アニメ制作をテーマにした物語でアニメファンの心をつかんだ、2014年~2015年放送のテレビアニメ『SHIROBAKO』(シロバコ)。本作の再放送が2020年10月19日(月)の22時50分からNHK Eテレにて始まります。

 本稿ではそんな本作の魅力と、「ここに注目して観てほしい!」というポイントをご紹介。さらに、本作のファンにつぎに触れてほしい“アニメ制作モノ”の作品もピックアップしてみました。

 あなたが『SHIROBAKO』を、そしてアニメをもっと好きになる切っ掛けになればうれしいです。

 なお本作はdアニメストアNetflixHuluなどの配信サービスでも配信中です。毎週の再放送が待ち切れない方はこれらのサービスで視聴をはじめてみてはいかがでしょう?

アニメ『SHIROBAKO』(dアニメストア for Prime Video)

『SHIROBAKO』とは?

 『SHIROBAKO』はP.A.WORKS制作のオリジナルテレビアニメ。アニメ制作会社“武蔵野アニメーション(ムサニ)”で働く新人制作進行の宮森あおい(声:木村珠莉)を中心に、アニメ制作に関わる人々を描いた群像劇です。

 アニメはたくさんの人の力が合わさって完成します。制作進行はそんな各セクションの進捗を管理する立場。癖の強いクリエイターたちの間であおいは翻弄されることになります。しかし彼らにもそれぞれのこだわりや情熱があり、さまざまな考えかたに触れて、あおいは成長していくのです。

 そんなあおいには、「いつかいっしょにアニメをつくろう」と誓い合った仲間がいます。それは高校で“アニメーション制作同好会”に参加していた友人たち。

 安原絵麻(声:佳村はるか)はあおいと同じムサニで原画マン、坂木しずか(声:千菅春香)は駆け出しの新人声優、藤堂美沙(声:高野麻美)はCG制作会社で3DCGクリエイター、今井みどり(声:大和田仁美)は脚本家を志望する大学生。

 いちばん後輩のみどり以外は、それぞれがアニメ業界で頑張っている彼女たち。5人の仕事が物語にどのように関わってくるのかは、本作の見どころのひとつです。

※高野麻美の高はハシゴ高

 アニメのタイトルにもなっている“白箱”とは、映像作品が完成したとき、制作スタッフがチェックするための、白いケースに入ったビデオテープのこと。最近ではDVDやUSBメモリーなどが使われているとのことで、こうなると白くなければ箱でもありませんが、慣例としていまも白箱と呼ばれているそうです。

 そしてこの白箱は、たくさんの制作スタッフの情熱の結晶。本作を視聴していくと、アニメ制作に関わるすべての人々が主人公と言えるこの作品に相応しいタイトルと思えてきます。

 今年2020年2月には『劇場版SHIROBAKO』も公開。作中の時間もテレビアニメから4年が経過し、成長したあおいたちの新たなアニメ制作への奮闘が描かれました。

 なお劇場版公開前後には週刊ファミ通 2020年3月5日号にて特集記事が、ファミ通.comでもP.A.WORKS堀川社長インタビューがそれぞれ掲載されています。

 テレビアニメ、劇場版ともに監督を務めるのは、『ガールズ&パンツァー』シリーズでもおなじみの水島努監督。リアリティを大事にしながらも、エンターテイメントとしてのおもしろさを最優先に考えた作風は、両作の共通点と言えるでしょう。

 また本作はP.A.WORKSの“働く女の子シリーズ”第2弾でもあります。第1弾は老舗旅館で働くことになった女子高生を主人公にした『花咲くいろは』で、第3弾は町おこしをテーマにした『サクラクエスト』。いずれも頑張る登場人物たちの姿に元気をもらえるアニメとなっています。

『SHIROBAKO』のここに注目!

アニメづくりの仕組みが分かる

 テレビアニメが完成するまでに制作スタッフが直面するさまざまな困難が描かれる『SHIROBAKO』。本作ではこれらが描かれる過程で、視聴者が自然とアニメづくりの仕組みも分かるようになっています。

  • 「制作進行って具体的に何をするの?」
  • 「原画と動画と作画監督の違いって何?」
  • 「アニメなのに撮影ってどういうこと?」

 こういった疑問は、本作を観ているうちに少しずつ解消されます。ほかにも、アニメファンの間で話題になる以下のようなトピックも登場。

  • 手書きの作画と3DCGのメリット・デメリット
  • 作画崩壊や放送の遅延は何故起こるのか
  • マンガ原作アニメのストーリー改変が起こる理由

 もちろん『SHIROBAKO』で描かれるものがアニメ制作で起こる問題の理由のすべてではありません。けれど少なくとも、すべてのアニメがたくさんの人々のがんばりによって生まれていることが実感でき、ひとつひとつのアニメ作品をいままで以上に大切に感じられるようになるかもしれません。

 だから『SHIROBAKO』を観ると“アニメがもっと好きになる”のです。

心に刻みたくなる名言がたくさん

 『SHIROBAKO』はアニメファンにとってアニメ制作の現場を知れる、たまらない作品です。しかし同時に、アニメファンではない方にもおすすめしたい要素がたくさんあります。中でも注目してほしいのが、登場人物たちのグッとくる台詞の数々。

 そこにはアニメ制作だけじゃなくさまざまな物事に当てはまる、ちょっと人生を好転させるかもしれない言葉が数多く含まれています。個人的にとくに胸に響いたのは、ある登場人物の以下の台詞。

 「僕は僕よりうまい人間が、わずかな自意識過剰やつまらない遠慮のせいで、チャンスを取りこぼしてきたのを何度も見た。惜しいと思うよ、いまだにね」

 『SHIROBAKO』にはこういった、“迷ったときに背中を押してくれる言葉”や“物事を前向きに捉えなおすための言葉”がつまっています。

 ひょっとしたら、人生が変わってしまうような大事な局面で『SHIROBAKO』の台詞を思い出して救われる……なんてこともあるかもしれません。

『劇場版SHIROBAKO』がおもしろくなるポイントをチェック

 今年公開された『劇場版SHIROBAKO』。多くの映画館では上映が終了していますが、2021年1月8日にBlu-ray&DVDの発売が決定しています。

 すでに『SHIROBAKO』を観ているという方は、今回の再放送で“覚えておけば劇場版がさらにおもしろくなるポイント”を再確認してみる、という楽しみかたもアリかと思います。たとえば以下のような部分。

  • 第5話『人のせいにしているようなヤツは辞めちまえ!』、第6話『イデポン宮森 発動篇』での遠藤(アニメーター)と下柳(3D監督)の関係性
  • 第22話『ノアは下着です。』などで描かれる高梨と平岡(ともに制作進行)の夢の話
  • 本田(編集デスク)のプロポーションの変化

 劇場版のネタバレになるので詳細は省きますが、これらに注目しておくと劇場版を観たとき、彼らの変化に感動できたり、ちょっと笑えたり……。

 上で挙げたのはほんの一例で、テレビアニメから劇場版までに作中で経過した4年の歳月は、多くの登場人物にとって大きな変化です。

 「この人はこういう気持ちでアニメをつくっていて、こういう夢があった。じゃあ劇場版ではどんなことをしているだろう?」と考えながら観ると、いろいろな発見があるかもしれません。ぜひあなたの注目ポイントを見つけてみてください。

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作品情報

  • タイトル『SHIROBAKO』
  • 全24話(2014年~2015年放送)
  • 再放送:NHK Eテレにて2020年10月19日(月)より毎週月曜22:50~
  • 配信サイト:dアニメストアNetflixHuluほか

スタッフ

  • 原作:武蔵野アニメーション
  • 監督:水島努
  • シリーズ構成:横手美智子
  • キャラクター原案:ぽんかん8
  • アニメーションキャラクターデザイン:関口可奈味
  • 美術監督:竹田悠介、垣堺司
  • 色彩設定:井上佳津枝
  • 3D監督:菅生和也
  • 撮影監督:梶原幸代
  • 特殊効果:加藤千恵
  • 編集:高橋歩
  • 音楽:浜口史郎
  • 音楽制作:イマジン
  • プロデュース:インフィニット
  • アニメーション制作:P.A.WORKS
  • 製作:「SHIROBAKO」製作委員会

キャスト

  • 宮森あおい:木村珠莉
  • 安原絵麻:佳村はるか
  • 坂木しずか:千菅春香
  • 藤堂美沙:高野麻美
  • 今井みどり:大和田仁美
  • 本田豊:西地修哉
  • 落合達也:松岡禎丞
  • 矢野エリカ:山岡ゆり
  • 高梨太郎:吉野裕行
  • 小笠原綸子:茅野愛衣
  • 渡辺隼:松風雅也
  • 興津由佳:中原麻衣
  • 平岡大輔:小林裕介
  • 安藤つばき:葉山いくみ
  • 佐藤沙羅:米澤円
  • 久乃木愛:井澤詩織

おまけ:『SHIROBAKO』のつぎにおすすめしたい“アニメ制作モノ”をご紹介!

 『SHIROBAKO』以外にもアニメ制作を題材にした物語は、媒体問わずたくさんあります。その中からおすすめのものをピックアップしてみました。“アニメ制作モノ”の魅力にハマった方は、これらの作品にも触れてみてはいかがでしょう?

『映像研には手を出すな』原作:大童澄瞳(コミック、アニメ、ドラマ、映画)

 アニメ化、実写化もされた話題作。原作は『月刊!スピリッツ』で連載中の大童澄瞳氏によるコミックです。“映像研究同好会”に所属する3人の女子高生が、自分たちの考えた“最強の世界”を実現するため、アニメ制作に乗り出します。

アニメ『映像研には手を出すな』(FOD)
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『アニメタ!』作:花村ヤソ(コミック)

アニメタ
画像は『アニメタ!』1巻表紙。

 『月刊モーニングtwo』にて連載中。元アニメーターのマンガ家・花村ヤソ氏が描く、新人アニメーターを主人公とした“スポコン・アニメーター物語”です。アニメを愛する人たちの熱い物語でありつつも、超低賃金労働の実態なども赤裸々に描かれる、アニメ業界を目指す人にはぜひ読んでいただきたい作品となっています。

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『バララッシュ』作:福島聡(コミック)

バララッシュ
画像は『バララッシュ』1巻表紙。

 『ハルタ』にて連載していた福島聡氏のコミック。全3巻で完結済みです。1980年代を舞台に、ふたりの男子高校生がともにプロのアニメーターを目指す、男どうしの友情物語でもあります。『王立宇宙軍 オネアミスの翼』や『風の谷のナウシカ』など、往年の名作が実名で登場する点にも注目です。

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『ハケンアニメ!』著:辻村深月(小説)

ハケンアニメ
画像は『ハケンアニメ!』表紙。

 直木賞作家の辻村深月氏による、アニメ業界で活躍する3人の女性を主人公とした全3章構成の連作小説。ちなみに第2章の主人公のモデルは、先日話題になったポケモン×BUMP OF CHICKENのコラボMV『GOTCHA!』のアニメーション監督を務めた松本理恵氏だそうですよ。

『ハケンアニメ!』(Kindle版)の購入はこちら(Amazon.co.jp)

『リトルウィッチアカデミア』(アニメ)

 こちらは“アニメ制作モノ”ではないのですが、監督の吉成曜氏が「本作における魔法はアニメのメタファー(たとえ)である」という旨を発言しています。これを念頭に視聴してみると、制作スタッフが本作に込めたアニメ業界に対する問題意識や未来への願いが、見えてくるかもしれません。

アニメ『リトルウィッチアカデミア』(NETFLIX)
小林白菜のアニメレビュー記事はこちら