おもしろサイトのデイリーポータルZは、技術力が低い人限定のロボット相撲大会“ヘボコン”をオンラインで開催する。

 通常は自作のロボットを会場に持ち寄るのだが、今回は『Besiege』というゲームのマルチプレイ機能を使って実施。2020年6月7日(日)21時からスタートし、試合の様子はYouTube Liveで配信される。

【告知】技術力の低い人限定ロボコン ヘボコン・オンライン on Besiege

デイリーポータルZの人気イベント“ヘボコン”が、今夜21時からオンラインで開催。兵器作りゲーム『Besiege』でヘボさを競う_01
デイリーポータルZの人気イベント“ヘボコン”が、今夜21時からオンラインで開催。兵器作りゲーム『Besiege』でヘボさを競う_02
ヘボコン・オンライン配信ページ(YouTube)

 ヘボコンの歴史は2014年からスタートしている。工学的な発想や技術を競うロボット競技“ロボコン”とは真逆の大会だ。理由は、技術力の低い人しか参加できないから。

 ルールは相手を押し出したり倒したりすれば勝ちと、非常にシンプル。だが、出場者の技術力の低さゆえ、ぶつかり合うことすらままならない。

 段ボールをテープで接着しただけだからすぐ壊れる、アイデアはあるが技術力の問題で実現できない、そもそも動かない。ロボットたちはありとあらゆる弱点を抱えている。ちなみに、高度な技術を導入するとペナルティーが課せられるのも特徴だ。

 タミヤのキットがベースの機体はちゃんと動くが、欲を出して機能を追加し、結果として失敗することも多い。これによって導き出される教訓はふたつ。

  • 人間は業によって身を亡ぼす。
  • タミヤはすごい。

 必死に前進しようとするヘボいロボットには、生まれたての小鹿のような愛らしさがある。必死で生きよう(戦おう)とする姿を応援し、おかしなことになって会場中に笑顔の花が咲く。

 それがヘボコンである。

技術力の低い人 限定ロボコン(通称:ヘボコン) 紹介動画

 世間では“すごいもの”や“成功したもの”が称賛される。注目されるロボットはどれも完成度が高く、それには叶わないと思った人は、恥ずかしさからせっかくの作品を隠してしまう。

 それはもったいない。失敗作に見えるロボットには人を楽しませる力がある。ヘボいロボットは、ヘボいこと自体に価値があるのだ。

 そういった思想が共感を呼び、ヘボコンはいまや世界各地で開催されるイベントに成長した。第1回大会の開催告知記事にはこんなメッセージが載っている。

不器用な人、飽きっぽい人、集中力のない人。我々はあなたの力を求めています。
出典:技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)を開催します

種目は攻城兵器を作るゲーム『Besiege』

 今回の種目に採用された『Besiege』は、まさにヘボコンにぴったり。

 『Besiege』は車輪や大砲、火炎放射器などを組み合わせて攻城兵器を作るゲーム。プロペラで飛べば上空から体当たりなんてこともできる。基本的な勝利条件は通常のヘボコンと同じく、相手をステージから押し出したり転倒させたりすればオーケー。

 どんどん兵器を追加できるが、物理演算が採用されているため、きちんと設計しないとまともには動かない。大砲の反動で壊れたり、飛んだらすぐに墜落したり。

 ヘボコンでは勝利に大した意味はない。ヘボいことこそ正義である。すぐにロボットが爆発するゲームの世界でも、ヘボさを存分に発揮してほしい(※)。

※参加者募集のページには「(事前に)やりこみすぎないようにしましょう」と記載されている。

Besiege Trailer

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Steam『Besiege』ページより。
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Steam『Besiege』ページより。
『Besiege』ページ(Steam)

 “ゲーム遊ぶ”と“ゲーム遊ぶ”は、少し感覚が異なると思っている。今回のヘボコンは後者。『Besiege』というゲームを自分たちの遊びに活用している。こういう姿勢はおもしろいと思い、紹介記事を書いた。

 “ヘボいこと自体に価値がある”という考えかたも好きだ。僕はeスポーツ(対戦ゲーム)業界にも少しだけ関わっていて、そこでは強いことがよしとされる。戦って相手を倒すゲームなのだから、当然と言えば当然だ。

 うまくなれば勝てる→勝つと楽しい(気持ちいい)→だから、うまくなりたい。こういうモチベーションを提供するのは対戦ゲームの基本。ただ、うまくなることを強要されると疲れてしまう。勝つことは目的ではなく、ゲームを楽しむための手段だから。

 うまい人でもへたな人でも楽しめるのがゲームだ。“ヘボいから称賛される”という感覚をゲームでの対戦に持ち込んだのは、ある種の発明なんじゃないかと思う。

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すばらしい名言で記事を締める。