2005年7月21日、カプコンが歴史ブームの火付け役となるアクションゲームを世に送り出した。そのタイトルの名は『戦国BASARA』。戦国時代の武将や史実をモチーフにしながらも、奇抜で斬新なキャラクターや世界観を創造。唯一無二の英雄たちは、多くのファンに愛され、“歴史ブーム”を巻き起こした。

 『戦国BASARA』の15周年を記念して、シリーズの生みの親である小林裕幸プロデューサーと、『戦国BASARA 2』(以下、『2』)から前田慶次を演じる森田成一さんの対談をお届け。バサラ祭など数々のイベントで共演しているふたりは、気心が知れた仲。対談は大いに盛り上がり、「『2』の主人公は当初●●だった!?」など、シリーズファンの誰もが驚く初公開となる情報が飛び出す展開に! 最後までぜひ読み進めてほしい。

※本記事は週刊ファミ通2020年8月6日号に掲載した記事を増補改訂したものです。

小林裕幸氏

『戦国BASARA』シリーズ プロデューサー。
シリーズの企画の立ち上げから関わり続ける中心人物。ゲームだけではなく、テレビアニメや舞台などの監修も行っている。

森田成一さん

声優。『戦国BASARA』シリーズ 前田慶次役。
10月21日生まれ。東京都出身。前田慶次を演じるほか、イベントではMCを担当。代表作は、『ファイナルファンタジーⅩ』(ティーダ役)、『BLEACH』(黒崎一護役)など。

※本記事では、シリーズ作品の名を以下のように表記する場合があります。
『戦国BASARA』……『1』、『戦国BASARA2』……『2』、『戦国BASARA2 英雄外伝(HEROES)』……『2 英雄外伝』、『戦国BASARA バトルヒーローズ』……『バトルヒーローズ』、『戦国BASARA3』……『3』

『戦国BASARA』15周年記念対談。「『2』の主人公は当初前田慶次ではなかった?」小林裕幸プロデューサーと前田慶次役の森田成一さんが想い出を語り尽くす!_01
『戦国BASARA』15周年記念対談。「『2』の主人公は当初前田慶次ではなかった?」小林裕幸プロデューサーと前田慶次役の森田成一さんが想い出を語り尽くす!_02

『戦国BASARA』の誕生と前田慶次との運命の出会い

――2020年7月21日に『戦国BASARA』シリーズは15周年を迎えます。まずは、いまのお気持ちをそれぞれお聞かせください。

森田2006年の『2』から参加しているので、僕自身は15年関わっているわけではないですが、「もうそんなに経つんだ」と驚きました。とてもありがたいことに、『戦国BASARA』には毎年何らかの形で関われているので、非常に感慨深いですし、ものすごくうれしいですね。

小林『戦国BASARA』の最初は毎年必死で、つぎに5年がんばろうと思って。5年のつぎは10年と、5年ごとに目標を設定していたので、15年目を迎えられてホッとしています。応援し続けてくれるファンの方はもちろん、作品を盛り上げてくれる森田さんたち出演者の皆様のおかげです。ただ、うれしい反面、思い出されるのは苦労した出来事ばかりで(苦笑)。

森田そんなにたいへんだったんですか?

小林1作目の評判がよかったため、すぐに2作目を作ることになったんです。通常なら2年くらいかけて新作を作るのですが、当時はいろいろなタイトルが出ていたので、すぐに続編を作らないとファンがいなくなると思って。ファンが待ってくれるのは、1年がギリギリだろうと考え、『2』は8ヵ月で開発しました。

森田8ヵ月!? それはすごいですね。

小林いま考えてもめちゃくちゃなスケジュールの計画に、山本(真氏。シリーズのディレクターを務める)を始めとした開発スタッフたちは、よくついてきてくれたなと思います。

森田必死だったんですねぇ……。

小林本当に必死でした。『2』を出すまでのつなぎとして、マンガやドラマCDにもチャレンジしましたし、『2』以降は、森田さんにもラジオやイベントなどでお世話になっています。

森田いろいろやりましたね(笑)。

――森田さんは、『2』で主人公の前田慶次を演じられていますが、どのように役作りをして収録に臨んだのかを教えてください。

森田前田慶次と言えば、『花の慶次』(1990 年に週刊少年ジャンプで連載がスタートした、原哲夫先生のマンガ)の印象が強いと思います。マンガの慶次と『戦国BASARA』の慶次をどう差別化するか、演じるうえで悩んだのを覚えています。『花の慶次』のイメージがすでに浸透していたので、この慶次像を使わない手はないと思いました。豪放磊落で傾奇者な慶次のイメージに、もっとポップでストリートっぽさを加えて、より現代人っぽくしたのが『戦国BASARA』シリーズの慶次になります。狙い通り、登場人物の中でも現代人に近い考えかたのキャラクターになったので、うまく差別化できたのかな、と。現代人っぽいがゆえに、武将を求めている人たちには違和感があるかもしれませんが……。

小林確かに、戦国武将感は薄いですよね。

森田そうそう、『花の慶次』と言えば、総合プロデューサーの方といっしょに東映太秦映画村でイベントをやりましたよね?

小林やりましたね。

森田総合プロデューサーの方といっしょに、慶次についてトークをするという。いま考えても、すごいイベントだったなぁ。

小林『戦国BASARA』の慶次に自信を持っていましたが、『花の慶次』があまりにも偉大なので、同じイベントに登壇するのは、正直、どきどきしました(苦笑)。

森田会場には、『花の慶次』と『戦国BASARA』のファンが両方来ていて、非常にどきどきしたのを覚えています。でも、いいイベントになりましたよね。

――貴重な体験だと思います。慶次の声の収録はわりとスムーズに?

小林そうでもなかったですよね?(苦笑)

森田じつはそうなんです。収録に臨む前に、いまの慶次の声のイメージは頭の中にありました。ただ、慶次の声は、あえて“つぶして”出しているため、のどに負担がかかります。しかも、ゲームはアニメと比べてセリフの量が多いですし、基本的にひとりで収録を行います。つぶした声だと、すぐにのどがダメになってしまうと考えて、最初は出しやすい透き通った声で演じてみたんですよ。そしたら、NGが出てしまって、なかなかオーケーがもらえない。これは、つぶした声がいいんだろうなと考えていまの慶次の声で演技をしたところ、「それでお願いします」と。僕はのどが強いほうなので、なんとかなるだろうと思って最後まで収録し終わりましたが、翌日は声が出なくなっちゃいました。

小林ご無理をさせて申し訳ない!

森田いえいえ! でも、当時の声優業界では『戦国BASARA』が恐れられていましたね。あの現場にいくと、のどがやられるって。僕らは通称、“バサる”って言っていました(笑)。

小林『戦国BASARA』の収録があるときは、ほかの仕事を入れないと聞いています。

森田そうなんです。『戦国BASARA』の収録の翌日は、各声優事務所が足並を揃えて休みにしていましたね。それくらいたいへんな現場だったんですけど、いいこともありました。『戦国BASARA』の収録を乗り越えると、どんな声を出してものどがやられなくなるんです(笑)。

――のどが鍛えられるのですね(笑)。ほかに、いまだから言えるエピソードはありますか?

小林(しばらく考えてから)せっかくの機会なので、初公開のエピソードを。じつは、『2』の主人公は、前田慶次じゃなかったんです。

森田えぇ!? 誰だったんですか……?

小林片倉小十郎でした。その名残で、『2』には敵武将として登場していて、『2 英雄外伝』でプレイアブルキャラクターにしています。主人公を小十郎から慶次に変えた理由ですが……。

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森田(遮って)森川(智之氏。小十郎の声を担当する声優)さんのせいですか?(笑)。

小林違います!(笑)。当時、僕は慶次から逃げていたと言いますか。華のあるキャラクターなので、いつか登場させなければいけないと悩みながらも、開発期間が8ヵ月と短いこともあって、すでにキャラクターが固まっていた小十郎を主人公にしようと考えていました。そんなとき、同期の人間に「本当にそれでいいのか」と言われてハッと気づいたんです。「『2』をヒットさせるためには、慶次を主人公にしたほうがいいよな」って。そこで急遽、スタッフに頭を下げて、主人公を小十郎から慶次に変えました。

森田つまり、その方の進言がなかったら、慶次は『2』の主人公でないうえに、そもそも登場すらしなかったと? うわ、怖い!

小林そこからは時間との勝負でした。山本が『戦国BASARA』ならではの慶次の特徴として、恋と桜吹雪のアイデアを考えてくれたので、1ヵ月で慶次のストーリーを決めて、絵コンテを切って、ムービーを作って……。武将を敵味方合わせて30人出すことも最初に決めていて、21人のプレイアブル武将たちには全員ストーリーを用意したので、本当にたいへんでしたよ。

森田『戦国BASARA』のストーリーは、史実に基づくエピソードもちゃんとあって凝っていますよね。調べるだけでも時間がかかると思いますが、武将ごとにチームがあったのですか?

小林ないです、ないです。山本と企画のメンバーで集まって突貫で作りました(苦笑)。

森田『2』と『3』は、どれくらい間が空いていたのですか?

小林『2』が2006年で、『3』が2010年なので4年ですね。その間に『2 英雄外伝』を出していますが。『1』、『2』、『2 英雄外伝』が初期の三部作で、『3』で転換期になったと思います。

森田『3』は雑賀孫市が出てきて、慶次の恋バナがくり広げられるのが印象的でした。孫市が女性だったのにもビックリして。

小林孫市は、だいたい男キャラクターで登場しますからね。

森田そんな孫市に、慶次がガッツリ恋をして。『2』のときは豊臣秀吉のことで頭がいっぱいで、とあるシーンでは叫びすぎてたいへんでしたが、『3』は孫市のことで頭がいっぱいなせいか、あまり叫んでいないんですよね(苦笑)。『3』の慶次は『2』よりも大人しかったので、“バサる”ことがなかったです。もちろん、慶次を演じるのに慣れてきたのもありますが。

小林『3』は秀吉が死んだところから始まるので、慶次としては、友が死んだ傷を癒す旅なんです。

森田友の死を忘れるために、恋に走ったんですよね。

小林そうなんです。だから最初は、本当の恋じゃなかった。友を忘れるためのごまかしの恋だったんですが、だんだん本気の恋に変わっていったんです。

15周年のいまだから言えるシリーズ作品に隠された秘密

――そもそも森田さんは、『戦国BASARA』シリーズのことはご存じでしたか?

森田もちろん知っていましたよ。

小林伊達政宗の第一印象はどうでした?

森田爆笑しました! 保志(総一朗)さんが演じる真田幸村はすんなり受け入れられたのですが、中井(和哉)さんの政宗は、なんで「パーリー!」とか言っているのかと。僕の中での政宗と中井さんのイメージと、『戦国BASARA』シリーズの政宗と中井さんの差が大きかったぶん、衝撃だったのかもしれません。

小林森田さんはそのときまで、政宗や中井さんにどんなイメージを持っていたのですか?

森田政宗は、渡辺謙さんが演じた『独眼竜政宗』(NHKが1987年に放送した大河ドラマ)のイメージです。中井さんは、『ファイナルファンタジーX』(2001年発売)の現場で初めてお会いしました。非常に謙虚で真面目な方でしたし、当時は中井さんが演じたキャラクター(ワッカ)の印象が強かったので、政宗とのギャップがすごくて。英語のしゃべりかたは中井さんにお任せだったのですか?

小林そうですね。台本の段階では、僕もイメージできなかったのですが、中井さんがいい塩梅で演じてくれて。英語を使うお笑いタレントみたいになったときは、英語のセリフは全部落とすと決めていたのですが、『戦国BASARA』らしい政宗が誕生しました。

森田中井さん、すごいな。

――ちなみに、森田さんが中井さんから影響を受けていることはありますか?

森田中井さんの演技を間近で見て、こういうやり方もあるんだと勉強させてもらうことはありますが、僕と中井さんとでは演技の質が違うので、僕はできないなって思うことのほうが多いですね。仕事に対する真摯な姿勢は、『FFX』のときから学ばせていただいています。

小林中井さんは本当に真面目な方ですよね。

森田でも、そもそもなぜ政宗に英語をしゃべらせようと?

小林強烈な個性を作りたかったんですよ。世の中に数多く政宗のイメージがある中で、“『戦国BASARA』ならではの政宗”をどう描くのか。アイデアを出す中で、伊達家は海外と貿易を行っていたことから、政宗は英語を話せたかもしれないと思って。

森田ちゃんと史実に紐付いていたんですね。六爪流(指の間に柄をはさんで、片手に三振りずつ、両手合わせて六振りの刀を操る独自の流派)もじつは史実と関係があったり?

小林ないです、ないです(苦笑)。アクションゲームとしてケレン味を出すために、ライバルの幸村は本来ならありえない二槍にしました。それで、幸村の“2”に対抗するには“6”しかないと考えて、政宗の六爪流が生まれました。

森田いや、そこはわかんない!(笑)。“2”に対抗するなら、“3”だと思いますよ。

小林三刀流の剣士はすでにいたので(苦笑)。

森田あぁ! 同じ方が演じている。やっぱり、それもあって中井さんにお願いしたとか……。

小林もちろん違います! 中井さんに決まる前から、政宗は六爪流に決まっていたので。

森田そういえば、配役に関してもうひとつ気になることがあります。大川(透)さんが子どものキャラクター(徳川家康)を演じるのは珍しいなと思ったのですが、『3』で成長した家康が出てきたときに、「これを見越して大川さんにお願いしたんだ」と合点がいったんですね。やっぱり、小林さんの狙い通りだったんですか?

小林「そうです」と言いたいところですが、そうではありません。大人の家康を登場させたのは、『3』のときに考えた後付けの設定です。

森田え、そうなんですか!? 最初から設定であるのかと思っていました。『3』で大人の家康を登場させるから、声の違和感がないようにするため、最初から大川さんを起用したんだって。

小林最初にお話したように、当時は1本作るのに必死でしたから。『1』や『2』の時点で、『3』のことを考える余裕はなかったですよ。

森田新情報が続々と登場しますね(笑)。

――本当に(笑)。ちなみに、森田さんがとくに印象に残っているシリーズ作品は何ですか?

森田『バトルヒーローズ』ですね。当時は、声優業界でもPSPが大流行していて、みんなカバンに入れて持ち歩いていました。いろいろなゲームで遊びましたが、『バトルヒーローズ』が出たときは小躍りするほどうれしかった。当時はすごくやり込んでいたため、イベントの大会でも2年連続で優勝して合計で20キログラムのお米をいただきましたが、小林さんには勝てなかったなぁ。だって、せこい技を使うんですよ!

小林あれは戦術です(苦笑)。

森田ずーっと空を飛び回ってタイムアップを狙うんです。しかも対戦したのが、イベントの前ですよ。出演者である僕の顔を立てて、少しくらい手加減をしてくれてもいいじゃないですか。でも、いっさい手心を加えてくれない。

小林やるからには手は抜きませんよ(笑)。

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多くのファンを虜にしたゲーム以外の多彩な施策

――せっかくの機会なので、アニメや舞台、イベントなどのお話もうかがいたいです。

小林アニメと舞台は、どちらも2009年に初めて公開されました。新しいことにチャレンジしたぶん、とても忙しかったですが(苦笑)、すごく盛り上がっていたのを覚えています。とくにアニメは印象に残っていますね。『2』で慶次を主人公に抜擢したものの、当時は彼のよさが浸透していなかったと感じていて。アニメの1期から慶次を登場させて、2期で満を持して慶次と秀吉とのエピソードを描いたのですが、そこで多くの方に慶次の魅力を知ってもらえたので、アニメで『2』の苦労が報われました。

森田僕は『学園BASARA』が印象的です。当時、出演声優の間で話題になりました。「本編の続きじゃなくて学園モノ? なんで!?」って。

小林中村(悠一氏。島左近役)さんや岡本(信彦氏。柴田勝家役)さんは、本編のアニメに出ていないのに、出演しているっていう。

森田それもおかしな話ですよね。しかもみんな僕に聞いてくるんですよ。「森田、知らないの? お前ならなんか知っているだろう」と。いやいや、僕も知りませんよ!(笑)。

一同 (笑)。

小林『学園BASARA』はおもしろかったなぁ。いまどきあまりない、昭和感のあるアニメで。慶次があの手この手でカンニングをしようとする、“恋の中間テスト大作戦”も大好きです。

森田あのエピソードは、いい意味でひどかった。仮にも『2』で主人公を務めたヒーローが、カンニングをするってどうなんですか。とはいえ、僕もこのエピソードは好きなんですけど。

小林いつか続編をやりたいですね。

森田やりたいです。『バサラ』のアニメ始動って、宣伝すれば、戦国か学園かわからないので、より期待してくれるんじゃないですかね。

小林戦国でも学園でもないかもしれないし。

森田ほかの『バサラ』もあるんですか?

小林じつは、温めているネタがあります。

森田ゲームですか? それともアニメ?

小林いろいろやりたいですね。機が熟したら発表しますので、ご期待ください。

――いちファンとして、発表が楽しみです! 続いては、舞台の感想もお願いします。

森田『戦国BASARA』が、2.5次元の舞台のエポックメイキングになったと思います。2009年当時、演劇界でも徐々に速い殺陣をやるようになっていましたが、ありえない衣装を身に着けて、ありえない武器を振るい、ありえないアクションを行う『戦国BASARA』の舞台はすごいと、演劇業界内でももちきりでしたから。

小林初めて舞台化したときは、衣装や武器が重くてたいへんだったと思います。軽量化したいまはいまで、べつの苦労がありますけど……。

森田衣装や武器が進化して軽量化されると、役者に求められることが増えますからね。

小林たとえば、政宗の六爪流は最初、3本ずつくっつけたものを使っていました。でも、武器を軽量化できたので、いまはちゃんと指と指のあいだに六振持って演じています。

森田いくら軽くてもそれは……どんな握力をしているんだろう?

小林持ちかたにコツがあるみたいですよ。もちろん、ある程度握力も必要だと思いますが。

森田舞台は舞台で、“バサって”いるんですね。昔とずいぶんかわったんだなあ。武器は何がたいへんなんだろう。

小林それぞれたいへんだと思いますよ。慶次は刀が大きいですし、毛利元就は輪っかですし……。当然ながら、人が演じることを想定して作っていないので、変な武器が多いんです。モーションキャプチャーのときから、けっこう無茶ですねと言われていましたが。

森田あ、でも、小十郎は楽なんじゃないですか。普通の剣なので。

小林じつは小十郎もたいへんなんです。彼は左利きなのですが、演じる役者さんは全員右利きなので、利き腕じゃないほうの腕で刀を振るうのは、難しいみたいですよ。

森田なるほど。みんなそれぞれ苦労があるんですね(苦笑)。

小林織田信長のように、衣装が大きくてたいへんなキャラクターもいますからね。

森田確かに、信長はたいへんそうでした。バサラ祭で信長がアクションをやってくれたときに、まっすぐ歩くとステージに行けないから、「すみません、すみません」と謝りながらカニ歩きをしていました(苦笑)。

――(笑)。11年の間に、『戦国BASARA』の舞台も大きく進化しているのですね。長年続けてきたイベントも、パワーアップしていると思います。

小林自分で言うのも何ですが、最初のイベントは本当に手際が悪くて。3時間半、休憩なしのイベントを開催したこともあって、とあるマネージャーに注意されました(苦笑)。

森田あぁ、僕が侍の鎧を着たイベントですよね? ちゃんとした鎧だったので、一回着ると出番が終わるまで脱げなくて。しかも、客席の後ろから神輿にのって登場するのに、裏動線が存在しなかったので、お客さんが会場入りする前から鎧を着てスタンバイしていたんですよ。かなり長い時間、トイレを我慢していたので、出番が終わった瞬間にトイレに駆け込んだのを覚えています(笑)。

小林その節はご迷惑をおかけしました!

森田いえいえ! イベントで言うと、虚無僧の姿で登場したのも覚えています。

小林ありましたね。

森田尺八の奏者の方たちが何人かいて、みんな虚無僧の姿をしているんです。その中に僕もいて、最後に笠をバッと脱いで登場するかっこいい演出を考えてもらったのですが、当時は尺八のことで頭がいっぱいで、気が気じゃなくて……。

小林でも、かっこよくきまってましたよ。

森田僕は尺八が吹けなかったので、事前にビデオを送ってもらって手の動きだけでも練習していました。イベント当日も、ほかの方の動きを真似して何とかごまかしていたんですが、試しに吹いてみたら音が鳴っちゃって(苦笑)。もちろん、お客さんは聞こえてないと思いますが、ビックリして笠を取ったときも緊張が残っている感じだったんです。

――そんなことがあったんですね(笑)。ほかにイベントで印象に残っているエピソードはありますか?

森田あと、昔の小林さんは話が本当に長かった! しかも悪いクセで、公表してはいけないことを発表しちゃうんですよ。スタッフさんたちが青い顔をしていたのを覚えています。

小林本当は公表しちゃダメなんですけど、イベントに出ると楽しくなっちゃうんですよね。それで、せっかく会場に来てくれたファンのために、ついサービスをしたくなり……。

森田それが問題なんですよ!(笑)。気持ちはわかりますけど、最初のうちは、小林さんのかじ取りをするのがけっこうたいへんでしたね。

小林イベントでは、森田さんにMCをお願いしているのですが、何度も助けられています。でも、『戦国BASARA』にはベテラン声優が多いので、MCをするのは緊張しませんか?

森田『戦国BASARA』のイベントはベテランが多いので、いい意味で言うと自由、悪い意味で言うと勝手なんです(苦笑)。トークで収拾のつかないことを言い出したりするので、最初は会話の流れをコントロールするのがたいへんでした。トークのときはリラックスしているのに、朗読劇の“戦国ドラマ絵巻”になると、観客も含めて張り詰めた空気になるのも独特だと思います。舞台をやっているかのような緊張感に包まれて、とても気持ちがいいんですよ。

小林ほかの朗読劇とは違うんですか?

森田もちろん、ほかの朗読劇も緊張しますが、“戦国ドラマ絵巻”は違いますね。先輩の声優もすごい技を使うんですよ。ここでその技を出すんだって驚くくらいのことを、みんなどんどんやるんです。そうやってお互いに高め合うことで、“戦国ドラマ絵巻”の完成度が高まっていくのではないでしょうか。僕はもちろん、出演者のすごさを生で体験できるので、ファンにとっても非常に重要なコーナーだと思います。

――今度、イベントで“戦国ドラマ絵巻”が披露されるときは、まだ体験したことのないファンの方にも聴いてもらいたいですね。最後に、今後チャレンジしたいことを教えてください。

小林過去に掃除機を作ったり、富士急ハイランドさんとコラボしたりしましたが、今後も新しいことにチャレンジしたいですね。15周年を盛り上げる企画もいろいろ準備を進めていますので、こちらもぜひご期待ください!

森田チャレンジしたいことではないのですが、いちファンとしてゲームの新作に期待します。(小林さんを見ながら)ぜひPS5で! そのためにも、今後も応援していただき、15周年の機会に過去作を遊んでもらえるとうれしいです。