代名詞の『FGO』はもちろん、ボドゲや新ゲームプロジェクトも話題を集めるディライトワークスを訪問【ファミキャリ!会社訪問(72)】_09

“ファミキャリ!会社探訪”第72回はディライトワークス

 ファミ通ドットコム内にある、ゲーム業界専門の求人サイト“ファミキャリ!”。その“ファミキャリ!”が、ゲーム業界の最前線で活躍している、各ゲームメーカーの経営陣やクリエイターの方々からお話をうかがうこのコーナー。今回はディライトワークスを訪問した。

 2015年に配信を開始したスマートフォン向けゲーム『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)の開発元であるディライトワークス。2018年9月より制作部体制へと組織を変更し、現在は第6までの制作部門とアート部、グラフィック部などの機能別部門を配する。今回は、『FGO』の開発を担当しているFGOスタジオ スタジオ長・石倉正啓氏とキャリア採用を担当しているHR部・八巻歩美氏に話を聞いた。

石倉 正啓(いしくら まさひろ)

第2制作部 FGOスタジオ スタジオ長

八巻 歩美(やまき あゆみ)

HR部 キャリア採用担当

――最初におふたりの経歴から教えてください。

石倉そもそもエンターテインメント業界でのスタートは、モバイル系の会社でプロデューサーをやっていたことでした。その会社から“東京ガールズコレクション”というイベントが派生しました。そのころ、当社の社長の庄司(※ディライトワークス 代表取締役社長 庄司顕仁氏)はスクウェア・エニックスにいて、当時いた会社とスクウェア・エニックスがジョイントベンチャーを立ち上げたことをきっかけに知り合ったわけです。そのジョイントベンチャーで、女性向けのSNSをやりながらカジュアルゲームを作ったのが、ゲーム業界の会社といっしょにやった最初のプロジェクトですね。

その後、私はローソンHMVエンタテインメント(※現ローソンエンタテインメント)という会社の新規事業開発を行う部署の部長として呼ばれ、某グループのファンクラブツアーを行ったり、ニコ生でゲームとアニソンの情報番組をやったりしました。それまではファッションやコスメといった女性向けのビジネスを手掛けていたのですが、ここでさまざまなエンターテインメントに携わりました。その後庄司がディライトワークスを立ち上げて、まだ30人ほどしかいなかったころなのですが、「仕事を手伝ってほしい」と言われまして。いまから約4年ちょっと前、ディライトワークスに入ることにしました。

――ディライトワークスさんの設立直後になりますね。転職を決断した理由は何ですか?

石倉庄司が友人だったことも理由のひとつではありますが、いちばんの魅力は『Fate』が好きだったことです。前職の在籍時だったのですが、2014年に開催された“Fate Project 最新情報発表会”にも呼んでもらいまして、そこで『Fate/Grand Order』のゲーム化と、劇場版映画『Fate/stay night [Heaven's Feel]』が発表されました。その『Fate』に関われるのだったらおもしろいことができそうだなと思い、転職を決めました。まさに、『FGO』に呼ばれて来たのだと思います。

――ディライトワークスに転職されてからはどういったお仕事を?

石倉当時『FGO』のプロデューサーは庄司が務め、私はマーケティングや宣伝関係の仕事を担当しました。それ以外に、運営チームの立ち上げとカスタマーサポートなども。その後、宣伝業務が順調に回るようになってきたころから、広報チームを立ち上げました。2018年9月にFGOスタジオのスタジオ長になるまでは、そういったマーケティング関連の業務が中心でした。前職までメディアやイベントなど、マーケティングの側面が強い業務に携わってきたので、その経験が生きていると思います。ただ、ゲーム会社にいたことはなかったので、ゲームの運営やカスタマーサポートは、イチから作り上げていった感じですね。

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――八巻さんはいかがでしょうか?

八巻20代のころは、外資系大手の会社で秘書などをやっておりました。30歳になったタイミングで人事の仕事へのキャリアチェンジを考えて、転職しました。ディライトワークスに入る前は、IT・Web系ではあったものの、ゲームやエンタメとは程遠い世界だったので、業界未経験からのスタートでした。

――まったく違う業界への転職ですが、実際に転職されてゲーム業界の印象はいかがでしょうか。

八巻ゲームはプライベートでもあまりやったことがなかったので、知らないことがたくさんある世界でした。弊社の社員はとてもやさしい人が多くて、わからないことがあれば初歩的なことから何でも教えてもらったり、本当にいろいろと助けてもらいました。イメージ通り、“オタク”な人はたくさんいますし(笑)、いままで触れたことのなかった世界に飛び込んだので、毎日が目まぐるしく、見るものすべてが新しいと感じました。そもそも接点のなかった世界の方々ですから、まずは“共通言語”を探すところから始めましたが、それがとても楽しかったです。採用や人事という面からすると、皆さんとは違う視点で見ることができるので、ある意味冷静に、「会社が成長するためにはどういった人を採用すればいいか」という視点を持つことができたと思います。

2018年9月に制作部体制へ移行

――昨年9月の組織体制変更により、制作部体制へと変更されました。今回おもにお話を伺う第2制作部は、文字通り『FGO』を担当されています。組織体制変更の目的や効果について教えてください。

石倉もともとは機能別の組織体系だったので、開発本部やマーケティング部のように分かれていました。主だったタイトルが『FGO』だけでしたから。その体系がうまく機能していました。しかし、現在では未発表を含め、多数のプロジェクトが進行しています。プロジェクト単位できちんとしたチームにしたほうがいいという判断から、制作部体制に変わりました。第2制作部は文字通り、『FGO』の開発や運営に特化したスタジオです。

――体制変更で石倉さんは『FGO』の開発を束ねるトップとなったわけですが、プレッシャーでしたか? それともやりがいを感じましたか?

石倉最初はとても悩みました。いまや即答できるような規模のタイトルではないですし。それまでは庄司が『FGO』のプロデューサーを務めていましたが、タイトルが増え、会社の規模が大きくなるにつれて、庄司が社長業に専念したほうがいい状況になってきました。そこで、庄司から指名されたわけです。昨年の“Anime Japan”(2018年3月)のタイミングで、ディレクターも塩川(※塩川洋介氏。現執行役員 クリエイティブオフィサー)からカノウ(※カノウヨシキ氏)に変わり、以降、カノウ&石倉体制で進めてきました。その後、制作部体制に正式に移行したのが、2018年9月でした。

――体制変更から約半年が経過しましたが、どういった変化がありましたか?

石倉役割としては、マーケティングチームの機能が再編成されたことで、自分が受け持つチームが変わったこと、そしてチームの人数が増えましたね。第2制作部だけで300人弱います。もちろんそれは社内にいるスタッフだけで、外部スタッフなどを合わせると、プロジェクトに関わっている人は、500人くらいにはなるのではないでしょうか。

――制作部体制になるにあたり、石倉さんが考えていることはありましたか?

石倉まずは、チームとしてひとつになることをいちばんに考えました。機能別の組織ですと、「開発が……」とか「いや宣伝が……」と、どうしても部署にとっての言いぶんが出てくるんです。同じ目的を持つ“仲間”であることを再確認し、FGOスタジオというひとつのチームになり、より相乗効果が出るように、職種が違うから他部署の人というような意識の壁を取り外すことを最初にやりました。僕の席も以前『FGO』の開発チームと違うフロアにあったのですが、現在はひとつのフロアにチーム全員が集まっています。ひとつのチームとして、よりよくなってきたと思います。

――八巻さんは、人事的な面から制作部体制になっての変化を感じていますか?

八巻制作部体制になったことで、これまでとは違う立場でゲーム創りに向き合う人が増えた印象です。新しい役割を任されたり、経験したことない業務に挑戦したりする社員が増えたので、ここでぐっと成長している社員も多いのではないでしょうか。各制作部にそれぞれの個性があって、それぞれの想いを持ってゲームを開発し、運営していると感じます。これまで、ディライトワークスと言えばやはり『FGO』でした。もちろん、これからも大切にしていくタイトルに変わりはないのですが、今後出てくるその他のタイトルもとても楽しみです。

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『FGO』の未来

――『FGO』の今後の展望についてもお聞かせください。

石倉長期的な目標は、“生涯愛してもらえるタイトルにすること”です。国民的なタイトルになれるように、また、日本を代表するタイトルになれるようにしていきたい、ということが今後に向けて考えていることです。『FGO』の原作はTYPE-MOONさんです。アニプレックスさんは先日発表されたテレビアニメ化といった分野、そして僕たちはゲームの開発や運営を得意としています。この3社が協力して、ひとつのチームとして、今後10年、20年と続いていくようなものにしていきたい。ちなみに『Fate/stay night』は15年経過していますが、『FGO』は現在4年目ですから、まだまだこれからです。

――3社での調整はたいへんではないですか?

石倉毎週金曜に製作委員会、隔週で制作定例の会議があります。その場では奈須きのこさんや武内崇さんら、TYPE-MOONからコアスタッフも参加し、ゲームの道筋についてそれこそ1年先までどうやって進めていくのかを話し合っています。そこで決められたことをもとに、半年先、1年先の開発を進めているという感じです。会議が白熱すれば、3時間、4時間とかかることもありますが、そこで意思統一をしないと、その後余計に時間がかかったり、チームとしてひとつにまとまらなかったりします。ですので、上流工程においては頻繁に話し合いをしています。

――第2制作部、もしくはディライトワークス全体について、どういったタイプのスタッフが多いと感じていますか?

石倉いろいろな人がいますが、ひとつ特徴を挙げるとすれば、“『FGO』が好きな人”が多いですね。自社のタイトルを愛することは、とても大事なことです。自分たちが『Fate』を、そして『FGO』を愛しているからこそ、お客様の気持ちに近い考えかたができます。イラスト1枚、ゲームの演出ひとつにしても、みずからがファンであるがゆえにお客様が喜ぶことがわかるというのが、いちばんの特徴だと思います。

――スタッフの人数がどんどん増えていますよね。

石倉現在、『FGO』の制作工程の2ライン化を進めています。これまでは人数が十分でなかったこともあり、みんなで一斉に作って、配信して……という感じでした。しかし、それでは円滑な開発と運営をすることは難しく、毎回スタッフが疲弊してしまいます。ですので、開発チームの2ライン化を進めています。

――会社設立から5年経過しました。ディライトワークスの会社としての特徴や強みはどういった部分でしょうか?

石倉僕らのチーム(FGOスタジオ)に限って言うならば、『FGO』という“世界一のコンテンツ”に関われることが特徴だと言えます。こういった機会は、世の中にあまりないことだと思います。

八巻私も同じ意見です。トップコンテンツだからこそ見える景色があるのだと思います。長くゲーム開発に携わっている方でも、なかなかできない貴重な経験なのではないでしょうか。

石倉今後転職することがあっても、履歴書に「世界一のタイトルに関わった」と書けることは、ゲーム業界でのキャリアにとって貴重なことだと思いますし、いまのスタッフはそれを誇りに思っていると思います。“ただ純粋に、面白いものを創ろう。”という当社の理念があります。これからも続けていきたいですし、いまのスタッフもそう思っていると思います。まだ設立5年の会社ですから、いまはそこに向かってがんばるためのスローガンだともいえます。おもしろいゲームを創ることを何よりも優先し、中心に考えられるような環境を作っていることが、他社とは違う一面だと思います。

――“肉会”やボードゲームパーティー、技術セミナー、社内ゲーセン運営などなど、内外を対象にした独特の活動が盛んです。こうした活動について感じていること、会社や事業への影響はどのようなものがあると感じていますか?

石倉客観的な視点から見ても、確かにユニークな試みだと思います。自分たちがやりたいことにチャレンジできる環境が、そういった数々のユニークなイベントを生み出しているのだと思います。社風として、チャレンジすることを推奨する会社ですので、チャレンジしたいことがある方には、とても向いている会社だと思います。

八巻じつは私は“肉会”を立ち上げたチームのひとりです(笑)。月一回のペースで開催し、これまで11回開催しました。きっかけは、ディライトワークスという会社を外から見たとき、働くイメージを持てる会社だろうか、という疑問が湧いたことでした。会社のことをもっとカジュアルに知ってもらいたいという思いから、ざっくばらんに話せるミートアップイベントとして“肉会”を始めました。社内のスタッフも協力的で、“肉会”の話をさまざまな部署に持っていくことがきっかけとなって、コミュニケーションも活性化されていますし、チームの垣根を越えた取り組みも増えたと思います。

石倉業務では“全社会”や“月初会”といった会議や、新入社員歓迎会のようなコミュニケーションの機会を定期的に持つようにしています。年1回の社員旅行や部活動もあります。部活動は、共通の趣味を通じて仲間が増えるきっかけになりますので、会社としても推奨しています。

――求人するにあたり、どのような人といっしょに仕事をしたいとお考えですか? また、どのようなタイプの人が御社にマッチしていると思いますか?

石倉必要な技術やスキルは各セクションで異なりますので、マインド的なお話をしますと、やはり何かしらにこだわりを持っている人がいいですね。私個人の考えになりますが、けっきょく、衣食住が足りていれば生きていくことには困らないわけですし、エンターテインメントというのは、その後、自分の余暇時間を充実させるために何を選ぶかだと思うのです。そこで選んでいただいたものが、僕らがとことんこだわって作った“面白いもの”だと自信を持って言えるものでない限り、選んでいただいた方に楽しい時間をご提供できないと思います。弊社のスタッフなら、こだわりを持って“面白いもの”を創ることができる“ハート”を持っている人がいいと思います。

八巻ほぼ同感です。こだわりを持っていて、モノ作りに対して思いがあるというのは、クリエイターとしてとても大切なことだと思います。さらにディライトワークスで何がやりたいのかが明確であるとなおよいですね。。何を成し遂げたいのかを考え、そのためにどれだけの努力ができるのかが大切だと思います。簡単に言えば、成長意欲を忘れず、自分の成長にどん欲な人ということになります。人はあらゆることから学べると思いますので、どんな些細なことも自分の糧にしていこう、という意識のある方がいいと思います。

石倉採用に関しては、ディライトワークスとして採用となり、その後、特性に合わせて配属先を決定する場合もあれば、最初から第2制作部の所属として採用を決定する場合もあります。今回のインタビューでは後者での採用に関してお伝えしたいことと思い、私がインタビューに出ることになりました。現在第2制作部では、あらゆる職種の人材を求めています。

――現在、転職を考えているクリエイターにひと言お願いします。

石倉僕もこれまでに面接で何百人という方とお会いしてきましたが、笑顔の多い方は話していて、気持ちよいと思います。面接ですから、当然お互い緊張する場面もあると思いますが、これから入るかもしれない会社の面接で、硬い表情ばかりの方ですと、やはりいい印象が生まれにくいです。目の前の人と気持ちよく接することができる方には、その方の人間性が垣間見えます。最終的に、会社は人と人とがいっしょに働く場所ですから。スキルや技術は、必死で努力すれば後からでも身に付くものですが、人柄の部分はなかなかすぐには変わらないと思うんです。“いい人”がいいですね(笑)。

八巻ディライトワークスには人柄のいい人がいっぱいいますね。私が面接などを通じて候補者さんに対してお伝えしているポイントはふたつです。ひとつ目は、その転職で自分が何を叶えたいのかを絶対に見失わないこと。転職の軸は人それぞれだと思いますが、自分がいちばん満たしたいこと、叶えたいことが何なのかを見失うと、失敗してしまう確率が高くなると思います。もうひとつは、周囲からいろいろな意見が出ると思いますが、絶対に自分で決断すること。もちろん家族の意見を聞くことも大事なのですが、最終的には自分の働く場所は自分で選びましょう、ということです。自分で考えて、悩んで、自分で選んだ会社だからこそ、そこでがんばれる覚悟ができると思うのです。そのふたつは、自分が転職する際も考えてきたことですね。

石倉最後にメッセージとして、当社の公式サイトにある第2制作部ページのトップに記載していることなのですが、明日の『FGO』をいっしょに創りましょう! お客様には「今日より明日のほうが面白い」と思っていただきたいのです。ですから、未来の『FGO』をともに作っていきましょう!

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ディライトワークスってどんな会社?

 “ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。”を理念とし、2014年に設立。2018年9月に制作部体制へと組織を変更した。開発・運営を手掛ける『Fate/Grand Order』は、現在では1600万ダウンロードを超えている。また、社内にボードゲームカフェやゲームセンターを設営し、実際にボードゲームを制作・発売。3月に新ゲームプロジェクトを発表したほか、インディーメーカーの開発・マーケティングを支援する“ディライトワークス インディーズ”やプロゴルファーチーム“Team DELiGHTWORKS”の発足など、多彩な新規事業へ進出している。

ディライトワークス株式会社
●代表者:庄司 顕仁 ●設立年月日:2014年1月22日
●従業員数:245名(2018年11月現在)
●事業内容:ゲームの企画・開発・運営

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2018年4月に設置された、社員専用のボードゲームカフェ。約300種類を揃え、ボードゲームパーティーなども開催されている。
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TYPE-MOON、アニプレックスとの3社共同制作で、2015年に配信が開始された『Fate/Grand Order』(iOS/Android)。2018年には年間で収益世界一を達成した(※AppAnnie調べ)。