声優、歌手として活躍する今井麻美さんの6thアルバム『Gene of the earth』が2020年11月25日に発売されることを記念して、ファミ通.comではインタビューを実施。6thアルバムに収録されている新曲や、今後の活動などについて語っていただいた。

 なお、『Gene of the earth』については、先日掲載したファンクラブ限定CDのインタビューでも語られているので、あわせてチェックしてほしい。

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今井 麻美(いまい あさみ)

5月16日生まれ。山口県出身。『アイドルマスター』シリーズ(如月千早役)を始め、『シュタインズ・ゲート』シリーズ(牧瀬紅莉栖役)、『グランブルーファンタジー』(ヴィーラ・リーリエ/フライデー役)など多数の作品に出演。2019年には歌手活動10周年に加えて、声優活動20周年を迎えた。文中は今井。

今井麻美さん6thアルバム『Gene of the earth』発売記念インタビュー。「私が本当に好きなものを表現したアルバムです」

「めちゃくちゃいいアルバムが仕上がりました」(今井さん)

――先日のFC限定シングルについてのインタビューの際にも少し伺わせていただきましたが、約4年振りとなるフルアルバムの発売を直前に控えた、心境を聞かせてください。

今井今回のアルバムは自粛期間が明けてから制作に取り掛かりました。自粛の影響で思うように打ち合わせができず、当初の予定よりも制作の開始が遅れていたので、「どうなるんだろう?」という不安もありましたが、いざ制作が始まると、「やっぱり音楽って楽しいな」と心の底から思えて、改めていろいろなことに気付かされたアルバムになりました。

――以前、お話を伺ったときにFC限定シングルの3曲のレコーディングが終わった直後から、今回のレコーディングが始まったと話されていましたね。

今井本来だったらもっと余裕のあるスケジュールの予定だったのですが、気付いたら、カレンダーにレコーディングの予定がいっぱい入っていて、最初は理解が追い付かなかったです(笑)。FC限定シングルの曲を含めると、7曲を週に1回のペースで録らなければいけなかったので、気合が入りました。

――それだけたいへんなスケジュールを乗り越えて完成した『Gene of the earth』ですが、アルバムのコンセプトを教えてください。

今井私が音楽活動を始めてから今年で11年目に入ったのですが、昨年10周年を迎えさせていただいたときに心機一転というか、今井麻美の音楽活動第1章が完結したイメージでした。そんな中で、第2章の始まりがこのアルバムなのかなと思っていたので、コンセプトやテーマを考えていたときに、私が本当に好きなものを表現したいなと思ったんです。歌詞も書きたいですし、歌も歌いたいですし、好きなことを好きなようにやりたいなと思った結果、宇宙だったり、地球だったり、自然だったり、星々だったり、私が幼少のころからすごく好きだったものをテーマにしよう決めました。

――各楽曲が完成する前から、そのようなテーマが明確にあったのでしょうか?

今井最初に表題曲である『Gene of the earth』から作り始めたのですが、この時点から私の中での方向性はあまりブレていなくて、好きなものを歌詞として書いたら、ネイチャーな感じになっていました。

――『Gene of the earth』の歌詞は今井さんが担当されていますが、歌詞を書く前に初めて楽曲を聴いたときの第一印象はいかがでしたか?

今井歌詞を書くのが難しそうだなと。音数がけっこう少なくて、言いたいことを限られた文字数の中でどういう風に表現していけばいいのか悩みました。言葉数が多くて、「ぜんぜん終わらないよ。えーん……」となることもあるのですが、今回はシンプルなくり返しが多いメロディーだからこそ、すごく言葉の乗せかたが難しくて、「がんばろう!」と思いました。

――やはり、最初から歌詞のことを考えられながら聴かれるんですね。

今井そうですね。いまでこそ楽器の音だったり、いろいろなことを考えて音楽を聴くようになりましたが、幼少のころに好きだった曲は、歌詞から紡がれる世界がどういうものなのかということにすごくこだわっていました。いまでも言葉から生まれてくる表現というのは、感受性を磨いていくために欠かせないものですし、声優という仕事をしていると、言葉はすごく大事なファクターになっています。そういった意味も含めて、やっぱり歌詞が大切だと思うことが多いので、今回のアルバムのテーマに合うように、自分が好きだと思うものを書きたいなと思いました。

――『Gene of the earth』は、1stアルバムの表題曲『COLOR SANCTUARY』のアンサーソングのつもりで書かれたということでしたよね?

今井そうなんです。『COLOR SANCTUARY』では、大きな地球の中でいろいろなものに囲まれた、私という小さな存在を描かせていただきました。それから10年が経過して、「自分が地球になった気持ちで、私だったり、いろいろな人々を眺めたらどんな景色なんだろうか?」と考えていたときに、「今回は“私が地球”をテーマにしよう」と思いました。

――そこからどういった想いを歌詞に込めたのでしょうか?

今井2020年は、コロナ禍でさまざまなことが滞ってしまい、私も含めて思うようにいかないことがたくさんあった1年だったと思います。多くの方がそういった閉塞感や窒息感みたいなものを感じていて、平常心ではいられない環境があった中で、私も漏れずにそういう風に感じることが多くて。でも、ふとしたときに、この10~11ヵ月の出来事というのは、地球が生まれてから、人類が繁栄してきた長い長い歴史の中で考えると、本当に一瞬なんだと気付いたんです。ひょっとしたら来年には何事もなかったようになるかもしれないですし、また違った苦しみに立ち向かわなければいけないかもしれませんが、いま漠然と思っている不安というのは、長い歴史の中で本当にたった一瞬でしかないから、あまり自分を追い詰めないでいたいなと。それで、同じよう考えて苦しんでいる人がいるなら「哀しいこともあるでしょうけど、また明日が煌めいて見えてくることもきっとあると思うよ」という、希望を自分に言い聞かせるつもりで書きました。

――いま全体的なテーマを語っていただきましたが、とくに「この歌詞に注目してほしい」というところはありますか?

今井やっぱり「愛しい存在よ」です。「愛しい存在よ」と書いて「いとしい“ひと”よ」と読ませるのですが、いまの状況のことを「地球が怒っている」と表現する方もいらっしゃるんですよね。私もそう思っていた時期もあったのですが、やっぱり地球は人間がどうこうではなく、有機物、無機物とか関係なく、すべての存在に対して、同じように接してくれているんじゃないのかなと。もちろん、人間が迷惑を掛けることも多いのですが、それも含めて愛しい存在だと思ってくれていたら、その感情に応えていくことで、地球をもっと愛せると感じたので、“人”ではなく、“存在”というところを、すごくこだわって書きました。

――なるほど。ちなみに『Gene of the earth』と『COLOR SANCTUARY』は、どちらも、作曲が濱田智之さん、編曲が酒井陽一さん、そして作詞が今井さんという、まったく同じメンバーで作られていますが、これは『COLOR SANCTUARY』のアンサーソングを作るために、あえて同じメンバーにしたのでしょうか?

今井私が作詞をする段階では、おふたりは決まっていたので私にはわからないです。

今井さんのアーティスト活動のプロデューサーの濱田智之さん(以下、濱田) もちろん狙ってやりました。

今井ただ、狙ったかどうかはいつも伝えられていないので、私がそれを勝手に汲み取って書いているという感じです。

――では、まさに濱田さんの思い通りになったということですね。

今井どうですかね? 後付けの可能性があります(笑)。

濱田 そんなことはないです(笑)。

――(笑)。続いて、2曲目の新曲『Astral World』を初めて聴いたときの印象を教えてください。

今井『Astral World』は、珍しく私が曲のコンペに参加して選んだ楽曲です。曲のコンペでは、デモに近い段階のものだったり、完成にほぼ近いものだったり、さまざまな状態のものが送られてくるのですが、曲は編曲次第ですごく表情を変えるので、私のような素人の耳で聴くと、ほとんど完成されたものを選びがちなんですよね。だから、いつもはプロである濱田さんにおまかせすることが多いのですが、今回は私が好きなものを作りたいという想いがあったので、ひさしぶりに参加しました。そんな中で既に歌詞の付いた曲などもありましたが、脳内でメロディーだけに変換して、印象に残ったものを選んだら、この曲になりました。

――曲のコンペは難航されたと伺いましたが。

今井私がいくつか選んで濱田さんに提出をしたところ、濱田さんが選んでいた曲と同じものがひとつもなかったんです。ただ、曲に関してはやっぱり濱田さんのほうが私に合うものを選んでくださるので、いつもだったらそういうときは濱田さんにおまかせすることが多いのですが、今回は「私に選ばせてください」とお願いしました。

――鳥のさえずりがすごく印象的な楽曲ですが、コンペの段階から入っていたのでしょうか?

今井入っていなくて、編曲の段階で追加されました。編曲は『朝焼けのスターマイン』などを担当してくださっている、Tak Miyazawaさんにお願いしたのですが、すごい力作を作ってくださって、私も最初はビックリでした(笑)。

――そうだったのですね。歌詞は作曲と同じく設楽哲也さんが担当されていますね。

今井じつは歌詞もコンペで選びました。ただ、歌詞のコンペと編曲の作業は、同時進行で進めていて。私は曲を選んだ段階でメロディーから少し温かいイメージを感じていたのですが、これまでの私の楽曲はカッコイイ曲が多かったことや、既に『Astral World』という曲名が付いていたことが影響して、クールな歌詞が多かったんです。その中で、すごく悩んだ歌詞もいくつかあったのですが、どこかで「もう少し温かみが欲しい」と思っていたところに、Tak Miyazawaさんから編曲したデータが送られてきて、鳥のさえずりが入っていたので「私が欲しかったのはこれだ!」となりました(笑)。でも、コンペで皆さんに書いていただいた歌詞は“Astral”という言葉から、夜をイメージしたものがほとんどで、鳥のさえずりのイメージである朝から始まる歌詞がひとつもなかったんです。それで「どうしよう……」とすごく悩んだのですが、この曲には鳥のさえずりが絶対に必要だと感じたので、コンペに参加してくださった方にたいへん申し訳ない気持ちになりながら、曲を選んだ時点で途中まで書かれていた歌詞の続きを、設楽さんに書いていただきました。

――歌詞のコンペもかなり難航されたんですね。

今井私は、メロディーのラインと言葉のラインがすごくマッチングしている歌が好きなので、歌詞のコンペで迷うことはほとんどないんです。選ぶときには、わりと自分の中でイメージが構築されていて、思っていたワードが入っているかとか、逆に私が思いもつかなかったようなキラキラした言い回しが入っているとかを重視して、わりとパッと決めることが多いんです。でも、今回はそのマッチングがなかなかうまくいかず、悩みに悩んで5曲ぐらいまで絞って、濱田さんに提出したら、曲のコンペと同じくひとつも同じものがなくて。ひとつでも同じものがあったら、それにしようと思っていたのですが、そうならなかったので、もう一度考え直して、設楽さんにお願いすることにしました。紆余曲折ありましたが、最終的に思い描いていた温かい曲に仕上がって、私もめちゃめちゃ好きな曲になったので、よかったです。

――珍しく今井さんの意見がかなり強く反映されている曲になったんですね。

今井そうですね。

今井麻美さん6thアルバム『Gene of the earth』発売記念インタビュー。「私が本当に好きなものを表現したアルバムです」

――では、最後の『宇宙の申し子』の第一印象はいかがでしたか?

今井最初は「どうしよう」と途方に暮れて半笑いでした(笑)。「なんてカッコいいんだ」、「なんて素敵なんだ」、「やっぱり、中山豪次郎先生は天才だ」と思う反面、「私はこれを歌えるのかな?」と。聴けば聴くほど深まるというか、味が出てきて、本当にすばらしい曲なんですけどね。

――すごく独創的な曲ですね。こちらはどういった経緯で作られることになったのでしょうか?

今井アルバムの最後に入る楽曲としてバラード寄りのものを書いてくださいとお願いしたのですが、豪次郎先生が私との過去の付き合いを考えた結果、この曲を仕上げてきて、「マジか……」と思いました(苦笑)。私も「すごい曲だな」とか、「技術がけっこう必要とされるぞ」ということを感じてはいたのですが、音楽的な視点のすごさを理解できていなくて。というのも、音楽に携わる方々がこの曲を聴いて「なんてすごい曲を作っちゃっているんだ」と面を食らうみたいで。「リズム感だったり、浮遊感だったり、すべてにおいて難しい曲です。でも、とてもすばらしい楽曲です」と皆さんが口々におっしゃっていました。そういう意味でも「宇宙の申し子」なんでしょうね(笑)。

――そうなんですね。曲はもちろんですが、森由里子さんの歌詞もすごく印象的ですね。

今井今回は由里子先生もレコーディングに顔を出してくださったのですが、珍しく不安そうにしていらっしゃって、「何か不備があったら、いますぐこの場で直しますから、おっしゃってください」と話されていて。私にとって由里子先生は神なので、そんなのことはないんですよね。由里子先生が紡ぐ言葉は、私が好きな音楽と言葉のマッチングのお師匠さんみたいなもので、絶対にメロディーを無視して、世界を描かないんですよね。本当に音楽を大事にされていて、私が目指しているものの師匠というところがあるのですが、そんな由里子先生が「今回は難しかった。でも、いいって思ってくれてよかった」とおっしゃっていたのが、とても印象的でした。

――それだけ難しい楽曲なんですね。

今井作曲をされた中山豪次郎先生は、みんながそんなに難度が高いと感じると思っていらっしゃらなかったようで、こちらの苦悩があまり伝わっていなかったみたいなんですけどね(笑)。でも、豪次郎先生が『宇宙の申し子』を歌った横浜ランドマークホールのライブに来てくださったのですが、「とにかく感動した」とおっしゃっていて。豪次郎先生は、いまでこそ、たくさんの方に曲を提供されていたりしますが、もともとは作った楽曲をご自身で歌われることが多い方なんです。なので、作った楽曲が自分の手を離れて、いろいろな人の手が加わって、どんどん組み上げられていく様を見るという機会があまりなかったようで、「自分の想像を遥かに超えてよくなっていくのを感じて、本当に感動した」と感想を言ってくださって、それを聞いたときにやっぱりうれしかったですね。

――それはうれしい言葉ですね。

今井演奏家の方々も、編曲の濱田さんもかなり苦労されたみたいなんです。とくに間奏で、かなり変拍子なところがあるのですが、これが音楽をけっこうやっていらっしゃる方たちでも、かなり難度が高いらしくて。いわゆる数学的に小節毎に区切って演奏すると、ほかの演奏と噛み合わなくなってしまうので、世界観を重視して、みんなで曲の世界にどっぷり浸かって、同じ目標、同じ表現で、一糸乱れぬ演奏をしないと、描きたい世界が描けないという難しさみたいです。

濱田 いまだに、どうしてあの変拍子になるのかわからないです……(苦笑)。

今井らしいです。私はそのとき歌っていないので、心を無にしているんですけどね(笑)。

――(笑)。楽曲自体もあの場で初公開だったので、バンドメンバーの皆さんは相当緊張されたでしょうね。

今井相当プレッシャーだったみたいです。横浜ランドマークホールのライブは、CDのレコーディングに携わったメンバーが多かったので、その分まだ曲に馴染みがあったはずなんですけど、本番直前の当日リハーサルまで、うまくいかなかったみたいで、みんな渋い顔をしていました。しかも、私が本番中に「じつは今日、中山豪次郎先生が来てくださっています」と言ったので、みんな背筋が凍ったらしいです(笑)。

――バンドメンバーの皆さんはご存じなかったんですね。

今井「マズいと思って、相当気合が入りました」と終わった後にみんなで話していました。その甲斐があったのか、本番がいちばんうまく決まったんです。私は追い詰められて実力を発揮するタイプなので、やっぱり集まってくるメンバーも同じタイプなんだなと感じました。そういう意味でも、音楽をやっていらっしゃる方には、ぜひ聴いてほしい楽曲です。

――個人的には、後半の今井さんの声が重なっていくところがお気に入りです。

今井ありがとうございます。スキャットとかをあまりやったことがないので、「これで合っているのかな?」と思いながら録っていました。じつはAメロも爽やかに聴こえて、とても難度が高くて。楽譜上では、ふつうの4拍子で問題ないのですが、そうすると演奏との呼吸感が合わなくて、淡い三日月がテラスに座って、ふわぁーと降り注いでくる様子が描けないという……本当に難しい曲なんです。

濱田 ピアノとメロディーをわざと16分ずらしているからね。

今井無茶苦茶ですよね(笑)。でも、難しいのを、難しいと感じさせたくないという想いもありますし、じつは何も考え込まずにふわっと歌うとバチッとハマるんですよね。そこがまたこの曲が凄まじく、すばらしいところなんだと思います。

――収録に関するエピソードが出ましたが、『Gene of the earth』と『Astral World』のレコーディングはいかがでしたか?

今井『Gene of the earth』はイメージが完璧に仕上がっていたのと、自分の得意分野の楽曲ということも相まって、楽しく歌いました。『Astral World』は、冒頭に設楽さんが顔を出してくださいました。私の中で『Astral World』はけっこういぶし銀な曲だと思っていたので、「こんな若い方が作っていらっしゃるんだ」と驚きましたし、音楽界の未来は明るいなと思いました。今回は編曲をTak Miyazawaさんにお願いしましたが、設楽さんも編曲をいっぱいされているみたいで。作詞もそこまで多くないみたいですが「これからもやっていきたいです」とおっしゃっていて、すごく多彩な方だなという印象なので、これからも何かあったらお願いしたいなと思いました。

――MVの撮影はいかがでしたか? 先日、ファンクラブ限定CDでもライブ風のMVを撮影されたとのことでしたが、通常のMVの撮影はひさしぶりですよね?

今井ファンクラブ限定CDのときの楽曲のレコーディングと同じように、いろいろ忘れちゃっていましたね(笑)。撮影が8月後半の予定だったので、スタッフの方も、ギリギリまで外で撮るのか、室内で撮るのか迷われていたみたいで。個人的にはやっぱり自然が好きなのと、今年は引きこもっていた期間が長かったので、外に行きたかったのですが、衛生管理などがたいへんなことに加えて、撮影の予定日が今年いちばんの暑さになりそうということで、急遽室内で撮影することになりました。ただ、いざ撮影してみると、それが必然だったかのように室内の箱庭感が曲にピッタリ合っていて。今回のテーマは“私が地球”だと申し上げましたが、髪の毛も地球色に染めていたので、まさにそのテーマを表現できたと思います。そのほかにも、衣装だったり、メイクだったり、ライトだったり、小道具もすばらしくて、私のスイッチがバチバチバチと入っていきました。もし、衣装がジーパン、場所が会議室だったとして、同じような表現をしてほしいと言われたら、私はできないと思うので、改めていろいろなものに助けられているんだなと実感しました。

――ジャケット写真もすごく素敵ですね。ファミ通.comで記事を掲載させていただいたときのファンの方の反応を見ていると、通常盤がとくに人気のようでした。

今井私もあの写真が好きです。じつはアーティスト写真を選ぶときに、いま使われている写真と、通常盤のジャケットの写真と、もう1枚べつの写真を提示されて、私は通常盤のジャケットの写真がいいと言ったところ、「アーティスト写真っぽくない」ということで、濱田さんと私のマネージャーが相談して、いまの写真に決まりました。でも、私的には通常盤のジャケットの写真がお気に入りだったので、うれしいです。

今井麻美さん6thアルバム『Gene of the earth』発売記念インタビュー。「私が本当に好きなものを表現したアルバムです」
通常盤
今井麻美さん6thアルバム『Gene of the earth』発売記念インタビュー。「私が本当に好きなものを表現したアルバムです」
DVD付盤
今井麻美さん6thアルバム『Gene of the earth』発売記念インタビュー。「私が本当に好きなものを表現したアルバムです」
Blu-ray付盤

――通常盤の写真がお気に入りという話の流れから少し聞き辛いですが、DVD付盤とBlu-ray付盤には『朝焼けのスターマイン』と『Reunion ~Once Again~』のアレンジバージョンが収録されています。この2曲はどのようにして選ばれたのでしょうか?

今井1曲はもともとある楽曲の演奏を作り変える、リミックスを入れたいということだったので、「ベストなものを選んでください」と濱田さんにおまかせした結果、『Reunion ~Once Again~』に決まりました。『朝焼けのスターマイン』は、もう1曲をどうしようかと話し合っていたときに、「『朝焼けのスターマイン』の幻のバージョンを入れるのはどうですか?」と私が提案しました。じつは、15thシングルとして発売された『朝焼けのスターマイン』はふたつめのバージョンなんです。

――そうなのですね。

今井15thシングルに収録された『朝焼けのスターマイン』は、打ち込みが多めになっているのですが、最初のバージョンは全部生バンドで録っていました。ただ、『朝焼けのスターマイン』は、アニメ『プラスティック・メモリーズ』のエンディングだけでなく、劇中でも使われる楽曲だったので、「もう少し切なさが強いほうが映像に合う」ということになりまして。アニメの制作チームから「少し明るさを下げてほしい」と依頼があり、ひとつキーを下げつつ、躍動感を少し抑えるために打ち込みを多めにしたのが、15thシングルのバージョンです。当時から、「最初のバージョンもいつか発表できるといいね」なんて話をしていたのですが、いまがピッタリなんじゃないのかなと思ったので、今回提案させていただきました。それで決まった後、濱田さんに音源を送っていただいて改めて聞いてみたら、5年前の私の歌が下手過ぎて震えが止まらなくなりました……(苦笑)。

――『朝焼けのスターマイン』は、この5年間でかなりの回数、歌われていますしね。

今井自分でも、年々いろいろな人の力を吸収して、少しずつスキルアップしているという実感はあったのですが、「いまならもっとうまく歌える」と思ってしまって。それで濱田さんに相談したところ、「演奏は無理だけど、歌の歌い直しはできるよ」ということだったので、「それならば!」と時を経て、再度収録することになりました。おっしゃっていただいた通り、『朝焼けのスターマイン』はさまざまな場所でたくさん歌わせていただいたので、当時レコーディングしたときよりも曲に対するイメージがもっと膨らんでいますし、いろいろな地方の風景なども心の中に沁みついていて、そういった感情を乗せていったら、いまのほうがだんぜんうまく表現できました。当時は、結果的にはキーを下げることになりましたが、そのときからいまの表現ができていたら、たがわずのものになっていたんじゃないのかなと。そういう意味では、未熟さを痛感しましたが、逆に言えば自分の成長を感じることもできましたし、すごく素敵な仕上がりにもなったので、満足しています。

――ライブなどで、「『朝焼けのスターマイン』は、いろいろな表現ができる楽曲だと思います」と話されてしましたが、それは最初のバージョンのことを意識されていたからなんですね。

今井そうですね。その影響はかなりありました。

――以前、「私の歌手活動にとって、『プラスティック・メモリーズ』はとても大切な作品です」と話されていましたが、今井さんが好きなものを表現したいという、今回のアルバムのボーナストラックとして、この2曲が収録されるのは感慨深いですね。

今井偶然なのか、狙ったのかは私にはわからないですが。

濱田 狙ったに決まったじゃないですか。

今井これは怪しい(笑)。

一同 (笑)。

今井でも、『プラスティック・メモリーズ』をきっかけに、歌手としての私を知ってくださった方も多いので、本当に大切な作品です。そういう意味では、この2曲は、歌い手としての今井麻美を改めて世の中に出せた楽曲なのかなと思います。

――続いて、新曲ではないのですが、今回のアルバムに収録されている『Blue Feather』について聞かせてください。作詞は今井さん担当されていますが、以前、歌詞には当時あった水害への想いと、もうひとつの意味を込めていて、それは時が来たらお話しようと思いますと話されていましたが、こちらについてはいかがでしょうか?

今井まだ早いですね。

――やっぱり、そうですよね。歌手活動10周年記念インタビューのときにもお聞きしたのですが、そのときに「私が忘れないように覚えていてください」ということだったので、今回も念のため質問させていただきました。

今井『Blue Feather』と言われた瞬間に「なんだっけ?」と思って、ドキドキしました。引き続き、覚えておいてください(笑)。

――わかりました(笑)。楽曲に関する話題はここまでにして、今後の活動についてもお聞きしたいです。『Gene of the earth』の発売に合わせて、初となるオンライン形式のリリース記念イベントが行われますね。

今井正直、不安でいっぱいです。

――こういうことをしたいというようなプランはあったりしますか?

今井まだ何にも考えていないです。私のリリース記念イベントはいつも野放しで、打ち合わせもしたことがなくて。歌ってしゃべるということだけを決めているのですが、来てくださった方との温度感などによって話す内容を変えたり、私としては空気を読んでやっているつもりなので、皆さんの反応がわからない形式のイベントとなると、どうなるんだろうと。

――確かに今井さんリリース記念イベントは、ファンの方とやり取りを楽しまれているような印象があります。

今井そうなんですよ。だから、どうしたらいいんだろうと途方に暮れていたのですが、いまはまだライブの真っ最中なので考えることを辞めました。

――とは言え、いちばん最初のイベントは11月28日なので、すべてのライブが終了する前だと思いますが……。

今井えっ!? そうでしたっけ。正直、まだどういう感じでやるのかイメージが湧いていないんですよね。会議室みたいなところでパソコンのカメラに向かって、「どうも、ミンゴスです」と挨拶して、トークをしたり、iPhoneでカラオケの音源を流して歌ったりするのかなと思ったりしています。

――いままではなかった形式なので、想像も難しいですよね。

今井ただ、これまで以上に気軽に見ていただけるのかなと。やっぱり、会場まで足を運ぶとなると、その分の労力や行動力が必要になりますが、今回は自宅から参加できるので、ゴロゴロしているときに「そういえば、今日はミンゴスのイベントだったな」と軽い気持ちで見ていただけるという意味では、それもありだなと思います。

濱田 規模的には、テレビ番組とWeb番組の中間くらいのイメージじゃないかなと、僕は勝手に思っています。

今井ということは、歌の部分だけ先に収録していてもバレないですかね?

濱田 あっ!

――この部分はカットしておきますね(笑)。

濱田 これがインタビューに載っていたらおもしろいですね。

今井確かに。

一同 (笑)。

今井この記事を読んだ人が「これはどっちなんだ」とハラハラしながら見ることになりそう。それなら、間違い探しみたいに、わざとトークのときと歌のときでイヤリングだけ変えたりして、「この曲は生でしょうか? 収録でしょうか?」とクイズにしてしまうとか(笑)。

――それはそれでおもしろそうですね。どんなイベントになるのか楽しみにしています。話は変わりまして、先ほども少し話題に出ましたが、10月17日には約10ヵ月振りとなるライブを開催されました。ひさしぶりにファンの皆さんの前で歌ってみていかがでしたか?

今井ふたつの側面があって、ひとつはまったく変わらなくて驚きました。もちろん、席の間隔が空いていたり、途中で換気のためにドアを開ける時間があったり、違う部分もありましたが、ステージに出て行った瞬間に「いつもといっしょだ」という感覚でした。逆にいちばん大きく違うなと思ったのは、曲間のトークでお客さんと会話ができないことです。私はトークで話す内容をなんとなく頭の中で組み立てていることもありますが、あまり決めていないことが多くて。リリース記念イベントと同じように、そのときの空気感を大切にしたいので、状況によって話す内容を変えているのですが、もし「何を話そうかな?」と思ったときは、お客さんに「どこから来たの?」、「どの曲が好きだった?」と質問していたりしたんです。ただ、今回のライブではいまのご時世もあって、お客さんの声出しが禁止になっていたのですが、つい、いつもの癖で質問みたいな聞きかたをしてしまったときに、お客さんから話せないことをジェスチャーで伝えられて、「あっ……」と気付きました。そこが大きく違いましたね。私の技がひとつ封じられてしまいました(苦笑)。

――インタビューをさせていただているのは、11月14日の“Side Green”開催直前というタイミングですが、掲載日はそれよりも後になると思いますので、12月6日にメルパルクホールで開催予定の“Side Red”の見どころを教えてください。

今井“Side Blue”はバラード中心、“Side Green”はダンサーさんがいたり、LEDのスクリーンを使った魅せるライブになっていましたが、“Side Red”はいちばん私らしいと言っていいような、バンドメンバーがたくさんいて、音楽を楽しめるライブになりそうです。ギターがふたりいたり、懐かしいメンバーが揃ったり、最近そういったライブをあまりできていなかったので、私も楽しみです!

――ライブ繋がりで、2020年内に2019年12月26日にEX THEATER ROPPONGIで開催された“今井麻美 Winter LIVE「Flow of time」TOKYO”のBlu-ray&DVDの発売が予定されていますが、思い出に残っていることはありますか?

今井ぬーさん(※沼倉愛美さん)といっしょに歌えて、やっぱり、ぬーさんのことが大好きだなと思いました。ただ……

濱田 沼倉愛美さんの出演部分は、残念ながら権利上の関係でBlu-ray&DVDには収録されていません。

今井そうなんです。そのほかのことは、ふだんなら1年くらい前のことなら覚えているのですが、自粛の影響で忘れてしまったので、映像を見て思い出したいと思います。

――今井さんが出演されたラジオ番組などを聞いていると、12月のライブ以降もさまざまなことを計画されているようですが、いまの時点で何かお話できることはありますか?

今井どこまで話していいのか把握していないので、詳しくは言えませんが、おもしろそうなものがいくつか動いているので、楽しみに待っていてください。

濱田 いままでにやったことのない企画も考えていますので、期待していただければ。

――それは楽しみです。では、最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

今井音楽をするということが当たり前のように感じるぐらい、たくさん活動させていただいた中で、まさか音楽自体があまりできない時代が来るなんて思ってもいなかったので、CDをリリースできたり、ライブが開催できたるありがたみを切に感じています。そういったことができるのは、CDを買ってくださったり、ライブを観に来てくださったり、応援してくださる方がいるからこそだと、本当に心の奥底から感じているので、今後ともぜひ、応援していただきたいです。『Gene of the earth』には、アニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』の後期エンディングテーマ『World-Line』、アニメ『ぱすてるメモリーズ』オープニングテーマ『Believe in Sky』などに加えて、先ほどお話させていただいた新曲3曲、そして、DVD付盤とBlu-ray付盤にはボーナストラックが2曲も収録されています。あまり自分ではこういうことは言わないのですが、今回はめちゃくちゃいいアルバムが仕上がったと思っているので、ぜひ手に取っていただけるとうれしいです。

今井麻美さん6thアルバム『Gene of the earth』発売記念インタビュー。「私が本当に好きなものを表現したアルバムです」

『Gene of the earth』商品情報

  • アーティスト:今井麻美
  • タイトル:Gene of the earth
  • 発売日:2020年11月25日
  • 発売元:MAGES.
  • 販売元:MAGES.
  • 価格/品番:
    【Blu-ray付盤】4400円[税別]/USSW-0272
    【DVD付盤】3600円[税別]/USSW-0273
    【通常盤】2800円[税別]/USSW-0274

【初回封入特典】

  • 今井麻美プリントサイン入り生写真1枚(全3種類)封入(Blu-ray付盤、DVD付盤のみ)
  • プレイパス封入(Blu-ray付盤、DVD付盤のみ)

【初回発注分対象メーカー店舗特典】

  • B2ポスター
    ※店舗により特典がつかない店舗もございます。詳しくは店舗にご確認ください。

【CD収録曲】
<CD>

  • 01.Gene of the earth(新曲)(作詞:今井麻美、作曲:濱田智之、編曲:酒井陽一)
  • 02.レプリカの森
  • 03.World-Line
  • 04.Believe in Sky
  • 05.アメノアトニ〜Brighter Days Ahead〜
  • 06.懐かしい街
  • 07.Astral World(新曲)(作詞・作曲:設楽哲也、編曲:Tak Miyazawa)
  • 08.Blue Feather
  • 09.宇宙の申し子(読み方:そらのもうしご)(新曲)(作詞:森 由里子、作曲:中山豪次郎、編曲:濱田智之)

Bonus Track(Blu-ray付盤・DVD盤のみ収録)

  • 10.朝焼けのスターマイン - As-Dur -(作詞:林 直孝、作曲:石田秀登、編曲:Tak Miyazawa)
  • 11.Reunion 〜Once Again〜 - Remix -(作詞:林 直孝/濱田智之、作曲・編曲:青木宏憲)

<Blu-ray / DVD>

  • Gene of the earth MV
  • Gene of the earth MVメイキング映像
  • Believe in Sky MV
  • World-Line MV

ライブ情報

今井麻美 Live 2020 ~Sing in your heart~Side Red

  • 会場:メルパルクホール
  • 日程:2020年12月6日(日)
  • 開場 17:00(予定)
  • 開演 18:00(予定)
  • チケット価格:全席指定 7700円[税込]

[2020年11月18日23時50分 記事修正]
本文中の一部表記を修正しました。