待ちに待ったASOBI!チームの最新作! はたしてどんな内容に?

 発売日が2020年11月12日に決定し、がぜん盛り上がってきたプレイステーション5。その期待のローンチタイトルの中でも、大きな注目を集めているのが『ASTRO's PLAYROOM』だ。

 本作は、プレイステーション5にプリインストールされる無料タイトルで、開発を担当したのはソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE) ワールドワイド・スタジオ JAPANスタジオのASOBI!チーム。

 ASOBI!チームといえば、PS4用に『PLAYROOM』、プレイステーション VR用に『PLAYROOM VR』と、新ハードのローンチに合わせて、その機能を活かした極上のデモンストレーションタイトルを生み出したほか、多くのゲームアワードを獲得した『ASTRO BOT:RESCUE MISSION』を開発するなど、新しいハードや技術を使った遊びを生み出す手腕に定評のある開発チームだ。

 はたしてDualSenseの機能を活かして作った『ASTRO's PLAYROOM』はどんな作品なのか? そして開発者目線で見たDualSenseの魅力とは? ASOBI!チームを率いるデュセ・ニコラ氏にお話をうかがった。

 なお、数々のオリジナリティー溢れる作品を生み出してきたASOBI!チームの独特の制作手法については、以下の記事で詳しくうかがっている。ぜひこちらも合わせてご覧いただきたい。

 また、『ASTRO's PLAYROOM』を含めたPS5試遊記事も合わせてチェックしていただくと、より深く理解してもらえるはずだ。

ドゥセ・ニコラ氏

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオJAPAN スタジオ スタジオディレクター 兼 クリエイティブディレクター。

 2004年にSCE(現SIE)に入社し、ワールドワイド・スタジオLondon Studio の「Eye Toy」グループへ参画。その後2011年ワールドワイド・スタジオ JAPAN スタジオへ異動し、プレイステーション4/プレイステーション VR用ソフトウェア『ASTRO BOT:RESCUE MISSION』や「THE PLAYROOM」シリーズなどを手掛ける。

 2020年2月よりJAPANスタジオのスタジオディレクターに就任。

PS5『アストロプレイルーム』インタビュー。待望の“ASOBI!チーム”最新作とPS5について開発者に直撃!

――本作は、“ASOBI!チーム”の新プロジェクトとして、PS5のために企画されたわけですよね?

ニコラそうです。ASOBI!チームをご存じない方もいると思いますので、簡単にご説明しておきますね。ASOBI!チームは、2012年にスタートしたチームで、まずPS4で『PLAYROOM』を作りました。これは、PlayStation CameraやARを使った遊びを中心にしたゲームですね。

 そのあと、2016年にProject Morpheus(後のプレイステーション VR)が出てきて、VRを使った遊びで『PLAYROOM VR』を作りました。

 その後、VRにはまだまだとても興味があったので、『PLAYROOM VR』の中にあったゲームのひとつ『ロボットレスキュー』をふくらませて大きなゲームを作りました。それが『ASTRO BOT:RESCUE MISSION』ですね。

――つねに新しいハードやデバイスで、新しい遊びを作り続けてきたチームがASOBI!チームなんですね。

ニコラはい。みんな新しい技術が大好きで、新しいものが出てきたら、すぐにさわりたくなるんです(笑)。それで、じつは『ASTRO BOT:RESCUE MISSION』を作りながら、同時に“ASOBI!チームB”といいますか、3~4人の小さなチームで、DualSenseのプロトタイプを使った研究を始めていたんです。

PS5『アストロプレイルーム』インタビュー。待望の“ASOBI!チーム”最新作とPS5について開発者に直撃!
『PLAYROOM』(PS4、2014年)

――そんなに早い時期から研究されていたのですね。

ニコラもちろんプロトタイプですから、形はかなり変わっていきましたが、ハプティックフィードバックとアダプティプトリガーが大きなポイントであるということは、当初から変わっていませんね。

 そして『ASTRO BOT:RESCUE MISSION』を作り終えた後は、またチームの全員が新しい技術に触りたがりましたし、またプリインストールのタイトルを作るチャンスをもらえることになったので、ASOBI!チームみんなで作ることになりました。

――ゲームはどんなふうに作っていったのですか?

ニコラまず研究を通じて、80個くらいのテックデモを作りました。それぞれがひとつの遊びを表現するもので、たとえばこのデモは銃の感触を表現したもの、このデモはキャラクターが歩いたときの地表面の感触を表現したもの、という感じですね。これらのデモをもとに、どんなゲームにするかを考えていきました。

――まずどんどんテックデモを作るというのは、ASOBI!チームのいつもの手法ですよね。そこから『PLAYROOM』や『PLAYROOM VR』は複数のゲームを集めたものになりましたが、今回は1本のアクションゲームになっています。この形にしたのはなぜでしょうか?

ニコラ確かにいままでは、テックデモそれぞれをゲームにしていったので、ミニゲームのコレクションのような形式になりました。でも今回は、できるだけひとつの体験の中に詰め込んでいったら、もっとリッチになるんじゃないかな、と考えたんです。

 もちろん、それはとても難しいことです。たとえば先ほど挙げた例ですと、銃のデモは一人称視点のガンシューターとして作ったものでしたが、キャラクターのステップのデモは、三人称視点のデモでした。そういったまったく異なるデモを組み合わせてひとつのスタイルにまとめるのは、けっこうたいへんでした。

 ただ、アストロというキャラクターがすでに存在していて、けっこう人気がありましたので。そのキャラクターを使ってチャレンジしようということになりました。そういう経緯ですので、プレイする方にはあまり気づかれないかもしれませんが、本作も、たくさんのテックデモの要素が組み込まれた内容になっています。

PS5『アストロプレイルーム』インタビュー。待望の“ASOBI!チーム”最新作とPS5について開発者に直撃!

――やはり今回は、PS5のさまざまな特徴の中でも、とくにDualSenseにフォーカスして開発されているんですね。

ニコラはい。『PLAYROOM』や『PLAYROOM VR』もそうでしたが、ハードウェアチームの方と毎週ミーティングをしながら作っていきました。ハードウェアチームはメカデザイン、メカニクスのことを考えて、わたしたちは遊びかたについて考えて、お互いにたくさんの意見交換をしました。

 たとえばハプティックフィードバックやアダプティブトリガーを使っていくうちに、「ちょっとこれでは反動が強すぎるな」などいろいろとわかってくることがあります。そういった意見は、ハードウェアチームとシェアしましたし、ほかのワールドワイドスタジオにも送りました。DualSenseは、そういったたくさんのフィードバックを受けて、どんどん改善されていったんです。ですので、これはかなり長いプロセスでした。1年半か2年くらいですね。

――ゲームだけではなく、DualSenseそのものについても、ハードウェアチームと協力して作り上げていったわけですね。

ニコラそうですね。これもDUALSHOCK4やProject Morpheusのときと同じです。ゲームで体験を確認したうえで、どんな部分を改善しなければいけないか、どんな方向性に進めるべきか。そういったフィードバックを送り続けました。

 それはとても楽しいことですし、珍しいやりかただと思います。ゲームプレイの未来を作ることにつながるわけですから、こうした仕事ができるのは、本当に幸せなことだとつくづく思いますね(笑)。

PS5『アストロプレイルーム』インタビュー。待望の“ASOBI!チーム”最新作とPS5について開発者に直撃!

――率直に言って、DualSenseはいかがですか?

ニコラすばらしいコントローラだと思います。まずは、ハプティックフィードバックと、アダプティブトリガーというふたつの大きなイノベーションですね。

 ハプティックフィードバックひとつとっても、本当にいろいろな表現ができます。たとえば砂嵐の中では、風と砂の感触を感じられますし、スピーカーも同時に使うことで、魔法のように思えるほどの効果が生まれます。これらを使って生み出せるものは、まだまだたくさんあると思いますし、これからもっともっとたくさん試してみたいと思っています。モーションセンサーとスピーカーもとても重要です。これら全部を使って、すごく自然な感覚が得られるんです。

――アダプティプトリガーの活用例についても教えてください。試遊会では、バネを使ってジャンプするスーツを着たところで、アダプティブトリガーでバネを押し込む感覚が楽しめましたが、ほかにもありますか?

ニコラまずこのゲームは、4つの世界で構成されています。試遊してもらったのは、COOLINGリゾートという、風と水と氷が多く登場する世界ですね。そのほかに、GPUジャングルと、SSDスピードウェイ、MEMORYスカイあります。

 それぞれの世界の中で、特別なパワーアップがあります。たとえばジェットパック。これは、右と左のトリガーで、ジェット噴射を操作できるようになっていて、スラスターのブーストの感触を、トリガーを操作しながら感じることができます。

 また、銃もあります。アストロボットの世界に銃が登場するのは初めてのことですが、これは本当にすばらしいですよ。じつはガンのテックデモは、たくさんのデモの中でも、チーム内でとくに人気があったデモなんです。マシンガンを打つときの、「ガタガタガタ!」というフィードバックを、トリガーを引きながら感じ取ることができます。もちろん、アストロボットの世界ですから、カラフルな色合いで、おもちゃのような感じにしてあります。

 あともうひとつは、“モンキーパワースーツ”という、壁を登ることができるものです。左右のトリガーが左手と右手に対応していて、トリガーを引いてブロックを掴むのですが、トリガーの抵抗感で、掴んだときの感触がよくわかるようになっています。たまに脆いブロックがあって、掴むと手の中で崩れてしまうものがあったりしますが、その感触もしっかり伝わります。

――ローンチでこれだけアイデアが詰め込まれた作品が出てしまうと、あとに続くクリエイターがたいへんですね(笑)。

ニコラそうかもしれませんね(笑)。でも、ここから多くのインスピレーションが生まれると思います。少なくともASOBI!チームは、新しい遊びをどんどん作りたいと思っていますから、そこに限界はないです。

PS5『アストロプレイルーム』インタビュー。待望の“ASOBI!チーム”最新作とPS5について開発者に直撃!

――開発を進めるなかで、苦労したところなどを教えてください。

ニコラ本作を作っていく中でわかってきたことは、コントラストがとても大事だということですね。ずっと同じ感触が続いてしまうと、だんだん感覚が薄れていってしまうんです。たとえばプラスティックの地面から、メタルの地面に移る。そしてまたプラスティックの地面に、というように、感触にコントラストをつけて作っていくことが重要になります。

 雪と氷のステージにも意図があって、氷の上をスーッと滑って雪の地面にたどりつき、サクサクと踏みしめて、そこからまた氷を滑って……とコントラストをつけています。ちなみに氷上をスケーティングで滑る感触は、このゲームの中でもとくによくできたものだと思っているんです。本当に、滑っている感じがする……まあ、僕は実際にアイススケートをやったことはほとんどないんですが(笑)。

――(笑)。そういった感触をデザインするのもたいへんそうですね。それも開発チームで作っているんですよね?

ニコラはい。ハプティックフィードバックは、本当はサウンドと同様に、オーディオエンジニアの仕事になります。

――そうなんですか。たしかに音は空気中を伝わる振動ですし、振動をデザインするという点では同じ分野だということでしょうか。

ニコラハプティックフィードバックは、聞こえない音のようなものです。でもオーディオデザイナーは、ふだんは振動を作ることはしていませんでしたから、少しずつ作りかたを学んでいきました。

 ゲームプレイの中のハプティックフィードバックを、どこまでオーディオデザイナーに任せて、どこまでをゲームプログラマーが作るかは難しい問題で、それも話し合いながら作っていきましたね。

PS5『アストロプレイルーム』インタビュー。待望の“ASOBI!チーム”最新作とPS5について開発者に直撃!

――もう少しゲーム内容について教えてください。ゲームのボリュームはどれくらいあるのでしょうか?

ニコラひと通りプレイしてクリアーするまでに、だいたい4~5時間くらいだと思います。そのほかにも、ゲーム中に、プレイステーションの25年の歴史にまつわるオマージュがたくさん隠されているんです。その中にコレクションアイテムがあって、たくさんのアーティファクト、パズルピースを集めるという楽しみがあります。また、詳しくは言えませんが、全部をクリアーすると、プレイステーションファンが喜ぶサプライズがあります。

 このプレイステーションオマージュを、皆さんがどんなふうに楽しんでくれるか、反応が楽しみですね。25年前からのことなので、若い方にはわからない部分もあるかもしれませんが(笑)。

 またクリアーしたあとには、タイムアタック専用のステージが遊べるようになります。ジャンプアクションを駆使して進むステージが4つ、モンキーパワースーツなどの特殊なアクションを使って進むステージが4つですね。オンラインランキングもありますよ。

――楽しみです! 最後に、リリースを待ちわびているゲームファンにメッセージをお願いします。

ニコラ私は幼少のころはフランスの田舎町に住んでいて、10代のころから、ファミ通を手に入れて、言葉がわからないながらもワクワクして読んでいました。こうして、ファミ通の読者の方に読んでいただけるのはすごく光栄なことです。このインタビューを読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。

 プレイステーション5にはすばらしい遊びかたがたくさんあります。今日はDualSenseのお話をしましたが、高速なSSDもありますし、すべての体験がすばらしいものになっています。ぜひ、プレイしてみてください。

PS5『アストロプレイルーム』インタビュー。待望の“ASOBI!チーム”最新作とPS5について開発者に直撃!