日本マイクロソフトにより先日行われた、東京ゲームショウ2020 オンラインに合わせての配信番組“Xbox Tokyo Game Show Showcase 2020”をご覧になった方は、 Head of Xbox、フィル・スペンサー氏の日本のゲームファンに向けの真摯な言葉に、Xbox Series X/Sのローンチに向けて、日本市場に対する改めての本気ぶりを感じた方も多かったのではないだろうか。

 “Xbox Tokyo Game Show Showcase 2020”が明けて、そんなフィル・スペンサー氏にオンラインにインタビューをする機会を得た。2020年11月10日に発売が決定した、Xbox Series X/Sに対する手応えのほどを聞いてみた。

フィル・スペンサー氏

マイクロソフト Head of Xbox

Xbox Oneの反省を踏まえて、Xbox Series X/Sの発売をワールドワイドに合わせて11月10日

――まずは、日本のゲームユーザーの端くれとして、Xbox Series Xをワールドワイドにあわせて、日本市場でも11月10日にローンチしてくれたことに感謝します。

フィルE3のときに、「グローバルに合わせて、日本でもローンチします」とお約束してしまったからです(笑)。それはさておき、日本はゲーム業界でも非常に重要な市場だと位置づけています。そして、すばらしいゲームクリエイターがたくさんいます。たくさんの熱心なゲームユーザーが日本にはいらっしゃいます。ご存じの通り、Xbox Oneのときは日本市場でのローンチが遅れてしまったために、ネガティブな印象を与えてしまい、その後思うようにいきませんでした。今回の世代に関してはそういうことがないように……ということと、日本に対するリスペクトの思いを込めて、11月10日にリリースすることにしました。

――なるほど。それだけ日本市場を重要視してくれているということですね。ちょうど日本では9月25日からXbox Series X/Sの予約が開始されて、いずれも瞬時にして締め切ってしまうほどの勢いです。これに対する手応えはいかがですか?

フィルXbox Series X/Sが日本のファンに受け入れられているんだなということを思うと、とても謙虚な気持ちにさせられます。私たちがXbox Series X/Sに対して見据えているゴールのことを考えると、これは、まだまだ長い道のりの第一歩になるのですが、このように皆さんに期待していただいているということを実感できるのはとてもうれしいですし、予約がいっぱいになることは、皆さんから励ましをいただいたような気持ちです。

――この動向を受けて、初期出荷をもうちょっと増やそうかな……とか、日本への出荷をもう少し増やそうかしら……というお考えは?

フィル今後コンソールは、順次たくさん出荷させていただくつもりです。これは絶対的なことです。ただ、ローンチ前後はどうしても需要のほうが供給を上回るということが通常です。今後、ローンチから数ヵ月のスパンで、需要に応えられるようにしていきたいと思っています。ことに日本市場においては、長期的な見地に立って展開することを考えています。

――フィルさんはさきほど、「日本にはすばらしいクリエイターがたくさんいる」とおっしゃっていましたが、先日行われた“Xbox Tokyo Game Show Showcase 2020”では、たくさんの日本人クリエイターがXbox Series X/Sのローンチを祝福していましたが、フィルさんも日本人のクリエイターには期待するところが多い?

フィル正直なお話をしますと、長年の友人の皆さんがこういったローンチの記事にサポートの言葉を寄せてくださることは心が揺さぶられることです。新しいハードの開発にあたっては、かなりの努力を傾けてきました。とくに、日本でサポートしてくださっている皆さんが、このプラットフォームでソフトをリリースして、お客さんに遊んでいただけるということは、本当にうれしいことだと感じています。今後も、日本のタイトルが世界中に向けてアプローチできるように手助けをさせていただければと思います。“Xbox Tokyo Game Show Showcase 2020”で皆さんからコメントをいただけたのは、本当にうれしかったです。

20200925143608
20200925143719
“Xbox Tokyo Game Show Showcase 2020”では多くのクリエイターからメッセージが寄せられた。

Xbox Series XとXbox Series Sは両輪のようなもの。Xbox Series Sの価格変更は戦略的な見地から

――いいお話ですね。では、Xbox Series XとXbox Series Sの戦略について聞かせてください。マイクロソフトとしては、どちらのプラットフォームをより重点的に展開していくつもりなのですか? やはり価格が安いぶん、Xbox Series Sの訴求をメインに据える戦略でいますか?

フィル最終的にはユーザーの皆さんの声に耳を傾けて、判断することになるかと思います。最終的には、ユーザーの皆さんがご自身の好みに見合ったハードを選択されるでしょうから。ただ、歴史的に見て、価格という要素が幅広い層にリーチする大きな要因であることは間違いありません。比較的安価に次世代のゲームがプレイできるということで、Xbox Series Sを提案させていただきました。さらにパワフルなゲーム体験をもたらすということで、Xbox Series Xがあります。ふたつのハードは両輪みたいなもので、解像度などは異なりますが、同じゲームをプレイできます。このふたつのハードで、幅広い層に訴求できればと期待しています。

 アクセシビリティ(利用しやすさ)とパワーの両方を持ち合わせていたいと考えたときに、両輪として、Xbox Series X/Sで展開するという結論にいたったんです。

 ローンチの際は、コアなゲームユーザーの方がXbox Series Xに眼を向けられるだろうと想定しています。今後はときが経つにしたがって、価格面が重要視されて、Xbox Series Sを魅力に感じるユーザーの方も増えてくるのではないかと考えています。

――現時点では、どちらのほうに手応えを感じているのですか?

フィルもちろん両方ともいける!と私たちは考えていますよ。とはいえ、Xbox Series XとXbox Series Sは異なるユーザー層がターゲットなのかなと認識しています。Xbox Series Xは、ほかのコンソールもお持ちで……という方が対象になると思うんですね。Nintendo Switchやプレイステーション4もお持ちで、PCもあって……という。私たちにはXbox Game Passという優位性もありますので、熱心にゲームを遊んでいただく方にとっては、Xbox Series Xは極めて魅力的なハードだと認識しています。一方のXbox Series Sは、よりライトな方に向けて気軽に遊んでいただくことを想定しています。ビジネスとしての見地に立てば、両ハードとも売っていきたいですし、売れるであろうと期待しておりますが、今後も市場に対して一層の努力を傾けていればと思っています。

――先日Xbox Series Sの価格変更が発表されましたが、さらなる訴求を促すための戦略的な意図からですか?

フィル為替のレートに則って、適正な価格にしたという一面もありますが、日本のユーザーさんのフィードバッグから判断したということもあります。Xbox Series Sの価格を発表したときの、日本のゲームユーザーの反応を見て、市場に対してより適正にあった価格を打ち出したいということで、予約前に価格変更をおこなうことにしました。予約状況などを見ても、好評だったようで何よりだと思っています。

――ということは、Xbox Series Sの価格変更はプレイステーション5に対する対抗から……というわけでもなさそうですね。

フィル今回の価格変更はどちらかというと私たちのほうの事情によるものですね。もちろんプレイステーション5は私たちにとって極めて強力なライバルとなりますが、Xbox Series X/Sは、世の中でいちばん手に入りやすい次世代ゲーム機として、どなたでも親しんでいただけるように、ということで価格帯を設定しています。ローンチ時において、よい価格帯で打ち出すことができたと確信しています。

――プレイステーション5は手強いライバルということですが、発売日も近いこともあり、まさに“直接対決”との印象があります。価格なども出揃ったいま、Xbox Series X/Sが、プレイステーション5よりも優れていると手応えを感じている点はどこですか?

フィル私たちは自信を持って、ハードウェアを準備させていただきました。Xbox Series X/Sは、世の中にあるいちばんパワフルでいちばん手に入りやすい次世代機だと自信を持って断言します。また、大きなアドバンテージはやはりXbox Game Passです。これだけの多種多彩なゲームを、サブスクリプションで提供できるというのは、大きな差別化のポイントだと思っています。さらに、日本では2021年からクラウドサービスを楽しんでいただけます。つまり、Xboxのゲームならば、Xbox Series Xはもとより、PCやスマートフォンでもプレイできるんです。ユーザーの皆さんのライフスタイルに見合った環境で、ゲームを楽しんでいただけるということです。

 またご存じの通り、先日ベセスダ・ソフトワークスの買収を発表させていただきました。それにより、ファーストパーティータイトルのさらなる充実も期待できるわけで、エコシステムも拡充しています。

 そういって点も踏まえて、コンテンツやハードウェア、サービスなど、すべてにおいて優位性があるのではないでしょうか。

20200924214802

ベセスダ・ソフトワークスの買収は絶対に見逃してはならなかった

――なるほど……。お話にでたベセスダ・ソフトワークスの買収発表は、日本でも驚きをもって迎えられましたが、なぜベセスダ・ソフトワークスを買収することにしたのですか?

フィルベセスダ・ソフトワークスが私たちの仲間に加わるという発表ができたのは、非常にうれしいことでした。ベセスダ・ソフトワークスの買収は、長期的な付き合いがあったうえでの結果でもあります。ベセスダ・ソフトワークスとは初代Xboxのころからお付き合いがありまして、そもそも彼らが初めて作ったコンソール向けゲームもXboxを選んでくれたんです。長い付き合いです。今後彼らがゲームを開発していくなかで、1500万人を超えるXbox Game Passの利用者やハードユーザーなどを考慮しての買収となります。

 それもあって、ベセスダ・ソフトワークスの買収は絶対に見逃してはならない機会でした。

――ちなみに、この話はいつくらいから進んでいたのですか?

フィルベセスダ・ソフトワークスとは、プラットフォームのことや私たちの仕事のスタンスなども含めて、つねに親しく会話をしていましたが、この月曜日にアナウンスさせていただいたニュースに関しては、この夏から話しを始めました。

――気になるのが、今後ベセスダ・ソフトワークスの戦略がどうなるかということです。今後もマルチプラットフォームで展開するのですか? それともゆくゆくはXboxプラットフォーム独占供給に?

フィルご存じの通り、ベセスダ・ソフトワークスは、『Deathloop』や三上真司さんの『GhostWire: Tokyo』を、プレイステーションエクスクルーシブでリリースすることを発表しています。今後、Xbox Game Passやクラウドなどでゲームを提供するということを考えると、ベセスダ・ソフトワークスの買収はとても重要なことでした。今後に関してはいろいろと機会を見ながら、その都度決めていくことになるかと思うのですが、1点だけ、Xboxユーザーの皆さんにお伝えしておきたいのは、私たちはこれだけの投資をしていますので、Xboxというハードでゲームをプレイしていただくことに対して何のためらいもいらないと、自信を持ってお伝えできます。

――ソフトの充実が今後一層図られるとして、Xbox Series X/Sのリリースに向けて、若干ファーストパーティーのローンチタイトルが薄いような気もするのですが、次世代機向けのタイトルはいつくらいからリリースされてくる感じですか?

フィルXboxの観点からお話しましょう。Xbox Series X/Sは後方互換に関して、莫大なリソースを割いて作業をしています。コンソールがリリースされた初日から、プレイヤーの皆さんは何千ものゲームをプレイすることができます。

 また、ローンチ時には『アサシンクリード ヴァルハラ』やThe Coalitionの『Gears Tactics』、『Yakuza: Like a Dragon』(※)といったタイトルがあります。11月19日発売の『サイバーパンク2077』も、Xbox Series Xで、遺憾なくその魅力を輝かせてくれるでしょう。

※『龍が如く7 光と闇の行方』。日本での展開は未発表。

 そのあと2021年以降も、『Halo Infinite』や『Fable』、『Forza Motorsport』といったすばらしいタイトルが控えています。“コンテンツライブラリー”として、今後充実の一途を辿ると思います。

――サービス面でうかがいたいことが。Xbox Game Passは日本でも開始されましたが、Xbox All Access(※)に関してはいかがでしょうか? 先日北米を含む12ヵ国でサービスが提供されることが発表されましたが……。

フィルXbox All Accessに関しては、願わくば多くの市場で使えるサービスにしていきたいと考えています。日本に関しては、最適なりテールパートナーが見つけられるかどうか、になると思います。Xbox All Accessにとって日本市場はとても重要なので、できれば導入していきたいです。

※月額一定料金を支払うことで、Xbox Series X/S本体とサブスクリプションを同時に利用できるサービス。

20200925143011

 まだまだ聞きたいことはたくさんあったのだが、お時間の都合でインタビューは終了。定番の「最後に日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします」も聞けずじまいだったが、言葉の端々から伝わってくるのは、日本市場に対する改めての本気ぶりと、Xbox Series X/Sに対する確固とした自信。9月25日にスタートした予約受け付けは軒並み“在庫切れ”とのことで、まずは順調なスタートを切ったようだ。とにもかくにも、11月10日のXbox Series X/Sのローンチを心待ちにしたい。

※本記事で使用している画像は配信番組をキャプチャーしたものです。