マンガ界で“狂犬”とも呼ばれる作家・ちょぼらうにょぽみ氏。奇抜な作風でTVアニメ化も果たした代表作『あいまいみー』のほか、「FXで有り金全部溶かした人」や、「リアルで自宅が火事になった」などのネタ(ネタではない)で知られているマンガ家だ。そんな先生は、じつは根っからのゲーム好きで、週刊ファミ通の月1連載マンガ『ピコピコゲーム温泉』では、ゲームにまつわるアレコレを独自の視点で語っているのだが……

 週刊ファミ通2021年2月25日号(2月10日発売)では、マンガなのに何故か文字たっぷりで先生と担当編集者が語り合うことになったので、その全文を当記事でお届け。事の発端は、〆切ギリギリのタイミングになって先生から送られてきた下の原稿だった──

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と、いうわけで……

ちょぼ今回は、マンガではなく文字で語りたいと思います♪

川島……はい?

ちょぼほら、ピコ泉って、ページの左上に“FAMITSU COLUMN”って書いてあるように、立ち位置的には桜井さんや伊集院さんの連載と同じ“コラム”じゃないですか。だから必ずしもマンガという形態じゃなくても許されるんじゃないかと思ったんです。今日は打ち合わせも兼ねて、口頭でたっぷり語らいましょう!

川島ははぁ……なるほど、ここでの会話をそのままネタにしてしまおうという魂胆ですね。要するに作画コストカットじゃねーか!

ちょぼらうにょぽみ

怖いもの知らずのマンガ家にして1児の母。ゲームと声優さんをこよなく愛する。代表作は『あいまいみー』、『弱酸性ミリオンアーサー』、『ダメ母でごめん』など。

川島KG

ファミ通の編集者。ゲームと鉄道が好き。先生に振り回されたり、逆に振り回したりする。

ちょぼいやいや、作画の時間が取れなかったわけじゃないですから! ピコ泉は連載を始めて3年目に入ろうとしていますけど、週刊誌なのに月1回の連載ペースなので、たまには変わったことをして独自色を出したいなぁと。

川島まぁ確かに、毎週載っているマンガに比べると見てもらえる機会は少ないですからね。でしたら、マンガ界では狂犬とも呼ばれる先生がどうしてファミ通で描いているのか、まずはその理由とかを改めて語ってもらえると、懐疑的な読者さんも納得してくれるかもです。

ちょぼそうですね。正直、「私はこんなにゲームが好きなんです!」って、いまさらアピールするのも無粋だよなぁとは思いつつ。

川島無粋、ですか?

ちょぼ私も含めて、子どものころからゲームに慣れ親しんできた人間にとって、ゲームが好きというのは“当たり前”じゃないですか。だっておもしろいんだもん。そういうゲームへの愛をSNSでアピールしたり、マンガのネタにするために流行りのゲームを遊んでみようっていう発想が、私にはあんまりなくて。ゲームはあくまでも大切な趣味のひとつで、もしもその中にネタにできそうなものがあったらネタにする、というスタンスでありたいんです。

川島それはすごく感じていますよ。先生と話していると毎回いろいろなゲームの話題が飛び出すのに、ピコ泉でネタにするのはほんの一部だし、Twitterではゲームのことをほとんど呟いておられないし。前回ネタにしたXbox Series Xもめちゃくちゃ遊んでいたのに。

ちょぼふふふ。『サイバーパンク2077』もひと通り遊んだので、いまは早くPS5がふつうに買えるようにならないかなーと思ってます。

川島僕もまだ買えてないです(涙)。でも、新しいゲーム機を買ったときくらいはTwitterでアピールしてもいいんじゃないですか?

ちょぼう~ん、私、自慢するわけじゃないんですけど、家にMVS(SNKが発売したアーケードゲーム基板および筐体。下の写真を参照)があって、十数万円くらいで売ってる好きな格闘ゲームの基板が欲しいなーとか常日頃から考えている人間なので、新しい家庭用ゲーム機が出たら買うのも“当たり前”なんですよね(笑)。ただ、Xbox Series Xのお手軽さには感銘を受けたので、ピコ泉でネタにしたんです。

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川島先生は学生時代、ゲーセンに通って格闘ゲームに打ち込んでいたんですよね。

ちょぼさすがに最近は通えていないですけど、格ゲーはいまも好きです。あ、そうそう、このところ、筐体や基板の価格相場がちょっと高くなっているような気がして……もしかしたら、海外の格ゲーファンにも売れている影響かもしれません。日本生まれの貴重なアーケードゲームが海外に流れる前に、欲しい人は早めに手に入れておいたほうがいいかもですよ!

川島家に筐体を置いているファミ通読者が、果たしてどれくらい存在するのだろうか?

ちょぼあと、UFOキャッチャーも得意なので、先日も大量に釣り上げてきました。ほら、見てくださいよコレ!(下の写真)

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川島えっ、こんなに取ったんですか!?

ちょぼすごいでしょう(笑)。UFOキャッチャーって、筐体の種類によっては、ある程度の金額を超えて失敗し続けるとお情けでアームの力が自動的に強くなったり、見かねた店員さんが強さを変えてくれることもあるので、そういうお店や筐体を見極めるのがコツです。

川島だからといって、こんなに取りまくったら出入り禁止を食らうのでは……?

ちょぼそれなりにお金も投入しているので、大丈夫じゃないですかね。ただ、「置き場に困るからグッズは取ってくるな」と家族に言われてからは、お菓子類だけにしています。

川島格ゲーじゃなくても現役バリバリのアーケードゲーマーじゃないですか!(笑)

いま流行りの“VTuber”に正直、思うこと

川島それにしても、先生は『あいまいみー』などのマンガ連載を複数抱えながら、別の雑誌でさらなる新連載を始めたり、有名企業や東京のプロサッカークラブからのお仕事も請けたりしていて、めちゃくちゃ働いていますよね。それなのに、意外にもスケジュールはしっかり守ってくれるのがスゴいなぁと思います。

ちょぼ「意外にも」って何ですか! っていうのはさておき、これでも以前より仕事を減らしているんですよ。ちょっと前まではいろんなゲームの宣伝4コマとかを描かせていただいてたんですけど、あるとき、自分のオリジナル作品を描く比率がだいぶ減っていたことに気付いて、作家としてマズいと思ったんです。そんな中、いまこそ『まんがタイムきらら』で勝負してみたいなぁと思って、偽名を使ってチャレンジすることにしたんです。

川島きらら編集部から出入り禁止を食らっていたはずの先生が、まさかのデビュー(笑)。

ちょぼまぁ、編集部のTwitterで告知してもらったら3分で正体バレましたけどね(笑)。私はもともと、きらら作品に代表される萌え系4コマへのアンチテーゼとして『あいまいみー』を描き始めた経緯があったので、出禁の噂が立ったのも無理はないんですけど……いまはもう大丈夫ですので! どうかご心配なく!

川島ちなみに、どうして今になって『きらら』で描いてみたいと思ったんですか?

ちょぼそれは、あくまでも私個人の見解ですけれど、萌え系4コマというジャンルが長く続いてきた中でネタがそろそろ出尽くしてきた感もあってか、変わり種の作品が最近増えてきたからですね。そうした変化も良しとしている今の『きらら』なら、私が描いてもいいんじゃないかと思ったんです。……って、なんで私はファミ通で『きらら』を語っているんだ?

川島個人的にはよく読む雑誌なので、興味深いです。先生の新連載も読んでますよ!

ちょぼありがとうございます。他社の編集者からそう言われるの恥ずかしいな(笑)。

川島そういえば、先生にちょっと見ていただきたいものがあるんです。リモート会話のカメラをVTuberのほうに切り換えますね。

ちょぼえ? VTuber?

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↑先生側から見た画面
(右上の似顔絵は合成)

ちょぼ…… って、ええっ!? ちょっと、これ、新連載のキャラクターじゃん! しれっと何を作ってんの!! ていうかマジで動いてるし!!!

川島はい。いま流行りのVTuberを作ってみたいなぁと思って、作っちゃいました♪

ちょぼ「作っちゃいました♪」じゃないんですよ! 私はいったいどんな顔して自分のキャラクターと向かい合えばいいんですかっ!

川島じつは、冗談半分でこういう姿のまま社内のリモート会議に参加してみたら、思いのほか好評だったんです。そこで上司から、うちの会社でも独自のVTuberを活用した企画ができたらおもしろいね、と言われて……。先生、いわゆるVの者に興味はありますか?

ちょぼあー、無くはないですよ。私の息子にも好きなVTuberがいるようですし。ただ、これも個人的な意見なんですけれど、VTuberが生身の人間に置き換わってもコンテンツとしての魅力が色褪せないような配信は、果たしてどれくらいあるんだろう……みたいなことを考えると、私はまだまだ進化する余地のあるジャンルだと感じています。

川島おっ、言葉は選びつつも率直なご意見。

ちょぼ少なくとも、ゲーム実況やスパチャとかでトークをする“だけ”の存在にとどまっていたら、あと1~2年もすれば飽きられてしまうような気がしますね。私ならこういう企画をやってみたいなぁ……っていうアイデアはよく浮かぶんですけど、いかんせん、マンガの仕事があるので実行には至らず……。

川島なんだかんだ言いながら興味津々じゃないですか(笑)。ぜひ、これからいっしょに楽しい企画を考えていきましょう!

(下のマンガに続く)

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 ……というわけで、
 芳文社さんに怒られないといいなぁと思いながらお届けした今回の記事でした。『きらら』も『ファミ通』もどうぞヨロシク!