おーい! あやしげな実験に興味津々なみんなー!
不穏な呼びかけから始めてしまった。
『ラグナロクオンライン』(以下、RO)に“非人道的な実験”がモチーフの新ストーリーが実装されるので、全国のそういう実験ファンに届けたいと思ったのだ。
『RO』と言えば、ガンホー・オンライン・エンターテイメントが運営する老舗のPC用MMORPG。人気コンテンツのひとつに“生体工学研究所”がある。
2006年3月14日に実装された当初から、非人道的な実験をくり返す組織“レッケンベル社”を中心に展開。ダンジョン内にはプレイヤーキャラクターと同じ姿のクローン的なモンスターが出現する。
設定と照らし合わせると、すぐに「このモンスターは人体実験の被害者なのでは……?」という推論にたどり着く。切なさの裏に隠された若干のエグさこそが、悲しいお話のスパイスというわけだ。
そんな生体工学研究所の過去に迫る“EPISODE:EDDA生体工学研究所”が、2019年6月4日に実装予定。システム的な大型アップデートではなく、ストーリーを深堀りしたものとなっている。
生体工学研究所はこれまでに数回のアップデートを重ね、特設サイトで公開された各キャラの設定も好評を博した。最新アップデートの“EPISODE:EDDA生体工学研究所”では、最初に登場した6人が実験体になった理由が明かされる。
もともと否が応でも想像をかき立てられる構造のため、二次創作の対象としても大人気。ユーザーからの期待値が高いだけに、運営チームが緊張するレベルなのだそうだ。
過去に起きた事件を追体験。なぜ6人は思念体になったのか
“EPISODE:EDDA生体工学研究所”で実装されるメモリアルダンジョン(いわゆるインスタンスダンジョン)には2種類の入場方法が用意される。ソロでストーリーを楽しむ“会話モード”とバトルを楽しむ“戦闘モード”だ。
会話モードはBaseLv100から、戦闘モードはBaseLv170から挑戦可能。いまはLv100くらいまでなら簡単に育成できるので、復帰者や新規ユーザーもすぐに物語を楽しめる。
今回は会話モードを試させてもらった。
シエラによると、不法な研究を記録した媒体“バーチャルレコード”が発見されたため、解析を手伝ってほしいとのこと。
前述したように、生体工学研究所の内部には人間型のモンスターが彷徨っている。その正体は、かつてルーンミッドガッツ王国からシュバルツバルド共和国に非公式で派遣された冒険者たちの思念体だ。
バーチャルレコードには彼らの行動が記録されている。装置を起動させると、過去のできごとに入り込んで仮想現実として追体験できるらしい。
真実は明らかになるものの、危険を伴う可能性もある。そこで、戦闘経験が豊富な冒険者(プレイヤー)に白羽の矢が立ったというわけだ。
会話を進めると、立派な家具がしつらえられた部屋に移動した。そこはシュバルツバルド共和国の大統領に接見する前の待合室。中には6人の冒険者の姿がある。彼らが件の非公式派遣隊だ。
彼らに話しかけて状況を整理していると、突如として室内にもやがかかった。強烈な眠気で意識が朦朧としているところにレッケンベル社の警備兵が強襲。為すすべもなく囚われてしまう。
ここでシエラが登場。メンバーはそれぞれ別の部屋で意識を取り戻すらしい。どれかひとつを選択できるので、僕は“アコライト実験室”を選ぶことにした。
お姉さんキャラが好きなので、本当はセシル=ディモン姐さんを追ってアーチャー実験室に行きたかったのだが、心を鬼にした。
アコライト実験室へはハイプリーストのマーガレッタ=ソリンを助けに行くことになる。ハイプリースト女子はヒロインっぽいので、王道の展開が待っていると踏んだのだ。
場面が移り変わると、そこには冒険者たちのリーダー、セイレン=ウィンザーが待っていた。少々天然の気がある熱血漢だ。
ふたりで警備兵をばったばったとなぎ倒し、マーガレッタ=ソリンが待つ実験室を目指す。
マーガレッタ=ソリンは実験設備の中にいた。近くにあった実験報告書を読むと、“コアを移植”などという物騒な表記が。彼女の体内に何らかの物体を移植したということか。さぁさぁ、エグくなってきました。
セイレン=ウィンザーがわなわな震えている。怒りに打ち震えている。そこに警備兵がどやどやとなだれ込んできた。
「全員殺してやる」ときた。セイレン=ウィンザーは高潔なヒーローではない。あくまでもひとりの人間である。
“罪を憎んで人を憎まず”という言葉はあるが、そんなの単なるきれいごとだ。感情を爆発させて警備兵を蹴散らす。うおお、かっこいいじゃないか。
警備兵相手に激しく抵抗しているうちに、ソリンは目を覚ました。か細い声で祈りを捧げたところで記録が途絶える。ふたりはどうなってしまったのか。
メモリーレコードの力を借りて事件に介入しているものの、過去は過去。どんなに敵を倒しても6人は救われることがない。現代において、彼らはすでに悲しい思念体になってしまっているのだから。つらい。
やるせない気持ちを整理する間もなく、調査はつぎの場面へ。気づいたら知らない場所にいたというセイレン=ウィンザーと再会した。
彼の見解は「シュバルツバルドの大統領が非人道的な実験を認めているとは思えない。誰かの陰謀だろう」。陰謀を暴く前に、ひとまず仲間を探さなければ。
研究所の探索中に、アサシンクロスのエレメス=ガイルを発見した。だが、様子がおかしい。何者かに操られるように襲い掛かってきた。洗脳を解くために戦闘開始。
頼れる仲間、エレメス=ガイルも合流。手分けをしてほかのメンバーを探すことになった。
こちらの戦力は少しずつ戻っているものの、心配は募るばかり。焦るセイレン=ウィンザーを、エレメスは落ち着いた口調で送り出す。そんな彼の口元からは黒い血が流れていた――。
ネタバレし過ぎるのもよくないので、ここからはダイジェストでどうぞ。
先に進もうとするとシエラが登場し、解析結果を確認。ここまでの報酬をもらえる。
彼女が言うには、奥に強敵が待ち構えているとのこと。日を改めれば再挑戦可能なので、強さに自信がないようならいったん戻って準備を整えてもいい。
取材時はもちろん迷うことなく突撃した。
セシル=ディモンはここに至るまでに実験報告書を読み、すべてを理解しているようだった。
さらに実験を主動するボルセブが登場。あざ笑うようにすべてを説明してくれた。
頭がよくてプライドが高い悪役特有の、あの鼻につく感じ。自身の勝利を微塵も疑っていないようで、ひたすら饒舌だ。
いますぐにでもぶっ飛ばしてやりたいが、実験で強大な力を得た無名のソードマンが立ちはだかる。
何とか無名のソードマンを倒したものの、セイレン=ウィンザーたちは疲弊しきってしまった。あと一歩のところでボルセブを取り逃がしてしまう。
出口はすべて封鎖されている。体力は限界に近い。世間に真実を知らせることなく朽ちていくのを待つしかないのか。
閉塞感漂う中、冒険者(プレイヤーキャラクター)が口を開いた。ここで起きたことは、自分が未来へ伝える、と。
過去は過去。彼らが助かることはない。バッドエンドと言えばバッドエンドだが、それでもほんの少しだけ希望はある。
冒険者のひと言は、絶望のまま死んでいくはずだったセイレンたちへの手向けの花だったのかもしれない。
ダンジョンに挑む前にWebコミックを読もう
ダンジョンのストーリーはもともと公開されていたWebコミックがモチーフ。ボリュームは全290ページにも及び、5月21日から1日1話ほどのペースで更新中だ。
アップデート前日までに全話が公開予定。一読したうえでプレイすると、より深くストーリーを楽しめるはずだ。
思念体武器はエンチャントが強力
このダンジョンには入場回数に制限がある。会話モードは1日に1回、戦闘モードは3日に1回(1アカウントにつき1日5キャラまで)入場可能だ。
アップデートに合わせて39種類の武器が新実装。新武器はダンジョンのボスがドロップする箱にランダムで入っている。
箱は赤・青・黄の3種類があり、“赤色の思念体ボックス”は会話モードで、青と黄は戦闘モードで手に入る。
赤色の思念体ボックス
会話モードのボスから低確率でドロップ。武器がひとつ必ず入っている。
黄色の思念体ボックス
戦闘モードのボスから低確率でドロップ。武器がひとつ必ず入っている。
青色の思念体ボックス
戦闘モードのボスから高確率でドロップ。武器以外のアイテムが入っていることもある。
これ自体は少し強いくらいの代物だが、思念体武器はエンチャントの効果がすごく強力だ。
素材として既存アイテムの“エネルギーの集合体”を5個使うことで属性や効果を3つ付与でき、しかも100パーセント成功するのだからたまらない。とくに“大鷲の眼光”、“熊の力”、“暴走した魔力”のどれかひとつを選べる点に要注目だ。
ただし、武器そのものは取引不可能。箱の状態なら取引できるので、大量に箱を購入して開けまくるのもアリ。
すぐに新コンテンツを楽しんでもらうために
生体工学研究所という名前にひかれて久しぶりに復帰したい人もいるはず。というわけで、復帰者や新規ユーザーでもすぐに生体工学研究所のストーリーを楽しめるような施策も準備されている。
新コンテンツに挑めるほど強くないのなら、シエラたちの南側に佇むNPCのミッションマスター・ミミミを頼ろう。彼女が出す課題をクリアーしていくと、しだいにレベルが上がり、アイテムも揃っていく。
2019年6月4日のアップデートと同時に実装され、1週間ごとにミッションが増えていく。討伐やアイテムの納品など、多くのシステムに触れながらキャラクターを育成できるので、久しぶりに復帰した人も安心だ。
そこから南西方面に進むと“クイズに答えて1億expゲット”と看板を出したNPCがいる。彼女の名前は“生体コスプレイヤー”。
伊藤氏によると「生体工学研究所のマンガが大好きなコスプレイヤーさんです」。ついにコスプレイヤーがゲーム内に実装されてしまった。いわゆるメタネタである。
これは1アカウントにつき1キャラ限定のイベントだ。公式サイトで公開中の生体工学研究所コミックにちなんだクイズが出題され、正解すると経験値がもらえる。
1問あたりの経験値量は1億。時間がなくてキャラ育成がたいへんだとしても、毎日このNPCのクイズに答えればどんどんレベルが上がっていく。実施期間は2019年6月4日から7月2日までなので、最大29億の経験値が入手できる。
また、アップデートにあわせてスペシャル利用券の販売がスタート。60日3000円分の利用券を買うと(通常は30日1500円)、おまけでBaseLvを170まで引き上げるチケットがついてくる。
当然、装備は揃っていない状態ではあるが、『RO』のほとんどのコンテンツを遊べるようになるのが魅力。現役プレイヤーの友だちといっしょにダンジョンにめぐってアイテムを集めればオーケーだ。
ゲーム外の取り組みにも要注目。総額50万円のウェブマネーが抽選で50名に当たるTwitterのRTキャンペーンが2019年6月4日まで実施中で、その後はイラスト募集を行うそうだ。
今後のアップデート予定も一部公開
今回の“EPISODE:EDDA生体工学研究所”は、2019年8月に実装予定の“EPISODE:イルシオン(仮題)”にもつながるアップデートとなっている。
レッケンベル社も一枚岩ではなく、どちらかというと非人道的な実験を認めない良識派が多数。悪いやつらは追放されたものの、活動を諦めることなく秘密組織を作ってしまう。その組織の名前が“イルシオン”だ。
“EPISODE:イルシオン(仮題)”のストーリーは、2017年7月25日に実装された“EPISODE:TERRA GLORIA ~ルーンミッドガッツ王国の胎動~”の続編。リベリオンと組んでイルシオンと対立する流れが描かれるという。
システム面のアップデートも予定されている。2019年末までにレベル上限が185まで解放され、さらなるキャラ育成が可能になる。
また、6月下旬には結婚システムがアップデート。ドラムとの結婚や同性婚、養子にも対応する。
みんなの心の中にそれぞれのセイレン=ウィンザーがいる
生体工学研究所は『RO』におけるキラーコンテンツのひとつだ。
とくに登場キャラクターの人気が高く、バレンタインデーにはキャラ宛てにチョコが送られてくるほど。跡部キングダムに続いてセイレンキングダムが建国される日も近いかもしれない。
さらに、3月14日はホワイトデーだが、最初に生体工学研究所が実装された日(2006年3月14日)ということで、誕生日プレゼントが届くそうだ。セイレンたちがファンから愛されていることを感じさせるエピソードである。
人気の高さを開発会社も肌で感じているらしい。運営チームの中村氏は「イラストレーターが張り切ったみたいで、イメージビジュアルを全部で4つも仕上げてくれました」と笑う。
生体工学研究所は二次創作の対象としても人気だ。明確な設定が明かされていなかったため、想像の余地がある。結局のところ、思念体とは何なのか。思念体になり果てた彼らは何を思うのか。その疑問を自分で埋めるのが楽しい。
公式側が核心をつくと空気をぶち壊すこともある。その点、『RO』の生体工学研究所はうまくなじみそうな気がする。
肉体を持たない思念体はどんどん分裂していく性質があるからだ。分裂をくり返していくうちにオリジナリティーが希薄になり、別の存在に近づいていく。
つまり、みんなの想像の中に、それぞれのセイレン=ウィンザーがいてもおかしくないのである。
ファンの皆さんには、自由に生体工学研究所を楽しんでもらいたい。そんな開発・運営側の意図が垣間見えるアップデート“EPISODE:EDDA生体工学研究所”は2019年6月4日に実装される。お楽しみに。
セイレンキングダム建国の際は取材しますので、よろしくお願いします。