ファミ通グループの編集者がおすすめゲームをひたすら語る連載企画。今回のテーマは、シミュレーションRPG『誰ガ為のアルケミスト』です。
【こういう人におすすめ】
- 時間をかけてキャラクターを強化・育成したい
- お気に入りのキャラクターの仕草やセリフに“キュン死”できる!
- ファンタジータイプのタクティクスPRGを遊びたい
※本稿は週刊ファミ通2020年7月2日号(2020年6月18日発売)の特集“いまこそ絶対に遊ぶべき46のゲーム”をWeb用に調整し、加筆修正したものです。
山あり黒谷のおすすめゲーム
『誰ガ為のアルケミスト』
- プラットフォーム:iOS、Android、PC
- 発売日:2016年1月28日
- 配信元:gumi
- 価格:基本プレイ無料(アイテム課金制)
- パッケージ版:なし
- ダウンロード版:あり
- 『誰ガ為のアルケミスト』公式サイト
かれこれ3年あまり、毎日のようにログインし、遊び続けているスマホゲームである。プライベートで、お仕事でも何でもなく好き勝手に遊んでいる。これまでこれだけの期間同じゲームをプレイし続けたのは、いわゆる“ネトゲ”だけだ。半分飽きているけど惰性で続けている……ということではなく、プレイし始めたころの8割くらいの熱量が持続したまま、いまに至っている。
どこを気に入っているのか。
ずばりキャラクターだ。いきなり脱線するが、私がシミュレーションRPGを好む理由は、手間ひまをかけてキャラクター(ユニット)を育成・強化し、ステージに出撃させて活躍する姿を見るのが楽しいからだ。緻密に作戦を立て、ギリギリの戦いを勝ち抜いていく頭脳戦を楽しむ……といったストイックな性分ではなく、ストレートに言えば、お気に入りのキャラクターが敵を吹っ飛ばし“俺ツエー!”することに喜びを感じる。この気持ちを支えるのは、キャラクターそのものへの愛着だ。
『誰ガ為のアルケミスト』(以下、『タガタメ』)のキャラクターに強い愛着を感じる理由を3つ挙げたい。
(1)SDモデルの“画力”がハイレベル
(2)モーションが超ハイレベル
(3)マップ上で戦闘中に発するボイスが適切で種類が多い
とりわけ私は『タガタメ』のモーションのすばらしさにノックアウトされている。陳腐な言いかたで恐縮だが、みんな活き活きとしている。ここから少しばかりキモい語りが続くことをご容赦いただきたい。
そこにいて生きているキャラクター
まず立ち姿がいい。身体は直立ではなく、前傾度合いなども職業によって細かく異なり、絶えず微妙に身体が揺れ、心臓が鼓動し呼吸をしているかのようだ。脊椎がS字にカーブを描き顎を引くすばらしい姿勢で相手を見据えるようなポーズを取る者や、飛びかからんばかりの前かがみで武具を眼前に構える者もいる。
走る(移動する)モーションからは、人間がきちんと足裏で地面を蹴って進んでいることを感じる。外套をまとっている場合、それは身体に張り付いたテクスチャーではなく、走るのに合わせて布がはためき、立ち止まるときにはファサっと落ち着く。こうした衣服の動きは本当に秀逸で、たとえば大型のロケットランチャーを撃つときにはその場でしゃがむのだが、その際に服の裾の動きが、体の動きよりもわずかに遅れて反応する。この加減が絶妙だから、「厚手のコートを着ているのかな」なんて、想像してしまう。敵からの攻撃を回避するモーションも格別。避けるときには上半身が後ろに反ることが多いが、そのときも物体としての身体がただ折れ曲がるのではなく、重力下でバランスを取りながら身体を動かしているように見える。このときにボイスが入り、その短いセリフにうまくキャラクターの個性が表れていて、自分で回避操作をしたわけでもないのに「してやったり!」というカタルシスがある。
地味な部分ばかり挙げたが、こうした作り手の仕事が行き届いたモーションの積み重ねが、キャラクターが“その世界に生きている”ような感覚を生み出していると思うのだ。すごく大切。『タガタメ』の3Dモデルはおよそ4頭身で、上で挙げた動きはいわゆるフォトリアルのそれではなく、マンガチックに愛らしい。言ってみれば、丁寧に作られたアニメーションのそれだ。等速運動のような“ちゃち”な動きをしない。(私がプレイするときに使っている)8.4インチの画面上で、たった10数ミリという小ささにも関わらず、“そこにいる感”が感じられるのは本当にうれしい。
“推し”が一線に返り咲く上方修正
キャラクターヘの愛着を語るうえでもうひとつ重要な、アップデートによるキャラクター性能の上方修正についても話しておきたい。
スマホゲームでは、 サービス期間が長くなってくるとキャラクター性能のインフレが避けられない。お気に入りのキャラクターがインフレの波に飲まれてスタメン落ちしていく悲しみは、どんなスマホゲームでも多かれ少なかれ味わうことだろう。それは『タガタメ』も例外ではないが、時折、実装年が古いキャラクターがエピソード付きで上方修正されることがある。2019年で言えばその数15キャラクター以上。たとえばこの春、2016年に実装されたキャラクターが固有の職業を与えられて大幅に上方修正され、スタメン入りどころか属性トップクラスに躍り出た。感無量である。またそれとは別に、春からは古くからいる騎士団のメンバーたちの強化が進められつつある。執筆時点で3人が強化完了しているが、完全に2020年水準の強さに引き上げられている。
忖度なしに、微課金でも辛抱が少ない
さて、スマホゲームで気になるのはお金のこと。「でも、お高いんでしょう?」というアレだ。
結論から言えば、『タガタメ』は無課金でも楽しめるし、いわゆる“微課金”でもけっこうイケる。これは運営会社からそう書いてくれと頼まれたから書いているのではなく、プレイしての実感である。もちろん、お金を使えば使うだけウハウハできるのは言うまでもない。とはいえ、キャラクター(ユニット)に関しては、高難度で活躍できるような強キャラのうち半分以上は、ガチャで当てられなくても時間をかければ手に入れられるし、育成も可能。1年くらい続けていると、強いのも含め手持ちが揃ってくる。コツコツやってると報われる、ということ。「でも1年もかけていたら、育て終わるころには“型落ち”して強くないでしょう?」と疑問を抱くかもしれない。たしかにそうなってしまうこともあるが、旧ユニットの性能の見直しは(全員ではないが)けっこうされていて、パッとしない時期があっても希望を捨てずに続けられる。ユニット本体以外にも強さに関係するガチャ要素はあるが、それもマイペースにガチャを引いていれば、けっこう揃ってくる。
ゲームデザインは本格派
最後にゲーム内容にも軽く触れておこう。
いわゆるマス目のタクティカルRPGで、行動順が回ってきたら移動や攻撃をしながら戦線を展開していき、多くのマップでは敵の全滅を目指す。行動順は敵味方入り混じり、おもにユニットの素早さで決まる。“火力は正義”が当てはまるケースも多いが、高難度のマップでは、状態異常予防や、自軍の火力アップ(バフ)や敵への耐性ダウン(デバフ)といった支援要素も重要になってくる。火や水といった属性のほかに、斬撃や魔法といった攻撃区分もあり、“1体の超強力ユニットでどこでも敵を蹴散らす”のではなく、攻撃手段の異なる数多くのユニットを揃えて対応力を上げていくほうがプレイはおもしろくなる。自分の手持ちが育ってくればわりとオートでもクリアできるクエストも多く、オートでいかにスマートにクリアするか模索する……という、楽をしたいんだかなんだかわからない楽しみかたもある。
SRPGと言えば、成長要素も大切。レベルアップはもちろん、クラスチェンジやエンチャントジョブへの進化など、多彩な成長要素があり、初心者からベテランまで、段階を踏んで強くなっていける。取れる戦術の幅が広がり、オートでのタイムアタック的な楽しみもできるなど、成長を実感しやすいゲームデザインがうれしい。
他プレイヤーと協力や対戦をすることも可能で(必須ではない)、ギルドのような仕組みもある。
重層的に描かれる物語
『タガタメ』はストーリーにも力が入っている。複数の主人公が織りなす本編のほか、外伝的なシリーズやキャラクターの日常エピソードなど、さまざまなストーリーが交錯し、世界が描かれる。錬金術や魔法などファンタジー要素を含む世界で、いまも昔も戦いが絶えず、そこで描かれる物語はハッピーな結末ばかりではない。世界の動勢と関係なく亡くなっていく戦災孤児や、勝てないことがわかっている戦いにやはり勝てなくて、誰にも知られず命を落としていく者たちを、プレイヤーは見届ける。その“やるせなさ”がプレイヤーの胸に刻まれ、登場人物への思い入れにもつながっているように思う。
サービス開始から4年あまり経ち、 長寿ゲームの仲間入りを始めた『タガタメ』。いまから新規にスタートして楽しめるのか。それには、“じっくり腰を据えて、 キャラを愛でながらマイペースに遊べる人”に自信を持ってオススメする、と答えたい。
じゃなきゃ、3年以上も毎日やりません。