2020年10月25日、科学アドベンチャーシリーズなどを手掛けるMAGES.が、事業戦略発表会を開催。同発表会では、『シュタインズ・ゲート』に関連する新作や『アノニマス・コード』の発売時期などが明かされた。

 また同日には、『シュタインズ・ゲート』10周年記念特別番組「“円環の蛇”作戦(オペレーション・ミドガルズオルム)~0から1へ、そしてその先へ」が放送された。事業戦略発表会の内容については、速報記事を掲載しているので、本稿ではその内容を軽く触れつつ、メディア向けに行われた質疑応答、囲み取材の模様をお届けする。

 事業戦略発表会では、2020年4月にコロプラグループへと参画したMAGES.の未来について語られた。まずは、10月25日付で同社の代表取締役会長に就任した志倉千代丸氏、そして志倉氏に代わり、代表取締役社長に就任した本荘健吾氏が登壇し、挨拶を行った。

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会長就任について、「クリエイティブに専念するため」と語る志倉氏。
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本荘氏からは、デバッグやゲーム開発会社の要職を務めた氏ならではの視点から事業に関わっていくということが語られた。

 つぎに、新体制へと移行したMAGES.のチャレンジとして、まずは原作開発の強化について触れられた。MAGES.として、事業体が多岐にわたっている中で、各事業間を超えた取り組みもなどもチャレンジしていきたいと目標を語った。

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 続くIP事業の拡大に関しては、新しいIPを作り続けていくとのこと。本発表会の司会を務めるMAGES.IPビジネス本部長の河合秀典氏からは、11月よりコロプラのグッズ制作を行っているスタッフがMAGES.に新たに加わり、コロプラグループが保有するIPについて取り扱っていくということが語られた。

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 また、新規事業の“ドール事業(羊毛フェルトスクール事業)”、そして、B-PROJECTの総合プロデューサーを務め、MAGES.とも関わりの深いアーティストの西川貴教さんがMAGES.の特別顧問に就任したことを発表。その後、西川さんとともにドール事業室長の野口裕弘氏が登壇。同事業について、羊毛フェルトの技術を活かし、大切なペットをリアルに再現、人の心を動かすクリエイターを育成することを目標にしていることなどを説明した。

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 続いて、志倉氏企画・原作による科学アドベンチャーシリーズの新作『アノニマス・コード』に関する発表へ。まずは同作の最新PVが上映され、発売時期が2021年秋に決定したことが発表。なお、発売が予定されていたプレイステーション Vita版については、同機種に於ける昨今の市場と製造環境を鑑み、発売中止となることがアナウンスされた。

 その後は、同作で愛咲ももを演じる夏川椎菜さん、倉科小鹿を演じる山本彩乃さんを交えてのトークが展開された。

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 『アノニマス・コード』では、2037年の東京・中野を舞台に、ハッカーである主人公“高岡歩論”が、謎の少女“愛咲もも”との出会いをきっかけに、世界の巨大な謎に迫っていく、少年マンガテイストのボーイミーツガールSFストーリーが展開されていく。

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高岡歩論(声:千葉翔也さん)
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倉科小鹿(声:山本彩乃さん)
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愛咲もも(声:夏川椎菜さん)

 志倉氏によると、本作ではプレイヤーは高岡歩論の目線ではなく、第三者のような目線の物語が進んでいくという。また『アノニマス・コード』ではハッカーたちによる活躍が描かれるが、本作におけるハッカーは、一般的に想像されるハッカーのイメージとは違い、魔法使いのような存在になっているという。

 また、歩論の持つ“セーブ&ロード”の能力を通じて、歩論とプレイヤーが相互的に影響しながら物語が進行することや、これまでの科学アドベンチャーシリーズとの関連性、本作独自のシステムとなる“マンガトリガー”について触れられた。

 さらにアニメ化について、志倉氏は「科学アドベンチャーシリーズでアニメになっていない作品はないので、期待してください」と気になる発言も。そのほか、高岡歩論役の千葉翔也さんより、本作への期待を寄せるビデオメッセージも公開された。

 また発表会では、昨年10周年を迎えた『シュタインズ・ゲート』シリーズより宮野真守さん(岡部倫太郎役)、今井麻美さん(牧瀬紅莉栖役)、関智一さん(橋田至役)が登壇し、同シリーズの今後の展開について発表された。

 まずは、2020年1月26日開催の“科学ADVライブ S;G 1010th ANNIVERSARY”で発表された『シュタインズ・ゲート』のハリウッド実写化プロジェクトについて。志倉氏によれば、まだ話せないことが多いとしつつ、プロットなどについて日々やり取りしていることや、ドラマシリーズとして展開されていくことなどが明かされた。

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 続いて、“科学ADVライブ S;G 1010th ANNIVERSARY”にて、ハリウッド実写化プロジェクトとともに発表された『シュタインズ・ゲート ゼロ エリート』の最新PVが公開。志倉氏いわく、開発は順調とのこと。また、アニメとは違い分岐も存在するため、放送されたテレビアニメ2クール分よりも多くのアニメーションが収録されていることが改めて説明された。

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 そしてここで、科学アドベンチャーシリーズの新企画として、『シュタインズ・ゲート』に関する新たな作品となる『シュタインズ・〇〇』(※〇〇の部分は今後発表予定)が発表。同作は『カオスヘッド』から『カオスチャイルド』になったときのような立ち位置の作品になるとのこと。

 また、志倉氏によると、『シュタインズ・ゲート』は、“0”(『シュタインズ・ゲート ゼロ』))と“1”(『シュタインズ・ゲート』本編)の物語で完結しているため、それ以上やってしまうと蛇足になると考えているそう。それゆえ同作は「続編として考えてもいいが、ファンディスクではない」作品となることが語られた。また同作では、宮野真守さん、関智一さん、今井麻美さんも出演することが明らかとなった。

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 ここでMAGES.の事業発表会は終了。その後は、志倉千代丸氏、本荘健吾氏、西川貴教さんへの質疑応答へ。まずは、MAGES.の今後のコンテンツ制作について、内製と外製のどちらを中心に行っていくのか聞かれると、志倉氏が社内にある開発エンジンで制作できるものは社内で行っていくと回答。また、今後リリースしていくタイトルについては、コンシューマーゲームに注力していくということが語られた。

 続いて、西川さんの特別顧問就任について、新規事業ありきで決まったのか、また今回の新規事業について、もともとやりたいという気持ちがあったのか、という2点について質問。新規事業については、3年前ほど前から志倉氏と話し合っていたとしつつ、事業の実現に当たっての意見交換をしていく中で、お披露目できることになったのが今回のタイミングであったと西川さんが説明。加えて、MAGES.が新体制となり、新規事業を含む新しいIPの展開を考えている時期が重なったことで、新規事業以外のMAGES.のIPにも、特別顧問という形で関わることになったと経緯を語った。

 また、西川さんは特別顧問に就任した理由として、現在のコロナ禍の影響により、国内のアーティストなどが、これまでの一元的な収入、音楽だけで食べていくことができないという状況に対して、自分たちのような世代が働きかたの改革を行い、音楽活動だけでなく、新たな可能性に挑戦することで、収入を得ていく必要があるということを示さなければならないという思いがあったと語った。

 事業戦略発表会より続けて行われた『シュタインズ・ゲート』10周年記念特別番組では、発表会にも出演したキャスト陣と志倉氏が引き続き出演。さらに、科学アドベンチャーシリーズのプロデューサーを務める松原達也氏も加わり、発表会の感想がキャスト陣から語られつつ、『シュタインズ・ゲート』や『アノニマス・コード』に関する情報などが届けられた。
 
 番組では、フルアニメーションADVとして展開される『シュタインズ・ゲート ゼロ エリート』について、キャラクターボイスの新規収録が行われることが明らかに。また、MAGES.が展開していくコンテンツについて、『シュタインズ・ゲート ゼロ エリート』、『アノニマス・コード』、『シュタインズ・〇〇』の順でリリースしていくことが明言された。

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 番組が終了した後には、志倉千代丸氏の囲み取材が行われたので、その模様をお届けする。

――事業戦略発表会でも触れられた『シュタインズ・〇〇』は、『アノニマス・コード』の発売前に新企画として発表されましたが、その意図を教えてください。

志倉 本当は、(『シュタインズ・〇〇』を)発表するべきではなかったと思っています。現在発表されているコンテンツで発売されていないものがたくさんありますので。『シュタインズ・〇〇』については、以前実施していただいたファミ通さんでのインタビューの際、年内に実施予定の大きな発表会で、ものすごい爆弾を仕込んでいると発言していたものがこれにあたります。もともと、『シュタインズ・ゲート』10周年を記念した10のプロジェクトを展開するにあたってネタをほしいと言われたときに、すでに発表済みのものに負けない大きな企画をと考えた結果、今回の形となりました。

――『シュタインズ・〇〇』はゲームとは明言されていませんが、原作となる物語は始動しているのでしょうか?

志倉 はい。箱書き(※)まではいかないですが、それなりの大きい量のプロットは書き終えています。

※シーンごとの要点や情報をまとめたメモ書きのまとまりのようなもの。

――最初に展開されるメディアがゲーム以外という可能性もあるのでしょうか?

志倉 そうですね。うちのIP事業部による営業次第では、先にアニメや劇場版という可能性もあるかもしれないです。

――小説などの書籍からのパターンはありますか?

志倉 いえ、今回は小説からというパターンはないと思います。

――『アノニマス・コード』について、対応機種はNintendo Switch、プレイステーション4であると発表されていますが、プレイステーション5での展開は想定されていますか?

志倉 そうですね。自然とそういう形になっていくかなと思います。いまMAGES.でアドベンチャーゲームを作る際に使用しているゲームエンジンは、ひとつのエンジンでいくつかのハードに対応できるものになっています。ただ、現時点では、その中にプレイステーション5は入ってはいないですが、対応していくと思います。

――プレイステーション5の展開されるとしたら、Nintendo Switch、プレイステーション4版よりも遅れての発売になったりするのでしょうか?

志倉 ベストは同時期だと考えています。

――事前発表会では新規事業として“ドール事業”について発表されましたが、具体的な開始時期は決まっていますか?

志倉 来年以降を目処にスクールを開始できればと考えています。ただ、学校法人という形ではないので、4月入学ということではなく、準備が整い次第、開始になるかと思います。そこから、生徒さんがどれだけクリエイターとして技術を習得してもらえるかというのは、いったんはじめてみないとわからないところではありますが、最初のお客さんへ満足していただける商品が届けられるようになるまでは2~3年までのあいだかなと想定しています。

 この事業は、需要と供給でいうと、需要のほうが圧倒的に多い市場ではあるので、入学金などでそれなりに学費がかかったとしても充分もとは取れる人もいると考えています。また、オンラインでのワークショップ形式のスクールという方式を考えていますので、地方にお住まいの方も参加しやすく、地方の方のビジネスとしても成り立っていくのではないかと。

――『シュタインズ・ゲート』や『アノニマス・コード』以外のコンテンツで、現在進行中のプロジェクトはありますか?

志倉 具体的には言えませんが、科学アドベンチャーシリーズと頭についている作品で、少なくとも企画、プロットまであるものは『シュタインズ・〇〇』を除いてまだ2作品ありまして、それぞれ、独立して楽しめるものを目指しています。しかし、科学アドベンチャーシリーズは時代続き、時間続きであるがゆえのおもしろさというのもあると思っています。すべてを遊んでもらうのはたいへんだとは思いますが、いままでお付き合いしてくださっている方たちには、僕らなりのファンサービスのようなこともやっていきたいです。

――最後にファンの方へのメッセージをお願いします。

志倉 KADOKAWAグループだったMAGES.が、一時期は独立し、その後はコロプラグループに入るという、この一連の流れだけでも1年半ほど経過しているのですが、僕自身が旗振りというか、MBOからM&Aまでやっていたということもあり、少しクリエイティブの部分が疎かになっていた部分は反省しています。ですが、僕の本業はクリエイティブだろうと信じていますし、ものづくりをしたいという気持ち自体が大事であるし、才能であると思っていますので、それが尽きるまではがんばってものづくりをしていきます。音楽もそうですし、シナリオや企画など、全力でふざけて行きたいと思います。

 また、これまで僕の作品を支えてくださった皆さんの期待に応えることや、中高生などの新しい世代でも理解できる作品などについても考えながら活動しています。すでに僕の作品を知ってくださっている方は引き続き応援していただきたいですし、今回の発表会で知ったという方は、ぜひ弊社のサイトを見ていただいて、触れていただければと思います。とくにうちは、セールが多い会社なので、狙い目です(笑)。よろしくお願いします。

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