いよいよ2020年7月16日より配信が始まる、スクウェア・エニックスのスマートフォン向けタイトルであり、『ドラゴンクエスト』(以下、『DQ』)シリーズでも初のタクティカルRPGとなる、『ドラゴンクエストタクト』。
今回は、本作をいち早くプレイしたライターによるプレイレビューをお届け。『DQタクト』が『DQ』シリーズファンの期待に応える作品になっていることを、じっくりと解説していこう。
バトルは遊びやすい……が、属性や弱点を考える戦術的な思考は必須!
『DQ』シリーズ初のタクティカル系ゲームということで、個人的に期待していた本作。発表されるまでは、「もしも『DQ』で戦略ゲームが出るなら、歴代主人公がさまざまなキャラクターを率いて戦ったりするとアツいなー」なんて妄想をしていたが、結果的に本作はモンスターが主体となるゲームになっていた。
いわゆる『DQモンスターズ』シリーズの系譜に近いものなのだが、もちろんこれはこれでアリ。ユニット(本作における“なかまモンスター”)ごとの個性を出したり、収集の楽しさを得るには、バリエーションが必要になるものだが、『DQ』シリーズには1000を優に超えるモンスターがいるわけで、その点で困るわけもなく。「なるほど、こういうスタイルね」と、スムーズにゲーム性を受け入れられた。
本作の内容をザックリ説明すると、スタミナを消費し、戦闘をクリアーし、なかまモンスターを育てながら物語を進めて行くという、スタンダードなタクティカル系ゲームとして仕上げられている。この王道感は、『DQ』シリーズらしいと言っていい。
ストーリーも、序盤を見る限りは“ザ・『DQ』”。まだまだわからないことだらけだが、ほどよいコミカルさ、先が気になる展開などは、シリーズファンの想像を外さないものになっている。大まかな概要に関しては、先に掲載した記事も参照していただきたい。
シリーズ初のタクティカルなバトルということもあり、戦闘の難度も気になるだろう。今回プレイできたのは、全体を通せばまだまだ序盤ではあるものの、筆者としてはそこまで難度は高くないという印象を持った。なかまモンスターをしっかり育成し、敵に合わせたパーティを編成していれば、オートプレイでもそうそうカンタンには負けないからだ。
ただし、“敵に合わせたパーティを編成していれば”という部分こそ 、本作のキモでもある。物語を進めていくほど、戦術的な考え方が重要になっていく傾向があり、単にレベルが高いだけの適当な編成では勝ちにくくなるのだ。
たとえば、小路を塞ぐきりかぶおばけがいるステージ。きりかぶおばけの弱点を突けるなかまモンスターを編成していれば何でもないのだが、編成次第では倒しきれないこともあった。すると、生き残ったきりかぶおばけはHPをみるみる回復し、そのあいだに敵が遠距離攻撃を仕掛けてきて、なかまが壊滅的なダメージを受けてしまう……といった事態が起きたのだ。いかに弱点を突くことが重要か、これでわかる。
『DQ』シリーズらしく、本作にも“レベルを上げればなんとかなる”的な部分はあれど、敵の弱点を突けない、あるいは敵に弱点を突かれるようなパーティで挑むのは、はっきり言って望ましくない。
前述のようなステージもあるので、少々レベルが低めでも、敵の弱点を突けるモンスターを編成して戦闘に挑んだほうが、完全な勝利への道筋を見い出しやすい。おそらく、この傾向は物語が進んでも大きく変わることはないだろう。
視点を変えれば、“とにかく高ランクのモンスターでパーティを編成すればいい”とは言い切れない戦闘バランスを、開発は目指している……とも取れる。“ランクの低いモンスターにも活躍のチャンスがあり、彼らを交えながら効果的なパーティをどう編成していくか”という部分に楽しみを感じさせようとするところは、タクティカルなゲームとして正しい姿。
おそらくこの先、ひとつのステージのクリアー方法にもさまざまな編成がプレイヤーによって考案され、「こんな弱そうなパーティでも勝てた!」的な情報がネットにアップされることになるかもしれない。
弱点を突くことの重要性はわかってもらえたと思うが、敵の弱点を突けるとくぎや呪文を習得した高ランクのモンスターを、パーティにズラリと揃えるのは、なかなか困難。場合によっては低ランクのモンスターも使わざるを得なくなる。
そうなると、「敵の弱点を突くためにランクの低いモンスターをわざわざ育てるの?」という考えになる人もいるだろう。ただ、本作ではそこに“損した感”を出さないよう、“マスターランク”というシステムを導入している。
このマスターランクは、同系統モンスターの合計レベルに応じて、その系統のモンスターに強化補正が入るというもの。つまり、低ランクのモンスターのレベルをしっかり上げておけば、そのぶん高ランクのモンスターのメリットにつながるというわけだ。おかげで、極地戦で使いたいモンスターのレベルを上げることに対する抵抗も少なくなる。
さらに、スタミナ消費なしで各系統のモンスターのレベルを上げられる“バトルロード”も導入しており、まんべんなくモンスターのレベルを上げることに対する配慮がしっかりしている点は、「かなり工夫しているな」と感じられた。
育成の楽しさで『DQ』シリーズの本領発揮!
続いては“RPG”的な要素でもある育成に触れていくが、まずはモンスターの強さの指針になるランクについて説明しよう。この手のゲームの例に漏れず、本作もなかまモンスターは強さに応じてランク分けされており、高ランクのモンスターほど入手難度は高まる。
高ランクのモンスターの強みとしては、そもそもの能力が高め、リーダーに設定すると特殊なスキルが発動できる(SとAランクのみ)、設定されているレベル上限が高い……といったものが挙げられる。
本作の最高ランクであるSランクのモンスターは、ジェムを使ったスカウト(いわゆるガチャ)での入手確率が、現時点では3%。けっして高い確率ではない。 ただ、初心者ミッションでSランクモンスターを確定で入手できるチケットの配布があるし、長くプレイを続けていれば入手機会も増えると思われるので、「そういうもんだ」と割り切るべきかもしれない。
加えて、戦術的な楽しみを味わう本作において、「このモンスターを持っていなければクリアーできない!」的なステージが用意されるとは思いにくく、どこまでSランクのモンスターが重要視されるのかは謎なところもある。ほかのプレイヤーと競い合うことを考えなければ、そこまで重要視する必要はないのかも。今回は“闘技場”に触れることができなかったので、その内容次第ということにもなるのだが……果たして!?
また、本作では同一のモンスターを複数体、なかまに入れることはできないのだが、スカウトなどで同一のモンスターが出た場合は“覚醒”ポイントが獲得できる。このポイントが一定値を超えるたびに、該当のモンスターが少し強くなるという仕様となっている。つまり、育成は1種のモンスターあたり1体に絞り込むことになるので、プレイヤーの育成にあまり混乱はないはず。
レベルは戦闘を重ねれば上がるし、モンスターのとくぎや呪文、ランクは素材を集めれば強化できる。もちろん、そのすべてが簡単と言うつもりはないが、育成スピードの差こそあれ、やり込めば皆が同一ラインまで育て切ることができると考えていい。では、その先でどのように強さに差が出てくるのか? それが、前述の“覚醒”と“そうび錬金”だ。
とくにそうび錬金は、戦術的思考が重要になる本作においては、数少ない“運”が絡むドキドキのコンテンツ。装備品の追加効果がランダムで決まるので、理想的な効果を付けるにはひたすら必要素材を集めてチャレンジするしかないのである。強運、あるいは手間が必要にはなるが、すぐれた装備ができたらガッツポーズもの。SNSで自慢するくらいのことはしていいだろう。
ここまで説明してきた通り、育成の要素は複数あるため、最初はちょっとたじろぐかもしれないが、いずれもすぐに理解できるような内容だ。むしろ、どのモンスターを優先して育成するかのほうが悩みのタネになるだろう。だが、バトルロードを筆頭に、多くのモンスターをまんべんなく育てていける仕組み作りはされているので、そう急がず、じっくり遊んでいくほうがいいのではないかと思う。
総括すれば、タクティカルRPGというジャンル名にそぐわぬ遊びがしっかり楽しめる本作。少しでも興味があるなら、まずは配信開始のタイミングで触れてみることをオススメする。きっとログインボーナスもあるはずだから!