2019年9月12日(木)から15日(日)まで(12、13日はビジネスデイ)、千葉県・幕張メッセにて開催された“東京ゲームショウ2019”。

 9月12日、DMM GAMESブースではParadox InteractiveのゴシックパンクRPG『Vampire: The Masquerade - Bloodlines 2』(以降、Bloodlines 2)のプレイステーション4日本語版が、グローバル版と同時の2020年春に発売されることが発表された。

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 『Bloodlines 2』の原点は『ワールド・オブ・ダークネス』シリーズ。闇の世界の住人となってロールプレイを楽しむテーブルトークRPGである。ダークな世界観を秀逸なストーリーラインで再現して好評を博した前作『Bloodlines』から15年ぶりの続編。それが『Bloodlines 2』だ。

 15年の時を経てリリースに至った理由や、それに値する本作ならではの魅力、そしてDMM GAMESとPS4日本語版のリリースでタッグを組んだ経緯。気になる点について、Paradox Interactiveでシニアプロデューサーを務めるクリスチャン・シュリューター氏にお話を伺った。

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今回の発表のために来日したParadox Interactiveのクリスチャン・シュリューター(Christian Schlütter)氏。(文中ではクリスチャン)

クリスチャン・シュリューター

Paradox Interactive シニアプロデューサー。文中ではクリスチャン。

15年の時を経て続編を発売。DMM GAMESと組んだ理由とは?

――2004年発売の前作以来、15年ぶりに『Bloodlines 2』の開発に踏み切るまでの経緯を教えていただけますか。

クリスチャンParadox Interactiveは、2015年にWhite Wolf Publishingを傘下に置きました。White Wolf Publishingは『Bloodlines』の世界観を含む『ワールド・オブ・ダークネス』のシリーズ権限を持つ会社です。

 『Bloodlines』というコンテンツが“財宝”であることは、当時から十分に承知していました。しかし、その時点では、開発のスタートについては慎重でした。『Bloodlines』ファンは続編を10年以上待ち続けていることもあり、開発するなら彼らの期待に応えられるタイトルにしなければならない、と考えたのです。

――その慎重な姿勢から開発に踏み切った、直接の機会とは?

クリスチャン2016年にシアトルにあるHardsuit Labsからオファーを受けたんです。熱意あふれる企画メンバーの中には『Bloodlines』のすばらしい脚本の作者であるブライアン・ミッソーダ氏がいたこともあって、提案を受けました。以降、Paradox InteractiveとHardsuit Labsでの協力体制を敷いて、開発を続けてきました。

 そして2020年、ついに『Bloodlines 2』をリリースできることを非常にうれしく思っています。グローバル版と同じリリース日に、日本ローカライズ版をパートナーのDMM GAMESとともに同時発売できることもまた、うれしく思います。

――Paradox Interactiveとはどのような会社なのか、そして御社ならではの強みを改めて紹介していただけますか。

クリスチャンParadox Interactiveは、20年ほどストラテジーやマネジメント、RPGといったジャンルのゲームを開発してきた会社です。現在は6ヵ国に開発スタジオを持っており、これまでに『Crusader Kings』、『Hearts of Iron』、『Stellaris』などのタイトルをリリースしてきました。

 Paradox Interactiveが持つ特別な点としては、ユーザーの皆さんと非常に距離が近いことが挙げられます。数多くのファンが運営するユーザーコミュニティーも活発で、MODの製作技術は驚くほどに優秀です。

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多彩なMODやそれらを活用したプレイ動画などを目にしたことがある人も多いだろう。

クリスチャン10月にはベルリンでParadoxのファンイベント“PDXCON2019”が開催されます。今年も3000人くらいのファンの皆さんが世界中から駆けつけてくれると予想されます。

――日本のファンも要注目のイベントですね! 続いて、日本でDMM GAMESとタッグを組むことになった経緯を教えていただけますか。

クリスチャンとある会社の方に、我々のことをDMM GAMESに紹介してもらって、『Bloodlines 2』のプレゼンをしたのがきっかけです。たいへん興味を示していただき、2019年3月のGame Developers Conferenceの前後あたりからタイミングがあるたびにお会いして話を重ね、リリースに至りました。

――DMM GAMESにプレゼンを持って行った、その理由とは? どのようなメリットがあると考えたのでしょうか。

クリスチャン日本でのリリースでDMM GAMESにお話をするのは、いまや自然な選択だと思っています。海外ゲームのリリースに実績があり、非常に豊富なタイトルをプラットフォームに抱えている会社ですので。

――DMM GAMESを通じて本作を遊ぶプレイヤーにとっても、このタッグで生まれるメリットはありそうでしょうか。

クリスチャンDMM GAMESが提供するゲームには、近年『The Elder Scrolls Online』や『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』などを通じて、コアなゲームファンも増えてきていますよね。

――たしかに、以前は美少女ゲームのファンが多かったと思いますが、いまは海外ゲームにどっぷりな層も増えていると感じます。

クリスチャンそういった方々にとって、『Bloodlines 2』は心に響くものがあるタイトルだと思います。重厚なゲームが好きな層に、プラットフォームを通じて自社タイトルの情報をしっかりと伝えられることは、メーカーにとってもユーザーコミュニティーの活性化においても、大きなメリットになると思います。

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DMM GAMESの海外タイトル紹介ステージの一幕。いまやDMM GAMESで配信されている海外ゲームタイトルは400を超える。PC版のみならずコンシューマー版やスマートフォン版を含め、さらに増えていく。

思い描く通りのヴァンパイアになれる! 『Bloodlines 2』の概要と魅力

――つぎはゲームの内容について教えてください。本作がどのようなゲームなのでしょうか?

クリスチャンシングルプレイヤー用のRPGであり、プレイヤー自身がヴァンパイアとなる作品です。ゲームの舞台となるのは、闇の世界(『ワールド・オブ・ダークネス』)の超人的な神秘が息づくという設定のシアトルです。

 プレイヤーは、まずは“Thinblood”という、ヴァンパイアとしての血筋が薄いキャラクターとしてゲームをスタートします。ゲームを進めていく中で、5つあるクラン(血脈)と5つのファクション(派閥)に参加できるようになります。

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『ワールド・オブ・ダークネス』の世界は、我々の地球とほぼ変わらない。だが、その闇にはヴァンパイア(吸血鬼)やワーウルフ(人狼)、メイジ(神秘家)やレイス(亡霊)など、超常の存在が人知れず潜んでいる。
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プレイヤーはすさまじい能力を持った闇の住民。人間を超越した存在としての優越感を味わえる。正体を人間社会に知られてはならないというジレンマも抱えており、それもまた良質なスパイスとなる。

――原作にあたるテーブルトークRPG版では、ヴァンパイアとなった自分に酔い、ストーリーテリング(自分たちの選択や行動で物語を作り上げていくこと)を重ねるのが魅力でした。この要素は、『Bloodlines 2』でも再現されているのでしょうか?

クリスチャンもちろんです! 『Bloodlines 2』はアクションRPGとして戦闘要素にも凝っていますが、いちばん重要なのは、プレイヤー自身に“自分が思い描くヴァンパイア”としての体験を、自分の好きな方法で楽しんでもらうことだと考えています。

 ゲームの中では、NPCに対して、相手を魅了したりといったヴァンパイア特有の能力を使いつつ、交渉を進めることも可能です。その場合、戦闘は一切不要。どのようにゲームを進めていくかは、ユーザー次第です。

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前作『Bloodlines』でも、選択で多彩に変化するNPCの反応やストーリーラインが好評だった。それらもまた、プレイヤーに自身がヴァンパイアという特別な存在であると、世界観に没入させてくれる一助になっていた。

――5つのクランと5つのファクションが登場予定とのお話でしたが、原作に存在する13のクランは登場するのでしょうか。

クリスチャンローンチまでに所属可能としてアナウンスしているのは、“ブルハー”、“ヴェントルー”、“トレメール”、“トレアドール”、“マルカヴィアン”という5つのクランと、前作『Bloodlines』にも登場したファクションです。

 残り8つのクランに所属可能になるかは……まだ言えません! ローンチ後には、新たな所属可能クランが無料で登場予定とだけはお伝えしておきます。

――本作だけの新たなクランなどは、登場するのでしょうか。

クリスチャンクランについては、原作のテーブルトークRPGそのままの13クランを使用していきます。ファクションは、すでに発表されている“カマリラ”のように、想像力を働かせてさらに新たなものを作り出していくことは可能かと思います。

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“カマリラ”は新時代の技術やビジネスに関わっていくファクションだ。ヴァンパイアが人間の最先端技術と社会経済に、正体を隠してどのように影響を及ぼすというのか……?

――本作ではクランに所属することで特有の能力が使用できるとのことですが、具体的にはプレイヤーはどのような能力を使用できるのでしょうか。

クリスチャンまずプレイヤーは“Thinblood”という低級のヴァンパイアとして、“Disciplines”と呼ばれる能力のうちの3つから、ひとつを獲得できます。

 その3つとは、飛行してコウモリを召喚する能力“Chiropteran”、物体を手を触れずに動かして敵の武器なども引っ張ってこれる能力“Mentalism”、自身を霧と化して排気口内を移動したり、相手を窒息させたりできる能力“Nebulation”です。

――まさにヴァンパイアの伝承にある、そのものの能力ばかりですね。

クリスチャンさらにクランの血族に加わることで、追加で新しい“Disciplines”が手に入り、最初に選択できた3つに加え、2つの新たな選択肢が加わります。

 例として、“ブルハー”なら敵をパワフルに殴り倒し、圧倒的なスピード感で走り回ることができます。“トレメール”なら敵の血を操り、体内から爆発させることすら可能です。

 そうした暴力にばかり走る必要もなく、“ヴェントルー”の能力があれば敵を交渉であしらうなど、そういった能力もたくさん用意されています。

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クランの選択は能力の決定だけでなく、プレイヤー自身の生きざまや行動方針にも大きく影響していく。自分がヴァンパイアとして生きるならどう生きるか、ぜひ考えてみてほしい。

ひとりのヴァンパイアとして描く、あなた次第のストーリー

――クランを裏切って別のクランに移ることは可能なのでしょうか。

クリスチャンクランは自分の血筋そのものです。裏切ったり離れたりといったことはできません。しかしファクションは裏切ることができます。裏切って新たなファクションに入ることでも、新たな選択肢が大量に生まれ、ストーリーにも大きな影響を与えます。

――別のファクションから干渉を受けたり、といったこともありますか?

クリスチャンあります! ほかのファクションの人物たちは、プレイヤーがどこかのファクションに所属していたり、所属した経験があるといった背景も知ったうえで関わってきます。「そのファクションでは働かないで」と、注意喚起されることもあるわけです。

――すると、ヘッドハンティングされたりも……?

クリスチャンプレイヤー自身は特殊な存在です。ストーリーの最初に吸血鬼ではないかと裁判所で尋問されていたときに、裁判所は大火災に見舞われ、その中で唯一の生存者となります。この火事には大きな陰謀が隠されており、その黒幕を突き止めることが大きな目的となるのです。

 そして、すべてのファクションもまた、この火事の黒幕を知りたがっています。彼らは唯一の生き残りであるプレイヤーに興味を持ち、接触したり、エサとして利用しようとしたりします。それらにどう対応し、どう行動していくか。すべてプレイヤー次第です。

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裁判所の火事の唯一の生存者だが、ゲーム開始時点ではまだ真相については何も知らないプレイヤー。この状況であなたはどんな行動を選ぶのか、誰を頼るのか。あるいはこの立場をどう利用するのか。ロールプレイの幅は非常に広い!

――どのファクションに協力したか、どのような道筋を辿ったかによって、エンディングも違っていくのでしょうか。

クリスチャンいくつのエンディングが用意されているかはもちろんまだお話しできませんが、ユーザーが選択したクラン、ファクション、選択と行動がすべて、ストーリーの展開とエンディングに影響を与えていくことになります。

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――最後に、本作で『Bloodlines』に興味を持ち始めて触れる読者や、15年待ち続けたコアなファンへ、メッセージをいただけますか?

クリスチャンまず『Bloodlines』を初めて知る皆さん、『ワールド・オブ・ダークネス』の世界へようこそ! このゲームでは、自分が思っているヴァンパイア像をそのまま表現し、その体験を楽しんでいただけます。

 15年待ち続けてくれていたユーザーがいたことは、我々も十分に知っていました。私たちも開発には15年待ったぶんだけ情熱的ですので、最高のクオリティーでお届けすると保証いたします!