世界中で話題を呼んだVRゲーム『東京クロノス』の続編『ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウス: ビヨンドクロノス)』(以下、『アルトデウス: BC』)が、2020年12月4日についにリリースされた。約300年後の地球を舞台に、人類と超巨大生物“メテオラ”との戦いが描かれていく、VR専用(※現在はOculus Quest 2/Quest/Riftに対応していることが発表されている)のアドベンチャーゲームだ。
VR空間で展開する超巨大生物とのバトルや、歌姫ノアのライブ、個性的なキャラクターとのドラマなど、“体感できる物語”として注目を集めている本作。作品のタイトルに付けられた、“Beyond Chronos”の通り、前作の『東京クロノス』を超えるさまざまな要素が収録されており、 “SF”や“メカ”、“VRライブ”といった、新たな試みが満載だ。
これらの要素はなぜ実装されたのか? 総合プロデューサーの岸上健人氏と監督の柏倉晴樹氏にインタビューを実施。週刊ファミ通2020年12月17日号(2020年12月3日発売)に掲載された内容に、誌面に掲載しきれなかった話題を加えてお届けする。
岸上健人氏(きしがみ けんと)
MyDearestの代表取締役社長。2016年に同社を起業し、さまざまなVRコンテンツを手掛けてきた。前作『東京クロノス』と同じく、本作でも総合プロデューサーを務める。(文中は岸上)
柏倉晴樹氏(かしわくら はるき)
MyDearest所属のクリエイター。CGアニメーターとして活躍し、フルCGアニメ映画『楽園追放』ではモーション監督を担当。本作にはディレクターとして携わっている。(文中は柏倉)
柏倉氏が長年温めてきた企画がシリーズ最新作のベースに!
――12月4日に『アルトデウス: BC』が発売されますが、率直な感想を教えてください。(※インタビューは発売前に実施)
柏倉『東京クロノス』のときと比べて、開発期間が長く感じました。実際に動き始めたのは2019年の5月ごろなので、一般的なタイトルと比べると長くはないのですが……。
岸上時間のわりに密度が濃かったですよね。それに長くないと言っても、VR作品の中では、開発に時間をかけていると思います。
柏倉計算すると、開発期間は1年半ぐらいなのか……。冷静に考えるとすごいですね。アニメ映画も、もっと時間をかけて作りますから。
岸上 1年半で作るものではなかったですね(苦笑)。ちなみに、柏倉監督の手応えはどうですか? 僕から見て、柏倉監督は自信がありそうな顔をしているな、と(笑)。
柏倉(笑)。僕が旗印となって開発を進めてきたところは、想像以上のものになっているので、手応えは感じています。ただ、開発者の多くがそうだと思いますが、ゲームが出る前の時期は、「購入してくれた方に楽しんでもらえるかな? 大丈夫かな?」という、半信半疑の気持ちもあります。
岸上このように柏倉監督は謙虚な方なのですが、僕はすごくいいものができたなと思っています。テストプレイを通して、VRゲームとして『東京クロノス』からめちゃくちゃ進化したな、と実感することが多くて。
すでに最後まで何回かテストプレイをしているのですが、ストーリーを知っているのに、終わった後にめちゃくちゃ感動するんですよ。ユーザーの方も、僕と同じような感動を味わってもらえると思います。
――おふたりとも手応えを感じていると。本作は、最初から『東京クロノス』の続編として開発がスタートしたのですか?
岸上『東京クロノス』の開発終盤に、『2』を企画しようと考えていました。そのとき、柏倉監督とふたりきりで話す機会があり、「『東京クロノス』の数百年後を舞台にした作品の構想があるんです」と急に言われて。
柏倉じつは、大学生のころから長年温めていた企画があったんです。いつか映像作品として作りたいと考えていたのですが、『東京クロノス』が終わったときに新しい企画がほしいだろうなと思い、提案してみました。
岸上柏倉監督の考えていたものは、かなりハードなSF作品でした。これはすごい作品にできると思ったので、続編は柏倉監督の企画をもとに開発することに決めました。
――本作は、前作『東京クロノス』の続編であるものの、どのようなつながりがあるのか、明言されていませんよね。ファンとしては、前作のキャラクターが登場するのかなど、具体的なつながりが気になりますが……。
岸上『アルトデウス: BC』には、『東京クロノス』と関連のあるキャラクターが登場します。もちろん、本作だけでも楽しめるように作っていますが、前作を遊んでいると顎が外れるほど驚いてもらえるネタを用意しています。柏倉監督からこのアイデアを聞いたとき、それだけで続編を作る価値があると思いました。ネタバレになってしまうので、これ以上はお話できませんが、キーワードは“SF”と“キャラクター”です。
――なるほど。想像が膨らみますね。本作をより楽しみたい方は『東京クロノス』をチェックしておくのがよさそうです。ちなみに、柏倉さんが長年温めていた企画というのは、もともとアニメーションで実現しようと考えていたのですか?
柏倉そうですね。大学のときに自主制作で作品を作るのが好きで、卒業後も何か作りたいとずっと考えていたものが企画の元になっています。この企画は、いつかアニメーションにしたいなと思っていたのですが、仕事などが忙しくてなかなか実現できずにいました。
――もともと温めていた企画に、SFや歌といったテーマはあったのですか?
柏倉 SFはありましたが、歌はなかったですね。歌は岸上が提案してくれました。
岸上先ほどお話した通り、柏倉監督の企画はかなりハードなSFだったので、もう少しポップな要素があってもいいかなと考えました。僕が提案したというよりは、本作の企画を進める中で、歌の要素を入れようとなった感じですね。
――歌やVRライブが追加されて、かなりポップになったと思います。アニメーションではなく、VRの作品になったことでよかったところはありましたか?
柏倉アニメーションでどれだけ作るのか、しっかり想定していませんでしたが、バトルシーンはVRならではのよさを体験していただけると思います。下から巨大なものを見上げたり、マキアのコックピットから見上げたりするシーンは、ふつうのアニメーションで表現するのが難しいものもあるので。VRのほうが、直接巨大なものを表現しやすいと思っています。
岸上手前味噌ですが、巨大なものを見上げるシーンはヤバいですよ。本作ではVRでしかできない体験を堪能してもらえると思います。
柏倉あとは音響効果も、VRならではの強みですね。VRにすると、プレイヤー中心の音になるので、アニメーションで聴こえる音とは臨場感が違うと思います。
――メディア向け体験版をプレイしたとき、キャラクターの立っている位置からしっかりと音声が聴こえてきて立体音響のよさを感じました。
岸上僕たちは音にもこだわっていて、VRゲームでここまで作り込んでいる作品はないんじゃないかと自信を持って言えます。サウンド特化のチームが手掛けていますし、『東京クロノス』の経験も活きているので、やれることはすべて実現できました。
――バトル中に、歌つきの音楽が流れる演出もいいですよね。パイロット気分を高めてくれました。
岸上マキアを操縦しているシーンは、BGMのおかげで高揚感と気持ちよさを感じてもらえるんじゃないかなと。
――操縦していて気持ちよかったです(笑)。そもそも、本作をアドベンチャーパート、アクションパート、ライブパートに分けた意図を教えてください。
柏倉アドベンチャーパートは、前作からの流れで最初から実装するのが決まっていて、本作では新たに探索の要素を加えています。
アクションパートも当初から作ろうと考えていたのですが、その名の通り、アクション性の強いものにしたかったんですね。ただ、セリフを読み進めていくアドベンチャーパートに入れ込むのが難しいと思い、パートを分けることにしました。
最後のライブパートはわかりやすいと思います。こちらは、ほかのパートと要素がガッツリ分かれているものなので、最初から別にするつもりでした。
岸上プロデューサーの視点で補足すると、パートを3つに分けることで、多くのユーザーにアピールしやすいという思惑があります。アドベンチャーもある、アクションもある、ライブもある、だから買おうぜって。
それにアクションパートやライブパートを実装したことで、画面映えの問題も解決できました。VRゲームは、一般的なゲームと比べて画面映えがしにくいぶん、アピールするのが難しくて。
――プロモーションを強化する狙いもあったのですね。各パートでとくに苦労したことは?
柏倉アドベンチャーパートは、シナリオをまとめるのがたいへんでした。僕の頭の中にあったアイデアを膨らませて、シナリオとして落とし込んでもらっているのですが、初めての試みだったので、正直、これで本当にいいのかと不安になることもあって……。それにSF作品ということで、設定や世界観の整合性を執るのにも苦労しましたね。僕は要素が仲間ハズレになるのが好きではないので。
――要素が仲間ハズレになるとは?
柏倉たとえば、もともとある設定を成立させるために設定を新たに加えた際に、追加した設定がほかのものとなじまないと言いますか。仲間ハズレになることがあるんです。すると「後から加えたんだな」と、すぐにバレてしまうんですよ。そうならないようにするために、新たに追加したものにもほかの要素との関係性をしっかり持たせて、仲間ハズレにならないようにするということですね。
――確かに、要素を加えるたびに全体の辻褄を合わせるのは骨が折れそうです……。
岸上めちゃくちゃたいへんでしたね。高島さん(高島雄哉氏。本作のシナリオ、SF考証担当)がいなければ、成立できなかったと思います。前作と本作とのつながりも、高島さんのSF考証があればこそ成り立っていますし。
柏倉高島さんにSF考証をお願いしてよかったですね。高島さんは、僕たちがやりたいことを柔軟に汲み取って、いろいろなアイデアをたくさん提案してくれました。
――高島さんが開発に加わったことで、作品のクオリティーが上がったのですね。
岸上あとは、アドベンチャーパートの探索も苦労しました。開発期間の後半に、急遽、探索をより進化させたいということになって。
柏倉そうでしたね。新たな作業が発生してたいへんでしたが、手を動かしてターゲットを拾うなど、VRらしい体験が増えたので、前作にはない体験ができると思います。
――ちなみに、SF考証を高島さんにお願いした経緯は?
岸上 SF考証を任せられる方にツテがなかったので、まずはどんな方がいるのか、探すところから始めました。いろいろ調べてみたところ、高島さんのお名前を拝見する機会が多かったんです。実際に高島さんの著書『ランドスケープと夏の定理』を拝読し、とてもすばらしいハードSFだったので、監督の作品との相性もいいと思いました。それがお願いする決め手になりましたね。
ランドスケープと夏の定理(Amazon.co.jp)――高島さんの反応はいかがでしたか?
岸上 VRゲームというのが琴線に触れているようでした。SFに関わる人間として興味があったようで、本作の開発にも楽しそうに参加してくれました。
柏倉 VRには、もともと興味があったみたいですよ。VRのコミュニティにも顔を出したことがあると、高島さんからうかがっています。
強い信頼関係が生み出した個性豊かな登場人物たち
――マキアを操縦するパートなども、前作にはない体験と言えますよね。
柏倉マキアのようなメカやマシンを入れるアイデアは最初からあったのですが、戦闘シーンをどうやって表現するかは、最初のハードルというか、ポイントになりました。ガチのロボゲーを作るというのは、僕らのやりたいことからズレてしまうので、マキアを使ってしっかりVR演出に振ろうと。
岸上結果的に、アクションパートは体感重視で、メカを操縦するパイロットの気持ちを体験できるような内容にしています。
柏倉メカを登場させるのは、開発チームで初めての試みだったこともあって、いろいろなアイデアを出し合いましたよね。僕が考えているイメージを開発チームで共有するために、Unityで簡単なものを作って、仮の音楽やシーンをつけてみんなに観てもらったりして。そこで僕のやりたいことが伝わったので、相談しやすくなりました。
――マキアのデザインを考えるうえで、たいへんだったことはありましたか?
柏倉僕らがたいへんだったというよりは、メカニックデザインのI-IVさんが苦労したと思います。というのも、I-IVさんは当初、細部まで描き込まれたデザインを上げてきてくれたんです。
とてもすばらしいデザインだったのですが、VRでは細部まで表現するのが難しくて……。泣く泣くシンプルなデザインに寄せてもらったのですが、単純にシンプルにするのではなく、なぜシンプルなデザインなのか、I-IVさんがしっかりと理由を考えてデザインしてくれているんです。
岸上 I-IVさんの説明を聞くと感動しますよね。そこまで考えてくれているんだって。
柏倉たとえば、装甲がシンプルで角張っているのには理由があるんですと。音を効率よく跳ね返すために、あのシンプルなデザインにしていますと教えてくれました。
あとは、上半身が船のようなデザインになっているのにもちゃんと理由があって。マキアはサイズが400メートルと非常に大きいので、整備するときは水につけながら整備をするのではないか? という考えからなんですね。移動させるときも、水につけながらのほうが牽引しやすいのではないかと。そういった細かいところまで設定を考えてデザインしてくれているんです。
このデザインにはそういう意図があったのかと、驚かされることもたくさんありました。
――おお、それは詳細をぜひ知りたいですね。
柏倉 I-IVさんはもともと建築にも造詣のある方で、マキアはロボットでありながら、半分は建築に近い考えでデザインしてくれたのかもしれません。僕の想像なので、ご本人に確認してみないとわかりませんが。
――ちなみに、I-IVさんにマキアのデザインをお願いした経緯は?
柏倉キャラクターデザイナーのLAMさんの世界観に同居できるメカニックデザイナーは誰かなと考えたときに、自然とI-IVさんが浮かびました。
岸上柏倉監督が好きなメカニックデザイナーの方を挙げてもらって、その中でLAMさんといちばん相性がよさそうだったのが、I-IVさんでしたね。ただ、I-IVさんは連絡先を公開されていなかったので、僕がpixivから連絡をしたのですが、お返事があって本当によかったです(苦笑)。
――そんなやり取りがあったとは(笑)。反応はいかがでしたか?
岸上 VRはおもしろそうだねと、最初からノリ気でしたね。
柏倉仕事が早い方で、最初の打ち合わせの時点で、もう絵を準備してくれていて。
岸上あれには驚きましたし、感動しましたよね。僕らとしては、プロジェクトに参加してくれませんかとお願いするつもりだったのに、すでに絵を用意してくれていて。
柏倉最初の打ち合わせの時点で、I-IVさんが用意してくれた絵をベースに意見交換ができたので、仕事が非常に行いやすかったです。
岸上柏倉監督とI-IVさんは、相性もよかったんだと思います。打ち合わせのとき、ふたりがロボットモノの話題で盛り上がっていて、とても楽しそうでした。残念ながら、僕はふたりほどロボットモノに詳しくないので、会話に参加できなかったのですが(苦笑)。
柏倉『ファイブスター物語』や『バーチャロン』などの話で盛り上がったりはしました。とくに初代の『バーチャロン』は少ないポリゴン数でもカッコよく見えるようにデザインされているのが、僕はけっこう好きで。それってすごいことなんですね。
I-IVさんに上げていただいたデザインも、その初代『バーチャロン』と同じくらいすごい、と感想をお伝えしたくらいです。これは僕の中の最上級の誉め言葉なんですけど、伝わりますかね?(笑)。
岸上 I-IVさんも楽しそうに話していたので大丈夫かと(笑)。
――なるほど(笑)。ほかにはライブパートの情報があまり出ていないと思うので、ぜひそのあたりもうかがえれば。
柏倉ライブパートは、空間にウソをつきたいという思いがありました。VTuberなどのライブは、ひとりが多いですし、キャラクターのサイズが変わりませんよね?
でも、VRのライブならキャラクターの数を増やしたり、サイズを大きくも小さくもできる。さらに、キャラクターを逆さまに表示するといったことも可能です。こうした僕の要望を実現するのは、たいへんだったと思います。
――あとはデザイン面で言うと、LAMさんとはどのようなやり取りをされたのでしょうか?
柏倉 LAMさんには、前作に引き続きキャラクターデザインを担当してもらっていますが、僕はLAMさんの考えるいちばんいいデザインがほしいので、必要最低限の意図しか伝えないようにしています。
岸上柏倉監督とLAMさんは信頼関係が非常に強くて。ふたりの信頼関係があるからこそ、僕たちはLAMさんにわりと任せているところが多いというか。
柏倉 LAMさんと会話したとき、当社の仕事はいちばん成約がないと言っていました。デザインに関するリテイクも少ないって。
岸上そう言っていましたね。
柏倉もちろん、リテイクをお願いすることはあるのですが、LAMさんがあげてくれたデザインを全否定することはありません。リテイクを頼むにしても、LAMさんのやりたいことを汲み取って、もっとこうしたらよくなるんじゃないかと、提案するのが僕のポリシーです。
今回も、LAMさんにはたくさん悩んでいただきましたが、とくにジュリィは苦労したみたいです。ジュリィは全身を義体化しているという設定があって、ほかの登場人物とは異なるので。
――ふつうの人間ではないという意味では、人工知能のノアやメテオラの変異体であるアニマも、苦労があったと思いますが……。
柏倉もちろん苦労はありましたが、LAMさんが僕たちの意図を汲み取ってくれるのが早くて。ノアは髪飾りやスカートのデザインがすぐに決まりましたし、ツインテールの根本が離れているアイデアも人工知能っぽくていいなと思いました。
アニマも束縛されている印象があるからと、ベルトのようなもので拘束されているデザインを提案してくれて。
――ほかにLAMさんとのやり取りで印象に残っているキャラクターはいますか?
柏倉クロエの服のデザインも悩みましたね。主人公のクロエをベースにほかのキャラクターのデザインを考えることにしたのですが、なかなか決まらなくて、LAMさんにはアイデアをたくさん出していただきました。
最終的に、白を基調とした制服にしていますが、黒やグレー、カラータイツを穿いていたデザインもあって。最終的に黒か白の制服で悩んで、黒もカッコよかったのですが、白に決めました。
岸上クロエのデザインは、ギリギリまで悩みましたね。LAMさんたちが尽力してくれたおかげで、前作以上の自信作になりました。ルート分岐も複雑かつ量が増えていますので、選択をやり直せる“アリアドネ”のシステムを駆使して、いろいろなルートを楽しんでもらいたいですね。
――“アリアドネ”というのは、ルート分岐を可視化したチャートのようなものですよね。ストーリーのルートは、どのような行動を取ると変わるのですか?
岸上今回はいくつもの選択を選んだ結果によって、ルートが変わるようになっています。必要なときに、物語上でヒントを出すようにしていますので、ストーリーはちゃんと観ながら進めたほうがいいですよ。
柏倉そうですね。ルート分岐に関わるヒントは、しっかり出しているつもりです。何かおかしいぞ、いつもと違うぞってところで、これはヒントだなと気づいてもらえるのではないでしょうか。
岸上けっこう重要な選択肢も多いので、選択をする際は、その場のノリで決めるのではなく、よく考えて選んだほうがいいですね。
柏倉プレイするときは、先ほど岸上がお話した、アリアドネを活用してください。このシステムは、ルート分岐を効率よく攻略するために実装したと言っても過言ではないので。
――ほかに、プレイする際のアドバイスがあればお願いします。
柏倉あとは音にもこだわっています。立体音響を効果的に使っていますので、プレイする際はヘッドフォンを使用していただくと、没入感がより高まって楽しめると思います。
岸上声優さんたちの卓越した演技も相まって、作品の世界に引き込まれますよ。
柏倉僕がとくにこだわっているところでもあるのですが、作品の世界で、キャラクターがちゃんと生きているように感じてもらえるように、注意して演出しています。
これは、ほかのメディアの作品でも大事にしていることなのですが、VRの場合、ほかのメディアと比べてそこにキャラクターがいると感じられるのが強いですよね? いつも以上にこだわってあげないと、キャラクターがかわいそうですから。
岸上キャラクターの扱いについては、『東京クロノス』のときから一貫していますよね。そのうえで、今回は感情のピークになるところに選択肢が発生するようになっているので、シナリオの展開がわかっていても、思わず涙がこぼれてしまうんです。柏倉監督は、なんてイヤらしい人なんだと思いました(笑)。
――(笑)。プレイヤーの涙を誘う展開は、やはり計算して?
柏倉もちろん、感情を刺激できるように考えて作っています。ただ、すべて計算通りかというと、計算がうまくいっているところもあれば、声優さんの演技だったり、開発スタッフのがんばりによって、計算していた以上のものになっているところもありますね。
岸上『東京クロノス』のときは、時間や予算がなくてできなかったところではありましたが、今回は感情を突き詰めて、重要なシーンに選択肢が出るような展開になっていると思います。
柏倉監督が意図しているところも多いのですが、じつは現場から生まれたものも少なくはないと思います。
柏倉そうですね。今回は前作のときよりもスタッフの人数が増えていて、みんなにたくさんのアイデアを出してもらいました。
前作以上に力を借りているので、お気に入りのシーンがあったときは、僕の力ではなく、そこを担当してくれた誰かの力だと思います。
岸上本作は、VRらしさを体験できる超自信作です。前作を楽しんでくれた方はもちろんですが、前作やほかのVR作品が合わなかった人にも、ぜひプレイしてもらいたいです。
ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウス: ビヨンド クロノス)
対応プラットフォーム:Oculus Quest 2/Oculus Quest/Oculus Rift and more
発売日:2020年12月4日発売
価格:3628円[税抜](3990円[税込])