日本の各地に事業所を構えるコーエーテクモゲームス。もともと旧コーエーの本社があった神奈川県・日吉、旧テクモの本社があった市ヶ谷のオフィスが有名だが、じつは京都府京都市にもオフィスがある。しかも、地下鉄烏丸線四条駅・阪急京都線烏丸駅から徒歩数分という、京都のど真ん中とも言える場所に位置しているのだ。

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京都事業所の外観。先進的なデザインの中に、伝統的な町屋のイメージを表現した建物だ。

 この度コーエーテクモゲームスは、京都事業所を拠点に、品質管理部門を拡大することを発表した。品質管理――わかりやすく言えばデバッグ、QA(Quality Assurance)と呼ばれる業務を行う部門だ。そして、この組織拡大にともない、多数のスタッフを募集するという。

 本記事では、コーエーテクモゲームスの執行役員・藤田一巳氏のインタビューをお届け。品質管理の重要性や、今回の部門拡大の狙い、京都事業所で働くことの魅力などについて語ってもらった。

藤田一巳氏(ふじた かずみ)

コーエーテクモゲームス 執行役員。品質管理本部長を務め、今回の部門拡大の指揮を執る。

ゲーム開発規模拡大のスピードに追いつくために、自社の品質管理部門を強化

――まずは、これまでのコーエーテクモゲームスの品質管理部門の体制を教えてください。

藤田当社の品質管理部門は、もともとはソフトウェア開発本部(現在のエンタテインメント事業部)の一部門として活動していました。ところが、製品品質に求められる要求レベルが厳しくなっていることに加え、ゲームの高機能化にともない品質管理業務の専門知識(機械学習やプロジェクトマネジメントスキル)が不可欠になったことにより、2014年4月に開発本部から独立し、社長直属機関の“品質管理本部”として設立されました。

――品質管理本部のおもな業務内容は?

藤田業務の内容は、

・当たり前品質……プレイに支障のないゲームであること
・魅力的品質……より面白いと感じるゲームであること
・社会的品質……法令やモラルを逸脱せず安全安心なゲームであること

この3点での品質を満たす製品をユーザーに提供することです。そのために、いわゆるデバッグだけでなく、開発部門の開発するタイトルを開発当初から独自の視点でチェックし、利用品質や内容の評価を実施し最終的には市場に出せる品質であることを承認する責任の重い仕事を行っています。

――過去と比べると、品質管理部門の担う役割はどのように変わっていますか?

藤田品質管理部門は当社に限らずゲームメーカーにおいてなくてはならない部門です。しかしその役割はゲームハードやCPU、通信環境の進化に伴って変化していきます。昔はゲームで表現できる内容がそれほど大きくなかったために、開発メンバーが自分の業務と並行してデバッグを実施するような時代もありました。しかしゲーム開発が高性能、高機能化することで、開発プロジェクト規模も大きいものでは数百人規模、開発コストも数十億を超えるものが珍しくなくなっています。

――デバッグは、プログラマーやデザイナーが開発の片手間に行えるものではなくなったのですよね。

藤田そうなるとスポーツにたとえるならば、独力でトレーニングを積むのではなく、専門性の高いポジションのスタッフによる客観的な評価や管理が必要になりますよね。トレーニングメニューやフィジカルトレーニングなど、プロアスリートがチームを組んで成果を挙げるように、ゲーム開発においてもゲームの品質をコントロールする専門部隊が不可欠になっているのです。

――今回、品質管理部門を増強するとのことですが、どのくらいの規模で拡大させるのでしょうか。

藤田業界では珍しいほうだと思いますが、当社は以前から本社に100名レベルのデバッグ専門部隊を抱えていました。そして今回が初の増強ではなく、2016年にはグローバル化に対応することを目的として、ベトナムの当社現地法人コーエーテクモベトナムにも品質管理部門を新設しています。今後の海外スタジオの拡大も当然視野に入れていますが、この度は日本国内でも開発規模の拡大に合わせ、さらなるメンバー増強が必要だと考え、京都事業所に2年以内に100名のデバッグ人員体制を構築することを計画しました。また、その他の地域での拡大も検討しています。

――今後、品質業務業務においては、とくにどこに力を入れていくのでしょうか。

藤田今後の当社の品質管理業務の注力点はずばり、

・AI化
・プロジェクトマネジメントによる品質管理体制の強化
・専門性の高いデバッグメンバーの育成

この3点になります。つまり、当社の持つ技術力を品質管理部門に転用応用し、人工知能による品質管理を追求することはもちろん、大規模な開発体制を支えるマネジメント思考でのアプローチ、そして専門的かつ職人的なデバッグのプロフェッショナルをより多く育成することで、ゲーム本来のおもしろさを追求し評価できる体制を構築することを目指しています。

――専門業者に、より多くの業務を委託するという選択肢もあったかと思いますが、自社スタッフを増やす方向性を選んだ理由は?

藤田もちろん専門業者の皆さんのお力なしには我々の業務は成り立ちません。それはこれからも変わらないと思います。従って、今後もそういったパートナー企業の皆さんと協力しながら拡大を図るつもりです。ただ、ゲーム開発規模拡大のスピードにそれでは追いつけないということです。そして自分たちの製品にもっと深くコミットする会社であるためにも、ゲームの品質を担保する部門は自社での拡大を実施すべきと考えました。

――今回行われるのは品質管理部門の拡大ですが、それを足掛かりに、さらなる組織改革を行う計画もあるのでしょうか?

藤田当社のビジョンは、“世界ナンバーワンのエンタテインメントコンテンツプロバイダー”です。通信環境の劇的な変化や技術革新により、ゲームは場所や時間だけでなくプラットフォームさえも選ばない時代がまもなくやってきます。その最新の状況に常に対応できるよう、若いメンバーが豊かな発想で新しいコンテンツを産み出せるよう、今回の品質管理部門の拡大に限らずワールドワイドな視点で必要な変化や進化を続けていくつもりです。

品質管理スタッフとして働くことの魅力

――部門拡大の拠点として、京都オフィスを選んだ理由とは?

藤田国内ではこれまで関東圏(当社では横浜)でしか自社デバッグスタジオを保有していませんでした。しかし当社のゲームを愛してくださるファンの皆さんは、世界中にいらっしゃるはず。だからこそ広い地域の当社のゲームを愛してくださる皆さんに仲間になっていただき、ともによい製品を作り上げたいと考えています。その第一歩として、関西圏にある当社の京都事業所に国内2番目の拠点を開設しようと考えました。京都は学生さんの数も多く、当社に入社する新入社員も関西出身者が多数います。そういう観点から、まずは京都で! そう考えました。

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屋上や敷地の一角に庭園があるのも京都オフィス内の魅力だ。
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――品質管理に適性のあるスタッフとはどのような人材なのでしょうか。

藤田とにかくゲームが好きなこと。まずはこれにつきます。ただしそれが独りよがりなものではなく、ゲームを届ける先のユーザーの喜びを考えてゲームと向き合える人であれば合格です!

――品質管理業務のやり甲斐はどんなところにありますか?

藤田ゲームの企画を考える、ゲームをプログラミングする、キャラクターをデザインする。そういった開発現場に適性を感じていないとしても、ゲームを診断し評価し、よい製品に仕上げるための仕事があります。そしてそのアプローチは、最先端の技術やプロジェクトマネジメント手法により遂行されます。ゲームメーカーの開発現場で、ゲームを作り上げるプロセスに関わることができる重要な仕事であり、プログラミング等の特別な経験、スキルがなくともゲーム業界を目指したい方には、最適な登竜門になります。ゲームをみずからの手で“よりよいものにする”ことに、ゲーム好きならやりがいは感じてもらえるはずです。自分が関わったタイトルのスタッフクレジットに名前が載り、それが多くの方に遊んでいただけたら、最高にうれしいですよね。

――今回はQAのアルバイトスタッフを募集するとのことですが、採用されたスタッフがその後、たとえば京都オフィスの別部門などに登用される可能性はあるのでしょうか。

藤田ご縁があっていっしょに働けるようになったらば、まずはその部門でどんどんスキルを磨いてください。当社の品質管理部門のアルバイトにはそのスキルに応じて能力給が上昇する体系があり、より重要な仕事を任される仕組みになっています。そこで専門性の高いエキスパートとして活躍している人もいれば、開発部門に異動してプランナーとして活躍するメンバーもいます。また同時に当社にはアルバイトの社員登用制度があり、努力次第で様々な道が拓けるチャンスがあります。

――「応募してみようかな」と考える人に、ひと言メッセージをお願いします。

藤田いま、ゲーム業界はものすごいスピードで進化と変化を続けています。品質管理の仕事もより高度に、より大規模になってきています。しかしそこに携わる人の熱意がなくてはヒットゲームは出来上がりません。ゲームを客観的な視点から支える“品質管理”という仕事に自信と誇りをもって取り組みたい。そういう人を歓迎します!