アマゾンプライムビデオにて2021年1月現在、見放題配信中となっているテレビアニメ『とらドラ!』。2008年から2009年にかけて全25話、2クールにわたって放送された本作の、いまなお色褪せない魅力を、本稿ではご紹介いたします。

アニメ『とらドラ!』(Amazon Prime Video)

出会ってしまった“虎”と“竜”。ふたりは恋の共同戦線を張ることに……

【OP】とらドラ!/「プレパレード」

 本作の主人公は、目つきが鋭いことで他人から怖がられ、ヤンキーと誤解されることも多い高校2年生・高須竜児(声:間島淳司)。始業式の日、竜児はこの日からクラスメイトとなる女の子・逢坂大河(声:釘宮理恵)と廊下でぶつかってしまいます。

 小柄ながら凶暴な性格で“手乗りタイガー”と恐れられている大河と、ヤンキーと誤解されている竜児が出会ってしまったことで、周囲の生徒たちは戦々恐々。そんなギャラリーを他所に、竜児は大河に殴り倒されてしまうのでした。

 最悪な出会いかたをした竜児と大河。しかし程なくして竜児は、大河が自分の親友である北村祐作(声:野島裕史)に片想いをしていることを、そして大河は、竜児が自分の親友である櫛枝実乃梨(声:堀江由衣)に片想いをしていることを知ります。

 ふたりは互いの恋を成就させるために協力し合う、“恋の共同戦線”を張ることになるのでした。

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少々ややこしいので、第1話時点での人間関係の相関図を作ってみました。この関係が物語の中でどのように変化していくか、注目です。

 原作は電撃文庫より刊行の、竹宮ゆゆこ氏によるライトノベル。本編全10巻とスピンオフ全3巻の、計13巻が刊行中です。

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画像は原作小説『とらドラ!』1巻表紙(著者:竹宮ゆゆこ、イラスト:ヤス、KADOKAWA刊)。
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 アニメ版は監督・長井龍雪氏、シリーズ構成・岡田麿里氏、キャラクターデザイン・田中将賀氏という、のちに“超平和バスターズ”として『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』、『心が叫びたがってるんだ。』、『空の青さを知る人よ』の“秩父三部作”を手掛ける3人が、初めてメインスタッフとして集結した作品としても知られています。

 ちなみに、2009年にはプレイステーション・ポータブル用ソフト『とらドラ・ポータブル!』(発売:バンダイナムコゲームス/当時)が発売。マルチエンディングのアドベンチャーゲームで、ファンからも高く評価されました。

お互いの存在が何物にも代え難い大切なものになっていくふたり

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画像は『とらドラ!』DVD1巻。

 互いの恋愛成就のために結託した竜児と大河。それ以外にも、家事全般が好きな竜児は壊滅的な生活を送る大河を見かね、彼女が住む部屋の掃除まで買って出たり……竜児の母・泰子に気に入られた大河は毎晩の夕食を高須家で同じ卓を囲んで食べ始めたりと、ふたりの関係はだんだんと、不思議な親密さを持つようになっていきます。

 そんな関係を実乃梨や祐作に誤解されたりしつつも、夏休みの旅行、文化祭、生徒会長選挙といったイベントを経るたび、竜児と大河はそれぞれの想い人との距離を縮めていくことに。併せてふたりは、お互いのちょっと複雑な生育環境についても知っていくことになるのです。

 父親は失踪。スナックで働きながら昼夜逆転生活を送る母親に、女手ひとつで育てられた竜児。一方の大河は、父親の再婚相手と折り合いが悪く、また実の父親からもあまり愛されずに育ってきたことが明かされます。

 お互いへの恋愛感情はない……はずだけど、互いの悩みや痛みをほかの誰よりも理解し、いつの間にかお互いの存在が何物にも代え難い大切なものになってゆく竜児と大河。

 序盤は暴れん坊の大河をはじめとする、ハイテンションな登場人物たちのおもしろおかしいやりとりや、それらに振り回される竜児といったコメディ色の強い本作。しかし彼らが胸の内に秘めた想いは、物語が後半へと差し掛かると、胸に迫る、とても切ないものへと移り変わっていきます。

 繊細な感情が丁寧に描かれていくストーリーに、気づけば夢中になっていること間違いなし。2クール目、OP曲が『プレパレード』から『silky heart』に、ED曲が『バニラソルト』から『オレンジ』に変わったころには、彼らの恋愛模様から一瞬たりとも目が離せなくなっていることでしょう。

超弩級に個性的なキャラクターたち

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『とらドラ!』の主要キャラクターが描かれた、ベストアルバム『√HAPPYEND』のジャケット。左から北村祐作、櫛枝実乃梨、逢坂大河、川嶋亜美、高須竜児。

 『とらドラ!』を語る上で、強烈な個性を放つ登場人物たちの魅力に触れないわけには行きません。

 まずはなんと言っても大河のかわいらしさ。傍若無人な行動が多いけれど、そうした態度は内に秘めた弱さの裏返しであったりといった複雑なキャラクター性は、ツンデレ的な魅力を押さえていながらも、この言葉だけでは表現し切れません。

 そのワガママぶりを苦手に感じる人もいるかもしれませんが、竜児たちとの関わりの中での彼女の成長を、ぜひ最後まで見届けてほしいところです。

 そして誤解されがちながら、誰かのために行動できる竜児のやさしさには、誰もが好感を持てるはず。彼もまた物語の中で、迷いながらも成長していきます。

 ふたりの想い人である祐作と実乃梨も、ハイテンションで独特のノリが楽しい人物でありながら、友だち想いで、そのやさしさがときに空回りしてしまったり……誰もが周囲の友だちを大切に想っているからこそ、すれ違いや誤解が生まれてしまうのが本作の恋愛模様。誰も悪くないからこそ、胸が締め付けられます。

【ED】とらドラ!/「バニラソルト」

 第5話から登場する高校生モデルの川嶋亜美(声:喜多村英梨)も、これまた魅力的な女の子。大河とは犬猿の仲でありながら、なかなか素直になれない性格は似た者どうしのようにも感じられて……彼女もまた、本作の物語に必要不可欠な人物です。

 ほかのクラスメイトたちも、とにかく愉快な連中が揃っていて、「こんな奴らと青春時代を過ごしたかった」と感じる人は多いはず。そんなキラキラした青春が詰まっているからこそ、恋をして、大人になろうともがいている竜児たちの姿もまた、よりいっそう輝いて見えるのかもしれません。

最高のキャラクターたちが紡ぐ物語の結末を、見届けてほしい

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画像は公式サイトより。

 個性的すぎる登場人物たちの掛け合いを楽しんでいたら、いつの間にか彼女たちの内面にある迷いや葛藤、そのぶつかり合いといった、生々しいドラマに釘付けになっている……というおもしろさが、個人的な本作のイチオシポイント。

 シリーズ構成を担当する岡田麿里氏が書く女の子キャラクターの“生っぽさ”や青春モノとしての清々しさは、これ以降の作品にも通じる魅力ですが、竹宮ゆゆこ氏の原作自体こういった描写に優れているので、ふたりの長所が混ざり合っている本作は、ひとつ際立った味わいを持っています。

(個人的にも原作:竹宮ゆゆこ氏×脚本:岡田麿里氏のタッグによるアニメはまた観てみたい……)

 終盤のクリスマス、修学旅行、そして最終回。このあたりのエピソードは、涙なしには観れない人も多いことでしょう。ラブコメがお好きな方には、必ず結末を見届けてほしい作品です。

 序盤は癖が強いキャラクターたちに面食らうかもしれませんが、最後にはきっと全員のことが大好きになり、彼らの幸せを願わずにはいられなくなるはず。未見の方はアマゾンプライムの対象から外れたりする前に、ぜひ視聴してみてください。

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