はまだ入り口。体験版をプレイすれば、その先にある彼らの熱く濃い1年を感じとっていただけるのではないかと思います。

――本作の発売を心待ちにしているファンや読者にメッセージをお願いします。

十和田『ジャックジャンヌ』は、報われづらいこの世の中で、それぞれが舞台を通して救いを探し求めていくような話でもあります。私たちがそうであるように、キャラクターひとりひとりに過去があり、そして未来がある。彼らがどんな道を歩んでいくのか、どうぞ見届けてあげてください。

『ジャックジャンヌ』十和田シン氏インタビュー。「立花希佐のルートは本作の核になる物語で、本作そのものと言えます」
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