E3 2019での発表から約10ヶ月を経て、いよいよ2020年4月24日に発売となる(※)『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』。同作は、1995年にスーパーファミコン向けに発売された『聖剣伝説3』のフルリメイク作品だ。
※Nintendo Switch/PS4版は2020年4月24日発売予定。PC(Steam)版は2020年4月25日配信予定
本記事では、フルリメイク版を手掛けた3人のプロデューサーのインタビューをお届け。フルリメイクの際にこだわったこと、ユーザーに楽しんでほしいポイントなどをうかがった。
小山田 将氏(おやまだ まさる)
『聖剣伝説』シリーズプロデューサー。本作では、世界観やストーリー、設定の監修をメインに担当している。
田付 信一氏(たつけ しんいち)
これまでに『ガーディアン・クルス』などを手掛ける。『聖剣伝説』シリーズには初参加。本作のメインプロデューサー。
琢磨 尚文氏(たくま なおふみ)
『ミリオンアーサーアルカナブラッド』などを手掛け、本作の開発には途中から参加。Co.プロデューサーとして、バトル全体を統括している。
体験版の先に待つ楽しみ
――ついに開発が終了したとのことですが、いまのお気持ちをお聞かせください。
小山田徹底的に、やりきりました。皆さんに遊んでもらえるのが楽しみです。
田付妥協せずに最後まで作れたのが良かったと思います。発売が待ち遠しいです。
琢磨発売日の発表が2019年9月と、かなり前の発表でした。その期待に応えるべく、絶対に延期はできないなと思っていたので、ホッとしているというのが正直なところです。
田付開発に時間をかけ、しっかりと細かい部分までブラッシュアップできました。先日、体験版が配信されて、ようやくユーザーさんの声が聞けてうれしいですね。
――具体的には、どのような声が?
小山田「そう、『聖剣伝説3』はこれでいいんだよ」というご意見が多かったので、素直にうれしいですね。
田付オリジナル版のファンはもちろんのこと、初めてプレイした方にも、各キャラクターの個性が受け入れられていてオリジナル版の偉大さを改めて再認識しました。一方で、新規の要素であるアクション、アビリティ、サイドトーク、プロローグ体験なども違和感なかったようなので安心しました。製品版ではよりアクション、アビリティなどが深くなっているので楽しんでもらえるはずです。
琢磨体験版は「カンタンすぎる」という声もありましたが、フルメタルハガー戦までは、あくまでチュートリアルとして設計しています。その後、魔法が使えたりと、段階を経てアクションが増えていきます。本当はクラスチェンジまで遊んでもらいたかったのですが、そこまでを体験版に入れるわけにはいかなくて(苦笑)。
田付道中の敵はサクサク倒して進めるようにしている一方、ボスはオリジナル版と比べても個性が強くギミックも多いので、手に汗握るバトルが待っています。そのぶん、ゲームバランスを整える時間をかなり設けました。
――『聖剣伝説3』はボスの数が多いので、各ボスに個性を出すのは大変だったのでは?
田付ボスのギミックは現場のプランナーたちが考えて、それを琢磨が総合的にディレクションしていきました。プランナーたちがかなり頑張ってくれたおかげで、ボスのパターンの豊富さが、本作の新たな魅力になりましたね。
小山田オリジナル版だと画面に固定されているボスも、今回のフルリメイク版ではバトルエリアを動き回りますので、そのイメージを崩さないようにするのも大変でした。神獣たちは姿形はオリジナル版を踏襲していますが、神獣たちの個性をアクションとしてより強くしていますので、ぜひ挑んで確かめてみてください。
――体験版ではパーティ間の会話の多さにも驚きました。いったい、製品版にはどれくらいのセリフ量が……?
田付会話パターンはとても多いです。同じメンバーでパーティを組んだとしても、誰を主人公、仲間1、仲間2に設定したかで、それぞれ会話内容が変わります。特定の組み合わせでしか聞けない会話のほか、男子、女子のみのパーティ限定会話なんかもあったりしますよ。
小山田もう本当にセリフが膨大で、セリフの矛盾がないかチェックするのがたいへんで(苦笑)。たとえば、本筋のストーリーのセリフで言及していることを、パーティ間の会話ですでにしていたりしたらヘンですから。
アクション“RPG”へのこだわり
――ゲームシステムはガラリと変わり、アクション要素が強くなっています。なぜアクション要素を重視されたのでしょうか?
田付当初は、オリジナル版のように俯瞰視点で遊ぶゲームとして開発していましたが、作ってみると、なんだかゲーム全体がつまらなく見えてしまって。思い切って三人称視点で、アクションを重視したゲームスタイルに変更してみたところ、それがバッチリハマったんです。ただアクション重視と言っても、あくまでアクション“RPG”であることは大事にしています。
琢磨自由なプレイスタイルで遊んでください。アクションが苦手な人は、キャラクターをコツコツ育成して、RPG寄りのプレイをすればいいと思いますし、アクションが得意な人は、レベル上げなどをせずともクリアーできるでしょう。すべての戦闘において、理論上はノーダメージで敵を倒せるように調整しましたし、クラスチェンジをせずに、クラス1の状態のまま進めてもクリアーできます。いわゆる“縛りプレイ”でのやり込みもできるというわけです。
小山田初代『聖剣伝説』のころから、アクションゲームではなく、RPGであるということは重視していましたからね。
田付たとえば『聖剣伝説3』の世界観の中で、高速でガンガンを敵を斬り付けていくようなアクションは『聖剣伝説3』らしくないじゃないですか。当初は“ジャスト回避”のようなシステムを入れる案もあったのですが、それはアクションRPGとしてやりすぎかなと。結果、“敵の攻撃範囲が見えたら、それを回避して攻撃する”という誰でもわかるシンプルなものになりました。
琢磨ちなみに、ジャンプ中にも回避ができるようになったのは、開発の最後のほうで足した要素です。『聖剣伝説3』らしくはないかな、と思いながらも、ジャンプ攻撃をこちらから仕掛けた際に、敵のアクションに何も対応できない状況になってしまうのはおもしろくありませんから。
――クラスチェンジすると、さらにアクションが増えますよね。このあたりの調整にも、苦労されたのではないでしょうか。
琢磨かなり考えました。ちなみに、クラスチェンジをした際の通常攻撃の派生は、どのキャラクターでも共有しています。当初はキャラクター・クラスごとに内容が変わる仕組みも考えていましたが……最終的にクラスは4系統で、キャラクターは6人。24種類の個性を付けるのはカンタンですが、そこにおもしろみがあるのかというと、また違う気がしたんです。
――プレイヤーごとの戦略の差は、アビリティによって際立つのではないかと思います。
田付アビリティ取得の流れは、“オリジナル版にあった育成ポイントの雰囲気を残したいけれど、ただステータスにポイントを振るだけではつまらない”……という考えから生まれました。当初は、ステータスアップ系効果も装備型アビリティとして考えていのですが、そうなると、結局はみんな、ステータス強化のアビリティばかり選んでしまうんです。そこでステータス強化については、習得後はつねに発動する、パッシブスキルのような扱いにしました。
琢磨おかげで、個性的なアビリティをいろいろと試せるシステムになったんですよ。また、アビリティとリンクアビリティの組み合わせにより真価を発揮するものが、多数存在します。ロマンな組み合わせもあるので、ぜひいろいろと試してみてください。
細かな追加シーンもアリ!
――新たにクラス4を登場させた理由は?
田付リメイクといえば、クリアー後に追加要素があるべきだというのが僕の考えです。追加要素といえば、プレイアブルキャラクターが増える……というのがおなじみですが、それはトライアングルストーリーが崩れてしまうなと。だったら新たなクラスを登場させようじゃないかと、小山田と相談しながら新クラスの案を考えました。
小山田クラス3の時点で、クラスの名前がすでに“最上級”のものなので、新しく名前や設定を考えるのは苦労しました。たとえばリースのクラス名は北欧神話がベースになっていて、神の名である“フェンリル”が使われていますが……神の上ってないじゃないですか(苦笑)。そこでクラス4の“フレースヴェルグ”は、北欧神話の、風の生み出す鷲の巨人の名前から取りました。リースが風の王国の王女なので、いいんじゃないかと。
――強くてニューゲームは、やはり何周もプレイをしてほしいという気持ちからでしょうか?
田付その通りです。ちなみに、強くてニューゲームで、過去の周には参加していないキャラクターを選んだ場合、レベルは1からになりますが、リンクアビリティは習得済みのものが使えるので、1周目よりも冒険がグッと楽になります。また、クリアーすると、2周目が進めやすくなる“何か”がもらえます。それをコンプリートするのもやり込み要素のひとつになっています。
――そのほか、追加要素などはありますか?
小山田因縁の敵との掛け合いなども新たに入れています。たとえば、デュランと紅蓮の魔導師の対決の際、オリジナル版では、あっさり戦いが始まってしまうんです。そういったところには、シーンを追加しています。また、オリジナル版で矛盾していた一部のセリフなどを、辻褄が合うように調整しています。具体的に言うと、ジンを助けに風の王国ローラントへ向かうあたりのセリフです。それと、大事なことをひとつ。ブラックラビについては、ご安心ください! どのパーティでも楽しんでいただけるので、自由に決めてくださいね。
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