2019年6月、アメリカ・サンタモニカにて世界中のメディアを招いて行われた『The Outer Worlds(ザ・アウターワールド)』のハンズオンイベント。ここでは、同イベントに合わせて実施した開発元であるObsidian Entertainmentのシニアプロデューサー、マット・シング氏へのインタビューをお届けしよう。

『ザ・アウターワールド』のシニアプロデューサーに聞く。「いままでになかったような世界観のゲームを作ってみたかった」_01

マット・シング氏

『The Outer Worlds』のシニアプロデューサー。『Fallout: New Vegas』や『South Park: The Stick of Truth』、『Tyranny』などを担当。

キャラクターの成長に大きな影響をおよぼす“Flaw System”

――非常に壮大なスケールのゲームですが、コンセプトや発想はどこから得たのでしょうか?

マットThe Outer Worlds』は、ティム(ティム・ケイン氏)とレオナルド(レオナルド・ボヤルスキー氏)のふたりが共同でゲームディレクターを務めています。彼らはこれまで多くのタイトルにいっしょにかかわってきて、『Fallout』シリーズや『Arcanum: Of Steamworks and Magick Obscura』などの人気作を作ってきました。そんなふたりが、「いままでになかったような世界観のゲームを作ってみたい」との思いのもと、「企業が宇宙を植民地化すると、どのような世界が待っているのか?」、「この世はどのように作られていくだろうか?」、「ほかの惑星への影響はどのようになるのだろうか?」といったアイデアを膨らませていったのが『The Outer Worlds』となります。

――企業が宇宙を植民地化するというアイデアはとても興味深いですね。本作ならではの注目してほしいポイントはどこになりますか?

マットObsidian Entertainmentの作るゲームには、多くの“プレイヤーの選択”が盛り込まれています。自分の意思で選択肢を選び、より自由にストーリーを進めていけるんです。プレイヤーがみずからストーリーを作っていく“プレイヤードリブン”を意識して、プレイヤーが選んだ行動によってストーリーが形を変えていくのが特徴です。なかでも注目していただきいのが、“Flaw System(フローシステム)”です。

――“Flaw System”とは、どのようなシステムなのですか?

マットキャラクターの成長を担うシステムなのですが、“Flaw System”は、プレイヤーのゲーム内での行動をすべて管理しているんです。たとえばですが、もしゲーム中でプレイヤーキャラクターが頭をいつも叩かれていたりすると、ときに意識障害が発生したりします。意識障害を受けることで、ある種の追加ポイントが得られ、そのぶんキャラクターのほかのパラメータにポイントを割り当てたりすることができるんです。また、障害を受けたことで、会話がより愉快なものになったりもします。ほかのキャラクターが、主人公に対して、「ねえ、ちょっと聞いているの?」と言ってきたり、コンパニオンに「キャプテン、ボケちゃったんじゃない?」などと言われたりすることもありますよ(笑)。

――主人公の属性によって、相手のリアクションが変わるということですね?

マットこれは、キャラクターの成長が、それまで取ってきた行動によって変化する例の一部です。『The Outer Worlds』では、ロールプレイ要素が満載ですが、システムによってキャラクターの成長が補佐されるといった部分もあります。ちなみに、“Flaw System”はオプションで設定可能で、まったく取り入れないことも可能です。さらにゲームの難度を上げると、受け取る“Flaw System”のスケールも増えたりします。ノーマルモードでは3つまで取れますが、難度を上げると4つになります。最難度のスーパーノバモードになると、5つまで増えます。これによって、育てるキャラクターの個性もより深くなっていくということです。また、“スーパーノバモード”では、食べる、飲む、眠るといった要素も成長に関わってくるので、よりおもしろい育成要素となりますよ。

――それはすごいですね。『The Outer Worlds』をより深く楽しもうと思ったら、“スーパーノバモード”でプレイするのがよさげですね。まさに“プレイヤードリブン”なタイトルですね。あと、会話によってもストーリーが変わると聞いたのですが、どんな感じで変わるのでしょうか。

マットあなた(プレイヤー)がほかのキャラクターとどう関わるかや、あなたの取る行動によってキャラクターの成長が決まります。

――NPCと丹念に会話をしていれば、いろいろな情報が仕入れられて、経験値がもらえたりするのでしょうか? 試遊では会話していたら経験値がもらえたような……。

マット会話中に、特別なスキル(ダイアログやパースエードなど)を使うと、経験値を得ることがありますね。ただし、会話そのものから経験値がもらえるということはありません。会話によっていろいろなクエストを得られるので、それらのクエストをこなしていくことで、経験値も積んでいけます。

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――『The Outer Worlds』では、野生のモンスターが印象的ですね。

マット本作はファンタジーSFではなくて、どちらかというと、“宇宙にある、まだ野生の状態が残る遥か遠くの星を訪れた”という設定です。この星は企業が資源採集や開拓をしており、今回プレイヤーが舞い降りた星の名前は、ハルシオンコロニー圏の“テラ2”です。少しだけ地球に環境が似ている星ですね。また、後半でプレイしていただいた“モナーキ”という星は、月に似ています。そこでは、もともといた生息種を絶滅させて、遺伝子を人工的に操作して、新しい生物を育てるという計画が行われていました。でも、その計画は失敗して、それらの生物は凶暴化してしまい、手に負えなくなってしまったんです。そのため、企業はこの計画を断念し、この星からほぼ立ち退いてしまいました。いまは、ひとつの企業のコントロール下にあります。

――それであんなにモンスターたちが凶暴だったのか……。とにかくモンスターがかなり手強くて、できれば避けて通りたいのですが、そういったことは可能なのでしょうか。

マットはい、もちろん。避けて進むことは可能ですし、キャラクターの特性を育てた上で、戦いやすい体質に育てることも可能です。武器のアップグレードや改造オプションも豊富にありますよ。また、コンパニオンの力を借りて戦闘することも可能です。プレイヤーは、一度にふたりのコンパニオンを同行することができます。彼や彼女はプレイヤーを大いにサポートしてくれます。“Tacticle Time Duration”という時間をゆっくり動かせるスキルもあり、それを駆使することで相手の弱点などを見抜くこともできます。これは、戦闘時に戦略を練る時間が必要なときにも役立つでしょう。

――モンスターは手強いけれども、いろいろな対処方法があるということですね。

マットその通りです。で、話は戻りますが、もちろん戦いが好きではないプレイヤーは、暴力要素の少ない方法でゲームを進めることも可能です。

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――試遊では、モンスターとともにコンパニオンがとても印象的でした。なぜコンパニオンのシステムを導入しようと思ったのですか?

マットこれはObsidian Entertainmentが開発するゲームのDNAなのですが、私たちのゲームにはストーリーラインをもっとおもしろいものにするための、コンパニオン的な存在がつねにありました。『The Outer Worlds』では、その特徴をさらに前面に出して、ゲームプレイの重要な要素にしたいと思ったんです。今回お見せしたコンパニオンは、たくさん存在するうちの数名にすぎませんが、ゲームを進めていく端々で、いろいろなコンパニオンと出会うことになります。彼・彼女たちはそれぞれの価値観や視点を持っています。また、彼・彼女たちは独特のスタイルによってあなたの冒険をサポートしてくれることになります。
 でも、コンパニオン自体もオプションで、誰も仲間にしない、という選択肢もあります。私たちはそういったプレイスタイルを“ローンウルフ”と呼んでいます。

――それも選択の自由ということですね。

マット一度に同行できるコンパニオンは2名のみで、ほかはスペースシップで待機することになります。あなたがそのときに選んだコンパニオンによって、コンパニオンは彼・彼女たちの視点からいろいろなことを話してくれます。その視点によって交わされる会話によって、世界の見えかたもぜんぜん違ってくるでしょう。ちなみに、コンパニオンどうしで会話を交わすこともありますよ。

――コンパニオンは一度死ぬと、生き返らないのでしょうか。

マットノーマルモードでは、あなたがそのコンパニオンを仲間にする前に殺した場合以外は、仲間に加わることになります。一度仲間に加えたコンパニオンが戦闘中に死んだ場合は、戦闘が終わった後に自動的に生き返ります。いちばん難しい“スーパーノバモード”では、コンパニオンは一度死んだら生き返りません。さきほどもお話した、“Flaw System”によって、飲食や睡眠といった要素にも目をかけながらプレイすることになる“スーパーノバモード”は、いちばんチャレンジングですね。

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――ところで、今回ふたつの惑星でプレイできましたが、本作にはいくつくらいのロケーションが用意されているのですか?

マット『The Outer Worlds』で展開するストーリーは、今日体験していただいたハルシオンコロニー圏の“テラ2”と“モナーキ”のふたつの惑星がメインです。そのほかにも、スペースステーションやアストロイドベルトといった場所にも行けるようになっています。

――ハンズオンの冒頭で、これはおそらくストーリー自体の冒頭だとも思うのですが、マッドサイエンティスト風のおじさんとのやりとりのシーケンスがありました。あれってどんなことが説明されていたのですか? 読者に『The Outer Worlds』の触りを紹介するという意味も込めてぜひ教えてください。

マットもちろん(笑)。あなたは宇宙船に乗ってハルシオンコロニーに輸送される途中だったのですが、宇宙船が途中で消息不明になってしまったんです。けっきょく、その船がハルシオンに予定通り着くことはありませんでした……。そして70年後、あなたはドクター・フィディアス・ウェルスに発見され、冷凍保存状態から目覚めさせられます。ドクターが、この消息不明だった宇宙船を発見したんです。彼はあなたを保存状態から蘇らせて、腐敗したコロニーをもとに戻すためにリクルートします。そこから、あなたはドクターに協力するかどうかを決断するんです。このドクターは、じつはコロニーを支配する企業連合から逮捕状が出ているそうです。企業連合のサイドについてドクターを差し出すか、それともドクターと協力して汚職を暴くために、企業連合に立ち向かうかを決める立場になります。

――おお、なるほど。最後に、日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

マット『The Outer Worlds』は、日本語版も同時リリースされます。日本の皆さんが、 自分だけの冒険やストーリーを築いてくれることを楽しみにしていますよ。

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