オンラインカードゲーム『ハースストーン』にて、2020年4月上旬よりスタートする新シーズン“フェニックス年”の情報が、3月18日についに公開となった。

 新情報の公開に先駆け、2020年2月下旬にアメリカのロサンゼルスにて“2020 ハースストーン メディアサミット”が開催。フェニックス年の施策が発表されるとともに、新拡張版のカードでの対戦や新環境のバトルグラウンドを体験できた。さらに、『ハースストーン』の開発チームのキーマン5名にインタビューする機会が得られたので、その模様を余すことなくお届け。

 合同インタビューでは、日本のメディアだけでなく、日本のインフルエンサーのahirunさん、b787さん、蒼汁さんも参加。競技プレイヤーならではの質問も飛び出したので、そちらにも注目してほしい。また、インフルエンサー3名の方々にも、サミットに参加しての感想をいただいているので、そちらの記事も要チェック!

『ハースストーン』開発チーム5名に訊くフェニックス年。新ゲームモードやバトルグラウンドの調整も準備中【2020 ハースストーンサミット】_01
『ハースストーン』開発チーム5名に訊くフェニックス年。新ゲームモードやバトルグラウンドの調整も準備中【2020 ハースストーンサミット】_02

Conor Kou

ゲームデザイナー Conor Kou氏。文中ではコナー。

Chadd Nervig

ゲームデザイナー Chadd Nervig氏。文中ではチャド。

Valerie Chu

シニアナラティブデザイナー Valerie Chu氏。文中ではバレリー。

Liv Breeden

ゲームデザイナー Liv Breeden氏。文中ではリブ。

Ben Lee

ゲームディレクター Ben Lee氏。文中ではベン。

Chadd Nervig氏&Conor Kou氏インタビュー(ゲームデザイナー)

『ハースストーン』開発チーム5名に訊くフェニックス年。新ゲームモードやバトルグラウンドの調整も準備中【2020 ハースストーンサミット】_04
ゲームデザイナー Conor Kou氏(左)。文中ではコナー。

ゲームデザイナー Chadd Nervig氏(右)。文中ではチャド。

──おふたりは今回のプロジェクトでどのような役割を担当されていたのですか?

コナー最初は酒場の喧嘩や炉端の集いなどに関わっていましたが、バトルグラウンドのプロジェクトがスタートしてからは、バトルグラウンドに注力するようになりました。ただ、カードデザインのチームと同じエリアにいることもあり、バトルグラウンドだけでなく、新カードについて話したり、テストプレイなどをすることもあります。

チャド(日本語)みなさんこんにちは! 私は、デザインチームのシニアデザイナーとして働いています。今回のプロジェクトでは、新拡張版“灰に舞う降魔の狩人”のカードや、新クラス“デーモンハンター”のデザインに関わっていました。

──デーモンハンターの導入はいつ決まったのですか?

チャド数年前から新しいクラスを追加しようと考えてはいましたが、実装には至っていませんでした。新拡張版“灰に舞う降魔の狩人”の舞台が“アウトランド”に決まったときに、アウトランドに関わりの深いイリダン、デーモンハンターを追加するベストなタイミングだと判断し、実装に至りました。

──それは、時期的にはいつごろですか?

チャド去年の中ごろですね。“黒い寺院”を軸に新拡張版を作ろう、という話になったのですが黒と緑ばかりでつまらなかったんですね。そこで、舞台をアウトランド全体に広げました。

──デーモンハンターにはどういった特徴がありますか?

チャド今回のプリーストのカード変更もそうですが、クラスのアイデンティティは明確にしたいと考えています。その中で、ガンガン相手に攻撃するクラスがいてもいいのではないか? ということで追加されたのがデーモンハンターです。

──プリーストの変更について、意図を詳しくお聞かせください。

チャド盤面のコントロールをしながら戦うクラス、回復に優れているクラスにしたいという認識があるので、ミニオンが粘り強く盤面が残り続けるような戦いができるようになっています。一方で、直接ヒーローを攻撃したり、大ダメージを与えるというのは、あまりプリーストらしくないので、そういったカードは栄誉の殿堂入りをさせました。

──デーモンハンターの長所はアグレッシブさということですが、短所はどのような部分になりますか?

チャドまず長所をおさらいすると、相手ヒーローを積極的に攻撃できるほか、ミニオンの大量展開、サイズが大きなミニオンの展開など、いろいろなプレイスタイルが楽しめます。

 短所は、アグレッシブに攻撃するがゆえに自分自身がダメージを負いやすいということです。それと、体力が多いミニオンの除去は少し苦手です。

 また、“異端”というデーモンハンターならではの特殊能力は、使いこなせば強力ですが相手に手が読まれやすいという部分もあります。後は、手札が少し枯渇しやすいという点もありますね。また、挑発や凍結に弱い部分はあります。

──“異端”という能力はどのようにして生まれたのですか? また、デーモンハンター専用の能力にした理由は?

チャドデーモンハンターを追加するにあたり、大きな特徴がほしかったので、ヒーローパワーを1マナにしたり、“異端”という能力を持つカードを用意しました。“異端”については、“手札の左端にあるときに発動”、“右端にあるときに発動”、“ヒーローが攻撃した後に発動”など、いろいろなアイデアを試した結果、いまの形に落ち着きました。

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──“異端”の能力を持つカードは何枚くらい用意されているのですか?

チャド正確な数はいますぐには出ませんが、10種類以上はあります。

──ドラゴン年は悪党同盟を中心としたストーリーが1年間続きましたが、フェニックス年も同じように1年を通した物語が展開されるのですか?

チャドドラゴン年は、みなさんにも楽しんでいただけて、開発チームとしてもすごく楽しい1年でした。しかし、毎年同じように年間を通じた物語を展開したい、というわけではないので、フェニックス年の拡張版のストーリーは独立したものにする予定です。

──フェニックス年もソロアドベンチャーは追加されますか?

チャドはい。カードが追加されて少し経ったタイミングで、無料のソロアドベンチャーを追加します。

──ソロアドベンチャーでのカード追加はありますか?

チャド後の拡張版のことはまだ決まっていませんが、“灰に舞う降魔の狩人”での追加はありません。個人的に、今回のソロアドベンチャーは「ヤバい」と思っている仕上がりなので楽しみにしておいてください! 話したいけど話せない!!

──今後、バトルグラウンドをフレンド8人で遊べるようになりますか?

コナー導入は検討していますが、タイミングについては現在お答えできません。

──バトルグラウンドはまだベータ版の表示が出続けていますが、いつ正式版になりますか?

コナーたくさんのコンテンツを用意し、みなさんが楽しんでいただくことを第一に考えているので、まだ正式版にすることは考えていません。

──バトルグラウンドをスタンドアローンのゲームとしてリリースする予定は?

コナーランク戦の合間に息抜きでバトルグラウンドを遊んでいたりと、多くのプレイヤーがさまざまなモードで遊んでいるので、単独のゲームとしてリリースする予定はありません。

──現在、バトルグラウンドはレートが変動する試合しかできませんが、レートの変動を気にせずカジュアルに遊べるマッチを追加する予定はありますか?

コナーすべてのプレイヤーがレート4000からスタートするのは、初心者には少し酷だったかなとも思いますが、それでも楽しんでいただけているようなので、いまのところ追加の予定はないです。ただ、もう少し初心者にも遊びやすい調整はしたいと考えています。

──5枚の中立カードが栄誉の殿堂入りし、クラシックカードが減りましたが、それに代わるカードの追加はありますか?

チャドもしかしたら今後追加するかもしれませんが、いまのところすぐに追加する予定はありません。ゲームの新鮮味を失わないため、拡張版のカードをメインに据えたいという意図もあります。

──“偉大なるゼフリス”で発見するカードの選択肢に、デーモンハンターのカードは登場しますか? その場合、“異端”の効果を考慮して発見カードは選ばれますか?

チャドデーモンハンターのベーシックカードは選択肢として発見できる可能性はあります。ただ、“異端”の効果を持つカードはドラゴン年に追加されたものとして扱われるので、発見できません。デーモンハンターのクラシックセットを作る予定はありますが、それはフェニックス年が終わった後になると思います。

──最後に、おふたりが“灰に舞う降魔の狩人”で気に入っているカードやデッキ、メカニクスなどを教えてください。

チャドたくさんありすぎて迷ってしまいますね(笑)。個人的にお気に入りなのはドルイドやメイジの、新カードを軸にしたデッキです。

コナー僕は新クラスのデーモンハンター、イリダンですね。

チャドもちろん僕もイリダンを言いたかったよ!

コナー“異端”を活かした戦いも楽しいですし、バトルグラウンドにもデーモンハンターのカードが追加できるのでうれしいです。アウトランドの元ネタの『World of Warcraft: The Burning Crusade』は、夢中でプレイしていたので懐かしさがこみあげてきて、開発はすごく楽しかったです。

チャドアウトランドには、魅力的なキャラクターがすごくたくさんいるのに入りきらなかったんです。ですので、呪文の効果や名前を少し変えてミニオンとして登場させたりもしています。『World of Warcraft: The Burning Crusade』をプレイしたことのある方は、元ネタ探しも楽しいと思います。

Liv Breeden氏&Valerie Chu氏インタビュー(ゲームデザイナー&シナリオ)

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シニアナラティブデザイナー Valerie Chu氏(左)。文中はでバレリー。

ゲームデザイナー Liv Breeden氏 (右)。文中ではリブ。

──おふたりは“灰に舞う降魔の狩人”ではどういったことに携わられたのですか?

バレリー“デーモンハンター:序章”と復帰プレイヤー向けのモードのシナリオ、新ヒーローのイリダンのセリフ、フレーバーテキストなどを担当しました。

リブ初期デザインチームに所属しているので、カードのメカニクスやテーマ、大まかなゲームの流れを決めていました。

──カードの細かい能力(体力や攻撃力など)は決めていないということですか?

リブ目安としての数値は出しますが、そちらについては最終デザインチームの担当となっています。

──なるほど。あくまでもコンセプトなどを決めていたと。

リブそうですね。転生ミニオンやイリダンなどの大まかなテーマを決めて、そのテーマの中でどういう能力を付けるか、というところまでは考えています。

──では、改めて“灰に舞う降魔の狩人”のコンセプトをお聞かせください。

リブまず、デーモンハンターが追加されることは決まっていました。デーモンハンターといえばイリダン、そしてイリダンがボスとして控えるアウトランドを『ハースストーン』的にひと捻り加えて描こうということになりました。アウトランドは、ただでさえ退廃した土地なのですが、その雰囲気をより一層強めています。

──そうなんですね! 申し訳ないのですが、私は元ネタ(『World of Warcraft: The Burning Crusade』)をプレイしていないので、改めてアウトランドという土地の特徴をお教えいただけますか。

リブアウトランドは、もともとオークが住んでいた土地ですが、資源を枯渇させてしまい、アゼロス(人間やエルフが住む世界)に侵攻することになりました。アウトランドは、吸いつくされていて、イリダンを筆頭とした著名なキャラクターが多く存在する退廃した世界となっています。

 『World of Warcraft』にあまり詳しくない方は、“デーモンハンター:序章”で、イリダンの生い立ちを体験できます。

バレリー“灰に舞う降魔の狩人”は、街ひとつ、国ひとつ、いや、星ひとつがまるまる舞台になっています!

──アウトランドは惑星なんですか?

バレリーそうです。もともとの名前はDraenorと言います。

リブアウトランドは、きのこだらけの沼地、荒廃した土地、森林など、地域ごとにさまざまな特徴があり、それらを反映させたカードがたくさん登場します。

──今回の拡張版で、アウトランドそのものが体験できるわけですね。

リブそうですね。地域的な特徴はもちろん、生き返ったら手がチェーンソーになっていたりするような転生ミニオンなど、『ハースストーン』的な楽しい要素も盛り込んでいます。

──新カードはダメージを受けてパワーアップするようなカードが多い印象でしたが、そういった効果もアウトランド的な要素なのですか?

リブはい。傷を受けながらもパワーアップするといった二面性があるのも、『World of Warcraft』からインスパイアされた要素のひとつです。

──シナリオ作りで気をつけた部分はどこですか?

バレリーイリダンは『World of Warcraft』でも人気のキャラクターなので、人気の所以、理由をそのままシナリオに落としこむように気を配りました。同時に、『World of Warcraft』を知らないプレイヤーにもきちんとイリダンというキャラクターを理解できるように務めました。

──今回のシナリオをプレイすれば『World of Warcraft』のシナリオもわかると。

バレリーそうですね。イリダンがメイジからデーモンハンターになるまでの道のりを4つのミッションを通して体験していただけます。こういった体験型のシナリオを用意するのは今回が初めてなので、昔ながらの『World of Warcraft』ファンも楽しめると思います。

──ブリザードの本社には、イリダンの巨大なスタチューがありますよね? 私はクラシックカードのイリダンしか知らず、「どうしてこんなに人気なんだろう……」と思っていたので、今回のシナリオは楽しみです。

バレリー彼はクールの象徴ですよ(笑)! 角もあるし、羽も生えているし、「俺がやらなきゃ誰がやる!」といったタイプのキャラクターです。ヒーローパワーや“異端”など、攻撃的で戦略的な要素もありますし、一匹狼な戦いもできるので、とても楽しいヒーローだと思います。

──デーモンハンターというのは、もともと攻撃的なクラスなんですか?

バレリーグルダン(ウォーロック)はいかにも悪の象徴といった風情ですが、デーモンハンターは何かを犠牲にして悪魔の力を得ているんです。だから、悲劇のヒーロー的な要素も入っているので、かなりエモーショナルです。

──“灰に舞う降魔の狩人”でおふたりがとくに気に入っているカードはどれですか?

リブ久しぶりに“突撃”の能力を持ったカードが登場するので、ぜひ注目してほしいです。強力な能力も持っていて、かなり気に入っています。

──たしかに“急襲”のカードはたくさんありますが、“突撃”は久しぶりかもしれませんね。

リブ“突撃”のカードは、意図せず1ターンキルのパーツになってしまったりするので、“急襲”のほうが能力としては持たせやすいですね。

──バレリーさんのお気に入りのカードは?

バレリーデーモンハンターのヒーローパワーが少しのあいだ別のものに強化されるカードがあるのですが、デーモンハンターの強さが引き立ち、とても気に入っています。

『ハースストーン』開発チーム5名に訊くフェニックス年。新ゲームモードやバトルグラウンドの調整も準備中【2020 ハースストーンサミット】_05

──カードのパワーバランスについてですが、どのようなことを意識して新カードの強さを決めているのですか?

リブ私がいる初期デザインチームは、楽しさを重視してカードを考えているので、バランスのことはあまり考えません。バランスは、最終デザインチームのほうに任せています。

──新カードは、いつもその流れで考案されているのですか?

リブ最初期のデザイナーが少数だった時代は、彼らがすべてを考えていましたが、最近はデザインチームが分かれていて、自分たちが得意とする分野で力を発揮しています。

──では、シナリオはどの段階で考えるのですか?

バレリーだいたいのカードのテーマが決まってから、序章の作成に取り掛かりました。ふたつ目の章はヒーローパワーの使いかたについてなのですが、ヒーローパワーが決まるまで作業ができなかったりもしましたね。

 シナリオは、部署の垣根を超えていろいろなスタッフの手を借りながら作り上げていったので、しっかりとしたものになっていると思います。

──シナリオチームからこういったカードを追加してほしいといったオーダーをすることはありますか?

バレリー拡張版のカードはほぼできあがっていたので、こちらからリクエストすることはありませんでしたが、いまの姿になる前のマイエヴのような、序章専用のカードはいくつか作ってもらいました。どうして彼女がイリダンを嫌っているのかというのも明らかになります。

──マイエヴはイリダンが嫌いなんですね。

リブそうなんです。長い歴史があるんですよ(笑)。

──キャラクターどうしのかけあいもたくさん用意されているんですか?

バレリーイリダンは複雑な人間関係を持つキャラクターなので、序章はもちろん、通常の対戦でもたくさん用意しています。マイエヴだけではなく、片思いをしているティランダや兄のマルフュリオンが相手のときなども、特殊なセリフが聞けますよ。

──最後に、“灰に舞う降魔の狩人”で注目してほしいポイントのアピールをお願いします。

リブひとことで言うと、デーモンハンターですね。イリダンはかっこいいし、カードもかっこいいし、プレイスタイルもかっこいいので、ぜひ体験してみてください。

バレリーたくさんのクリーチャーがいるので、アウトランドのさまざまな生物にも注目してみてください。とくに、かわいいマーロックのデーモンハンターのことも忘れないでくださいね!

『ハースストーン』開発チーム5名に訊くフェニックス年。新ゲームモードやバトルグラウンドの調整も準備中【2020 ハースストーンサミット】_06

Ben Lee氏インタビュー(ゲームディレクター)

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ゲームディレクター Ben Lee氏。文中ではベン。

──ベンさんは昨年『ハースストーン』のチームに加わりましたが、どのような取り組みをされているのですか?

ベン新しいものの考えかたや実験を恐れないことを広めていくよう努力しています。ドラゴン年では、ソロアドベンチャーに力を入れたり、バトルグラウンドをスタートしたりと、新しいことにチャレンジしてきました。フェニックス年でも、マンネリ化しないようにたくさんの挑戦をしようと思っています。

──もうすぐドラゴン年が終わりますが、ユーザーからのフィードバックで好評だった点や不評だった点はどこでしたか?

ベンいちばん不評だったのは、一部のワイルドカードをスタンダード環境へ復帰させたことや“ルナのポケット銀河系”が強すぎたことですね。ワイルドカードに関しては、こちらがアクションを起こすまでに時間をかけすぎたことを反省していますし、いろいろなことを学びました。

 好評だったのは、1年を通したストーリーを展開したことや、ソロアドベンチャーを充実させたことです。あとは、とてつもなく人気になったバトルグラウンドですね。フェニックス年でも、引き続きポジティブな意見が多くなるように努力しようと思います。

──新たな課金モデルを導入する予定はありますか?

ベン最近ショップの機能をアップデートし、さまざまなバンドルを販売しているので、さらにバリエーションを増やしたいと考えています。大事なのはお買い得であることですので、フェニックス年でカードパックから重複したカードが出現しなくなる、というのもそういった考えから採用を決めました。

──(b787さんの質問)グランドマスターになれなかったプレイヤーに対しての配慮が少ないと感じているのですが、フェニックス年はどうなりますか?

ベン今年は、マスターズ選手権を増やすので、より多くのプレイヤーがチャンスを得やすくなりますし、試験的な段階ですが『ハースストーン』のクライアントから大会の予選などに結びつける何かができないか、ということを模索しています。

──(蒼汁さんの質問)マスターズ選手権についてですが、最近は新カードが登場してから大会までの準備期間が短くなっているように感じますが、これは意図的にそうなっているのでしょうか?

ベン開発のスケジュールとeスポーツのスケジュールが別々に進行しているため、カードの追加タイミングが増えると、準備期間が短くなる大会がどうしても出てきてしまいます。

 大会は、会場を押さえるためにかなり早い時期から動いているので、スケジュール的な衝突の回避は難しいんですね。選手には負担が大きくなってしまうこともありますが、それらはすべてこちらが意図したものではありません。

 選手側から特定のカードのバン(使用禁止)を訴えることも可能なので、準備期間が極端に短くなる場合はそちらも検討してみてください。

──昨年から大会の形式がガラッと変わりましたが、選手からの反応はいかがでしたか? また、今後大会の形式が大きく変わることはありますか?

ベンまだ結論を出すには早いかなと思っています。昨年は、グランドマスター制度を導入し、選手からもいろいろな意見を聞いて、よりよくしていきたいと思っていますし、今後も意見はしっかりと聞き続けていきます。もし、いまの形があまりよくないという結論になったら、大会形式が変わることもあると思います。

──プレゼンテーションの中に“新しいゲームモード”という文字が見えましたが、これはバトルグラウンドのような大掛かりなものになるのですか?

ベン詳細をお答えできませんが、多人数で遊べるようなモードを考えています。バトルグラウンドよりも、どちらかというと闘技場に近いものになります。さらに、ほかのゲームモードも模索しているので、そちらが発表できる段階になったら、『ハースストーン』に情熱を燃やす方々を集めてフィードバックを得るために、今回のような発表会を設けたいと思っています。

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──プレゼンテーションでは、実績の機能が実装されることも発表されましたが、なぜこのタイミングで導入しようと思ったのですか?

ベン個人的には数年前からあったほうがいいなと思っていた機能でしたし、すべてのプレイヤーが満足するようなシステムでもあるので導入することにしました。ゆくゆくは、初期のコンテンツを購入していた、古くからのファン向けの実績も導入するつもりです。

 実績の報酬は、ヒーロースキンなどのようなコスメティック的なものを予定しています。

──デーモンハンターの実装にあたり、ベンさんはどのような役割を担っていたのですか?

ベンチームには、優秀なゲームデザイナーがたくさんいるので、全力で仕事ができる基盤を作ることが私の仕事だと考えています。これは、デーモンハンター以外の開発でも言えることです。

──プレゼンテーションでは、ランク戦がリニューアルされる(ブロンズ、シルバー、ゴールドなど、ランクの名前が)というアナウンスがありましたが、勝ってポイントを獲得してランクを上げるという点はあまりこれまでと変わっていないようにも感じましたが、こちらについて詳しく聞かせていただけますか?

ベンいままでのランク戦と変えすぎると、わかりにくくなったといってやめてしまうプレイヤーもいるので、いまの形になりました。新たなランク戦では、“スターボーナス制度”というものを導入していて、腕前が上がるほどランクが上がりやすくなり、自分の成長が実感できるようになっています。