2019年2月15日、スパイク・チュンソフトより『メトロ エクソダス』(以下、『エクソダス』)が発売された。本作は、ロシアの小説家、ドミトリー・グルホフスキー氏によるベストセラー『メトロ 2033』を題材にしたサバイバルシューターシリーズ『メトロ』の最新作だ。
核戦争後の荒廃した世界で生き抜く人々の姿を描いた濃密なストーリーが好評な『メトロ』は、2010年に1作目が発売されてからいまにいたるまで、ファンの心をつかんで離さない名シリーズ。
前作まではロシアの首都モスクワを走る地下鉄“メトロ”を中心に物語が展開していたが、前作から6年ぶりとなる新作である『エクソダス』では、メトロの常識を覆す新たな真実が明らかになったことで、主人公・アルチョムはロシア全土を巡る旅へと出発する。
本記事では、そんな『エクソダス』の魅力を、原作小説も読破したメトロ住民のライターがお伝えしていこう。
ロシアの大地でくり広げられる緊張のサバイバル
前作から6年という短くはない期間を空けて発売された本作は、その期間に見合った大幅な進化を遂げ、シリーズ最高傑作と呼ぶべき作品に仕上がっている。
なかでも大きく進化した点が探索要素だ。本作では、とある出来事をきっかけに“オーロラ号”という蒸気機関車で冬のモスクワを発つことになるのだが、季節の移ろいとともにストーリーが進行。春、夏、秋、冬と、季節ごとに異なる停留地でさまざまな出来事を体験することになる。
停留地はオープンワールドのフィールドとなっており、自由に探索して回ることが可能だ。これまでの過去2タイトルでもフィールドを探索することはできたが、その自由度は段違い。たとえば、ゲーム内で睡眠を取って時間を経過させて夜の停留地を歩いてみたり、ボートやクルマを自分で操作して風景を眺めて回ったりすることもできる。
停留地では、弾薬やアイテムの作成に消費する物資を入手できるのだが、獰猛なミュータントなどの敵もうろついている。そのため、物資を集めるはずが、敵に発見されて戦闘が始まり、弾薬が底を尽きてしまうことも……。
だが、敵の視線をくぐり抜けながら物資を集めるスリルは格別。じっと身を潜めて敵が通り過ぎるのを待ってやり過ごしたり、集めた物資から必要なものを作成したりと、まさにサバイバルと呼ぶにふさわしい緊張感を味わうことができる。
また、敵の挙動は過去2タイトルに比べて賢くなっている印象。過去2タイトルでは、正面からゴリ押しで突破できることも少なくなかったのだが、本作は敵の動きをしっかり観察して身を隠しながら進まなければクリアーが難しいこともしばしばで、サバイバルシューターとしての純粋なおもしろさが強く押し出されていると感じた。
戦闘で使える武器はこれまでのタイトルと同じく、最大3種の銃器と手榴弾などの投擲アイテムだが、本作では場所を選ばず銃器のカスタマイズが可能に。
敵に気づかれたくないときは発砲音を抑えるサプレッサーを付けたり、長距離射撃用のスコープを装着して遠くから狙い撃ったりと、場所や状況に応じて好きなように戦いかたを変えられるようになっているため、手持ちのアイテムからベストな戦術を組み立てる楽しさもプラスされた。
なお、難易度はストーリーに集中したい人向けの“ストーリー”から、“イージー”、“ノーマル”、“ハードコア”と幅広く用意されており、途中で変更もできる。戦闘が苦手な人でも問題なく楽しめるはずだ。
舞台はメトロではないが内容はしっかり『メトロ』
ここまで過去2タイトルからの変更点について語ってきたが、これまでのシリーズの大きな魅力はそのユニークな世界観とストーリーであったため、“地下鉄を出たら『メトロ』ではなくなってしまうのではないか”と、懸念しているファンも少なくないだろう。実際、筆者も本作をプレイする前はそのひとりだった。
しかし、その心配は無用だ。なぜなら、オーロラ号が訪れるロシアの各地は、アルチョムたちが暮らしていたメトロに負けず劣らず特徴的で、風土色豊か。停留地ごとに風景がガラリと変わり、なおかつ、各地で印象的な出来事が起きるので「この場所ではこんなことがあったなぁ」と、旅の思い出が強く印象に残るのだ。
そして、アルチョムと仲間たちが織りなすストーリーも過去2タイトルに引けを取らないおもしろさ。登場人物は相変わらずアルチョムの妻であるアンナ以外はほぼ男性だが、男たちのあいだに結ばれた固い絆が描かれる、いい意味で男くさいストーリーはじつに『メトロ』らしい。
これまでのシリーズと同様に『エクソダス』でもマルチエンディングが採用されており、プレイヤーの行動によっては、最後まで旅を続けられなくなってしまう仲間が出てくる場合もある。そのため、プレイ中はどう行動すべきかをつねに考えさせられる。
また、『エクソダス』ではストーリーを進めるための任務とは別に、さまざまなキャラクターから依頼を受けることもある。彼らの願いを聞いてあげるかどうかはプレイヤー次第だが、いわゆる“お使い”と呼ばれるようなものとは違い、プレイヤーがみずから進んで行動してしまうような依頼が多い。
例を挙げると、“父の形見のぬいぐるみを取ってきてほしい”という6歳の少女からのお願いなど、いろいろな内容の依頼がストーリーの中でアルチョムに寄せられるため、そうした依頼を通じて登場人物たちに感情移入させられ、ストーリーにもより深く没入できる作りになっている。
前述の通り、これまでの作品以上に、サバイバルシューターとしても、アドベンチャーゲームとしても完成度が高まった本作。1作目から遊んでいる筆者としては、自由に旅してまわれるという点が非常におもしろく、ストーリーを追いながら夢中になってロシアの大地を駆けずり回っていた。
アクション、ストーリーの両面でプレイヤーを引き込む見事なゲーム性が実現しているので、少しでも興味があるなら、ぜひ実際にロシア横断の旅に出てみてほしい。プレイの際は、覚えておくべきテクニックをまとめたプレイガイド記事もアップしているので、そちらもお目通しいただけると幸いだ。