Steamを運営するValveは本日(2019年8月21日)、中国市場の提携企業Perfect World(完美世界)と共同でプレス向けに“Steam China”を初披露した。
 会場は、Valveの怪物eスポーツタイトル『Dota 2』の世界最強を決める国際大会“The International 9”が大きな盛り上がりを見せている中国・上海だ。

中国専用“Steam China”のローンチタイトルを初披露。セガゲームスやコーエーテクモなども参入_02
プレス向けイベント“Steam China Update”はPerfect World(完美世界) CEO ロバート・H・シャオ博士のスピーチで開幕した。

 だが、Steamの“ローンチタイトル初披露”……?『Dota 2』はSteamでリリースされているタイトルであり、先述の“The International”にも中国チームが参戦し、地元ファンは盛り上がりを見せている。また、日本でも人気の『PUBG』や『Counter-Strike: Global Offensive』といったマルチプレイヤー対戦タイトルをはじめ、Steamで販売されているタイトルには中国プレイヤーが多い。となると“初披露”という言葉と矛盾しそうだが……。ここがまさに中国という市場の特異性が出ているポイントだ。そこで本記事では(速報ということもあり簡易説明になるのを承知の上で)補足を加えたい。

Steam China=中国当局が認めるゲームが並ぶSteam

 じつは現在までも中国のゲーマーはSteamを使用することができている。もちろん“グレートファイアウォール”でコミュニティ機能が使えなくなるなど制限はあったが、それでも家庭用ゲーム機向けタイトルよりもかなり“規制のゆるい状態”でゲームを遊べる、いわば“グレー”なプラットフォームであったのだ。昨年中国の巨大IT企業テンセントのゲーム配信プラットフォームWeGameで『モンスターハンター:ワールド』が当局から販売停止処分を受けているが、その同作がSteamでは購入可能であるのが何よりの証拠。

 そんな昨年、Valve・Perfect World(完美世界)・上海市政府の三者は“Steam China”をリリースする予定であると発表した。要約すれば「Valveと、同社の中国における提携企業にして最大手ゲーム会社と、中国でもっともeスポーツに力を入れている市(ゲームにもっとも理解のある市ともいえる)の行政が組んで“政府の管理当局による審査を経たゲーム”が並ぶ中国専用Steamを作る」と発表したのだ。それがついにお披露目になった、というのが今回のおおまかな流れである。

 “Steam China”発表のニュースが出た直後は「これが出たら無印Steamにアクセスできなくなるのではないか?」という中国のゲーマーの不安や懸念が出ていたようだが、一方でSteam Chinaの座組みは“中国におけるゲームの多様性を現実的に追求する”チームとしてこれ以上望むべくもない顔ぶれであるのは間違いない。

 目下注目が集まるのは2点。中国ゲーマーが危惧していた“グレーで何でもありな“無印Steam”の今後”、そして“日本のゲーム開発者にとってSteam Chinaはどのようなプラットフォームとなるのか?」だろう。

 後者については……展望は明るそうだ。というのも、すでにローンチタイトルにはBaka、コーエーテクモゲームス、サイバーコネクトツー、スパイク・チュンソフト、セガゲームス、デジカ、(五十音順)といった日本企業のブースが並んでいるからである。

 とはいえイベントは開幕したばかり。会場ではSteam Chinaローンチタイトルのハンズオンや開発者へのインタビューなどが可能だとのことなので、これらについては詳細な続報で可能な限りカバーしていく予定だ。

 まだはっきりしたことは一切判明していないが、もしかすると今日上海で踏み出された一歩は、中国のゲーム環境を変えるものなのかもしれない。

中国専用“Steam China”のローンチタイトルを初披露。セガゲームスやコーエーテクモなども参入_01