2019年2月9日、東京・品川の日本マイクロソフト本社にて、Walker Gaming主催によるesportsのイベント“Strong Style Japan”が行われた。
そもそも“Strong Style”というのは、『鉄拳』の団体戦として世界最大規模を誇るゲーム大会。その“Strong Style”が、今回プロゲーミングチームWalker Gaming主催により、初めて日本で開催されることと相成った。3on3により行われる本大会だが、当日は41チームが参戦し、優勝を競って熱戦が展開。優勝者には“Strong Style ”本戦参加へのシード権が与えられるということもあり、戦いは白熱した。
ここで少し注目してほしいのが、大会が行われたのが“品川の日本マイクロソフト本社”であるということ。そう、“Strong Style Japan”には日本マイクロソフトが協力をしているのだ。当日は、イベントのために会場を貸し出したほか、オンライン中継にマイクロソフトのライブストリーミングプラットフォーム“Mixer”なども提供されたという。日本マイクロソフトがesportsのイベントに協力したことはあまり聞いたことがなく、今回どのような経緯だったのか気になった記者は、イベント当日に日本マイクロソフト本社に赴いた次第。
さて、2月8日は超寒波に見舞われ、小雪混じりのあいにくの空模様となったが、一歩オフィスに足を踏み込むと来場者たちの熱気が溢れんばかり。メインとなる会場ではSteam版『鉄拳7』を使っての3on3の戦いが行われたほか、別会場では『FIGHTING EX LAYER』や『ぷよぷよeスポーツ』、『FIFA 19』のエキシビジョンマッチが行われていた。さらには、MR(ミックスドリアリティ)対応ゲームアプリの試遊などもあり……と、月並みな表現になってしまうが、なかなかの盛り上がりぶりだった。
と、そんななか、“Strong Style Japan”のオーガナイザーであるWalker Gamingの森田康裕氏にお話しをうかがう機会を得た。
まず森田さんに、今回の“Strong Style Japan”開催の経緯を聞いてみたところ、「“Strong Style”は、EVOを除くと、世界一の『鉄拳』の団体戦の大会です。私たちWalker Gamingが、“Strong Style”本家主催のアンディ(アンディ・ラム氏)と個人的につながりがあり、“日本でも大会をやりたい”ともちかけたところ、ふたつ返事でOKをいただきました」とのこと。さらに、「日本大会で優勝したら本大会へのシード権をほしい」というリクエストに対しても快諾してもらったことから、「『鉄拳』界の盛り上がりにも貢献するのでは」との思いから、“Strong Style Japan”の開催を決意したという。ちなみに、“Strong Style”自体は、通常4年に1回くらいのペースで実施されており、じつは昨年(2018年)も行っている。それが、つぎは4年後……となるはずが、「日本でやるんだったら……」ということで、今年も行われることが決定している。なんともおおらかな感じだが、ユーザーベースのイベントというべきだろう。
ちなみに、“Strong Style”はアメリカのみならず、ヨーロッパでも行われており、今後は中国や韓国にも拡大予定とのことだ。前述のとおり、世界的に知名度の高い“Strong Style”だが、人気の要因のひとつとして、『鉄拳』の団体戦は本イベントのほかにあまり存在しないことがあるという。「1対1が極めて真剣な勝負になるのに対して、複数人は海外だとけっこうお祭りみたいな雰囲気になります。“数年に1度のパーティー”みたいな感じでみんなが集まって広まっているんですね」(森田氏)という。パーティーみたいに、リラックスしながらワイワイ楽しむ雰囲気があるようだ。
とはいえ、“Strong Style Japan”の決勝戦では敗北して涙を流す選手の姿も見られたので、ワイワイ楽しむながらも、根本のところではギリギリの戦いをしているという印象を受けた。それは、負けて悲しくない人はひとりもいないだろうし。
そしておもむろに本題に入るのだが、なぜ“Strong Style Japan”は日本マイクロソフトのサポートすることになったのか。そのきっかけは、Walker Gamingの代表がとあるゲームメーカーの勉強会で日本マイクロソフトの担当者と知り合いになったことにあるという。その場で代表が、「こういうことをしたい!」という熱意を伝えたところ、日本マイクロソフトの担当者も「esportsに大いに興味がある」ということで、トントン拍子に話が進んでいき、“Strong Style Japan”へのサポートが決まったというのだ。
その具体的なサポートの内容としては、前述の通り会場の提供と、そして配信プラットフォームMixerによる支援。もともと活用していた配信プラットフォームに不満を感じていたというWalker Gamingは、この機会にMixerにチェンジ。その利便性の高さを森田氏は絶賛する。「実際のところ、Mixerはリアルタイム配信技術がとてもすばらしくて、レイテンシー(遅延)がほぼないというところが魅力です。esportsも一般のスポーツといっしょで、リアルタイム配信がとても重要だと考えています。そのため、遅延がないというのは大事なポイントで、フルHDでレイテンシーがほぼないというは現状ではMixerしか存在しないんです。さらに、4人同時配信にも対応していて、『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』などでも、ニーズが高く、esportsの発展にも大いに寄与するものと確信しています」と森田氏。さらに森田氏は、「いささか番宣めいてしまいますが……」と苦笑いしつつ、「高画質とライブ感を保つには、Mixerしかないのかなと個人的には思っています。競合さんだと、どうしてもカクカクしてしまうんですよ」と語ってくれた。
ただし一方で、残念ながらMixerのよさはとくに国内ではあまり知られてないという現状がある。「そのよさを知らしめるための足かかりとして、今回のイベントがあるのだと思います」と森田氏は分析する。つまり、日本マイクロソフトがesportsのイベントをサポートするのは、Mixerの訴求が目的のひとつということなのだろう。「今後、Walker Gamingを含めて、esports業界でMixerを使って広めていけば、たぶん認知がより広がるのではないかと思っています」と、森田氏は断言する。Mixerの利便性の高さは、esportsと相性がいいということは言えるのかもしれない。
さらに森田氏からは興味深いコメントも聞かれた。最後に今後のWalker Gamingの目標を聞いたところ、「esportsをより一般の方に知ってもらえるようにしていきたいです。esportsに関しては、“名前は知っているけれど、じつはよくわからない”という方が多いかと思うのですが、そんな方にもesportsの何たるかをわかっていただけるように、認知度を高めていきたいです」と語ったあとで、「そういう意味では、今回日本マイクロソフトさんにサポートしていただけたことの意義は大きい」というのだ。「少し下世話な話になってしまうのかもしれないのですが、“あのマイクロソフトさんがサポートしてくれた!”ということで、一般の方の認知はすごいかなというのはあります」(森田氏)というのは、少し率直過ぎるコメントかもしれない。まあ、いわゆる“箔がつく”というやつだ。
最後に森田氏は、「日本マイクロソフトさんの名前を借りる……というわけではありませんが、今後も良好な関係を築いていきたいです!」と抱負を語ってくれた。日本マイクロソフトがespotsのイベントをサポートするということの持つ意義は、esports関係者にとっては想像以上に大きなものがあるようだ。
今回残念なことに日本マイクロソフトの担当者には取材できなかったものの、コメントをいただくことができた。「マイクロソフトは、Xbox関連、WindowsベースのPC Gamingで長年ゲーム業界と連携してきました。現在会社の中核となっているクラウドサービス事業においても、ゲーム業界のデジタルトランスフォーメーションやゲーム開発、さらにesportsの発展などに貢献していきたいと思っています。今回はそういう思いから、本イベントに協力しています」というものだ。
気になるのは、“クラウドサービス事業においてもesportsの発展に貢献していきたい”との主旨の言葉。マイクロソフトのクラウドサービスといえば、Microsoft Azureがおなじみだが、それをesportsに活用させるとは? 日本マイクロソフトの今後のesports展開から目が離せない感じになりそうだ。
※ファミ通App VSのリポート記事はこちら
https://appvs.famitsu.com/20190212_20177/