コーエーテクモゲームスより、2019年3月20日に発売されるNintendo Switch/PS4用ソフト『ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~』。『メルルのアトリエ ~アーランドの錬金術士3~』(2011年6月発売)から約8年の時を経て再始動する“アーランド”シリーズ最新作のプレイレビューをお届け。

とにかくキャラクターがいい

 短いスパンで新作が出ることでおなじみの『アトリエ』シリーズ。『ルルアのアトリエ』は、据え置き機向けシリーズ作としては20作目にあたる。

 『アトリエ』シリーズのすごいところは、これだけの数を出しておきながら、アイテム調合、バトル、ストーリーといったさまざまな要素が、どの作品でも高い水準を保っている点なのだが、やはりタイトルによって特色はある。今回の『ルルアのアトリエ』で、とくに強いアピールポイントとなるのは、やはりキャラクターの魅力だと思う。

 “アーランド”シリーズのキャラクターデザインでおなじみのイラストレーター、岸田メル氏が描く人物たちはかわいいしカッコいいし、キャラクターモデルのクオリティーもグンと上がっている。声優さんの演技も見事で、期待の新人声優・島袋美由利さんは、超ポジティブな主人公ルルアを元気にナチュラルに演じているし、脇を固めるベテラン陣の演技は文句なしのひと言。

『ルルアのアトリエ』プレイレビュー。シリーズ4作目だからこそ感じられる“時の流れ”が、キャラクターを魅力的に描き出す_01
『ルルアのアトリエ』プレイレビュー。シリーズ4作目だからこそ感じられる“時の流れ”が、キャラクターを魅力的に描き出す_02
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女の子がキュートなのは言うまでもないが、個人的には男性キャラクターであるフィクスとオーレルの3Dモデルがとくにお気に入りで、めっちゃスクショ撮ってた。

 仲間たちと交流を深めると、それぞれのキャラクターイベントが進行していくが、その内容が“地に足がついている”感じがするのもいい。『ロロナのアトリエ ~アーランドの錬金術士~』から『メルルのアトリエ ~アーランドの錬金術士3~』までで描かれてきた時代の変化、歴代キャラクターたちの活躍、アーランド共和国の地理などがほんのり感じ取れるものになっている。それを受けて、「この仲間たちも、まだまだこの世界で生きていくんだな」と、未来につながっていく感覚が味わえて、気が早いが、「いつか『アーランドの錬金術士5』で、このキャラクターのその後が見たいなあ」と期待してしまう。

アルケミリドルは物語を引っ張りつつ、自由度も与えてくれる

 本作では、ルルアが拾う謎の古文書“アルケミリドル”が、ぐいぐいとプレイヤーを引っ張っていく。ルルアにしか読めず、ルルアが困ったときには解決方法を浮かび上がらせる謎の本――たいそう都合がいいが、都合がいいのにもちゃんと理由があり、「この本はいったい何なんだろう?」、「この先に何が待っているんだろう?」という疑問が、序盤から終盤まで、ゲームプレイを進める強い動機となる。

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 アルケミリドルのすごいところは、それに加えて、ゲームの自由度もプレイヤーに与えているところだ。

 本作の物語は、アルケミリドルの“メインページ”を解読すると進む。そのほかに、任意で解読できる“サイドページ”があり、サイドページをいつ解読するかはプレイヤーの自由(なお、サイドページを解読すると、便利なアイテムのレシピ、調合の新機能、バトルで役立つスキルなどが得られる)。メインストーリーを優先するか、サイドページ解読に励むか、つぎに何をするかをアレコレ考えるのが楽しい。

 ストーリーにおいても、システムにおいても、このアルケミリドルが支柱として機能していて、ゲームプレイをまとめあげているのが見事だ。

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少しずつページが埋まっていくのを見るのは楽しく、コンプリート欲が刺激される。

調合の間口は広く、“インタラプト”でやり込み度は深く

 今回の調合は、『メルルのアトリエ ~アーランドの錬金術士3~』のシステムがベースになっていて、“不思議”シリーズ(2015~2017年に発売)と比べると、視覚的にもわかりやすい、把握しやすいものになったと感じる。

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材料を選ぶと、画面右下にあるバーが伸びていって、長く伸びるほどいい効果が出る。これが調合の基本で、序盤のうちにすんなり理解できるはずだ。

 濃い『アトリエ』ファンである自分としては、『リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~』(2017年発売)で味わえたような“調合方法を少しずつ攻略していく”感が好きだったりもするので、このわかりやすさが若干物足りなくもあるのだが、それはすなわち、今回の調合システムの間口が広いということでもある。『アトリエ』シリーズはご無沙汰という人、未経験という人も、調合をバッチリ楽しめると思うし、こだわりのアイテム作りに精を出せるだろう。

 そして、今回のバトルの新要素“インタラプト”のおかげで、新しい調合の楽しみも生まれた。

 インタラプトは錬金術士のみが使用できるコマンド。バトル中に右下のゲージが溜まったら、敵味方のターンに関係なく、いつでも好きなタイミングでアイテム(インタラプト用に装備している1品)を使えるというものだ。

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 「じゃあ、最強の爆弾か、最強の回復薬をインタラプト用に装備すればいいんじゃない?」と思うかもしれないが、そういった高レベルのアイテムは、インタラプト用のゲージが溜まるのに時間がかかる。そのため、個人的には、“そこそこのレベルのアイテムに、厳選した特性を付ける”ほうが、インタラプトで役立てやすいと感じる。

 “インタラプト用に作る”という視点で見ると、最強の爆弾/回復薬よりも魅力的に見えるアイテムが多々あって、アイテム作りが楽しくなるのだ。作り込んだアイテムを使って思う存分戦える、やり込み勢向けのボスももちろんいるので、ハードなプレイを楽しみたいファンも安心だ。

あと、やっぱり曲がいい

 ガストブランド作品と言えば、楽曲に定評があるが、今回ももちろん曲がいい。ルルアが暮らすアーキュリスの町の曲はずっと聴いていられるし(とくに後半がいい)、エーファのテーマ曲は音色がかわいらしいし、アレンジされたアーランドの街の曲はちょっと大人っぽくて、これまた時の流れを感じてじ~んとしてしまう。そう、『ルルアのアトリエ』って、いろいろなところで“時が流れて、未来に進むこと”を考えさせてくれるゲームなのです。古参プレイヤーは、その感覚をガッツリ楽しめると思うし、新規プレイヤーでも、イベントシーンの端々から、登場人物たちの人生の深みを感じ取れるはず。“アーランド”シリーズが4作も続いたからこそ味わえる深み、これがいちばんの本作の魅力なのかもしれない。

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