コーエーテクモゲームスが手掛ける『アンジェリーク』シリーズは、1994年に誕生した老舗のシリーズで、女性向け恋愛ゲームの祖として知られる。先日、同シリーズの最新作『アンジェリーク ルミナライズ』(以下、『アンミナ』)が始動し、ストーリー概要が公開され、「主人公が25歳OL!?」と話題を呼んだのは記憶に新しい。

 『アンミナ』はNintendo Switch用ソフトとして2021年に発売予定だが、ゲームの発売に先駆けて、ドラマCDのリリースやイベントの開催を予定。また、プロジェクト本格始動と同時に人気マンガ『マキとマミ ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~』とコラボレーションするなど、これまでの『アンジェリーク』シリーズでは見られなかった試みを行っている。

 乙女ゲールというジャンルを切り開いた『アンジェリーク』は、いま、最新作『アンミナ』を引っ提げて何を目指しているのか。『アンミナ』のプロデューサーを務める、コーエーテクモゲームス伊藤亜紀子氏にお話をうかがった。

伊藤亜紀子氏(いとう あきこ)

コーエーテクモゲームス ルビーパーティーブランド所属。『アンジェリークSpecial2』、『アンジェリーク 天空の鎮魂歌』、『アンジェリーク トロワ』などに携わり、『アンジェリーク ルミナライズ』にてプロデューサーを務める。

――リメイクではない、シリーズ完全新作の登場は18年ぶりとなりますが、このタイミングでシリーズが大きく動き出すことになった経緯を教えてください。

伊藤2019年にネオロマンス25周年を迎えたのですが、これは同時に“アンジェリーク25周年”でもあります。四半世紀という長い時間をIP(知的財産)が生き続けて来られたのは、支えてくださったお客様のおかげです。なんとしてもこの節目に、『アンジェリーク』を復活させたいと思いました。また、『アンジェリーク ルトゥール』(初代『アンジェリーク』のリメイク作)をプレイするスタッフ(過去作をプレイしたことがない人)を見ていて、『アンジェリーク』のおもしろさは、いまのお客様にも十分響くだろうと思ったのも理由のひとつです。

――過去のシリーズ作の主人公は“女子高生”でしたが、今回は“25歳会社員”が主人公だと聞き、驚きました。主人公の年齢を20代にしたのはなぜでしょうか?

伊藤本作を作り始めるとき、“お客様が、自分のものとして引き寄せて考えられるようにする”ことを強く意識しました。『アンジェリーク』は歴史がある分、「名前は知ってるけど、私がやるものではない(私のものではない)」と思われていることが多いと感じていたからです。ファンタジーだけど、“私”が近いと感じられるように……それは当然、恋愛模様にも影響します。神のような素敵な男性に選ばれる、というのは『アンジェリーク』のよい部分ではありますが、現代を生きる女性の望みとは少し違うように思いました。ですので、選ばれるのではなく、ともに歩むような恋愛を描きたいと思い、主人公の年齢を上げました。25歳にしたのは25周年だからというのもありますが(笑)、学生気分を終え、自分の人生を考え始める大切な年齢だからというのが大きいです。

――『アンミナ』のキャラクターデザインに、紗与イチ氏を起用された理由は?

伊藤絵が華やかで、とにかく眼力が強いキャラクターを描く作家さんだと思っていたので、『アンミナ』の企画を立てたとき、ぜひにとお願いしました。初代から描いてくださっていた由羅カイリ先生が、たいへんに眼力の強いキャラクターを描かれていたので、私の中でビシッとした目つきはマストだったのです。紗与先生ご自身も『アンジェリーク』をかなりプレイしてくださっていたので、世界観のお伝えがスムーズでした。

アンジェリークルミナライズ

眼力が印象的なキャラクターを描く紗与イチ氏。同氏のTwitterでは先日、光の守護聖ユエの誕生日を祝うイラストが公開された。

――ゲームの発売に先駆けてドラマCDやイベントを展開するなど、ユーザーへのアプローチの方法が『遙かなる時空の中で7』などとは異なると感じました。その意図を教えてください。

伊藤『アンミナ』は、新しいお客様を取り入れたいタイトルではありますが、もちろん、いままで応援してくださってきたお客様にも喜んでいただきたいと思っています。なので、少しずつ新しい世界をお伝えして、入りやすく思っていただきたいと考えました。いきなりゲームを突きつけられても、戸惑ってしまわれるだろうなと……。また、新しいお客様に対しても、聴きやすいWebラジオ「速水さんとネオロマンスしよう」やドラマCDの試聴から触れていただき、キャラクターや世界を知っていただいて、ゲームの発売までをいっしょに歩んでいただければと思っています。

――町田粥氏のマンガ『マキとマミ ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~』とのコラボレーション企画が公開されましたが、『マキとマミ』とコラボすることになったきっかけは?

伊藤もともと『マキとマミ』は『アンジェリーク』を取り上げてくださっていたので、個人的に読んでいたのですが(本当におもしろいです)、『アンミナ』の企画を立ち上げたとき、宣伝担当から「『マキとマミ』とコラボしませんか?」と言われ、即答でOKしました。マキさんとマミちゃんが『アンミナ』を伝えてくれたらどんなにいいだろう、まさに上述した“お客様が自分のものとして考えられるように”の、すばらしい架け橋になってくれると感じたのです。実際、想像していた以上の愛あるマンガを描いていただけて、発表時の反響もものすごくありました。お客様が、自分はマキさん、自分はマミちゃん、とそれぞれの側に立って読んでくださったように感じます。今後も、『マキとマミ』とのコラボマンガを掲載する予定ですので、『アンミナ』の公式Twitter(@angelique_kt)をフォローして、楽しみに待っていてください!

社会人オタク女子たちの熱い日常を描く『マキとマミ ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~』とのコラボは必見。
また、『マキとマミ』4巻には、町田粥氏と伊藤氏の対談が掲載されている。こちらも併せてぜひ読んでほしい。

『マキとマミ』作品ページ

――2021年のゲーム発売まで、まだ時間がありますが、今後、どんなところに注目してほしいですか?

伊藤「『アンジェリーク』をよく知らない」、「ファンタジーには興味ない」というお客様には、コラボマンガやドラマCD試聴などで少しずつ、ご自身との接点を見つけていただければと思います。逆に、いままでの『アンジェリーク』をご存知のお客様は、システムがどう進化したか、これまでの世界と今回の世界がどうつながっているか、見ていただきたいです。なにかひとつ、ご自身と共鳴するところを拾っていただけるよう、たくさんの情報を出していきますので、どうぞよろしくお願いします。