【ファミキャリ!会社探訪(77)】完全新作の国産PCオンラインゲーム『ブループロトコル』を発表したバンダイナムコオンラインを訪問!_06

“ファミキャリ!会社探訪”第77回はバンダイナムコオンライン

 ファミ通ドットコム内にある、ゲーム業界専門の求人サイト“ファミキャリ!”。その“ファミキャリ!”が、ゲーム業界の最前線で活躍している、各ゲームメーカーの経営陣やクリエイターの方々からお話をうかがうこのコーナー。今回は、バンダイナムコオンラインを訪問した。

 2009年にバンダイナムコゲームス(現:バンダイナムコエンターテインメント)から分社して設立された同社。各種デバイス向けオンラインゲームの企画・開発・運営を行っており、 “IP(キャラクター)”を利用したコンテンツ展開と、自社で開発~運営まで一貫して行っている点を強みとしている。今回は、バンダイナムコオンラインとバンダイナムコスタジオによる共同プロジェクトとして、2019年6月に発表されたPC向けオンラインゲーム『BLUE PROTOCOL(ブループロトコル)』で運営統括ディレクター兼プロデューサーを務める鈴木貴宏氏に話を聞いた。

鈴木 貴宏(すずき たかひろ)

第2プロダクション
デピュティゼネラルマネージャー
『BLUE PROTOCOL』運営統括ディレクター兼プロデューサー

オンラインゲームに熱中したからこそ見えた魅力と課題

――最初に鈴木さんの経歴から教えてください。ゲーム業界を志したきっかけや、現在に至るまでの経緯について、また、現在の業務内容についても簡単にお答えください。

鈴木どこから説明しようかと思うくらいいろいろとやってきたのですが(笑)、高校を卒業して声優の専門学校に通い、最初は声優の仕事をやっていました。ただ、声優の仕事だけでは生活することは難しく、でも新人ですから急に実施されるオーディションを優先するため、あまりアルバイトを長く続けることができませんでした。そんな中、『ファイナルファンタジーXI』が発売され、いわゆる“オンラインゲーム廃人”となるほどのめり込みました。仕事もありませんでしたので、メンテナンス時以外はずっとログインしている生活をしていましたね。声優として、『信長の野望オンライン』に出させていただいたこともあり、そちらの“廃人”でもありました(笑)。オンラインゲーム中心の生活をしていましたが、長期間プレイしていると、「自分だったらこうするのに」とか、「もったいない」といった意見を持つようになりました。

――ファン視点というより、運営側の視点ですね。

鈴木そうですね。1年半ほどオンラインゲーム廃人生活をしていましたが、オンラインゲームにいろいろな意見を持つようになったことから、オンラインゲーム業界に入って、自分の意見を反映できないものかと考え、当時オープンβテストが始まる直前であった『リネージュ2』のGM(ゲームマスター)に「これだ!」と思い、応募しました。それでNC Japan社に入社し、オンラインゲームのGMを担当し、カスタマーサービスやQAなどの運営業務について学び、その後、『セカンドライフ』に代表される“メタバース”に興味を持ち、ダレット社に入社し、『ダレットワールド』というサービスの運営も担当しました。ここでは、サービス運用に必要なコスト感や予実管理、データ分析など、オンラインビジネスを行う上で必要となる知識を学びました。

――基本的にはオンラインゲーム業界に関する仕事をやってきたわけですね。

鈴木その後、当時月額制で“次世代オンラインゲーム”と言われていた『TERA』の運営をやりたいと、NHN Japan社(当時)に入社しました。『TERA』は美麗なビジュアル、ノンターゲット戦闘など革新的な魅力が詰まったタイトルですが、その分、当時はさまざまな課題を抱えており、課題の解決にそれまでの経験が活用できたと思っています。また、運営プロデューサー業やPCタイトルの統括部門をおまかせいただいたことで、他社様との折衝や、全体を俯瞰してみる能力、数字を作る能力など、運営管理に必要となる能力は、ここでさまざまな経験を積ませていただいたことが、いまも力になっていると実感しています。

 当初、「TERA」の運営プロデューサーのお話をいただいた際、「私にはプロデューサーとしての能力はない」と辞退したのですが、「役職が人を作るからやってみなさい」と後押していただいた上司には本当に感謝しています。振り返ると、正にその立場に立たなければ分からなかったことや、見えなかったものがありましたし、だからこそ学べたということが多数ありました。

 その後も経歴的にはいろいろとありますが、さすがに長くなりますので割愛します(笑)。NHN Japan社を退社した後にも、かつての同僚たちと定期的に会っているのですが、そんな中、「バンダイナムコオンラインはすごいことを準備している」と聞き、後日オフィスへ訪問して見せてもらったタイトルが『BLUE PROTOCOL』でした。このタイトルをやらなければ絶対に後悔すると思い、バンダイナムコオンラインへ入社しました。現在は『BLUE PROTOCOL』の運営ディレクターとプロデューサーを兼務しており、プロジェクト全体の収支管理や、マネタイズ、イベント、バックエンドツールなど広く運営に必要な部分を担当しています。

――それはいつごろのことですか?

鈴木昨年の4月ごろです。ですから、入社してから約1年半になります。

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大きな魅力を感じた『BLUE PROTOCOL』

――そんな中、先日『BLUE PROTOCOL』が発表されました。実際に見たときの印象は?

鈴木初めてプレイ画面を見せていただいた際は、確か「頭おかしい」と言ったと思います。それほど衝撃的だったということですが(笑)。

 スマートフォンゲームが全盛のいま、大型PCオンラインタイトルは、海外でも新作がほとんど開発されていない状態です。そんな中、このクオリティで国産PCオンラインゲーム、しかも新規IPのRPGを開発しているなんて異常事態だと思うのがふつうかなと。

――バンダイナムコオンラインへの転職を決断させたいちばんの魅力は何ですか?

鈴木『BLUE PROTOCOL』のグラフィックと可能性に強い魅力を感じたことも大きいですが、それよりも、“チャレンジ精神”に心を惹かれました。オンラインゲーム開発は開発難度が高く、開発期間も長期化しますので、会社としては大きな投資になるはずです。投資回収できずに終了するタイトルも少なくありません。そんな中で、国産でこんなチャレンジをしている会社を純粋にすごいと思いました。

――『BLUE PROTOCOL』の魅力は?

鈴木『BLUE PROTOCOL』は、劇場版アニメの世界に入り込んだような体験を目指して開発しているタイトルです。グラフィックは、先日実施したクローズドアルファテストでももっとも評価していただいた点でもありますが、これも単純にアニメの絵がゲームに入っているだけでは、じつはチープに見えてしまうことがありますので、そう見せないように細部までさまざまな工夫と調整がされています。また、タイトルのバトルコンセプトは“プレイヤーパーティvsエネミーパーティ”です。これは、敵エネミーもまるでパーティを組んでいるかのようにプレイヤーとバトルを行うことを目指しています。通常、プレイヤーどうしのPvPであれば、HPの低いキャラクターを優先して狙ったり、いわゆるタンククラスが味方を守るように動きますが、これをエネミーパーティも行ってきますので、毎回変化する状況に対応しながら攻略するアクションを実現したいと思っています。クローズドアルファテスト以降も開発を進めていますが、荒削りではありますが形になってきています。

――ちなみに、『BLUE PROTOCOL』発表に合わせ、“PROJECT SKY BLUE”という共同プロジェクトチームの存在が明らかになりました。どういった意図で作られ、また将来的にどういった目標を設定していますか?

鈴木PROJECT SKY BLUEは、バンダイナムコオンラインの中核をなすIPを創出したいという意図から作られたプロジェクトチームです。その“中核をなす”タイトルが、今回発表させていただいた『BLUE PROTOCOL』です。このタイトルを軸とした、いわゆるメディアミックスのような展開をしていきたいと考えています。これは個人的な目標ではありますが、“ライブ”はやりたいと思っています。音楽ライブかもしれませんし、もっと複合的なものになるかもしれません。

――現在の完成度はどのくらいですか?

鈴木構想から数えるとプロジェクト自体は5年経過していますが、実際のサービスが始まるまでには、まだ時間がかかると思います。我々としては中途半端なものは出したくありませんし、今後もクローズドアルファテストでいただいたご意見を開発に活かしていきたいと考えています。

 クローズドアルファテストを行う前にも、バンダイナムコオンラインとバンダイナムコスタジオでテストプレイをかなり実施しています。ここで出た意見をもとに開発の方向性を決めていましたが、この内容と実際にユーザー様から出てくるご意見・ご要望が、同じ方向性であるのかということはとても重要なポイントでした。ここがマッチしていなければ、市場ニーズとの乖離があることになりますが、結果はほぼマッチしていました。我々が目指している開発の方向性が間違いではないと確信できましたので、自信を持って今後も開発を進めていきたいと思っています。

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一大グループ企業ながらも溢れる“ベンチャー気質”

――会社の特徴や強みはどういった部分ですか?

鈴木割愛した経歴も含め、私はオンラインゲームサービスを行っている会社を多く経験しているほうだと思います。転職回数が多いとも言います(笑)。バンダイナムコオンラインは、“バンダイナムコ”という大きなグループの中にいますが、大きな会社やグループでは、どうしても意思決定スピードが遅くなったり、挑戦がしにくくなってしまう環境になりがちです。バイダイナムコオンラインは大きなグループ内にありながら、ベンチャー企業に近い気質があると感じています。上司とも気軽にコミュニケーションできますし、意思決定までのスピードも速く、先のことを見据えたチャレンジや、それを可能にするための既存タイトルへの注力もしっかり続けています。バンダイナムコグループが”挑戦”を戦略としていることも大きいと思いますが、実際に強みであると感じる部分ですね。

――社内交流はどうですか?

鈴木活発だと思います。任意での参加ですが、“英語同好会”や“中国語同好会”など、自分のためになるようなものもあれば、ボードゲームやフットサル、おもしろいところでは、たき火を囲む“たき火同好会”とか(笑)。私が感心したのは、“ライトニングトーク会”ですね。プレゼンは人前でやらなければなかなか上手くなりませんが、役割によって機会が少ない方もいます。そこで、自分の好きなことや伝えたいことをテーマに、任意で集まった人の前でプレゼンできるという会が自発的に開催されていて、それがなかなかおもしろいのです。これが自発的な活動で行われているのは本当に感心しました。

 それから、とても社員を大切にしている会社だなと思います。将来やキャリアのことを真剣に考えて検討してくれているので、社員にとって幸せだし、働きやすい環境だと思います。みんな気づいているのかな?(笑)

――求人するにあたり、どのような人といっしょに仕事をしたいとお考えですか? どのようなタイプの人が御社にマッチしていると思いますか?

鈴木いっしょに仕事をしたいと思う方は、“自律”されていて、他人ごとにしない方です。仕事をするときに、なぜその仕事をするのかをしっかりと理解し、自分のスキルや経験、知識を活かして実践し、実践した仕事を共有したり、ほかの人の仕事に共感できる方ですね。

 ゲームの開発や運営は、関わる人数が増えれば増えるほど、やはり全体が見えにくくなっていきます。そのため、自身の業務範囲以外の仕事を“自分の領域ではない”と言いがちになります。これは業務の役割から見ると当然のことではあるのですが、自分の業務外であっても話を聞いて、困っているのであればフォローしてあげてほしいと思っています。そのフォローが全体で見た時にはタイトルをよいものにし、おもしろくすることに繋がると思っています。

――現在、転職を考えているクリエイターにアドバイスをお願いします。

鈴木バンダイナムコオンラインは、変化の速いオンラインゲーム業界のなかで、チャレンジができる魅力的な会社だと思います。いまも先を見た新しいことに取り組んでいますので、転職を考えている方はぜひいっしょにチャレンジしましょう!

 未経験の方でゲーム業界に転職を考えている方は、評判のいいゲームも悪いゲームも両方プレイし、“なぜおもしろい(or つまらない)”と思うのか、また、では何故このゲームの開発者はそれに対応を行わなかったのか、ということを言語化してまとめることをやってみるといいと思います。思考と言語化をくり返しておくと、ロジカルな考えかたの癖がついていきます。現実では「やりたい」だけではできないことも多くあります。この事態に直面した時、この癖がきっと役に立つと思います。

――最後に『BLUE PROTOCOL』のPRをお願いします。

鈴木『BLUE PROTOCOL』は、日本のユーザー様にとっては久々の国産の大型PCオンラインタイトルになります。クローズドアルファテストを通じて、多くの期待の声をいただきました。その声に応えられるように、皆さんが楽しく、長く遊んでいただけるように、これからもしっかりとご意見を聞きながら、開発を進めてまいります。しばらくお時間をいただきますが、お待たせしたぶん、いいゲームを提供させていただきたいと思いますので、引き続き注目していただけるとうれしいです。開発、がんばります!

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バンダイナムコオンラインってどんな会社?

 2009年にバンダイナムコゲームス(現:バンダイナムコエンターテインメント)から分社して設立された同社。各種デバイス向けオンラインゲームの企画・開発・運営を行っており、 IP(キャラクター)を利用したコンテンツ展開と、自社で開発~運営まで一貫して行っている点を強みとしている。バンダイナムコグループという安定したバックグラウンドがありながらも、ベンチャー色があり、代表作である『機動戦士ガンダムオンライン』などの開発・運営に加え、『アイドリッシュセブン』など、会社として次の中長期を支える看板タイトルやオリジナルIPの立ち上げに注力している。2019年6月にPC向けオンラインゲーム『BLUE PROTOCOL』が開発中であることを発表した。

株式会社バンダイナムコオンライン

●代表取締役社長:関口 昌隆
●設立年月日:2009年10月1日
●従業員数:173名(2019年9月現在)
●事業内容:インターネットを利用したオンラインゲームその他ソフトウェア、サービスの企画・開発・運営

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緑溢れるレイアウトが印象的なリラックススペース。
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『BLUE PROTOCOL』(PC)。劇場版アニメに入り込んだような、圧倒的なグラフィックで紡がれた世界観が魅力。