『レッド・デッド・オンライン』がもたらすゲーム体験を開発者が語る

 2018年秋の発売から約2年、つねに進化を続ける『レッド・デッド・オンライン』(以下『RDO』)。『レッド・デッド・リデンプション2』(以下、『RDR2』)のプレイヤーなら無料で楽しめるこのコンテンツは、ロックスター・ゲームスがこれまでに送り出してきたオープンワールド・オンラインゲームの中でも屈指の完成度に到達している。

 『RDR2』のストーリーモードと同じ“世界”であっても、その手応えとプレイへの没入感は大きく異なっており、『RDR2』のストーリーモードがアーサー・モーガンとジョン・マーストンというふたりのアウトロー人生を追体験することが目的であるのに対し、『RDO』はそこから“先”に踏み込み、今度はプレイヤーみずからが主人公となって人生を切り拓く、その様を実体験できるのである。

 このじつに巧みなゲームデザインは、アップデートを重ねたいまが、いちばん円熟していると断言できる。その理由は、大型アップデートによって実装された荒野の職業“自然探究家(The Naturalist)”を中心とする、さまざまなプレイスタイルの追加と、その内容の充実ぶりだ。

 ソロでも民警団でも攻略できる自然探究家には、単なる新しい職業の追加にとどまらず、場合によってはゲームをプレイするスタイルにも大きな影響を与える、ユニークかつ野心的なテーマが盛り込まれている。

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

 今回、ロックスター・ゲームスで『RDO』に携わる開発スタッフの方々に、国内メディアでは独占となるメールインタビューが実現した。そこで、自然探究家のアップデートを中心に、『RDO』の重厚なる世界観と練り込まれたゲームデザイン、オンラインにおける問題点と課題について、Katie Pica( デザインディレクター:ワールド&プログレッション)氏、Scott Butchard( デザインディレクター:ワールド&コンテンツ)氏、Tarek Hamad( デザインプロダクションディレクター)氏に話を伺った。

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

職業システムと魅力的なNPCたち

――『RDO』でとくにおもしろい要素として、独自の進行ルートを持つ専門的な役割である、荒野の職業が挙げられます。本タイトルにこうした要素を導入することになった経緯を教えてください。

Katieゲームには、新たな仕組みと長期的な目標を取り入れたいと考えていました。それに、ゲームへの没入感やキャラクターとの一体感もさらに強めたかったんです。これは『RDR2』本編のストーリーでも重視していたことです。

 職業のコンセプトは、ロールプレイにおいてプレイヤーがどうすれば自分のキャラクターになりきれるかを考えていたときに生まれました。職業によってプレイヤーに没頭できる目的を与え、ゲーム世界とのつながりを強めることができるのではないか、と。解除されていく各種アイテムは、新たなアプローチや要素、外観的な選択肢、それからちょっとした便利機能などを提供できるように設計しました。

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――自然探求家としてプレイしていると、ゲーム内の動物たちを単なる収獲対象としてではなく、実際に生態系の一部を担う存在として認識するようになります。人間が生きるためにほかの生き物……つまり動物や野菜を食べなければならないという現実を、改めて痛感させられますね。この役割は、プレイヤーに環境への意識をより高めてもらうことを意図して作られたのでしょうか?

Katieハリエットとガスは、ふたつの異なる視点から人間の自然との関わりかたを教えてくれる存在です。本ゲームが持つ奥深い生態系は、私たちが作り上げた世界にプレイヤーを結びつける役割の一部を担っています。

 そこに特定のメッセージを押し付ける意図はなく、プレイヤーにはこうしたゲーム内の概念に対してどのようにプレイしたいかを、みずから見つけてもらえたらと思っています。

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

Scott意図していた目的ではないものの、こうした側面があることには開発途中で気付き、何度も話し合いを重ねました。自然探求家のアップデートによって、動物たちはそれまでの形を超えてより意義ある存在へと進化しました。動物の実体感をいっそう高め、より体感的に動物と関われる手段をプレイヤーに与え、実際にそこに動物が息づいていると感じてもらえることを目指したのです。

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

Scottプレイヤーの皆さんには、動物を見かけたら少し立ち止まって考えてみてほしいですね……ここで自分が取る行動が、どのような結果をもたらすかを。殺してガスのもとに持っていくのか、クリップスのところで商品の素材にするのか、鎮静化してまた自然に帰すのか。ハリエットのミッションをクリアーすれば新たなスキルを会得でき、ガスを手伝えば新たな衣服が手に入ります。何を重視するのかはプレイヤーの皆さん次第です。

――ハリエットのように、その時代の社会的通念に囚われないキャラクターは、どんな舞台に登場してもおもしろいですよね。強い個性を持っていて、単なるクエスト依頼者に留まらない存在感を放っています。ハリエットはどのようにして生まれ、なぜ本タイトルに登場することになったのでしょうか?

Scottハリエットは、自分の価値観や世界の見方に確固たる信念を持っている、すばらしいキャラクターです。自然探求家の役割を具現化するには、そういう個性が必要だと考えました。初期のアイデアでは罠師が協力者のポジションだったんですが、それではシングルプレイで伝説の動物を狩るのと同じような道筋になります。

 そのアイデアを掘り下げて、プレイヤーがこうした伝説の動物を探し、サンプルを採って研究するというコンセプトにたどり着きました。罠師の役割はガスが担い、素材を集めるための狩りも引き続き楽しめます。

 ハリエットとガスはふたりとも単なる使い捨てのキャラクターではなく、現実世界に存在してもおかしくないようなリアリティーのある人物にしたかったんです。今後のコンテンツにもまた登場してもらうかもしれません。

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

伝説の動物とオンライン独自の戦闘システム

――『RDO』の放浪モードでは、伝説の動物を追跡し、密猟者から守ることができます。これは過去作にはないものでしたが、このおかげでほかのプレイヤーと協力するチャンスが増えました。こういったミッションのアイデアはどこで得たものでしょうか?

Katieハリエットをキャラクターとして絡めたシングルプレイの伝説の動物の要素、並びに彼女がプレイヤーにもたらしうるタイプの状況を作り上げたいと考えました。幅広い層やオンラインの自由な性質に応えるには、ミッションをバラエティー豊かなものにする必要があります。

 したがって、動物の研究と保存をテーマにしたスローペースの探索と戦闘を組み合わせることにフォーカスしました。この組み合わせのバランスを保つうえで大切なのは、こうしたゲーム体験を民警団全員で楽しめるものにすると同時に、ひとりでもプレイできるものにすることです。

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

Scott野生動物や生態系の保護に情熱を注ぐハリエットのようなキャラクターを中心に、何か違うことをやってみたいと思いました。

 これまで、プレイヤーは猟師や密猟者の立場でしたが、これを逆転させたらどうなるのか、生態系の守り手となって動物を檻から救い出し、同時に多少の銃撃戦も楽しめるようにしたら、プレイヤーはどう感じるのか。そうした新しいミッションのタイプを探るきっかけにもなりましたね。

――新しい伝説の動物がアップデートで毎週のように追加されています。こういった伝説の動物の追跡には時間がかかり、忍耐力も必要です。それも意図的なものでしょうか?

Scottその通りです。『RDO』では、できるだけ没入感が溢れる体験をお届けしたいと考えています。オープンワールドではとくに没入感を大切にしていて、狩猟には入念な準備と忍耐が必要となります。リアルな体験にするため、狩猟は現実に即したシームレスなものにしたいと考えました。

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

Scottようやく伝説の動物を追い詰めたら、動物と1対1で対峙する瞬間が訪れ、最終的に殺すか鎮静化させるかを選ぶことになる。このバランスを維持するためのコンテンツも追加してあり、放浪イベントやハリエットのミッションを通して、こうした伝説の動物とより簡単に関わることができます。

――ランクもまた『レッド・デッド・オンライン』の重要な要素のひとつですよね。ランクはカスタマイズの可能性を広げますが、このシステムのバランスや達成感の調整には多大な苦労があったかと思います。このランクシステムのもっとも重要なポイントや、開発にあたって苦労した点について教えてください。

Katie解除できるアイテムや、それをゲームプレイにどう組み込むかについては、時間をかけて検討しています。これは役割の実現性を高めることにもなります。プレイヤーに自分自身の成長を実感してもらうためには、アイテムを解除する順番はとても重要です。進行速度の調整はもっとも難しいポイントですね。これはプレイヤーによってコンテンツの遊びかたが大きく異なるからです。

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

――『RDO』ではアビリティカードが導入され、プレイヤーが戦闘における能力を強化できるようになりました。以前までのタイトルになかった戦略的要素が追加されたわけですが、“デッドアイ”システムの調整とアビリティカードの導入が行われた理由は何でしょうか?

Scottアビリティカードによって戦闘能力やほかのゲーム要素に変化をつけ、『RDO』のプレイヤーが自分好みのプレイスタイルで楽しみやすくなることを期待しました。シングルプレイではデッドアイで時間の進みを遅らせることができますが、オンラインでは別の形でそれと同じレベルの絶対的な強みを持たせる方法を考える必要がありました。

 そこで、ダメージ増加やライフ回復など、ほかの能力を用意し、デッドアイの能力をプレイヤー自身にカスタマイズしてもらうアイデアにたどり着きました。

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

随所に込められたサバイバルへのこだわり

――キャンプの要素は過去の『レッド・デッド』シリーズにもありましたが、『RDO』ではその重要性が増しているように感じます。システム全体が高度になったうえ、さまざまな特典や利益が民警団の結成を促す要素にもなっています。プレイヤーキャンプや民警団キャンプのもっともすばらしい点は何だと思いますか?

Scott荒野の無法者にとって、キャンプはいつも活動の中心となる場所です。“密造酒製造業者(Moonshiners)”用の物件を追加した後も、キャンプが劣る場所に思えたり、使う気をなくしたりしないように細心の注意を払いました。

 オンラインのキャンプでは、シングルプレイにおけるダッチのキャンプで感じられるよりも多くの要素を盛り込みたいと考えました。クリップスが作り上げた場所という実感を持たせたかったんです。ゲームプレイにおいては、商人が果たす役割がキャンプを中心に発展し、キャンプからビジネスを行える点が気に入っています。楽しさという点では、何といってもキャンプにいる犬が好きですね。キャンプが襲われると知らせてくれるのも最高です。それに、役割専用のキャンプ用テーマにもすばらしいものがあります。

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

――『RDO』では、プレイヤーが結成する民警団が重要な役割を果たしています。スタート時からチームワークが強調され、協力要素があるほかのゲームと比べても重点が置かれていると感じます。『グランド・セフト・オート』(以下、『GTA』)の強盗ミッションの進化にも似たものを感じますね。民警団のアイデアはどこから得て、なぜ『RDO』に採用されることになったのでしょうか?

Scott民警団というアイデアは、開発当初からずっと頭の片隅にありました。チームで協力したり、目的を達成するために協調したりするシステムは『GTA』からの影響もありますが、もともとは『レッド・レッド・リデンプション』1作目の民警団の流れを汲むものです。

 前作のオンライン版では、プレイヤーどうしが臨時の民警団を結成できました。そのアイデアをさらに進化させた形です。民警団のシステムを継承して洗練させるやりかたは、『GTAオンライン』における組織やモーターサイクルクラブでの経験と、それに対するプレイヤーの反応を参考にしています。こうしたチーム形成をもっと永続的なものにするとともに、組織としての特色を作り出せるものにしたかったんです。

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

――『RDO』の開始以来、多数のすばらしい武器やアイテムが追加され続けています。デザインのバリエーションが多すぎて、コレクター魂に火が点くほどです。新しいアイテムを追加するときに注意する点は?

Katieアートチームは驚くほど才能のある集団で、長い時間をかけてリサーチを行い、アップデートのたびに非の打ちどころのない武器のアップグレードや服装、アクセサリーを仕上げてくれます。機能を持つものであれ、見た目だけのものであれ、すべてのアイテムを当時の実際のスタイルで、かつ既に存在するアイテムとは異なるものにしたいと思っています。

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー
『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

Scottいつも難しいと感じるのは、ゲームの舞台となる時代の史実に基づきながら、同時に楽しく興味深い武器やアイテムを作り出すことです。『RDO』は奥深く複雑な世界そのものなので、追加した武器やアイテムが強すぎたり、ゲームの性格に合っていなかったり、没入感を阻害してしまうことで世界観が壊れるのは避けなければいけません

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

――新しいスキルや職業を追加するときには、既存のゲームシステムとのバランスを考えることが重要となりますが、『RDO』ではどのようにバランスを保っていますか?

Katieバランスを保つのはいつも難しい作業ですが、うまく機能するやりかたを模索することを楽しんでいます。新しく追加されるスキルや役割はどれも、ゲーム世界の既存の要素になじむものでありながら、同時に、プレイヤーにいままでにない体験を提供するものでなくてはいけません。

 新しい要素を追加するときには、ほかのシステムと被っていたり、あってもなくてもいいオプションだと思われることは避けたいと考えています。私たちが既存の役割に新しい要素を追加するやりかたは、これまでにリリースした5つの職業を見ればわかってもらえるはずです。たとえば、伝説の動物を見つけたらハリエットやガスに渡すこともできますが、商人に戻ってより多くの素材を手に入れることも可能です。また、自然探求家テーマのコレクションや土に埋まった収集物が“化石”という形で追加されるので、収集家として集めることもできます。

 私たちはつねにゲーム全体を見ながら、新しい要素が全体に与える影響を考えています

『レッド・デッド・オンライン』自然探究家が実現する新たなゲーム体験をロックスター・ゲームスに訊く! 国内独占インタビュー

オンラインにおける今後の課題

――2020年8月にアップデートがリリースされたとき、多くのバグやグリッチを引き起こしました。その後、4日間に渡って多くのプレイヤーがプレイ不可能になり、とくに連続チャレンジの達成を目指すプレイヤーにとっては大打撃となってしまいました。なぜこのような問題が起きたのでしょうか?

Tarekこのスケールのオンラインゲームを運営するうえでもっとも難しいのは、たとえ小さな変更でも予測できない大問題を引き起こすことがあるという点です。今回の場合、不運にも複数のバグが同時に発生してしまい、それらを特定して修正する作業に時間を要したことが原因でした。

――ハッカーやチートによって問題が発生することもありますね。とくにPC版では顕著な問題です。プレイヤーがゲーム内でグリッチや脆弱性を利用した不正を行わないように、どのような対策をしていますか?

TarekPC版でもそのほかのプラットフォームでも、ハッカーやチートに邪魔されることなくゲームを楽しみたいプレイヤーが持つ現状への不満は理解しています。当社には秩序を乱す行為やそれを助長する無許可のmodを発見して対処する専門のチームがいて、PC版のファンによりよいゲーム体験を提供するために、つねに改善を続けています。私たちにとっても、これはつねに最優先で考えるべき課題です。