『Coffee Talk』は、喫茶店を訪れるお客さんたちとの会話が楽しいアドベンチャーゲームだ。インディーゲームファンからは“コーヒー版『VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)』”と称されたりもするようだが、同作からのインスパイアを受けつつも、独自の世界観として昇華。Steam版で公開された体験版が高い評価を獲得している。しかも、『VA-11 Hall-A』のクリエイターからアドバイスを受けているというから、何とも微笑ましいが、いま注目のインディーゲームの1本と言えるだろう。

 先日、日本のパブリッシャーであるコーラス・ワールドワイドより、プレイステーション4版とXbox One版でのリリースが発表された同作は、この度Nintendo Switch版でのリリースが決定。さらには、2019年6月1日~2日に京都で開催されるBitSummit 7 Spiritsへの出展も果たすという。これはちょっといろいろと聞いてみたい……ということで、開発元であるToge Productionsにメールインタビューを敢行。あれこれをうかがってみた。

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Lasheli Dwitri Witjaksana(ラシェリ・ドウィートリ・ウィジャクサーナ)

『Coffee Talk』PR担当

Mohammad Fahmi (モハメド・ファーミ)

『Coffee Talk』ディレクター、ライター、ゲームデザイナー

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Toge Productionsの皆さん

――まずは、日本のゲームファンに向けて、Toge Productionsがどのようなスタジオなのかお教えください。ちなみにインドネシアの会社ということですが、インドネシアではゲーム産業は盛んなのですか?

ラシェリ弊社は2009年に独立系のゲーム開発会社として設立され、当初のスタジオはガレージから始まりましたが、実績とともにいまも成長し続けています。『Infectonator』シリーズのようなFlashのゲームや、我々の初めてのストーリベースで規模が大きなこのゲーム、『Coffee Talk』で知られています。今日では、インドネシアのゲームを世界のグローバルマーケットに展開することをサポートするために、パブリッシング事業にも拡大を行っています。
 国内のゲーム産業自体に関しては徐々に認知度が上がってきており、政府も地元のゲームイベントのスポンサーを行ったり、海外のゲームイベントに出展できるようにサポートを行ったりしています。

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――本作を開発するにいたった経緯を教えてください。『VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)』にインスパイアを受けたとのことですが、同作のどのようなところにとくに刺激を受けて、『Coffee Talk』を開発することにしたのですか?

ラシェリゲーム内容に関しては、ファーミに手伝ってもらいたいと思います。

ファーミこんにちは、ファーミです。私が『Coffee Talk』のディレクター、ライター、ゲームデザイナーを務めています。
 『VA-11 Hall-A』はインスパイアを受けたひとつではありますが、最初のゲームのアイディアはほかのものから生まれました。ある雨が強かった夜、私は抹茶ラテを自宅で飲んでいました。そのとき突然、「この体験をゲームにすることはできないものか?」と考え始めたのです。そして、日本の漫画である『バーテンダー』やNetflixのドラマである『深夜食堂』からも影響を受けました。このふたつのストーリー以外からは、2010年にリリースされたiOSのアプリで、お客さんとの会話を行う『Bar Oasis』、そして最後に『VA-11 Hall-A』です。『VA-11 Hall-A』とはよく比較され、確かにたくさんのことを学ばせてもらいましたが、以上のように、参考とさせていただいたうちのメインとなっているわけではありません。

――『VA-11 Hall-A』のよさを活かした点や逆に『VA-11 Hall-A』からあえて変更した点をお教えください。

ファーミVA-11 HALL-A』では、飲み物を入れることは作業のひとつになってしまう可能性があり、実際に何かを作って新しいものを見つけるという感覚はあまりありません。『Coffee Talk』では異なる飲み物を作る仕組みを作り、プレイヤーが何か新しいものを見つけた際に、その感覚を与えることができるようにしています。
 また、『VA-11 HALL-A』のゲーム内の1日はかなり長く、セーブは特定のタイミングでしか行うことができません。『Coffee Talk』では、このゲームをプレイしているあいだはプレイヤーには休憩してまったりとした時間を取ってほしいので、ゲーム内の1日の時間は短く、いつでもセーブすることができるようにしてあります。私たちはプレイヤーの時間を尊重したいと思っています。そして、仕事で長い1日を過ごしてきたプレイヤーに、カフェでの体験や雰囲気を味わいながら1日の締めくくりができるように、お手伝いできればと考えています。

――『VA-11 Hall-A』のクリエイターさんとやりとりをされているとのことですが、具体的にはどのようなやりとりをされているのですか?「『VA-11 Hall-A』をモチーフにしたゲームを作っています」というような挨拶に始まり、交流されている感じです? 開発にあたって何かアドバイスをもらったりはしているのですか?

ファーミ『VA-11 Hall-A』のパブリッシャーであるYsbyrd Gamesのブライアン・クエックさんは私のよい友人です。そのため、プリプロの段階から彼にゲームのアイデアについて話をしました。そして、昨年のBitSummitの際に、彼が私にSukeban Gamesを紹介してくれました。彼らからフィードバックをいただき、とくに作りたいものを作るという点に関して、ただ単に仕様や機能を追加できるからといって追加するのではなく、何か意味があることや体験となることを追加するべきだということを教えられました。こちらでそのフィードバックを見ることができます。

※Devlog #1: How the game came to be - The seed, the anxiety, and the belief of design by subtraction

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――本作にベースとなるストーリーラインはあるのでしょうか?

ファーミいくつかのストーリーは私の経験にもとづいていますが、ドラマ性やエンターテイメント性を加えています。そのほかのストーリーは、オフィスで行なったディスカッションやロールプレイのセッションから作られています。また、私の友人の経験にもとづいたストーリーも入っていますが、もちろんこれらも脚色を加えてドラマ性を持たせています(現実に狼男やオークの友人がいるという訳ではありません(笑))

――ずばり本作のテーマを教えてください。

ファーミビジュアルノベルとバリスタ体験のシミュレーションが融合したゲームです。そのため、このゲームのジャンルを“心と心で会話をするシミュレーションゲーム”と呼んでいます。

――魅力的なキャラクターが登場するようですが、キャラクター造形にあたって注力した点を教えてください。とくに、ヒロイン(でいいんですよね?)のフレイヤについて詳しく教えてくださるとうれしいです。

ラシェリこれは私に答えさせてください。
 『Coffee Talk』のキャラクターをデザインする際、デザイナーのディオ・マヒーサは、ディレクターのファーミからキャラクターの詳細をもらうことが必要で、その後、性格付け、衣装、外見から作り始めました。それらができた後、スケッチでキャラクターを描き、チーム全体からの意見を聞きました。

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ラシェリフレイヤはその最初のキャラクターであり、何度も何度も変更されて作られました。最初の彼女のデザインは現在とはまったく異なるもので、とくに衣装と髪の色が異なっていました。

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ラシェリこの開発ログではキャラクターデザインの変遷に関してのより多くの情報を見ることができます。

※Coffee Talk Devlog #2: Bringing Doodles to Life

――舞台をシアトルにした理由を教えてください。やはりコーヒーで有名だから?

ファーミはい、その通りです。スターバックスが生まれた土地だからです。また、雨が多い街という点もあります。雨はこのゲームにムードを与えるコアな部分になっています。

――複数の追加シナリオをダウンロードコンテンツとして配信予定とのことですが、どのような内容になるのですか?

ファーミ現在のところまだ詳細は決まっていなくて、ゲームの開発が終わり次第、内容を決めます。どれくらいゲームが売れてくれるかによっても変わるので、たくさんゲームを買ってください!(笑)

――今回日本国内でNintendo Switch版での配信が決定しましたが、率直なご感想をお教えください。

ラシェリあー、それは……

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ラシェリ正直、緊張しています。しかし、できるだけベストを尽くしてゲームに磨きをかけていきます。(応援してください!)

――最後に、BitSummit 7 Spirtsに出展されるとのことですが、日本のゲームファンに向けてのメッセージをお願いします。

ラシェリ日本で展示されるのは今回が初めてではありませんが、まだワクワクした気持ちでいっぱいです。私たちのブースに来てくれた皆さんがゲームを楽しんでくれることを期待しています。
 BitSummit 7 Spirtに来れない方はこちらで体験版をお楽しみください。

※Steamサイト

ラシェリよろしくお願いします!

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