2020年7月17日発売予定のプレイステーション4用ソフト『Ghost of Tsushima(ゴースト オブ ツシマ)』。先日YouTubeの“PlayStation”チャンネル(海外向け)内の動画“State of Play”にて、約18分に及ぶ最新プレイムービーが公開された。

 本記事では映像からわかったことや、開発にいたるまでのアイデア、そして開発の進捗状況などについて、本作の開発を手掛けるサッカーパンチ・プロダクションズのクリエイティブ・ディレクターであるネイト・フォックス氏と、アート/クリエイティブ・ディレクターのジェイソン・コーネル氏にお話をうかがった。

 なお、今回のインタビューはオンライン会議ツールで行ったもの。また、電撃オンラインとの共同インタビューとなっている。

ネイト・フォックス氏

『Ghost of Tsushima(ゴースト オブ ツシマ)』クリエイティブ・ディレクター。『inFAMOUS』シリーズのゲームディレクターや、『怪盗 スライ・クーパー』シリーズのゲームデザイナーも務めた。

ジェイソン・コーネル氏

『Ghost of Tsushima(ゴースト オブ ツシマ)』アート/クリエイティブ・ディレクター。ライティング(ゲーム内の照明)、撮影、コンセプトディレクション、音楽などを担当している。

時代劇のようなゲームを作りたかった

――2020年7月17日に発売と発表されていますが、現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあります。開発の進捗状況はいかがでしょうか。

ネイト 私たちは3月中旬からリモートワークへと移行したのですが、やはり最初は慣れる時間が必要でした。ただ、7月17日の発売にはまったく問題のないスケジュールで開発が進行しています。これはいいニュースだと思うのですが、いまではむしろスケジュールに多少の余裕ができていて、その分ゲームをブラッシュアップしている段階です。

――では、日本を舞台に、侍のゲームを作ろうと思った理由、そして元寇をテーマにした理由も教えてください。

ネイト まず私は、昔から時代劇の大ファンです。いつか、まだ侍がいたころの日本を舞台にゲームを作りたいと考えていました。そしてできるならば、オープンワールドで、その世界に生きている感覚をプレイヤーに与えたいと考えていたのです。

 ただ、どういった敵を用意すればいいのかずっと悩んでいました。そして調べていくうちに、元寇、対馬侵攻の歴史を知ったのです。

 対馬はモンゴルの圧倒的な力に制圧されてしまいましたが、そこで“もしそこで侍がひとり生き残っていたら?”というストーリーを思いつきました。この設定ならば、激しい侍の戦いを皆さんに楽しんでいただけるのではないかと考えたのです。

『ゴースト オブ ツシマ』開発者インタビュー。時代劇のような静寂の世界観と、侍らしいアクションをオープンワールドで再現するために_01
『ゴースト オブ ツシマ』開発者インタビュー。時代劇のような静寂の世界観と、侍らしいアクションをオープンワールドで再現するために_02

――ちなみに日本国外では、元寇の知名度はどのようなものなのでしょうか。

ネイト 少なくともアメリカにおいては、ほとんど知られていません。ですが、本作の影響で少しは知名度が上がったのではないかと思います(笑)。ただ、歴史的には重要なことなので、もっと知られてほしいと思っています。

――本作の制作過程で、とくに思い出深い出来事はありますか?

ネイト 本作は日本を舞台にしていますし、こういったゲームを作るには、新しい知識をたくさん仕入れる必要があります。私たちは、SIE JAPAN Studioや、あるいは外部のコンサルタントから新しい知識を得ていました。

 そういった新しい知識を取り入れるという体験は非常にユニークで、いちばんおもしろいところでした。

――新しい知識を入れる中で、日本の“文化”というものを取り入れるのは、とくにたいへんだったのではないでしょうか。

ネイト たしかに難しい部分はありました。たとえば宗教関係ですね。以前から私はお寺や神社の映像を見ていたつもりですが、とくにお寺や神社を意識して見ていませんでした。

 そして、お寺と神社の明確な違いもよくわかっていなかったのです。そこをSIE JAPAN Studioや、外部のコンサルタントから聞いて、正しい方向に導いてもらいました。

※ちなみにお寺は仏教、神社は神道の施設。

『ゴースト オブ ツシマ』開発者インタビュー。時代劇のような静寂の世界観と、侍らしいアクションをオープンワールドで再現するために_03

――では、公開されたプレイムービーから質問をさせてください。バトルシーンで、上下に黒い枠が出てからモンゴル兵3人を瞬時に切り伏せるシーンがありましたよね。あれは具体的には、どのようなシステムなのでしょうか?

ネイト 時代劇のような侍を再現するのに欠かせないのは、一騎討ちのような決闘シーンだと思います。たとえば侍どうしが向かい合って、ジリジリと間合いを図るようなシーンは手に汗握りますよね。そういったシーンをゲームに取り入れたわけです。

 このシステムは、すべての場所で使えるわけではないですが、バトルのあるところでは、いろいろな場面で使用できます。

――操作としては、どのように戦うのでしょうか。

ネイト プレイヤーはまず、敵に対して一騎討ちを申し込むことができます。一騎討ちが始まると、どちらが先に刀を抜くのか、タイミングや間合いを図るシーンになります。プレイヤーがそこでボタンを離すと刀を抜くことになるのですが、適切なタイミングで刀を抜くと、映像のように敵を一撃で斬り伏せることができます。

 ただし、タイミングが早かったり遅すぎたりすると、逆にプレイヤーが大ダメージを受けてしまいます。このシステムを使う場合は、敵の動きをよく見ることが大事です。

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――敵を斬った後の、いわゆる“残心”の構えや、倒した敵への礼も、時代劇を意識したポイントですか?

ネイト その通りです。私たちが本作の戦いで再現したかったのが、侍どうしの戦いです。私が時代劇で個人的に印象深いのは、時代劇の戦いでの“静寂”や“静止”です。斬ったあとの残心でそこを表現しています。

 また、侍の戦いは、相手に敬意をもって挑むものです。斬ったあとに礼をするのも、戦いを単なる刀での斬り合いではなく、より深いものにしていると思い、取り入れている要素です。

――映像では、音楽がいかにも時代劇という感じがして印象的でした。音楽はどのようにして作られたのでしょうか。

ジェイソン 本作のBGMは聞くだけで、鎌倉時代の日本に行ったような気分なると思っています。その雰囲気を作りたいというのは、開発初期から構想にありました。

 そういったBGMを作れる作曲家を探した結果、梅林茂さんという日本の作曲家さんと出会うことができました。梅林さんが作ってくださった楽曲のおかげで、古い日本の雰囲気を出せたと思いますし、情緒のようなものが感じ取れるようになりました。

 ただ、本作は非常に広大なゲームです。ひとりの作曲家だけではすべてのシーンをカバーできないので、ふたり目の作曲家を探しました。ぜひ本作に関わりたいと、イラン・エシュケリさんという作曲家の方が参加してくれました。ちなみに、エシュケリさんは、以前梅林さんとコラボレーションをされたこともあるそうです。

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――日本語ボイスも海外版に収録されているそうですが、日本語ボイスというのは海外プレイヤーからどのような印象を受けるのでしょうか。

ジェイソン 実際に、どれくらいのプレイヤーがこのオプションを使用するのかは発売するまでわかりませんが、日本や侍が好きな方は、きっと日本語音声でプレイしたいだろうと思い、収録を決めました。もちろん、私自身も日本語ボイスでプレイしたいです。

 また、日本が舞台なので、当然日本語で聴いたほうが自然に感じるでしょう。もちろん、遊ぶ言語を英語にするか日本語にするかは、ゲームの冒頭で選択できます。

――日本語ボイスの収録にあたって、日本語ローカライズチームに何か要望などはありましたか?

ネイト 日本のローカライズチームにすべてお任せしました。彼らは本作のキャラクターを十分に理解してくださっているので、すばらしいボイスになったと思っています。

――ちなみに、本作を開発するうえで、日本の現地取材などはされましたか?

ジェイソン 私もそうですし、ネイトも何度か日本へ取材へ行きました。主要メンバーは、最低でも1回は行っています。私は開発初期のころに10日くらい日本へ行きまして、対馬はもちろん、福岡や近畿地方などにも行っています。

 元寇について学ぶのはもちろんですが、それより日本全体の風土や雰囲気をつかみたいと思い取材しました。とくに印象深いのが、小茂田浜、つまり元寇当時は佐須浦と言われていた、モンゴルが最初に対馬へ上陸した場所です。そのとき、蛇が出てきたのですが、ネイトは蛇が苦手だったということを、取材で初めて学びました(笑)。