いよいよ間近に迫ってきた2021年1月23日(土)公開の『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』。

 キャッチコピーに“さらば、全てのエヴァンゲリオン。”と銘打たれていることからも、本作がすべての『エヴァンゲリオン』シリーズの完結編になるであろうことが示されています。

 本稿では、これまでの『エヴァンゲリオン』シリーズについておさらい。テレビシリーズ、旧劇場版から新劇場版4部作までの歴史をざっくりと振り返ります。

 なお、当時の作品を取り巻く世間の評判などにも触れていきますが、あくまで筆者の主観によって感じたことをベースにご紹介しますので、感じた印象が違う場合もあるかもしれませんが、ご了承ください。

 それぞれの作品の配信サービスでの視聴方法についてもご紹介します。過去作を振り返りたい方、まだ観ていない作品がある方は、ぜひこちらをチェックのうえ、最新作の鑑賞に臨んでいただければと思います。

1995年:すべてはここから始まった――『新世紀エヴァンゲリオン』

 シリーズのはじまりである『新世紀エヴァンゲリオン』は1995年10月から1996年3月にかけて、テレビ東京系にて全26話にわたって放送。中学生の碇シンジ(声:緒方恵美)を主人公とした、謎めいていて内省的なストーリーが90年代という時代の空気にマッチし、人気を博しました。

『エヴァ』完結編映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』公開までに知っておきたい! これまでのシリーズを一挙振り返り
碇シンジ(画像は『新世紀エヴァンゲリオン』Blu-ray STANDARD EDITION Vol.1)
『新世紀エヴァンゲリオン』Blu-ray BOX STANDARD EDITION(Amazon.co.jp)

 無口で無表情な綾波レイ(声:林原めぐみ)と乱暴で高飛車な惣流・アスカ・ラングレー(声:宮村優子)という好対照なヒロインの魅力も話題に。アニメファン同士で“レイ派”、“アスカ派”に分かれてキャラクターの魅力を語り合った人も多いのではないでしょうか?

 また、18時30分からという夕方枠での放送ながら人造人間である“エヴァンゲリオン”が制御不能となり、敵である“使徒”を食べてしまう場面や、シンジが裸でいたレイに遭遇したあとの一連の出来事など、刺激的なシーンが多かったことで、夢中になった若いファンも少なくありませんでした(筆者が住んでいた地方では深夜放送でしたが……)。

『エヴァ』完結編映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』公開までに知っておきたい! これまでのシリーズを一挙振り返り
『エヴァ』完結編映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』公開までに知っておきたい! これまでのシリーズを一挙振り返り
綾波レイ(画像は『新世紀エヴァンゲリオン』Blu-ray STANDARD EDITION Vol.2)
惣流・アスカ・ラングレー(画像は『新世紀エヴァンゲリオン』Blu-ray STANDARD EDITION Vol.3)

 エヴァンゲリオンや使徒のビジュアルの新鮮さや、斬新な演出も見どころ。ロボットアニメに分類されることも多いものの、その人気はジャンルのファン以外にも波及していったのです。

 激しい使徒との戦い、存在意義に悩むシンジ、“人類補完計画”など謎めいたストーリー上の伏線……回を重ねるごとに盛り上がりを見せる物語を、視聴者は固唾を呑んで見守りました。

 しかし、訪れた最終回『世界の中心でアイを叫んだけもの』の展開は賛否両論。さまざまな伏線をすべてどこかに放り投げたような結末に、それまでストーリーを真面目に考察していたファンの中には怒り出す人がいたり、「いやこれはこういう意味なのだ」とさらなる考察を行う人なども多く、当時、作品を解説するエヴァの“謎本”も多く出版されました。

 後年では、そんな狂騒も含めて本作がいかに大きなムーブメントを生んだかを伝えるうえでの語り草に。この衝撃があったからこそ、いまも続く“エヴァ新作”への期待と不安はつねに大きなものになっているのだと言えるでしょう。

 なお現在このテレビシリーズの見放題配信は2021年1月現在、Netflixにて行われています。

アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(Netflix)

1997年:さらに大きなトラウマをファンに植え付けた問題作『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』

『エヴァ』完結編映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』公開までに知っておきたい! これまでのシリーズを一挙振り返り
画像は『劇場版 NEON GENESIS EVANGELION - DEATH (TRUE) 2 : Air / まごころを君に』DVD
『劇場版 NEON GENESIS EVANGELION - DEATH (TRUE) 2 : Air / まごころを君に』DVD(Amazon.co.jp)

 テレビアニメの完結後、シリーズは2作の劇場作品を公開することになります。なおこの2作は現在展開中の“新劇場版”シリーズと差別化するため“旧劇場版”シリーズと呼ばれることも。

 1作目のタイトルは『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』。こちらはテレビシリーズの総集編に、つぎの劇場版へと続く新展開の一部が描かれた作品となっており、1997年3月に公開。のちに総集編部分は『EVANGELION:DEATH(TRUE)²』といったタイトルでビデオ、DVD、ネット配信などの形で販売されています。

 そして1997年7月には劇場作品2作目にして完結編『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』が公開されました。

 この2作目で描かれたのはテレビシリーズの25話と26話で描かれなかった、もうひとつの結末。

 テレビシリーズを超えるグロテスクな表現、アスカが寝ている病室でシンジがひとりで……といった描写、加えてあまりに救いのない展開にファンの多くは騒然。テレビシリーズで明かされなかった物語への期待を膨らませて鑑賞に臨んだ人々に、さらに大きなトラウマを植え付けることになったのです。

 一方、その“鬱展開”と名高い容赦のないストーリーは、“新劇場版”シリーズを含むほかの作品では決して味わえないものとして高く評価する声も多く、現在でも根強い人気もある作品です。

 こちらの2作もテレビシリーズ同様、Netflixにて見放題配信が行われています(2021年1月現在)。

『EVANGELION:DEATH(TRUE)²』(Netflix)
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(Netflix)

2007年:序盤の山場“ヤシマ作戦”までの物語を最新の映像でリメイク『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』

 コミック版の連載や、ゲームシリーズなどアニメ以外での展開は続いたものの、旧劇場版上映以降、しばらくアニメシリーズの新たな動きがアナウンスされることはなかった『エヴァンゲリオン』。そんな中、突如として制作が発表され、アニメ作品としては10年ぶりの新作となったのが2007年9月に公開された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』です。

 発表当初から、“序・破・急・?”の4部作になるとアナウンスされており、これ以降の劇場版はタイトルに“新劇場版”と付く新シリーズに。テレビシリーズ及び“旧劇場版”とはパラレルな世界観で、新たな物語が紡がれることになります。この制作発表は、旧劇場版の呪縛に悩まされ続けた多くのファンを、期待と不安で胸いっぱいにさせたのでした。

 新劇場版第1作となる『序』では、テレビシリーズ序盤の山場となる“ヤシマ作戦”にいたるまでのストーリーをリメイク。当時としては最新のCGや撮影技術によって、名場面の数々が改めて描き出されました。

 この時点ではテレビシリーズとのストーリー上の変化はほとんどありませんでしたが、新キャラクターも顔を見せる次回予告の「次第に壊れていく碇シンジの物語はどこへと続くのか?」というナレーションもあり、2作目での新展開への期待はかなり大きいものだったように思います。

 (筆者的にはアスカの登場が完全に次回作へと持ち越されていたことが、2作目への期待の大部分を占めていました。)

 なお新劇場版はこれから公開される最新作を除いて2021年1月現在、Amazonプライムビデオにて全作見放題配信中となっています。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(Amazonプライムビデオ) 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(EVANGELION:1.11)』Blu-ray(Amazon.co.jp)

2009年:まったく新しい、熱いストーリー展開に熱狂!『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

 2年後、あまり間を開けずに2009年6月公開された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』は、多くのエヴァファンに衝撃を持って迎え入れられました。

 過去作と一線を画すように目的が明快なストーリー。シンジ、レイ、アスカを中心に描かれる、丁寧な心理描写によって感情移入しやすいドラマ。目を見張るアクションの数々。胸のすくような“文句の付けようがなくおもしろいエヴァ”がそこにはあったのです。

 とくに、シンジのやさしさに応えるように、人間らしい感情表現が増えていくレイ。そして彼らの変化を支えようと行動を起こすアスカ……と、『破』で描かれた展開には、あらゆる人間関係がうまくいかなかった旧シリーズからの、よい方向への変化の兆しがこの時点では確かにありました。

 新キャラクターの真希波・マリ・イラストリアス(声:坂本真綾)の飄々とした性格も、レイともアスカとも異なった魅力があり、本作の新鮮さに色を添えてくれたといえるでしょう。

 非常に続きの気になるところで終わる本作。次回作への期待は、前回にも増して大きなものになりました。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(Amazonプライムビデオ) 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 EVANGELION:2.22 YOU CAN (NOT) ADVANCE.』Blu-ray(Amazon.co.jp)

2012年:再びの賛否両論作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

 そうして『破』から3年後に大きな期待を背負って2012年11月に公開された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』。ここでエヴァファンは、テレビシリーズ最終回や旧劇場版を鑑賞したときのような困惑を、再び強いられることになるのです。

 前作からいきなり14年もの歳月が経過し、さまざまな状況が一変している作品設定。ちゃんとした説明もなく、ほかの登場人物から理不尽になじられ続けるシンジ。説明のいっさいない専門用語を交えながら、観客すらも置いてけぼりで進行していくストーリー。

 『破』のような続編を待っていた人にしてみれば、ストレスフルな作品になっていたと言えるでしょう。しかし、その難解で陰鬱な作風に「これぞ我らのエヴァンゲリオン」と、逆に喜んだり、懐かしい感情を抱いたファンも決して少なくはないようです。

 個人的にもほかのどのエヴァにも似ていない画作りや、絶賛された『破』からさらにここまで大きなテイストの変化を付けてきた驚きから、決して嫌いにはなれない作品です。いや、むしろかなり好きかも……。

 また、旧作から登場していた謎の美少年・渚カヲル(声:石田彰)が、本作ではシンジと奇妙な友情を深めていきます。ピアノの連弾をする場面は本作を象徴する名シーン。ほかに誰もシンジを気遣ってくれる人がいない本作において、それがどれほど彼の支えになったかを思うと、その後の展開がまた切ない……。

『エヴァ』完結編映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』公開までに知っておきたい! これまでのシリーズを一挙振り返り
渚カヲル(画像は『新世紀エヴァンゲリオン』Blu-ray STANDARD EDITION Vol.7)

 ともあれ、“新劇場版”というシリーズ全体が、最終的にどのような評価を受けるのか――この『Q』の賛否両論ですら吉と出るのか? それとも「旧劇場版からなにも変わっていなかった」と言われてしまうのか?

 ……すべては完結編へと委ねられることになったのでした。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(Amazonプライムビデオ) 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q EVANGELION:3.33 YOU CAN (NOT) REDO.』Blu-ray(Amazon.co.jp)

2021年:そして……すべてのエヴァが終わる――『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』

 『Q』の公開以降、再び長い沈黙が続くことになった『エヴァンゲリオン』。総監督である庵野秀明氏が携わった『シン・ゴジラ』が非常に高い評価を受けるなどの出来事を見守りながら、ファンはやきもきした気持ちで新たなエヴァを待ち続けていました。

 そしてついに『Q』から約9年の歳月を経てようやく公開が決まったのが、完結編とある『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』。物語の果てになにが待っているのか、まだ誰も知りません。

 日本のアニメ史でも、ここまで多くのファンを獲得しながら、ここまで長きにわたりファンを振り回し続けたシリーズはほかにないでしょう。そんな作品がついに完結を迎える記念すべき瞬間を、ぜひいっしょに見届けてください。

作品情報

  • タイトル:『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』
  • 公開日:2021年1月23日(土)

※新型コロナウイルス感染症の影響で変更となる場合があります。

スタッフ

  • 企画・原作・脚本:庵野秀明
  • 総作画監督:錦織敦史
  • 作画監督:井関修一、金世俊、浅野直之、田中将賀、新井浩一
  • 副監督:谷田部透湖、小松田大全
  • デザインワークス:山下いくと、渭原敏明、コヤマシゲト、安野モヨコ、高倉武史、渡部隆
  • 美術監督:串田達也(でほぎゃらりー)
  • 撮影監督:福士享(T2 studio)
  • テーマソング:『One Last Kiss』宇多田ヒカル(ソニー・ミュージックレーベルズ)
  • 音楽:鷺巣詩郎
  • 監督:鶴巻和哉、中山勝一、前田真宏
  • 総監督:庵野秀明