バンダイナムコオンラインとバンダイナムコスタジオが共同開発する『ブループロトコル』は、幻想的なグラフィックが特徴のPC用オンラインアクションRPGだ。まるでアニメの世界に直接入り込んでしまったかのよう。
2019年7月26日~28日に行われたクローズドαテスト(以下、CaT)からおよそ9ヵ月後、2020年4月23日~4月27日にかけてクローズドβテスト(以下、CBT)が実施された。
先の記事では、CBT開始直前に起こったトラブルの舞台裏や、新型コロナウイルスの影響でリモートワークを余儀なくされたことによる苦労話などを中心にお話しいただいた。
後編となる本記事では、基本的なゲームサイクルについてや、ムービーシーンへのこだわり、バトルコンセプト“パーティVSパーティ”についてなど、CBTをプレイしていて気になったことをいろいろとぶつけてみたので、今回も最後までご覧ください。
下岡聡吉(しもおかそうきち)
バンダイナムコオンライン『PROJECT SKY BLUE』エグゼクティブプロデューサー。文中では下岡。
鈴木貴宏(すずきたかひろ)
バンダイナムコオンライン『ブループロトコル』運営統括ディレクター兼プロデューサー。文中では鈴木。
福崎恵介(ふくざきけいすけ)
バンダイナムコスタジオ『ブループロトコル』開発統括ディレクター。文中では福崎(※崎はたつさき)。
プレイスタイルにマッチした武器を完成させる喜びを味わってほしい
――1本の記事に収まりきらなくなったので記事を2本に分けます。引き続きお付き合いいただき、ありがとうございます。
福崎今日はファミ通さんのインタビューがあると聞いて、きっとそうなると思っていました。ちゃんと後の予定は空けてあります(笑)。
――ありがたいけど、素直に喜んでいいものか悩ましいですね。
鈴木前回のインタビューも結局3時間くらい話しましたからね(笑)。
――では改めまして。ダンジョンをクリアーすることで獲得できる素材を集めて武器をクラフトし、その武器を持って新たなダンジョンへ挑戦するのが、本作の基本的なサイクルですよね。
鈴木はい。もちろんそれだけではないですけど、アイテムのクラフトはメインのひとつです。
――本作はアクションRPGですから、ダンジョン攻略のおもしろさも重要なポイントだと思います。それでもこのシステムは1歩間違えると、単調な周回ゲームになってしまいかねないと感じます。その点はどのように考えられていますか?
下岡今回、CBTを遊んでくださったなら分かると思うのですが、アクションの難易度ってあまり高くなかったですよね?
――たしかに、難しいとは思いませんでした。
下岡CBTは期間が限られていましたので、あえて難易度は高くならないように設定していたんです。公式サイトのCBTフィードバックレポートでスキルのシステムも刷新すると宣言していますが、スキルの選択肢も今回はそこまで幅を持たせませんでした。
――なるほど、やはり意図的に調整されていたんですね。
下岡たとえば、ツインストライカーという近距離アタッカークラスがあります。これを選んだ人の中には、「アクションは苦手だからシンプルな操作で楽しみたいけど、見た目がカッコイイから使ってみたい」という人もいれば、「激ムズのアクションを極めてハイリスクハイリターンなプレイを楽しみたい」という人もいると思うんです。ですので、スキルのシステムを刷新することによって、さまざまなプレイスタイルが許容できるようにしたいと考えています。
――おおー、スキルの選択肢もかなり増えそうでワクワクしますね。
下岡プレイスタイルに影響するのは、なにもスキルだけではありません。武器やイマジン(装備の一種)も重要な要素になります。要するに、自分のプレイスタイルに合った、いわば“オーダーメイド”のような自分だけの1本を作り上げていく楽しみを提供したい。クラフトを重視するのは、ドロップ式だとそれが難しいからなんです。
福崎ドロップ式にはドロップ式のいいところがありますが、『ブループロトコル』にはクラフト式が合っているということですね。
下岡そう。ここだけの話、僕はもともとドロップ派だったんですよ(笑)。
――ぶっちゃけますね!
下岡でも、『ブループロトコル』のシステムにはクラフト式の方がマッチしていると気づいたんです。というのも、『ブループロトコル』ではインスタンスダンジョンをマッチングでカジュアルに開始できるわけですが、クリアーするとパーティは解散してしまうので、ボスからレアな装備品がドロップしてもその感動を誰かと分かち合いにくいんですよね。その点、クラフトは街で行いますから、最高の1本ができた喜びを共有しやすくなります。
福崎周回ゲームになりかねないという懸念を持たれるのもわかります。ですが、いま話に出たように、そのプロセス自体を特別な体験たらしめる工夫を施しているということが前提としてあります。そのうえで、作りあげた武器を使って楽しめるコンテンツを作り続けることが必要だと思っています。どんなコンテンツにするのかは、サービス開始まではもちろん、その後もさらに新しいコンテンツを追加していくために、つねに考え続ける課題ですね。
――オンラインゲームである以上、定期的なアップデートが欠かせないですからね。
福崎はい。開発チームとしても、これまでは開発にかかる期間をあまり考えずにクオリティの向上に全力を注いでいたのですが、CBTを終えてこの先の展開も現実感を帯びてきたので、限られた期間の中でどれだけクオリティを磨けるかという考えかたに移行していかないといけません。たとえば、アステルリーズは冒険の拠点として開発のかなり早い段階からあります。機能実装に伴い、店が増えたりNPCが増えたり、あるものを使ってどう作ろうか、というよりも、付け足していくような作りかたをしていました。
――クラフト関連でいうと、フィードバックレポートで露店やトレード機能はゲームサイクルと相性が悪いという話がありました。この理由について教えてもらえますか?
鈴木クラフトのキー素材を購入できたり、そもそもできあがった武器自体を購入できてしまうと、ダンジョンを攻略する必要がなくなってしまうからです。これは『ブループロトコル』が持つおもしろさの根幹が抜け落ちてしまうことになりかねないので、相性が悪いと判断しています。
――あくまでも基本のゲームサイクルを楽しんでもらいたいということですね。『ブループロトコル』の根幹といえば、ハイクオリティのアニメ調グラフィックもそのひとつだと思います。とくにムービーシーンは本当にアニメ映画を見ているかのようでしたが、なんと主人公がボイスつきでしゃべるんですよね。
鈴木オンラインゲームでは珍しいケースですよね。
――そうなんですよ。「しゃべった!」と思ってビックリしたんです。これはどうしてボイスつきにしたんですか?
鈴木じつは、ボイスをなくしてみたこともあるんですよ。その方が当然コストも抑えられますし、オンラインRPGにおいての主人公ってユーザーさんがそれぞれ思い描くイメージがあるので、ボイスをつけることによってそれが阻害されるのではないかという懸念もありました。ただ、『ブループロトコル』のムービーシーンって真剣にアニメを目指して作っているので、“主人公の声がない”という状態にものすごい違和感を覚えるんですよね。
福崎当然なんですけど、いまでも主人公が名乗るシーンだけはボイスがありません。僕らからすると、もはやそれだけでもかなり違和感があるんです。
下岡中心に立って物語を引っ張っていく主人公が僕らは見たいんですけど、セリフがないとしっくり来なかったんですよね。主人公がボイスつきで喋ったからといって、感情移入ができないようなシナリオにはなっていないはずだという自信もあります。
――キャラクターボイスってキャラクタークリエイトで選択できたと思いますけど、そのボイスはムービーシーンにも反映されるっていうことですよね?
下岡はい、もちろんです。体型や顔が違うのに、全員同じ声はおかしいですからね。もちろん、どのボイスを選択するかはユーザーの皆さんの自由ですが、キャラクターの特徴に合うボイスを選べるようにはしています。
――“ブルプロ通信”(※)ではキャラクターボイスの追加を行うと発表されていましたけど、ボイスの追加が行われるたびにムービーシーンの収録が行われるというわけですか?
※ブルプロ通信:下岡氏、鈴木氏、福埼氏の3人が出演している公式生放送番組。
下岡そういうことになりますね。
鈴木それがたいへんなのでボイスなしを試したのですが、たいへんだとしてもユーザー体験の向上のためにがんばらなければならないと判断しました。
――やっぱり、たいへんですよね(笑)。それでも押しとおすところにこだわりを感じます。主人公がしゃべらないアニメは違和感があるというのは、スッと納得できました。
鈴木すごくシンプルな理由です(笑)。
――もうひとつ、『ブループロトコル』の根幹として“エネミーともパーティ VS パーティを楽しめる”というバトルコンセプトが挙げられると思うのですが、CBTではエネミーのHPが低かったこともあってあまり感じられませんでした。本来はどのようなバトルを想定しているのでしょうか?
福崎まるでユーザーを相手にしているかのような戦術的なバトルを楽しめる状態が理想だと考えています。そのためには、まずエネミーのロール(役割)を増やし、そのロールが活きるシチュエーションを設定し、各エネミーがそれぞれのロールを徹底するように改善する必要があると思っています。
鈴木ただ、一般的なロールって人型のキャラクターを想定されているものが多いんですよね。
福崎たとえば、キツネのような4足歩行の動物は盾や武器を持てません。でも、人型じゃないエネミーのほうが圧倒的に多いんですよ。どういうロールなら人型じゃなくても持てるのかという議論をしていて、その中で出てきたのがリーダーと取り巻きというロールです。リーダーが攻撃対象として指定した相手を取り巻きが全員で囲むような形ですね。
――なるほど。それならエネミーが動物型でも自然ですね。けっこう苦戦しそう。
福崎じつはそこが問題で、今度は強すぎちゃうんですよね(苦笑)。いまのゲームシステムだと大勢のエネミーに取り囲まれると、プレイヤー側がロールを発揮できなくなってしまうんです。パーティ VS パーティってエネミーがパーティっぽく動くことも大事なんですが、当然ユーザー側もパーティとして動けないといけないわけです。
鈴木取り囲みだと戦術性が乏しくなって、ただの乱戦になってしまうんですよ。
福崎ですので、パーティ VS パーティが成立する動きとしてどんなことが考えられるか、改めて整理している段階ですね。こういうロールでこういうAIは組めるよねっていう材料は集まっているので、それを活かせるシチュエーションを模索している感じです。
下岡そもそもゲーム全体の難易度にも影響しますよね。
福崎そうですね。アクションゲームなので、どうしても上手な人と苦手な人が出てきてしまいます。そこにパーティ VS パーティだからといって難しすぎる要求をしてしまうとよくないですし。
――かといって簡単にしすぎると味気なくなってしまいますし、バランスが難しい。
福崎ひとつの基準にこだわるのではなく、住み分けできるようにするのがいいと考えています。たとえば、同じダンジョンでも装備も腕も一流のプレイヤーだけが攻略できる“エクストリームモード”みたいな超高難易度モードを作ってみるとか。
鈴木そのあたりはいわゆるガチ勢志向になりすぎないようにうまくコントロールしないといけないとも思います。とはいえ、CBTではアクションを楽しむまでもなくボタンを押しているだけでエネミーを倒せてしまっていたので、それはそれで問題。
福崎弱点を突いたり、誰かがダウンさせたところにダウン時にボーナスダメージが発生するスキルを合わせたり、そうやってうまいプレイをしたときに早く倒せるのはいいと思うんですよね。CBTではそういった戦術も何もなくただ早く倒せてしまっていたので、うまくメリハリをつけることで解決するべきなんだと思います。
鈴木それと、アクションゲームでありRPGでもあるというところも大事にしたいんですよ。アクションが苦手な人はレベルを上げてステータスを強化すればいいし、逆に効率的にレベルを上げていくRPG的なプレイが苦手な人は、ある程度エネミーとレベル差があってもアクションの腕でカバーできるような。それぞれのユーザーさんに合った楽しみかたを提供できるよう調整していきたいと思います。
問題点の解決法はすでに用意済み。もっとも理想的な解決法を“検討中”。
――もっとバトルイマジン(※)が派手になってくれたらうれしいのですが。自分で出したバトルイマジンをエネミーと勘違いして、思わず攻撃を避けちゃったりするんですよ。
※バトルイマジン:エネミーの能力を凝縮した装備の一種。身に着けるとステータスがアップするほか、戦闘時にそのエネミーを呼び出すとさまざまな効果が発揮される。
福崎乱戦になるとエネミーと区別がつきづらいという問題は認識していますので、演出面の表現方法を変更して、見やすくなるように対応する予定です。
下岡CBTではバトルイマジンの入手方法がエネミーを倒した際のドロップのみだったので、とくに手に入りやすい弱いエネミーのバトルイマジンだとより派手さを感じにくかったと思います。今後は入手方法も追加されますし、性能も強化する予定ですので、バトルイマジンを召喚する楽しみは味わいやすくなると思います。
福崎バトルイマジンに関してはユーザーさんたちが共通の認識を持てるように誘導できなかったという反省もあって。たとえば“炎獄”のようなフィールドボスからもバトルイマジンのもとになる“イデア”がドロップするのですが、炎獄を召喚しているユーザーさんを見て「すごい!」と思えるのって、炎獄と戦ったことのある人だけなんですよね。
――たしかに、見たことがないとどれくらいレアなのかも分からないですね。
下岡もちろんCBTは期間が限定されていたのもあって、そのあたりの説明が丹念にできなかったという面もあるのですが、今後はユーザーさんにどう認識されるのかも意識していきたいですね。
福崎同じような反省はアイテムの鑑定まわりでもあるんです。じつはいまの鑑定のシステムだと、ユーザーさんの視点で考えるとネガティブなサプライズになってしまっているんですよね。
――あ、それはちょっと思いました。狙いどおりのものが出なかったときにガッカリしちゃうんですよね。
福崎そうなんです。ネームドエネミーを倒せばそのエネミーのイデアがドロップすると考えるのが自然なのに、そこから雑魚エネミーのイデアが出てきちゃったら、そりゃガッカリしますよね。クラフトの素材を取りに行くにしても、“アステリア平原のゴブリンからドロップ”って書いてあるのに、実際にゴブリンを倒して帰ってきて鑑定したら違うアイテムだったとか。
鈴木基本的に上振れすることがなくて、下振れが起きやすいんですよね。
福崎これも結局、説明不足によって起きていることだと思うんです。中途半端にどこのどのエネミーからドロップするかだけが書かれているから下振れを感じるのであって、もうストレートに何%の確率でドロップしますって書いておけば、むしろ低確率のものが獲得できたときに上振れを感じられるはずなんですよね。
下岡これはバトルイマジンとか鑑定だけの問題ではないと思っています。どんな要素であれユーザーさんと開発サイドでの共通認識をきちんと取れるような手法を確立しなければ、今後も同じことをくり返しかねません。
福崎そうならないよう、開発チームには徹底して意識付けを行うようにします。
――ゲームパッドでプレイしていたユーザーさんたちの意見を見ると、アクションについては問題ないけどアイテム使用などの一部の動作がやりづらくて、結局キーボードと併用していたという方が少なくないようでした。ゲームパッドの操作性についてはどのように改善されますか?
下岡どうしてもキーボードを使わざるを得ないチャット機能を除いて、ほかの部分は不便さを感じることがないようにしたいと思っています。ただ、現状ではそもそも仕様が変更される可能性が多いにあるので、もろもろの開発が落ち着いた後にさせていただくと思います。
――チャット機能の話が出ましたが、やはりアクションゲームということもあってどうしても使いづらさがあると思います。今後改善される予定はありますか?
福崎戦闘中にチャットを行なうことはやはり難しいとは思うのですが、それでも何かをやりながらチャットを打ちやすくできないかと考えてはいます。CBTではトークモードに入ると発言してもチャットウィンドウが開いたままなんですけど、発言したらトークモードが閉じるオプションなども用意したいと考えています。
――それは助かりますね。
福崎後は、チャットウィンドウ内にあるすべての動作がキーボードで片付くようにしてほしいという話もしています。キーボードでチャットを打つ体制になっているのに、そこからマウス操作が必要になるのは面倒だろうと。
――ところで、インタビュー前半でCBTの仕様はあくまでもCBT用のものだというお話をたびたびされていました。CBTをプレイしていて感じたストレスは今後解消されると思っていいということでしょうか?
福崎そう思っていただいて大丈夫です。多くのユーザーさんが気にされている、高い頻度で街に戻されてしまうゲームサイクルやマウントのエネルギー問題についても、すでにデータによる裏付けがなされた解決法が提案されています。
下岡フィードバックレポートで“検討中”と言っていた部分ですね。
福崎じつは、もっとシンプルな解決法はすでに用意してあるんですが、長期運営を考えたときの費用面やプレイの快適さのバランスがもっともいい理想的な解決法を突き詰めている段階です。が、もしそのやりかたが実現できなかったとしても、プレイの快適さについては理想の方法と同等レベルに担保できるようにしていきますので、ご安心いただければ。
――CBTをプレイして不安になってしまったユーザーさんたちも、きっと今回のインタビューでかなり納得・安心できたのではないかと思います。となると、今後OBTが行われた際にはプレイの感覚がガラっと変わっている可能性もあるわけですよね。
下岡そうですね。ゲーム内容のボリュームに関しても、CBTは限られた期間の中で遊び尽くしてもらうためにゴールを明確に設定していましたが、OBTではもっとコンテンツは増えていきます。
――さすがにOBTまで行けばもうサービス開始が近いと考えて大丈夫そうですか?
下岡そう考えてもらって大丈夫です! OBTまでの期間がどれくらいになるかはまだわかりませんが、前半でもお話ししたように、『ブループロトコル』は必ず完成させます。これからの開発期間でクオリティにどんどん磨きをかけていきますので、ぜひ楽しみにお待ちいただければ幸いです。よろしくお願いします。