世界中で大絶賛されるインディーゲーム『Hades』ってどんなゲーム?

 2020年12月10日(日本時間12月11日)にアメリカ・ロサンゼルス、東京、イギリス・ロンドンの3都市をデジタルでつないで開催される“The Game Awards 2020”。

 このイベントで毎年いちばん注目を集めるのが、1年間でもっとも優れたタイトルに送られる栄誉ある賞、“Game of The Year(ゲーム・オブ・ザ・イヤー)”をどのタイトルが受賞するかということ。

 今年ノミネートされた作品をチェックしていくと、『あつまれ どうぶつの森』や『ファイナルファンタジーVII リメイク』、『ゴースト・オブ・ツシマ』といった2020年に世間を賑わせた話題作の中に『Hades(ハデス)』という聞き慣れないタイトルがならんでいます。

 本作こそ、2020年に発売された中でも最大級の高評価を世界中で受けている、ノミネート作で唯一のインディーゲーム。

 “Indie Live Expo Awards”での大賞受賞や、アメリカのニュース雑誌“TIME誌”が毎年選出している“年間ベストビデオゲーム10選”で2020年の第1位に選ばれたことからも、一部にとどまらない大絶賛をされていることがうかがえます。

 本稿では、『Hades』がなぜそこまでの高い評価を受けているのか、筆者が実際にプレイして分かったことをご紹介していこうと思います。

 なお、本作はまだ日本向けにはPC版しかリリースされておらず、日本語にも対応していませんが、Nintendo Switch版が今冬リリース予定です。

 こちらは日本語にローカライズされたバージョンと見て間違いありませんし、Switch版のリリースタイミングでPC版にも日本語が追加される可能性もあるものと思われます。日本語対応を待つ方には、今後の動向をチェックしておくことをおすすめします。

冥界の王子・ザグレウスの家出大作戦!

『Hades(ハデス)』はこんなゲーム! “The Game Awards 2020”でGame of The Yearノミネートの傑作インディーゲームをご紹介

 『Hades』のゲーム画面を見て、まず目を引かれるのはダークでスタイリッシュな、陰影の濃いアニメ調のグラフィックではないでしょうか。

 本作を手掛けたのはSupergiant Games。過去には『Bastion』や『Transistor』、『Pyre』などを手掛け、美しいグラフィックとRPG色の強い堅実なゲームシステムで人気を博してきたアメリカのインディーゲーム開発会社です。『Hades』はそのグラフィックへのこだわりや作風を受け継ぎ、現時点での集大成と言える作品になっています。

『Hades(ハデス)』はこんなゲーム! “The Game Awards 2020”でGame of The Yearノミネートの傑作インディーゲームをご紹介
『Transistor』。なお、Supergiant Gamesの過去作で日本語に対応しているのは本作のみ。

 『Hades』でゲームの舞台となっているのは、“ギリシャ神話における冥界”。主人公は冥界を統べる王であるHades(ハデス)の息子、Zagreus(ザグレウス)。プレイヤーは彼を操作して、冥界を脱出する、つまり“家出”をするために、ダンジョンに潜り、つぎつぎに待ち受ける試練に立ち向かいます。

アクションゲームとして最高峰の操作性を誇るローグライト

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 『Hades』はグラフィックこそ3Dで表現されていますが、ゲームとしては見下ろし視点の2Dアクション。挑戦するたびにダンジョンの構造、出現する敵、手に入る報酬などが変化する、いわゆる“ローグライト”と呼ばれるジャンルでもあります。

 ザグレウスのおもな攻撃手段は通常攻撃の“Attack”、特殊攻撃の“Special”、遠距離攻撃の“Cast”の3つ。なおCastは使用すると一定時間敵の体内に留まり、連射はできません。

 最初に使用できる武器は“剣”のみですが、条件を満たすことで“弓”、“盾”、“槍”などがアンロックされていき、最終的には6種類の武器が使用可能に。武器ごとに使い勝手はかなり異なっており、新たな武器が使えるようになるたびに、新鮮な気持ちでダンジョンに挑めます。

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 これらの攻撃を叩き込みつつ、敵の攻撃はダッシュで回避。ときにはフィールドに設置されたトラップも駆使して、続々と登場する冥界の魔物たちを、華麗なアクションでザックザックと倒していきましょう。

 ザグレウスはどのボタンを押してもキビキビ動き、操作性は抜群。ただ動かしているだけでも気持ちよく、敵との戦闘で得られる爽快感は非常に大きいです。

『Hades(ハデス)』はこんなゲーム! “The Game Awards 2020”でGame of The Yearノミネートの傑作インディーゲームをご紹介

 ダンジョンはいくつもの部屋に分かれていて、ひとつの部屋で出現する敵をすべて倒し、報酬を手に入れるとつぎの部屋への扉が開放。このとき、扉の上にはアイコンが表示されていて、つぎの部屋で入手できる報酬の種類が判別できます。複数の扉があるときは、欲しい報酬が手に入るほうの部屋へ進みましょう。

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ショップのアイコン(画像右)ならつぎの部屋では戦闘は発生せず、コインを消費してアイテムを入手できる。

神々の力を借りて、最強のビルドを目指せ!

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 ひとつの部屋を攻略するたびに手に入る報酬の中でも本作のキモとなるのが、ザグレウスの技の性質を変化・強化する“Boons”。すべてのBoonsにはギリシャ神話の神々が割り振れており、彼らの能力の恩恵を受けることができます。

 Boonsの入手時にランダムで表示される3種類の効果からひとつを選べば、その力がザグレウスのものに。新たなBoonsを手に入れるたびにそれらすべてがザグレウスの力になり、戦いが有利になります。

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Boonsにはレアリティがあり、高いものほど効果は高い。種類によってはもともと持っていた能力を上書きしてしまうので注意。

 Boonsの効果は敵の背後から攻撃すると攻撃力が上がる“バックスタブ”の能力や、攻撃速度・攻撃範囲などを上げる能力、ダッシュに攻撃力を付加する能力、Specialで敵を倒すたびに体力が回復する能力などなど、じつに多彩。

 能力強化を駆使して、最強のザグレウスを目指してビルドしていくのが、本作の非常に面白い部分のひとつです。遠距離からの攻撃の回数や手段を増やして敵に近づかずにダメージを与えることに特化させたり、ガンガン動き回って懐に潜り込み、怒涛の連続攻撃を与えて各個撃破をしていくビルドにしたり……。

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報酬には体力の最大値を上げるなど、基礎的な能力を向上させるのも。

 入手できる効果がランダムなため、同じビルドは二度と出来ません。そして、何気なく入手した能力によって、思わぬ強力な組み合わせが発見できたりするあたりも、いろいろ試したくなる好奇心を刺激されます。

 もともとの操作性の良さに加え、ザグレウスの能力がどんどん派手に、インフレしていく気持ちよさも相まって、“アクション+成長要素”の相乗効果がもたらす高揚感は格別。思わず「気持ちいい~!」と叫んでしまいたくなります。

 同じような魅力を持つゲームは決して少なくはないですが、この相乗効果のシナジーの大きさは、近年筆者が遊んだゲームの中でもダントツだったと言ってよいでしょう。

敵もどんどん強力に! 困難を乗り越える達成感がたまらない

『Hades(ハデス)』はこんなゲーム! “The Game Awards 2020”でGame of The Yearノミネートの傑作インディーゲームをご紹介

 ではザグレウスの能力を強化していけば、草刈りのように簡単に敵を殲滅できるようになるか? といえば、そうはいきません。ダンジョンに深く潜れば潜るほど、敵も手強くなっていきます。

 体が黄色く光る“アーマー”を持った魔物は、これを削り切るまで攻撃を加えても怯むことがなく、攻撃に夢中になっていると手痛い反撃を受けること必至。正確無比な遠距離攻撃でこちらを射止めてくる敵が出現したら早めに倒しておきたいなど、相手にする順番も、どんどん重要になります。

 そして各階層の最後に待ち受けるボスはどれも多彩な攻撃でこちらを圧倒。初見で撃破できることはほとんどないでしょう。

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ボスはいずれも強敵。周回プレイをしていると、彼らの様子がおかしくなることも……?

 何度も挑戦して敵ごとのクセを把握して強敵を撃破、以前はたどり着けなかった場所まで歩みを進める達成感がたまりません。

死んだらおうちに強制送還! 準備ができたらまた家出!!

『Hades(ハデス)』はこんなゲーム! “The Game Awards 2020”でGame of The Yearノミネートの傑作インディーゲームをご紹介

 体力がゼロになるとゲームオーバー。血の海に沈み、気づくと“ハデスの家”、つまり自宅に強制送還されてしまうザグレウス。ダンジョン内で入手したBoonsや向上した能力はすべて失われてしまいます。しかし失われないものもあります。それが“鍵”や“宝石”といった消費アイテム。これらはハデスの家で、ザグレウスに永続的な強化を施すために使用することになるのです。

 代表的なものは、体力がゼロになってもその場で復活することができる回数を増やす、原則として連射はできない“Cast”の一度に放てる弾数を増やす、ダッシュの連続使用回数を増やすなど。武器のアンロックもここで“鍵”を消費して行います。

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 ハデスの家で施す強化やアンロックは、何度ゲームオーバーになっても失われることはありません。したがって、プレイヤースキルの上達に加え、ダンジョン攻略スタート時のプレイ条件も徐々に緩和されていくことに。アクションゲームがあまり得意ではない方でも、ダンジョン攻略が少しずつ進んでいく達成感を味わえるのではないでしょうか。

ストーリーもとても魅力的!……らしい

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 ここまで『Hades』のゲームとしてのおもしろさを紹介してきましたが、本作はゲームを周回するごとに明かされる、ザグレウスと神々との会話によって語られるストーリーも非常に魅力的……らしいです。

 らしいというのは、本作は会話部分の文章量がなかなか多く、英語が得意ではない筆者はあまり内容を把握できなかったため。このあたりを十分に楽しむのは、日本語版のリリースを待ちたいと思います。

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 ストーリーが分からなくとも、ネットの翻訳などを使って単語の意味を拾っていけば、Boonsなどの強化アイテムの効果はだいたい分かるはず。そうして攻略を進めているだけでも、本作はGame of the Yearへのノミネートも納得の圧倒的なおもしろさでした。今回はご紹介しきれなかった特殊なイベントも膨大に用意されており、奥深さも底なしです。

 物語を日本語で楽しみたい方には日本語対応を待つことをおすすめしますが、ゲームのトレンドに敏感な方はいまからプレイして、いち早く2020年最高峰のタイトルを体験してみてはいかがでしょう?