好きなものについて語り始めると、オタクはもっぱら早口になる。
つまり舌にバフをかける。ヘイストとかピオリムとか、そういう類の魔法をバトル開始と同時に唱えている。優秀だ。パーティーにひとりはほしい。
そして世の中には、オタクを早口にさせるのが得意なコンテンツが存在する。伏線、比喩、パロディ、そういうスキルを巧みに使って、オタクのプライドを刺激する。
「この相手には本気で挑まなきゃアカン」と、「補助魔法を使わなきゃ勝てない」と、そんな風に思わせるのがうまい奴らがいる。
2019年春に配信予定の魔法少女RPG『マジカミ』もまた、オタクを早口にさせるゲームである。
……たぶん。
『マジカミ』はバトルあり、恋愛ありの基本無料ブラウザゲーム。プレイヤーは12人の魔法少女と心を通わせながら、世界崩壊を防ぐための戦いに身を投じていく。もはや定番となった“シリアスな魔法少女モノ”の王道を行くような内容だ。
バトルはオーソドックスなコマンド式で、ガチャで引いた魔法少女(正確には魔法少女のドレス)を育成してクエストを攻略。進行状況や女の子との親密度によって、本編や恋愛パートのシナリオが解放されていくという流れである。
さて、先ほど「たぶん」と補足したのは僕がこのゲームに2時間しか触れられていないからだ。
序盤のストーリーと、恋愛パートを少しずつ。1クールのアニメだったら、3話目に差し掛かった頃だろうか。だけどアニメも3話目まで見れば「おもしろくなりそうか」くらいは分かる。マミさんが死んだのだって3話目だ。
端々から「オタクを早口にさせてやろう」という思惑を感じる。ニトロプラスあたりのノベルゲームが打ち出したような“常識を鈍器で殴り飛ばすような物語体験”を、オンラインのブラウザゲームで創ってやろうという意気込みを感じる。
しかもこのゲーム、開発費として“12億円”投資したらしい。ブラウザゲーに12億円。オタクの口を滑らせるために12億円。おいそれと突っ込める額じゃない。おかしな富豪の遊びか?
『マジカミ』には、キャッチーだけどどこか不穏な、僕たちが大好きなあの空気感が漂っている。伏線、比喩、パロディ……オタクの肥えたプライドを刺激する要素が全部詰まっている。
だから、前置きなのに長々と語ってしまった。
こんにちは。ふだんはオタクをしていて、副業でライターをやってる戸部マミヤと申します。これから『マジカミ』プロデューサーのプレゼンを受けるところです。早口ですみません。ピオリム要りますか?
Studio MGCMにお呼ばれした
『マジカミ』プロデューサー(まじかみぷろでゅーさー)
名刺に書かれていた名前は“ジ・アブソリュートリー・パーフェクト・ワン”。ややこしいので本稿での呼び名はマジカミPにします。
――『マジカミ』すごいですね。「12億円かけてオタクをヒィヒィ言わせてやろう」という情熱を感じます。
マジカミPアニメーションのエンジンを自社開発したり、シナリオを濃くしているうちに12億かかってしまいました。当然アダルト版の描写にも力を入れています。
――そこまでして目指す先には何があるのでしょうか?
マジカミP本作のテーマは“人生を変える魔法少女体験”です。ユーザーさんが「このゲームと出会えてよかった」と思えるような美少女ブラウザゲームを作りたかった。我々世代のオタクって、美少女ゲームに人生を変えられた人間が多いんですよね。それこそ「『CLANNAD』は人生」って言葉も生まれましたし。
――美少女ノベルゲームが培ってきた物語体験を、“オンラインゲーム”というつぎのステップに昇華させようという狙いがあるんですね。理解できました。あと、プロデューサーの年齢もなんとなくわかりました。
マジカミPですから、シナリオにはとくに力を入れていますね。本編は“可能性”をキーワードにいろいろとギミックを仕込んでいますし、キャラクターごとの恋愛パートも女の子たちの内面を深掘りする側面が強いです。
――序盤はワイワイ楽しい感じですけど、何気ない会話の中にも「これって伏線か?」って違和感がバンバン出てきますよね。遊んでいてどうしても気になった点がひとつあって。
マジカミPはい。
――プレイヤーは本編で、いわゆる魔法少女モノのマスコット枠として女の子たちをサポートするわけですよね。
――だけど恋愛パートでは人間の姿で女の子たちとイチャイチャしている。完全に矛盾してますよね? 「そういうシステムだから細けえことはいいんだよ!」ってことなのかもしれませんけど。
――セーブデータを消去しちゃうとか、キャラクターが第四の壁を認知しちゃうとか、美少女ゲームには“ゲームの構造そのもの”を利用したシナリオが多いじゃないですか。何というか『マジカミ』もそういう不穏な空気を感じるんですよね……。
マジカミP……。
――僕の予想では「じつはこの世界は○○が××していて、最終的に女の子も△△して※※」みたいなエグくてエモい展開が待っているような気がするんですけど……合ってますか?
マジカミP……。
――なんか言ってくださいよ。
ポップでロックでスタイリッシュ メガ盛りの青春活劇
――全体を通した雰囲気もクールですよね。こういうスタイリッシュなUI自体は最近のゲームではよく見かけるようになりましたけど、カラオケのモニターがバナー枠になっていたり、『マジカミ』独自の“らしさ”が出ている気がします。
マジカミP『マジカミ』のコンセプトはポップ&ロックなんです。システム的にはバトルがメインのRPGなので、記号的な萌えに傾倒しすぎずに、青春に生きる女の子たちの“かっこよさ”や“熱さ”をスタイリッシュに表現できれば、と。
マジカミPちなみに、主題歌や戦闘曲は実在のアイドル(GANG PARADE)に歌ってもらっています。
――おお。アイドルはかっこよさと熱さの象徴ですもんね。
『マジカミ』OP
――魔法少女側のデザインもかわいいんですけど、敵のデザインに力が入ってますよね。「シューティングゲームのボスを擬人化したの?」って感じのグロ可愛さというか。
マジカミPおっしゃる通りで、敵のデザインにはクリエイティブディレクターの趣味がゴリゴリに入っています。「艶かしくて印象に残る感じにしたいんだよね~」って、女の子たちよりこだわって作ってましたね。
――公式サイトやプロモーションで、やたらと「総制作費12億円」を押し出してらっしゃるじゃないですか。期待する反面、正直「いけ好かないなあ」と思ってた部分もあるんです。人の心を動かすのは金じゃねえだろ! と。金を積まれただけじゃオタクは饒舌にならねえぞ! と。
マジカミPはい。
――でも、実際にお話を伺ってみると、プロデューサーさん自身が早口になる瞬間があって、だからみなさんは「自分たちが早口になるために、好きなものを作るために12億円使ってるんだなあ」と思えたんです。
――本編も期待して待っていていいんですよね?
マジカミPもちろんです! 2019年春内のリリースを予定していますので、期待してお待ちください!
興味がある方以外は公式サイトに飛ばないでください! 今すぐ体験版を遊んでしてしまいます(ハート)
『マジカミ』がプレイできるプラットフォームはDMM GAMES。2019年5月21日~28日の期間、事前登録することで冒頭1章までの内容が遊べる体験版が配信中だ。先行体験版をプレイすると、リリース後に本編で使えるゲーム内アイテム“Qスタミナドリンク[+20]×2、ジュエル×300”がもらえる。
ポップ&ロックな世界観、そして微かな違和感に期待が高まる内容となっているので、興味がある方はプレイしてみてはいかがだろうか。