ファミ通関連の編集者がおすすめゲームをひたすら語る連載企画。今回のテーマは、ロールプレイング・シミュレーション『ファイアーエムブレム 風花雪月』です。

【こういう人におすすめ】

  • 戦乱の世を生きる人々のドラマに心を揺さぶられたい
  • 個性的な老若男女の中からともに生きる相手を見つけたい
  • 学園ものが好き。もしくは三国志が好き

※本稿は週刊ファミ通2020年7月2日号(2020年6月18日発売)の特集“いまこそ絶対に遊ぶべき46のゲーム”をWeb用に調整したものです。

ロマンシング★嵯峨のおすすめゲーム

『ファイアーエムブレム 風花雪月』

0:02 / 9:34 ファイアーエムブレム 風花雪月 紹介映像

『ファイアーエムブレム 風花雪月』金鹿→黒鷲(紅花)→青獅子→黒鷲(銀雪)→金鹿→黒鷲(紅花)……と歩んだ私の話【推しゲーレビュー】_01

 記事タイトルが表しているのは、私が『ファイアーエムブレム 風花雪月』を6周した際に選んだ学級と、その順番です。

 「学級ってどういうこと?」と思った人もいると思うので、ゲームの概要をさらりと紹介しましょう。本作の主人公は、凄腕の傭兵……だったのですが、物語のオープニングでなんやかんやあって、士官学校の教師を務めることに。そして、就任早々、3つのクラスの中からどの学級の担任になるか、選択を迫られます。各クラスの名前には、“黒鷲の学級(アドラークラッセ)”、“青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)”、“金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)” ……と、ドイツ語の読み仮名がついていまして、絶妙に中二心をくすぐってくるのがニクい。クラッセ、って響きがまずカッコいいよな。ぐーてんもるげん。

 で、どのクラッセを選ぶかで、仲間になるキャラクター(生徒)が変わります。また本作では、ゲーム前半で学園生活を、ゲーム後半で戦争を経験することになりますが、選んだ学級によって、ゲーム後半のストーリーが大きく変化するのです。若干ネタバレになってしまい恐縮ですが、黒鷲の学級を選んだ場合はさらに大きな分岐があるので、ストーリーを味わいつくそうと思ったら、4周は必須なのです(2020年2月に配信されたサイドストーリー“煤闇の章”も必修項目です)。

『ファイアーエムブレム 風花雪月』金鹿→黒鷲(紅花)→青獅子→黒鷲(銀雪)→金鹿→黒鷲(紅花)……と歩んだ私の話【推しゲーレビュー】_06
同じ物語にはなり得ないのです。選んだ道が違う、ですから。

 ここまで読んで「うげー、4周もプレイする気力なんて沸かないよ」と思ったあなた、騙されたと思って1周クリアーしてみてください。自然と周回プレイをしたくなっているはずです。気づけば私のように、6周目のエンディングを迎え、プレイ時間が315時間を超えちゃったりしているかもしれません。

 では、何がそこまで、プレイのモチベーションをけん引するのか。それは、“学級”というシチュエーションを最大限に活かしたストーリーとシステムにあります。

 各学級のキャラクターにはそれぞれに思惑や背景があり、1周するだけでは、全員のバックボーンを知ることはできません。ですので、1周クリアーした人は、「あの人はどうして、ああいった道を選んでしまったのだろう」と思って、2周目では別の学級を選ぶことでしょう。そこから、とっても楽しい地獄が始まります。

 前周とは違う学級を選ぶということ。それはつまり、ゲーム内で戦争が始まった後に、前周で絆を深め、なんなら将来まで誓い合ったキャラクターを殺さねばならないということです。

 1周目プレイ時は、担当学級以外のキャラクターとはそこまで親しくならないので、戦争中に対峙しても、「これが戦だ、すまんな……」くらいの気持ちで倒せちゃいますが、前周で親しくなったキャラクターを相手にするとなると、話は別。「いやだぁぁ戦いたくないぃぃ」と血の涙を流すことになります。学園生活時代は仲よく過ごせていたからこそ、なおさら戦争の無慈悲さが際立つ。

『ファイアーエムブレム 風花雪月』金鹿→黒鷲(紅花)→青獅子→黒鷲(銀雪)→金鹿→黒鷲(紅花)……と歩んだ私の話【推しゲーレビュー】_05
私も戦いたくなかった。

 ああ困った。そんなあなたに朗報です。本作には“スカウト”というシステムがあり、条件を満たすことで、他学級の生徒を、自分の学級に呼ぶことができるのです(一部のキャラクターを除く)。これで、戦いたくないキャラクターを勧誘すれば解決だね!

 ……と思ったら、そんなこともない。生徒をスカウトするということは、戦争が始まった後、その生徒に母国を裏切らせるということを意味します。母国の人間と戦い、ときに裏切り者扱いされる生徒の姿を目の当たりにすることも。スカウトしても地獄、スカウトしなくても地獄です。ちなみに私は1周目で、気軽に何人かスカウトしてしまったので、戦争勃発後、彼らに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。若者を導くという仕事の重みを、こんな形で思い知るとは……。

『ファイアーエムブレム 風花雪月』金鹿→黒鷲(紅花)→青獅子→黒鷲(銀雪)→金鹿→黒鷲(紅花)……と歩んだ私の話【推しゲーレビュー】_04
とくに私の心をえぐったシルヴァンのセリフ。本当に申し訳なかった。

 が、そんな地獄のような状況だからこそ、精いっぱい生き抜くキャラクターたちのドラマに心打たれるのです! 全員が手を取り合う、そんなルートがあったらよかったのかもしれませんが、その場合、私はここまで本作をプッシュしなかったでしょう。すべては救えない状況の中で、何を選ぶか――無情な選択を乗り越えたからこそ、迎えた結末がかけがえのないものに感じられるのです。

『ファイアーエムブレム 風花雪月』金鹿→黒鷲(紅花)→青獅子→黒鷲(銀雪)→金鹿→黒鷲(紅花)……と歩んだ私の話【推しゲーレビュー】_07

 ……まあ、6周もしていると、だんだん生徒を手にかけるのにも慣れてきてしまって、それはそれで地獄みたいな状況になるんですが。しかし、1周目で選んだ金鹿の学級だけは、やはり思い入れもひとしおで、私は紅花ルートを2回プレイしましたが、2回とも●●●●だけは、どうしても殺せませんでした。殺した場合のセリフを見てみたかったけど、指が動かなかった……。

 20192月のNintendo Directで本作の詳細が明かされたとき、「『ファイアーエムブレム』で学園もの? 大丈夫かな……」と、戸惑ったことを覚えています。が、それは杞憂でした。むしろ本作は、学園ものだからこそ成り立っている名作です。

 なお、本記事ではストーリーを中心に語りましたが、もちろん、育成やバトルも楽しいですよ。私は6周も遊んでますが、書いてたらもう1周やりたくなってきました(つぎは青獅子)。何度プレイしても発見がある『ファイアーエムブレム 風花雪月』。個人的にはシリーズ最高傑作だと思っていますので、未プレイの方はぜひ。

『ファイアーエムブレム 風花雪月』金鹿→黒鷲(紅花)→青獅子→黒鷲(銀雪)→金鹿→黒鷲(紅花)……と歩んだ私の話【推しゲーレビュー】_02
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