プレイステーション5が実現する衝撃のゲーム体験とは?

 “ウェブスイング”という斬新かつ爽快なアクション、非の打ち所がないゲーム性で世界を魅了した『Marvel’s Spider-Man(スパイダーマン)』。その続編にして、プレイステーション5のローンチタイトルとして2020年11月12日、ソニー・インタラクティブエンタテインメントから『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales(スパイダーマン:マイルズ・モラレス)』が発売される。

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 これまでは散発的に情報が伝えられるのみだったが、発売が迫るいま、徐々にその姿が明らかになってきた。そこで今回、前作に続いて本作でも開発を一手に担う開発スタジオ、Insomniac Games(インソムニアックゲームズ)のキーパーソンたちに、『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』に込められた情熱と技術を語っていただいた。

 国内ではファミ通独占となるその貴重な“肉声”で、本作が実現するまったく新しいゲーム体験を少しでも皆さんにお伝えできたら、と思う。本記事ではゲームシステムに焦点を当てて、クリエイティブディレクターのBrian Horton(ブライアン・ホートン)氏と、ゲームディレクターのCameron Christian(キャメロン・クリスチャン)氏に直撃する。

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私たちの持つありったけの情熱と技術を注ぎ込みました

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インソムニアックゲームズ/クリエイティブディレクターのブライアン・ホートン氏。『Marvel's Spider-Man』でもクリエイティブディレクターを務めた、ゲーム業界25年目のベテラン。代表作は、『トゥームレイダー』(2013)、『ライズ オブ ザ トゥームレイダー』(2016)など。

――前作の『Marvel's Spider-Man』で主人公がピーター・パーカーからマイルズ・モラレスに変わることがゲーム内で示唆されていましたが、この時点で『Marvel's Spider-Man: Miles Morales』の開発は決まっていたのでしょうか?

ブライアン 前作のクリエイティブディレクターだったブライアン・インティハーは「マイルズはやがて能力を得る。そして、時期はわからないけれど、マイルズが主役のゲームを作ることになるだろう」と考えていたようです。その後に、私は彼から「次作のディレクターをやってみないか」と言われました。もちろん光栄に思って、受けることにしました。

――前作でマイルズが登場したことに、ファンからはどのような反応がありましたか?

ブライアンユーザーの反応は、驚くほどポジティブなものでした。前作にマイルズが登場することを知ったユーザーの中には、マイルズが登場するコミックを探したという方もたくさんいました。

 実際、当時はマイルズの知名度もそこまで高くなかったのですが、ご存知のように映画『スパイダーマン:スパイダーバース』が公開(北米では2018年12月、国内では2019年3月に公開)されたことで、マイルズの人気も知名度も一気に上がりました。本当にすばらしいタイミングで、マイルズが主人公のオリジナルストーリーという、初のビデオゲームを作ることができました。コミックもあり、『スパイダーバース』もあり、前作もあるという状況で本作を出せることは最高だと思っています。

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前作にも登場していた、本作の主人公であるマイルズ・モラレス。研究室から逃げ出したクモに刺され(このエピソードは前作で描かれている)、壁や天井に張り付ける能力や危機を回避する超感覚など、ピーターと同様の力を得ることになった青年。父親は警官だったが、1年前の事件に巻き込まれて殉職。母親のリオはハーレム地区を守るため、市議会議員に立候補する。

――話題に挙がった『スパイダーバース』ですが、あの映画が公開されたころには、もう開発は進んでいたのでしょうか?

ブライアン『スパイダーバース』が公開された時期にはストーリーのコンセプトを考えていたのですが、映画を観て、私たちが考えるゲームの設定とも対立せず、補い合えると感じましたね。『スパイダーバース』のマイルズ・モラレスはゲームの設定よりも若く、ゲームと映画では異なりますが、どちらもマイルズというキャラクターをよく表現できていると思います。お互いが補完し合える作品だと思います。

――本作を作るにあたって、マーベルとはどのような話をされたのでしょうか?

ブライアンマーベルとは前作の発売直後から話をしていましたが、前作の段階で私たちインソムニアックゲームズが作った『Marvel's Spider-Man』のユニバースは、マーベルからオフィシャルのユニバースと認められました。ユニバース・ナンバーとして“1048”をもらっています。

 また、『Marvel's Spider-Man』でマイルズの父親は亡くなっているのですが、これはコミックとも映画とも異なる展開です。つまり、私たちだけの新しいマイルズのストーリーをゲームで語ることができる。この点をマーベルと突き詰めていました。

――前作はPS4で大ヒットを記録し、本作はPS5で発売されます(PS4版も同時発売)。開発者の目線から見て、PS4とPS5のゲーム開発にどのような違いがありましたか?

ブライアン本作をPS5で作るにあたって、「PS5の機能をフルに活用したい」という新たな挑戦意欲が湧きました。PS5にはいくつも利点がありますが、なかでもSSDの機能を活かして、シームレスな没入感の高い体験を作ることが第一の目標となりましたね。

――前作もロードの長さはあまり感じませんでしたが、本作はそれすらなく、完全にシームレスで展開すると聞きました。

ブライアンゲームを始めてから1回も倒されずにエンディングまで到達できれば、ローディングはいっさいありません。ムービーとアクションのあいだにもローディングはないので、映画のような体験ができるようにデザインされています。ファストトラベルを使ったときと敵に倒されたときだけ、短いロード画面が挟まりますが、画面が一瞬暗くなってすぐにゲームプレイへ戻る形になっています。

――それはすばらしいですね! PS5は高機能なハードですから、ソフト開発にかかる労力はPS4と比べても大きかったのでは?

ブライアン 幸いなことに、前作で“マーベルの世界におけるオープンワールドのニューヨーク”の基盤は作っていました。前作は、このニューヨークを作るところにかなりの労力が費やされていたのです。しかし、本作はその部分に大きな労力を割く必要はありませんでした。

 そのぶん、開発のパワーを生き生きとしたハーレム地区の構築や、マイルズの新しいミッションにふさわしい形にニューヨークを洗練させることに費やせました。本作は冬が舞台になっているのですが、ニューヨーク全体を雪が覆いつくす光景、夜の闇の中にネオンやホリデーシーズンの明かりが広がっている、幻想的で美しい風景を作ることができたのは、そのおかげです。

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前作でも十分に美しく表現されていた街並みだが、本作はまさに桁違い。PS5の性能をフルに活用し、このレベルの映像がシームレスで動き続ける。

――ある程度の基盤があったとはいえ、ローンチタイトルとしてPS5の性能を見せる役割を本作は担うことになります。そこにプレッシャーはありませんでしたか?

ブライアンもちろん前作のベースがあるとは言え、さらなるディティールを加えるなど、よりいいゲームにする必要はありました。ですから、ポリゴンも進化していますし、ゲーム内に登場するものもより高精細となり、次世代にふさわしいゲームになっています。とくに、窓や道路に反射して映る風景に注目していただきたいですね。

 また、PS5のデュアルセンスワイヤレスコントローラーに採用された“ハプティックフィードバック”では、振動で方向を感じられたり、手元からウェブが出ている感じやスイングしているときの抵抗を感じられたりするので、まさにスパイダーマンを“体感”できるようになっています

――早く実際にプレイして感じてみたいです。本作ではグラフィックモードを“Fidelity(フェデリティ)”と“Performance(パフォーマンス)”のふたつから選択できますが、それぞれのモードの違いについて教えていただけますか?

ブライアンフィデリティ・モードは、グラフィックを重視したデフォルトのモードです。レイトレーシングが有効で完全な4K、30フレームでのゲームプレイを楽しめます。髪の毛に当たるような細かいライトやシャドウがよりリアルになっていたり、キャラクターモデルもより精細なものを使用しています。

 いっぽうのパフォーマンス・モードでは4K、60フレームでゲームを楽しめますが、こちらはテンポラルインジェクションという手法を使っていて、非常に高い安定性で60フレームのゲームが楽しめます。もちろんそれに応じて、アップグレードした非常に高精細なキャラクターモデルを実現しています。

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こちらがマイルズのCGモデル。単体で見るとその差はわかりにくいが、フィデリティ・モードでは、これまでにないレベルでこの姿がガラスに映り込む様などが確認できる。おそらく、PS5のマシンパワーのかなりの部分を描画に割いているのだろう。

――ゲームのプレイ動画を見る限り、カメラの動きやキャラクターのモデルが60フレームでスムーズに動いている印象を受けました。

ブライアン“ダイナミックスケーリング”という技術で、フレームレートを安定して保つことができるのです。ゲームのプレイ動画を見ていただければわかる通り、60フレームだからといってグラフィックが劣化したとは思わないでしょう。非常に安定した60フレームになっていて、その点については自信を持っています。

――ほかに気になったのは、セーブスロットが複数用意されている点です。これはポイントごとにセーブデータを作ってふたつのグラフィックモードを遊んでほしいという意図があるのですか?

ブライアン そういった遊びかたも可能ですが、ゲーム中にグラフィックモードを切り換えることが可能です。その場合、チェックポイントに戻ることになりますが、「ここはパフォーマンスで、ここはフィデリティで遊ぼう」と楽しめますよ。

――ちなみに、セーブデータはいくつ作れますか?

ブライアン 6個ですね。

――複数のセーブデータを作れると聞くと、マルチエンディングを採用しているのではないか? という想像もしてしまうのですが。

ブライアン前作と同じように、ストーリーもエンディングもひとつしか用意していません。本作で語りたかったのは、“自分がどのようなヒーローになっていくのか”を見出していく、マイルズの物語です。彼がスーパーパワーを身につけて、いろいろな困難を乗り越えていくなかで、愛するハーレムの住民たち、家族や友人のために戦う姿を描いています。

――先ほど、ウェブスイングのアクションがデュアルセンスで変わるとおっしゃっていましたが、ほかにデュアルセンスで実現した独自のゲーム体験はありますか?

ブライアンマイルズは生体電気を使って“ヴェノム・パワー”というさまざまなアクションを発揮します。振動機能を活かすことで、たとえば“ヴェノム・ストライク”という攻撃を発射するとき、コントローラーの左から右に振動が移動して電気が流れる感覚を体感できます。また、動画では橋の上で“NuForm(ニューフォーム)”というエネルギーが爆発するシーンがありましたが、ここでも違うレベルの振動をコントローラーに発生させることで、これまでのゲームよりはるかにリアルな爆発を感じられます。

 コントローラーとは関係ないのですが、PS5では“Tempest3Dオーディオ”という技術(ローンチ時は対応ヘッドセットで体験可能)によって、自分の前後左右上下、すべての方向から音響が聴こえます。これによって、敵がどこから攻撃してきているかがわかったり、ウェブスイングで移動している最中に自分の下から街の喧騒が聴こえたり、上空にヘリが飛んでいれば音が上から聴こえたりします。このように、サウンドの技術でもゲーム体験はよりリアルになっているのです。

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ウェブスイングの爽快さは前作以上。さらに視覚、聴覚、触覚に訴えかける部分もPS5のおかげでパワーアップしており、基本のゲームシステムは変わらずとも“新感覚”を楽しめるタイトルになっている。

――より濃密なサウンドを楽しみたかったら、ヘッドセットは必須ですね。

ブライアンそうですね!

――本作には新しい技術がふんだんに盛り込まれていますが、基本的な操作方法は前作とあまり変わらないイメージですか?

ブライアン基本的な部分は同じなので、前作のプレイヤーであれば問題なくプレイできると思います。

 本作の特徴であるヴェノム・パワーに関する操作はL1ボタンに割り当てました。たとえば、前作同様、本作も□ボタンが攻撃となりますが、本作ではL1ボタンを押しながら□ボタンを押すとヴェノム・パンチがくり出せます。また、×ボタンとL1ボタンを組み合わせるとヴェノム・ジャンプができるといった具合です。難しい操作ではないので、マイルズならではのアクションはスムーズに楽しんでいただけると思います。

――ヴェノム・パワーを発動する条件は?

ブライアン ヴェノム・パワーを使うにはエネルギーが必要となるのですが、パンチやキック、回避行動や物を投げるといったアクションを使うことでエネルギーは溜まっていきます。

――本作の開発において、ほかにPS5の性能が生んだゲームとしてのメリットはありますか?

ブライアンSSDを活かしたシームレスな体験、デュアルセンスやTempest3Dオーディオが生むリアルなゲームプレイには触れたので……あえて言うなら、フィデリティ・モードとパフォーマンス・モードのふたつのモードで、プレイヤーに画質とフレームレートのどちらを優先するのかという選択肢を与えられることですね。

 さらに重要なのは、PS5が非常に開発しやすいハードであることです。私たちは開発キットを受け取ってすぐにPS5での開発に取り組み始めたのですが、私たちにとって、自然に開発環境を移行できるキットになっていました。

――そのおかげで、前作で開発したニューヨークの街のデータを本作に容易にコンバートできたのでしょうか?

ブライアンそうですね。じつは、前作もかなり簡単にPS5で動くようになりました。ほぼシームレスに移行できたと言っていいと思います。もちろんSIEからのサポートもありました。非常にツールが使いやすかっただけでなく、私たちにはすばらしいプログラマーがいることもあって、PS5で問題なくゲームを動かせるようになりました。

――それもあって、本作の『Ultimate Edition』に前作のリマスター版が収録できたのでしょうか?

ブライアンそれだけではなく、『Miles Morales』のストーリーを最初から楽しむには、『Marvel's Spider-Man』があったほうがいいと思ったからです。前作はピーター・パーカーの物語ですから、本作だけでもマイルズの物語は完結します。でも、マイルズの物語は前作から始まっていて『Miles Morales』で終わるというストーリーラインがありますから。前作を遊んでいない方には、『Ultimate Edition』で両方を楽しんでいただけたらうれしいですね。

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筆者個人としても、前作をプレイしてから本作を遊ぶことをオススメしたい。そして、その際には『Ultimate Edition』に収録された『Marvel's Spider-Man Remastered』で楽しむのがベストなのだが、どちらを先にプレイすべきかというジレンマも……。

――ブライアンさん自身、スパイダーマンが大好きとのことなので、「ベストの物語を皆さんに楽しんでほしい」という想いが込められているのですね。

ブライアン前作や前作のDLC、そして本作のすべてが『Marvel's Spider-Man』ユニバースの大きなサーガになっていると思うんです。もちろんすべて味わっていただきたいですし、『Miles Morales』はそのタペストリーの中でも重要な一部だと感じています。

――ひとりのスパイダーマンファンとして、本作の出来栄えはいかがですか?

ブライアン世界中のスパイダーマンファンに言いたいのは、私たちは本当にスパイダーマンを愛していて、私たちが持つありったけの情熱と、できるだけの技術を本作に注ぎ込んだということです。そして何より、我々はマイルズ・モラレスというキャラクターを信じています。マイルズは成長の途中ですが、希望とポジティブさを持ったキャラクターなので、マイルズの物語を世界中の皆さんに体感してほしいと思います。

――日本では、スパイダーマンはほかのアメコミヒーローと比べてもかなり昔からメジャーな存在ですから、“いちスパイダーマンファンとしての想い”も多くの人に伝わると思います。

ブライアン 私も東映版の『スパイダーマン』は観ていますよ(笑)。マイルズはピーター・パーカーではありませんが、スパイダーマンとしてのコアな部分は共通しています。それはヒーローとしての責任を負うことであり、善を成す、隣人を助けるという姿勢です。スパイダーマンがほかのヒーローと違うのは、マスクの下にある素顔は誰であってもいい。つまり、ふつうの人でもスパイダーマンのようになれるということです。だからこそ、希望をもたらしてくれるのだと思いますし、本作で描かれるスパイダーマンの物語も誰もが共感できる話だと思うので、日本の皆さんに楽しんでいただけると信じています。

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ヴェノム・パワーでさらにダイナミックなアクションが楽しめます

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インソムニアックゲームズ/ゲームディレクターのキャメロン・クリスチャン氏。前作ではデザインディレクターを担当。Xbox One/PCで発売された『Sunset Overdrive』(2014)では、シニアデザイナーとして移動アクション関連のシステムや市街レイアウトのデザインをリードした。

――本作のゲームサイクルは、基本的には前作と同じと思っていいのでしょうか?

キャメロン基本的なゲームサイクルは前作同様です。平穏な時間があれば映画のようなシーンもあります。

――前作でウェブスイングというアクションを生み出し、世界中の人の心を掴みました。本作はその続編というだけでなく、PS5のローンチタイトルとなったわけですが、そこに対するプレッシャーはありましたか?

キャメロン前作はすばらしいゲームで、それに負けない体験を用意しつつも、多くの面をパワーアップさせないといけませんでした。しかも、前作で皆さんが気に入ってくれた部分は最低でも維持しないといけない。かなりの挑戦ではありましたが、非常に楽しく開発ができました。

――主人公がマイルズに変わったことで、使える能力も大きく変わったようですね。

キャメロンマイルズは生体電気を使ったユニークな能力を使えるので、 ピーター・パーカーのスパイダーマンとかなり明確に差別化できました。マイルズのバトルの特徴は、さまざまなアクションでヴェノム・パワーが溜まっていき、L1ボタンと同時にほかのボタンを押すことで、 ヴェノム・パワーを使った多彩な攻撃がくり出せるという点にあります。

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生体電気を操るヴェノム・パワーは、マイルズ特有の能力。もちろん、これは原作のコミックにも登場する。

――具体的にはどんなものがあるのでしょう?

キャメロン我々が“ヴェノム・パンチ”と呼んでいる攻撃は、L1ボタンを押しながら□ボタンでパンチを出すことで発動するものです。マイルズが力を溜めて生体電気の力を解き放つのですが、これを食らった敵は帯電状態で吹っ飛び、その敵に触れた者も感電します。これでマイルズは状況を打開しやすくなったり、たくさんの敵を倒しやすくなるのです。

――戦いかたは前作と大きく変わりそうです。

キャメロンそうですね。前作は基本的に1対1の戦いが中心だったと思います。 もちろん本作でもそれは可能ですが、1対多で戦えるヴェノム・パワーでプレイの幅は広がります。また、マイルズは自身の姿を消せる“カモフラージュ”という能力も持っていて、この能力もバトルに影響を与えます。

――奇襲がしやすくなるとか?

キャメロンそれも可能ですし、姿を消すと敵がマイルズを見失うので、敵に圧倒されているような状況から脱出する、戦況をリセットするような使いかたも可能です。ちなみに、カモフラージュもヴェノム・パワーも、スキルツリーで望む方向に育てていくことができます。カモフラージュを防御の手段として使えますし、敵に奇襲を仕掛けるために能力を伸ばしていくこともできるわけです。

――前作には“フォーカス”という能力がありましたが、ヴェノム・パワーはそれに近いものですか?

キャメロンはい。ピーターのフォーカスに当たるパワーが、マイルズのヴェノム・パワーです。マイルズは攻撃あるいは回避でヴェノム・パワーを溜め、技を発動するごとにパワーを消費します。もちろん、ヴェノム・パワーで体力の回復もできますよ。

――マイルズ自身はスキルポイントで新しい能力を得たり、スキルを成長させられると思いますが、それらとは別に、前作にはスーツのパワーやガジェットもありました。 これらについても、本作では同様となるのでしょうか?

キャメロンその通りです。スキルポイントを使ってスキルツリーでスキルを育成できますが、それ以外にスーツの改造でも強化が可能です。 スーツを改造してさらなるパワーを付与するだけでなく、ヴェノム・パワーやカモフラージュも増強できます。また、ガジェットもヴェノム・パワーとの相乗効果をもたらせるものになっていますし、アップグレードもできます。

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育成で習得したさまざまな能力を駆使しなければ、強力なヴィラン(敵)たちを倒していくことは難しいだろう。もちろん、謎解きなどにもそういった能力は不可欠になりそうだ。

――なるほど。概要は掴めましたので、続いては公開されている動画なども含めて、気になった点を深掘りしてうかがいたいと思います。まずは……配線をつないだり、敵をマーキングするようなシーンがありましたが、これらもマイルズ独自の能力ですか?

キャメロン本作では、ウェブで電気を通すことができるようになりました。これを使って配線をつないで、電気の流れを変えてパズルを解くという場面が、ゲーム内に出てきます。敵のマーキングですが、それ自体はもともとマイルズが持っている能力です。ただし、スーツを改造することでマーキングしやすくなるというか、敵と敵とのつながり……どの敵がどの敵を見ているか、その視線を可視化することなどが可能になります。

――バトル中に“Finisher Ready”(日本語版では“フィニッシュ・ムーブ発動OK”)という表示が出ていましたが、これはどういったシステムなのですか?

キャメロン前作にも似たような機能はありましたが、一定数……たとえばコンボを15回つなげられると、映画のようなカメラワークになって、カッコよく敵を倒すことができます。能力を強化すれば、よりコンボがつながりやすくなったり、より強力になります。

――フィニッシュ・ムーブはボスにも有効ですか?

キャメロンフィニッシュ・ムーブを使えば、通常の敵は一撃で倒せます。さすがにボスを一撃で倒すことはできませんが、それでもかなりの大ダメージを与えられるので、ボスにも有効だと言えますね。

――本作には“親愛なる隣人アプリ”という機能があるようですが、どのようなシステムなのか、教えていただけますか?

キャメロン“親愛なる隣人アプリ”は本作で新たに導入された機能で、マイルズとニューヨークの人々を結びつける役割を果たします。マイルズの親友のガンケ・リーがこのアプリを開発したのですが、ニューヨーク市民はこのアプリを使って、あらゆる場所からスパイダーマンに助けを求めたり、街で起きている犯罪を報告できるようになります。

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左にいるのがマイルズの親友であり、マイルズの正体を知る、頼れる仲間のひとりでもあるガンケ・リー。

――動画で公開されたシーンや“親愛なる隣人アプリ”を見ると、本作には人命救助のシチュエーションが多く盛り込まれていると感じます。

キャメロンスパイダーマンの核には、「人々を助ける、彼らの命を救う」というものがあると思います。このアプリによってそれをより明確にしたつもりです。戦うだけではなく、人を助けるのがスパイダーマンなのです。

――確かにそうですね。“親愛なる隣人アプリ”はサイドミッションを遊ぶ際に活躍しそうですが、 サイドミッションのボリュームは前作と同じくらいと思っていいのでしょうか?

キャメロン規模は前作くらいですが、バリエーションは期待していただいていいと思います。人々を助けるものだけでなく、戦闘が発生するものもあります。また、複数のミッションをこなすことで、ある結末や真実が明らかになり、それがメインストーリーに跳ね返ってくるようなものもあります。

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スマートフォンで“親愛なる隣人アプリ”をチェックし、必要とあれば現場に駆けつけることになるのだろう。いまの時代、スマートフォンはスパイダーマンにも欠かせないツールのひとつなのだ。

――なるほど。そういった部分がパワーアップしているということは、収集要素やチャレンジなどの要素にも期待してよさそうですね。

キャメロンええ。前作と同じようにたくさんのチャレンジもクエストもあります。前作と違うのは、いろいろなものを集めた際に、より明確な報酬を与えるようにしていることです。たとえば、ある収集物を全部集めると、すばらしい赤色のスーツが手に入ったり……。そこは、ぜひご期待ください。

――キャメロンさんから見て、前作と本作でいちばん変わった部分はどこでしょうか?

キャメロンやはり、マイルズのヴェノム・パワーではないでしょうか。前作ではアクションやコンバットに高い評価をいただいていましたが、ヴェノム・パワーやマイルズの多彩な能力が加わることで、さらにダイナミックなアクションや冒険を楽しんでいただけると思います。何より、マイルズのオリジナルストーリーは、ピーターの物語とは少し違った味付けになっているので、お楽しみいただけると思います。

――マイルズがパワーアップしたぶん、敵もパワーアップしている?

キャメロンそうですね。マイルズは能力の組み合わせがピーターと異なるので、バトルの調整にはかなり気を遣いました。成長して新たな能力を身に付けたり操作に慣れてくるころには、マイルズの能力に拮抗する力を持った敵が登場するので、緊張感のあるバトルがずっと楽しめるのです。

 ひとつ、例を挙げましょう。本作に登場する“ROXXON(ロクソン)”という企業は、マイルズの生体電気を使った能力を研究して、それに対抗する兵器を開発します。敵がマイルズのヴェノム・パワーを吸収してマイルズにぶつけてきたりするのです。ほかにも、カモフラージュ状態のマイルズを探知できる赤外線ゴーグルを付けた敵も登場します。

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マイルズの前に立ちはだかる組織“アンダーグラウンド”の兵士は、ハイテク技術を駆使した武装を装備している。彼らなら赤外線ゴーグルぐらいは、すぐに準備できるだろう。

――なるほど! 敵の強さは難易度によって変わると思うのですが、その選択で物語や遊びに違いは生じるのでしょうか?

キャメロン難易度は、おもに敵の反応速度や攻撃範囲、同時に襲い掛かってくる敵の人数などに影響します。もちろん、基本的なダメージや敵の体力も調整しています。こういったたくさんの細かい調整を施すことで、難易度はダイナミックなバランスになっています。

――アクションがあまり得意ではないプレイヤーが低い難易度で遊んでも、物語の体験において大きなデメリットはないと考えていい?

キャメロンその通りです。さらに、本作ではスーパーフレンドリーなモードも加えていて、なんとこのモードでは戦闘で倒されることがありません(笑)。アクションが苦手な方でも、ストレスを感じることなくストーリーやアクションを楽しんでいただけます。

――それは安心ですね(笑)。では最後に、本作の発売を楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。

キャメロン皆さんが気に入ってくださればうれしいです。ぜひ冬のニューヨークを体験して、マイルズ・モラレスが新しい能力を身に着けて、自分らしいスパイダーマンになっていく物語をいっしょに楽しんでください。

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