和田洋一氏が、自身のnoteに綴った“そろそろ語ろうか(其の弐)"が話題だ。和田氏は、2001年12月〜2013年6月までスクウェア(当時)の代表取締役社長兼CEOとして活躍(2003年4月からはスクウェア・エニックス)した人物。

 今回のnoteでは、先日Nintendo Switch、PS4、iOS、Androidで『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リマスター』が発売されたのをきっかけに、2003年にニンテンドー ゲームキューブで発売された『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』の開発の経緯、背景などを語っている。

『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リマスター』(PS4)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リマスター』(Switch)の購入はこちら (Amazon.co.jp)

 和田氏によると、『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』は、“実はスクウェアが任天堂と取引再開した記念碑的タイトルなんです。”とのことで、合わせて当時のスクウェアと任天堂の関係がどのようなものだったのか(和田氏いわく“出禁”)、また、それをどのように解決していったのかが、和田氏からの視点で綴られている。

 その内容については和田氏のnoteを見ていただくとして、当時のスクウェアを振り返ると、1996年5月のスーパーファミコン用ソフト『トレジャーハンターG』発売を最後に、メインプラットフォームをプレイステーションに移し、以降、任天堂のハードではゲームの発売が途絶えているという状況にあった。

 その状況が変わったのが2002年3月。和田氏のnoteにも記載があるが、当時の状況を週刊ファミ通のニュースページでも掲載している(週刊ファミ通2002年3月29日号)。記事内では、スクウェアのクリエイター・河津秋敏氏(『サガ』シリーズの生みの親)とスクウェアが新会社“ゲームデザイナーズ・スタジオ”を設立し、ゲームボーイアドバンス用ソフトを制作。それとは別にゲームキューブとゲームボーイアドバンスを連動させた『FF』が発売される予定と報道されている。

FFCC_Remaster_Famitsu_Article
週刊ファミ通2002年3月29日号のニュース記事。

 その後予定が変わったのか、実際は、ゲームデザイナーズ・スタジオはゲームキューブとゲームボーイアドバンスを連動させる『FF』として『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』を開発。スクウェアのゲームボーイアドバンス第1弾のソフトとして、当時スクウェアに在籍していた、松野泰己氏の『ファイナルファンタジータクティクス アドバンス』が2003年2月に発売されている。

 ちなみに、前述の週刊ファミ通記事では、欄外に“目次と内容が変更になっていることをお詫びいたします。目次にある『ファイナルファンタジーXI』開発者インタビューは3月22日発売号に掲載する予定です”と記載されている。突然のビッグニュースで本来予定していた記事を差し替えたものの、すでに印刷が進んでいた目次部分の差し替えはできなかった、ということだろう。

 この記事から1年と5ヵ月、ゲームキューブ用ソフト『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』は、開発ゲームデザイナーズ・スタジオ(とスクウェア)、発売元任天堂で2003年8月に発売。

 その後、ゲームキューブではスクウェア作品の発売はなかったが、ゲームボーイアドバンスで『FFI・II 』(2004年)、『FFIV』〜『FFVI』(2005〜6年)を発売し、任天堂ハードに断続的にゲームを発売する状況に。『FFCC』シリーズではマルチプレイを押し出した『FFCC リング・オブ・フェイト』(2007年)、DSとWiiの機種を超えたマルチプレイを実現した『FFCC エコーズ・オブ・タイム』(2009年)に加え、Wiiのダウンロード専売タイトルとして『小さな王様と約束の国 FFCC』(2008年)、『光と闇の姫君と世界征服の塔 FFCC』(2009年)など、新しい試みに溢れた新作をつぎつぎと展開していく。

 そして、ひとり用に特化したストーリー重視の『FFCC』として『FFCC クリスタルベアラー』(2009年)を発売。いったんシリーズは中断するが、オリジナル版から17年後となる今年(2020年)に『FFCC リマスター』が発売されるのだった。

 ファンタジー感溢れる『FFCC』がどのように生まれたのか、発売から17年経って語られる内容。とくに任天堂の山内社長やソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)のあいだで着地点を探る部分などは必見。あくまで和田氏の見解によるものだが、当時を知っているユーザーには懐かしくも驚きのある内容が、そして、初めて目にするユーザーにとっては多くが新鮮に感じられるはずだ。